×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
私の魂の最も近しいところにいたあなたへ。
今でも時たま思うのです。
私たちは魂の伴侶、永遠の片割れ。
私を真に理解し、受け入れることができるのも、
あなたのまことを知り、それを我が身の血と骨に変えられるのも
おそらくは生涯において互いのみであったのではないか、と。
私たちの間にあった絆は男と女のそれではありませんでした。
あなたは常に魅力的な男性の傍らに寄り添い、
私もまた美しく愛らしい女性たちに囲まれて、
それを互いに自然のこととして受け入れて参りました。
けれど、今、あなたが表向きの伴侶を見つけ、
永遠に私の手の届かぬところへ旅立った今になって、私はようやく気づいたのです。
もっと早く、あなたをこの手に抱きしめていれば良かった。
もし、私たちが只の男と女の関係になれたなら、私はあなたを失わずに済んだでしょう。
私はあなたを愛している。
けれど同時に、あなただけは愛したくなかった!
酷い矛盾です。
私自身も混乱しています。
言いたいことの一つもまとめられやしない。
あなたが旅立ってから、私の日常は万事このような情けない調子で過ごしているのです。
こんな私を哀れに思って下さるのなら、どうかあなたのお気持ちをお聞かせください。
私の思い違いでなければ、きっとあなたもご同様の思いでいらっしゃるはずだと、
私は信じたいのです。
親愛なる魂の片割れ、誰よりも麗しく残酷な私のあなたへ。
~~~
冬の寒さが厳しくなって参りました。
こちらでは長らく雪が止まず、気が滅入っているところに突然のあなたからのお手紙、
わたくしはどれほど胸躍らせたことでしょう。
わかっておりました。
全く、同じお気持ちでございました。
わたくしはあなたが好きでした。
あなたの明るい精神、人の心を掴み取る強い眼差し、
わたくしと重なり合う心・・・まさにあなたは、わたくしの唯一の片割れでした。
わたくしと重なり合う心・・・まさにあなたは、わたくしの唯一の片割れでした。
全てがわたくしにとって不可欠であり、あなたを思うたびにわたくしの心は
どれほど震え、そして昂ったことでしょう!
あの方と出会い、結婚を決意しこちらに参りましてから、
あなたの存在がどれほどわたくしにとって愛しく大切な宝物となっていたことを
思い知らされることか、お話しすればインクの壺が空になってしまうことでしょう。
けれどわたくしは同時に、これで良かったとも思っているのです。
わたくしはあなたに対する想いとは全く異なる感情で、夫を愛しています。
仮にわたくしとあなたが真っ当な恋をして、結ばれたところで
それはわたくしたちにとっての“幸せ”というものに繋がったのでございしょうか?
わたくしはあなたを愛しています。
けれどその事実に気づいたのは、わたくしが今の夫を愛したから、
今この場所に、嫁ぐことを決意したからなのでございます。
あのままわたくしがあなたのお傍にいたところで、
どちらにしろわたくしたちの道はいつまでも交わらぬまま、
平行線を辿って潰えてしまったのではございませんか?
わたくしたちは遠く在って初めて、お互いを真に愛することができたのです。
二人を結ぶ強い絆に、気づくことができたのです。
それだけでわたくしは、十分に幸せでございます。
もう二度とお手紙を差し上げることはございません。
さようなら、私の唯一の片割れ、何よりも誰よりも愛するあなたへ。
追伸:あなたの生涯に光多からんことを、この命尽きる時まで
わたくしはいつまでも神様にお祈り申し上げる心づもりでございます。
~~~
魂の伴侶を失った。
否、失ったが故に私たちはお互いを手に入れた。
愛した。愛された。
私たちは、おそらく互いに“幸せ”を得たのだと思う。
永遠に引き裂かれたままの魂の片割れと、束の間だけでも巡り合い、
そしてこれからも結ばれ続けることができるのだから。
だからこのあなたへの手紙は、炎にくべて天に還してしまおうと思う。
神が真に存在するものだというのなら、私は感謝したい。
あなたと出会わせてくれた、恋をくれた、愛をくれた、永遠の伴侶を与えてくれた。
肉体上、私はあなたの伴侶とは成り得なかった。
けれど私の心は、あなたの心と永遠に一つに寄り添うだろう。
愛している。愛している。愛している。
ただそれだけの感情が、こんなにも幸福で、こんなにも眩い。
私のあなた、愛するあなた、さようなら。
最後の手紙が天上であなたに拾われてしまったら、私は一体どこに身を隠そうか。
それともいっそ今度こそ、背後から思い切りあなたを抱きしめれば良いのだろうか?
