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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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On The Pallete』番外SSS。本編より少し未来のクリスマス。

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「8切り」
 
「うわー、やられた!」
 
「クソ、出しときゃ良かった……」
 
「えっと……ええっと」
 
チカチカと煌めくツリーのすぐ傍で、わいわいと賑やかな声が響いている。
甘い香りの漂い始めたオーブンを覗き込みながら、
 
「少しは手伝ってくれても良いのになぁ……」
 
と呟いてみるも、頬は少しだけ緩んでしまう。
トランプを手にコタツの四方を囲んでいるのは、姉の月子、その恋人で幼馴染の紅登くん、紅登くんの弟の青斗くん、そして従姉の雪美ちゃん。全員が揃うのは久しぶりなのだ。過去に遡れば青斗くんと雪美ちゃんは元彼氏彼女で、別れた理由が青斗くんの姉への告白のためだった、という複雑な関係性を帯びたわたしたちでもあるのだから。
 
「革命」
 
「えええ本気!?」
 
「死んだ……オレ死んだわ」
 
「青斗先輩、イジワル過ぎませんかぁ?」
 
項垂れる皆をよそに一人顔色の変えない彼を見て、勝負の行方は既に決まったようなものだ、と苦笑する。昔から、青斗くんに勝てる人間はいなかった――と言い切ってしまえば、贔屓が過ぎると姉から小言を頂戴してしまうだろうか。
 
「上がり。月子、約束だよ。三回連続大富豪になったら連れ出して良いんだろ?」
 
「……門限、破んないでよ」
 
青斗くんを睨みながら唇を尖らせると、姉はカードを放り出し天板に突っ伏してしまった。
 
「オイ月子! まだゲーム終わってねぇだろ! 
オレ大貧民脱したいんだよ、最後まで付き合えよー!」
 
姉の頭を小突きながら文句を言う紅登くんに、雪美ちゃんはクスクスと笑っている。
彼女の瞳がチラリと私に向けられて――そうして優しく、頷かれてしまった。
 
「花香、行こう。お許しが出た」
 
戸惑うように動きを止めれば、いつの間にかすぐ傍まで来ていた青斗くんが、
ミトンを嵌めたわたしの手を捉えた。
 
「え……でも、まだケーキ」
 
「そんなの、あいつらにやらせりゃいいって」
 
いつものごとく辛辣な言い合いを始めた姉と紅登くんを見やり、悪戯に微笑む彼の表情(かお)に、頬が、耳が、体中が熱を帯びていく。
 
「待ってて……着替えてくる」
 
慌ててミトンを外し、エプロンを引っぺがすと、わたしは慌てて自分の部屋へと駆け出した。今日はクリスマスイヴ。青斗くんに気持ちを伝えてから初めての――














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一番トランプやる姿が想像つく面子がコレだったので久々に書いてみました。
くっついてんのかどうなのか微妙なとこがミソ?です・・・(^^;
季節ものだし独立したネタで書くべきだったかなー。
でも楽しかった!@自己満足\(^O^)/


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第六話。それぞれの結末。

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青斗くんの姉への告白によって、わたしたちの歪な関係は終わりを迎えた。
様々な色が複雑に混じり合い、いつしか汚らしく汚れてしまった
パレットの上の絵具は美しいままの色も含めて全て洗い流され、
パレット自体も既にどこにあるか分からないような状態になってしまった。
 
青斗くんの告白に姉は大いに戸惑い、けれどハッキリと彼を拒絶した。
ところがその後、姉は遠方の大学への進学が決まった紅登くんとも気まずくなり
(どうやら別れを切り出されたらしい)しばらくの間塞ぎ込んだ状態が続いた。
彼ら兄弟が我が家に顔を覗かせることは無く、朝、玄関先で出くわそうものなら
それはそれは張り詰めた重い空気が、辺りを濁らせたものだった。
それが変わったのは、いつからだったのだろう?
姉への想いに気づいた青斗くんは雪美ちゃんと別れ、
彼女が青斗くんと連れだって遊びに来ることもなくなった。
(存外サッパリした別れだった、とは聞いているけれど)
姉が元の彼氏である紅登くんにきちんと気持ちを伝えるべく行動を起こしたのは、
そんな青斗くんへの姉なりのけじめというものだったのかもしれない。
姉の告白に紅登くんはたじろぎ、心底驚いた様子だったそうなのだが、
結局やっとのことで互いの本心を伝え合った二人は元の鞘に収まり、
姉は紅登くんの進学先と同じ土地の大学に進路を定めた。
新しいパレットの上にはまた綺麗な絵具が均一に並び始めた。
パレットが新しく生まれ変わったのだ。
絵筆もまた、きちんと濯がなければならないだろう。


~~~
 
 
「合格発表、付き合ってもらっちゃってごめんね」
 
まだ吐く息の白い早春の日、F高の合格発表を見に行くわたしの傍に
付き添ってくれたのは、両親でも姉でもなく青斗くんだった。
 
「ははっ、いいよ。月子アレだろ? 『自分の発表より緊張して見に行けない!』
私立の入試のときもそうだったもんなぁ」
 
彼の口から久方ぶりに姉の名がこぼれたのを聞いて目を見開いたわたしに、
彼は少し気まずそうに苦笑してみせた。
 
「……何だ、やっぱり気づかれてたか。そりゃ気づくよな、あんだけ気まずくなれば」
 
「う、ううん……」
 
わたしが慌てて首を振ると、彼はまた少し切なそうな、
けれど以前とは違い何か憑きものが落ちたかのような微笑を浮かべた。
 
「大丈夫、もう結構吹っ切れてるつもりなんだ。
二人も仲直りしたことだし、あれから大分時間も経ってるし」
 
「無理……してない?」
 
問いかけたわたしの前に、そっと差し出された冷たい手。
いつも頭を撫でてくれる、節くれだった暖かい手とは少し違う、
泣きたくなるくらい愛しい彼の手。わたしはこの手が欲しい。
姉が振り払ったこの手を、長い間求め続けている人間がいるのだということに気づいてほしい。
控えめに繋がれた彼の手の感触に、わたしは己が心の奥に抱き続けた本当の願いを知った。
 
「ねぇ、青斗くん。高校に合格したら、聞いてほしいことがあるんだ。言ってもいい?」
 
「何だ? 無茶なお願いじゃなかったら聞いてやるよ」
 
若干勘違いした彼の返事を訂正することなく、わたしは笑顔で歩みを進める。
真っさらなパレットの上で、わたしたちは新しい色を作る。
二度と同じ色が作れないからこそ、小さなパレットが、絵具たちが愛おしい。
そんな単純なことに、わたしはようやく気づいたのだから。





後書き
    番外編:Christmas Colors
 


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第五話。青斗視点。

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兄の進学先が決まった。
遠方にある有名な体育大学の特待生を推薦で勝ち取った兄は、
直前までの迷いが嘘のように誇らしげに笑っていた。
月子と、何かあったのだろうか?
長年の幼なじみでもある兄の恋人のことを思い、
込み上げてくるのは心配だけでは括れぬ苛立ちと焦り。
オレがずっと、見てみぬふりをしてきたもの。
心の奥深く、鍵を掛けて閉じ込めて――
そんな気持ちを