哀しい。愛しい。切ない。苦しい。
全ての感情を与えてくれたあなたに、心からの感謝と、至上の愛をここに捧ぐ。
→後書き
追記を閉じる▲
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「靴を忘れてきたんだ」
背の高い、帽子を被った影が言った。
少しハスキーな声と伸びた影からは、主が男なのか女なのか分からない。
「靴?」
私の問いかけに、影は軽やかなステップを踏みながら答えた。
「そう。私の人生で、一番大事な靴」
月明かりに浮かび上がったシルエット。
影の主は帽子だけではなく、どうやらコートまで引っ掻けているようだ。
「まぁ、それは大変じゃない!一体どこに忘れてきたの?」
私が驚いた声を上げると、影の主は少し寂しげに呟いた。
「あの月の向こう、重さも軽さも無い、何もない宙(そら)の果てに」
影がくるりとターンを決め、私の目に初めてその主の横顔が映った。
「ああやっぱり、あの靴じゃないと踊れない」
私は息を飲んだ。一瞬、影の背に翼が見えたからだ。
「……そのままでも、あなたの踊りは素敵なのに」
必死で告げる私に、影は静かに首を振った。
ああ、影は行ってしまう。重力も何もない、ふわふわと舞える宙の果てへ!
「やっぱり私はあの靴を取りに帰るよ。もっともっと、ずっと自由に踊れる場所に」
影の主は舞い上がった。どこまでもどこまでも高く、星を越え月を越え、
やがて私の目に見えなくなるほど高く――
~~~
自重しようかと思ったが出来なかった・・・m(__)m
大浦みずきさんは本当に素晴らしいスターさんでした。
私がヅカにハマって間もない頃、活躍しておられたスターさんたちは
皆彼女の下にいた方々でした。心からご冥福をお祈り致します。
追記を閉じる▲
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「私だったら、どんな手を使ってでもすぐに別れちゃうと思うなぁ」
世間で持て囃された純愛ものの小説を片手にポツリと呟いた彼女の言葉に、
俺は少しだけ目を細めて窺うようにそちらを見た。
「もし自分が病気で、絶対に彼を置いて死ななきゃいけないことが
判ったら、その時点で何も言わずにソッコー別れると思う」
真面目な顔をして本に向き合う彼女の言葉がとても意外で、
俺は今度は食い入るようにその横顔を覗き込んでしまっていた。
「ふふ、私が相手のためにそうするタイプだと思ってなかったから、
意外なんでしょ?アタリだよ。
私がそうするだろうなぁ、って思うのは全部自分のためだから」
悪戯に微笑む瞳に移る感情がゆらゆらと揺れる。
近頃彼女はいつでも、少し情緒が不安定だ。
「だって、耐えられないじゃない。
大事な人が私ごときのせいで傷つくかもしれないとか、
人生棒に振っちゃうかもしれないとか、色々。
まぁそこまで自惚れてるわけじゃないんだけどね。
私が嫌なの。ホラ、よく猫は死に際を飼い主に見せない、
っていうじゃない?それと同じ感じっていうか・・・」
「あー、苦しんでるとことかカッコワルイとことか見せたくないんだ?」
「そういうわけでもない、っていうか。
まぁそれはもうさらけ出しちゃってるし仕方ないと思うんだけど、
八つ当たりしちゃったり、愚痴言ったりしかできなくなっちゃって、
最後の思い出まで全部汚れてっちゃうのが嫌なの。
別に向こうの思い出はどんなにボロボロになって
捨てられちゃっても構わない、っていうかむしろそうしてほしいんだけどね。
私くらいは、最後に自分が一番輝いてたときに一緒にいたんだ、
って綺麗な思い出を抱いたまま死んでいきたいじゃない?」
「はー……何つー勝手な発想」
呆れ返りながら溜息を吐き出した俺に、彼女はまたにっこりと笑ってこう告げた。
「だからね、イツキ。私が「別れて」って言ったら、
四の五の言わずにソッコーで別れてね?」
長い睫毛に縁取られたその瞳の奥が、少しだけ潤みを帯びていたように見えたのは
果たして光の加減が見せた錯覚だったのだろうか。
→後書き
追記を閉じる▲
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ねぇねぇ、海の底を二万マイル旅して怪物とか遺跡とかに出会えるんなら、
空の果てを二万マイル旅したら何に出会えると思う?」
あれはいつのことだったろう。ベッドの上に寝そべって、
冒険物語の古典と言われる本を開きながら問いかけてきた
冒険物語の古典と言われる本を開きながら問いかけてきた
二海の言葉に、パソコンに向かっていた俺は呆れながら溜息を吐いた。
確か二海はその本を、『自分の名前と一字被ってて何か面白そうだから!』
という理由で図書館から借りてきたばかりだったのだと思う。
「はあ?空の果てなんか行ったって、宇宙に飛び出して終わりだろ。
大体おまえ、二万マイルが何キロかも分かってねぇだろ?」
「もう、万里は夢が無さすぎ!せっかく名前だけは壮大でステキなのに……」
そっけない俺の返事に溜息を吐き返されて、少しムッとして二海の方を見やれば、
彼女はふくれっ面をして再びページへと視線を戻していた。
ただ単に親が万里の長城旅行した時にデキた子だから、
ってだけで付けられた名前なんだけど……。まぁそれも凄いよな、色んな意味で。
「きっとさぁ、空の果てには怪物も戦いの跡も、
滅びた国も復讐とか策略も、暗いものはなーんもなくて、
綺麗な鳥とか、羽の生えた馬とか、天使とかが飛んでるんだよ。
滅びた国も復讐とか策略も、暗いものはなーんもなくて、
綺麗な鳥とか、羽の生えた馬とか、天使とかが飛んでるんだよ。
いーっつもお日さまに照らされてるから、誰も、何も悪いこととか出来ないの!
それでさ、きっとどこかには天国の扉があって、神様が両手を広げて
「ウェルカム!」って迎えてくれるんだと、あたしは思うなぁ」
「ウェルカム!」って迎えてくれるんだと、あたしは思うなぁ」
「おまえ、ハリポの読み過ぎじゃねぇ?
その年でそんなこと言うとか、正直引くわー」
その年でそんなこと言うとか、正直引くわー」
大体「ウェルカム!」ってどこの国の神だよ?
イエスもブッダもアッラーも、きっと英語は喋んねぇぞ?
余りにも夢見がちな二海の言葉に、若干顔を引きつらせながら返事を返すと、
彼女は無言で俺の顔にクッションを投げつけてきた。
懐かしい思い出。俺の大切な、大切な記憶。
~~~
「おーい……実際空の果てには、何があったんだー?」
屋上から見上げる、晴れ渡った青い空の向こうへと呼びかける。
あれから、数年。
彼女は本当に空の果てへと旅立ってしまった。今頃は夢見た場所で、
綺麗な鳥や羽の生えた馬や天使たちと戯れているのだろうか。
綺麗な鳥や羽の生えた馬や天使たちと戯れているのだろうか。
天国の扉は、果たしてちゃんと見つけることが出来たのだろうか。
神様は、本当に彼女を歓迎してくれているだろうか。
ふと頬に手をやると、冷たい液体が指に触れた。
「俺が、連れて行きたかったな……。一般人でも乗れるようなロケット
開発してさ、「どうだ!?空の果てには雲があって、オゾン層があって、
開発してさ、「どうだ!?空の果てには雲があって、オゾン層があって、
そのまた向こうには宇宙があるだけだろ!?」
って、神様の「ウェルカム!」より先に、おまえに言ってやりたかった……!」
拳を握りしめ、フェンスに向かって打ちつける。
今さら、なんだ。
二海の病気が判って、俺がこの道に進むことを決めて、
時間が足りないって分かっていても、俺は諦めきれなかった。
二海に、こっち側の“空の果て”を見せたかった。
それが、叶わないのなら……
「なんで俺も一緒に連れて行ってくれないんだよ……!?」
見上げた青空は沈黙したまま、何の答えも返してくれない。
俺だけじゃ、空の果てに夢なんか見れない。
二万マイルもたった一人で旅することなんか、不可能に決まってるんだ。
だからきっと、二海だって。
「俺が行くまで、待ってろよぉー!」
空の向こうに向かって、大声で叫ぶ。
天国の扉を、一人でなんか開けさせない。
俺がいつか、此処できちんとロケットを造って、それからあっち側に行くまで。
だってそうだろう?
甘ったれのあいつが、一人っきりで旅なんかできるわけがない。
方向音痴のあいつが、一人っきりで天国まで辿り着けるわけがない。
冒険ものには仲間が必要って、相場が決まってるんだから。
今日も俺は、空の果てに思いを馳せる。
そこで身動きできずに俺を待っているであろう、大切な大切な宝物に向かって。
7/24 改題
→後書き
7/24 改題
→後書き
追記を閉じる▲
まぼろしシリーズ番外SSSで拍手お礼にしようかと思ってたんですが、
読む人を選ぶのでこちらに置きます(^^;
※近親相姦要素あり。後世の学者による考察調。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ヴィラール帝国エステン皇朝第二代皇帝アウグスト。
五十年近くに渡る在位を誇り、
『賢帝』と呼ばれた彼の生涯において唯一の汚点とされるのが、
彼が三十三歳のとき皇宮に迎えた庶子、ルーペルトの存在である。
そのとき彼は既に皇后クリステルとの間に皇太子ジークムントを生していたが、
『賢帝』と呼ばれた彼の生涯において唯一の汚点とされるのが、
彼が三十三歳のとき皇宮に迎えた庶子、ルーペルトの存在である。
そのとき彼は既に皇后クリステルとの間に皇太子ジークムントを生していたが、
何故かこの庶子を自らの手元へと引き取った。
一般的に、このとき生まれて一年にも満たなかったとされる庶子ルーペルトは、
その前年に十七歳の若さで亡くなった皇妹ミレーヌの遺児である、
との説が根強い。ミレーヌはどこにも嫁がぬまま世を去った。
ではこの息子の父親は誰であるのか。
それこそがアウグストの治世唯一の汚点であり、葬り去られた歴史の闇である。
との説が根強い。ミレーヌはどこにも嫁がぬまま世を去った。
ではこの息子の父親は誰であるのか。
それこそがアウグストの治世唯一の汚点であり、葬り去られた歴史の闇である。
アウグストの実弟にしてミレーヌの実兄、皇弟オスヴァルト。
即位した当時、若年でもあり多忙を極めた皇帝アウグストは、
母亡き赤子であった妹のミレーヌをこの二つ年下の弟へと託した。
母亡き赤子であった妹のミレーヌをこの二つ年下の弟へと託した。
そのためミレーヌは実質的にオスヴァルトの元で育てられた。
そこからそのまま他の妹たちと同じように貴族へ降嫁、
もしくは他国へ嫁入りさせるはずが、アウグストはその道を選ばなかった。
『重篤な病であり、治療が必要である』
との理由から十六歳のミレーヌを無理やり鄙の城へ閉じ込めると同時に、
『重篤な病であり、治療が必要である』
との理由から十六歳のミレーヌを無理やり鄙の城へ閉じ込めると同時に、
彼はそれまで腹心として傍に置いてきた弟のオスヴァルトを辺境へと追いやった。
『病のため他人とまともに会話を交わすことは困難であったが、
『病のため他人とまともに会話を交わすことは困難であったが、
神々しいまでに美しい容姿のため誰からも愛された』
庶子ルーペルトが皇宮に迎えられるのはその二年後である。
会話に不自由を生じるような『病』とは、近親間に生まれた子に
起こりやすい知的障害の一種であった、と現在では考えられている。
『白皙の美男子』と讃えられたというオスヴァルトと、
庶子ルーペルトが皇宮に迎えられるのはその二年後である。
会話に不自由を生じるような『病』とは、近親間に生まれた子に
起こりやすい知的障害の一種であった、と現在では考えられている。
『白皙の美男子』と讃えられたというオスヴァルトと、
『姉妹中誰よりも母后に似た美しい面ざしを持つ皇女』と記されるミレーヌ。
二人の間に生まれた子供が、美しくない訳がなかろう。
皇帝アウグストは容姿に関しては父帝ゲオルクに似て、
『頑健で男らしいなりをしていた』と記録されている。
対して彼の庶子とされるルーペルトと、弟であるオスヴァルトには
『極めて中性的で艶めいた魅力がある』との共通項があった。
この二人は瞳の色さえ共通している。
かつて、ヴィラール皇族のみが持つとされた碧。
それは皇妹ミレーヌの瞳の色でもあった。
遺伝しにくいとされるこの碧(父帝ゲオルクと母后リリアーヌの間に生まれた
七人の子のうち、この色の瞳を持って生まれた子供は二人のみであった)
の瞳を宿した子供がたった一人で生まれてきたのは何故か。
それは父母共に同じ色の瞳を有していたからではないのか。
また、ルーペルトの成人の儀式や初陣などの場で、本来父帝アウグストが
務めるべき役割は全て叔父であるはずの皇弟オスヴァルトが引き受けている。
オスヴァルトは度々実の息子たちにも与えたことが無いような高価な贈り物を
ルーペルトへと贈っているし、ルーペルト側もまたオスヴァルトに対し
他の叔父たちには類を見ないほど礼を配り、『外交任務』と称した外遊
(これは知的障害のある庶子を権謀策術の渦巻く宮廷に長く留まらせておくことを
憂慮した皇帝アウグストが意図的に送り出したものと思われる)
から戻る度に、彼に対して何がしかの土産の品を贈っている。
更に、オスヴァルトが自身の日記に
『子供たちの誰よりも、ルーペルトが一番愛しい』
と記していた事実も確認できる。
他の叔父たちには類を見ないほど礼を配り、『外交任務』と称した外遊
(これは知的障害のある庶子を権謀策術の渦巻く宮廷に長く留まらせておくことを
憂慮した皇帝アウグストが意図的に送り出したものと思われる)
から戻る度に、彼に対して何がしかの土産の品を贈っている。
更に、オスヴァルトが自身の日記に
『子供たちの誰よりも、ルーペルトが一番愛しい』
と記していた事実も確認できる。
皇弟オスヴァルトはランベール侯爵令嬢フェリシテを妃に迎え、
彼女との間に二男一女を生しているが、夫婦仲は極めて悪かったとされている。
母親に似た女性的で柔らかな美貌を好んだ彼にとって、どちらかと言うと
『凛々しく整った』顔立ちをした彼女はタイプから外れていたのかもしれない。
また、古くからのヴィラール貴族として慣例や掟を重視する彼女の古風な性格から
考えて、夫と義妹の関係は到底認めることができないものであったのだろう。
考えて、夫と義妹の関係は到底認めることができないものであったのだろう。
彼らは二男アルブレヒトが生まれた頃から完全に別居し、
ほぼ絶縁も同然の状態であったと思われる。
ミレーヌがルーペルトを身籠ったと推測されるのはそれから三年後。
おそらくは第二次性徴を迎え、女性の身体へと変化しつつあった義妹に
手を出し始めた夫の姿を知ったフェリシテが、堪え切れずに
子供たちを連れ田舎の領地へ引き払ったものと思われる。
金の髪に碧の瞳、『“典型的なヴィラール皇族の容姿”を持った最後の皇族』
と言われる庶子ルーペルトは、その障害故か一人の子も残さぬままこの世を去る。
と言われる庶子ルーペルトは、その障害故か一人の子も残さぬままこの世を去る。
かくしてヴィラール帝国初代皇朝の皇族の容貌は失われ、
以後はごく稀に一部の皇族に碧の瞳が見られるのみとなった。
→後書き
追記を閉じる▲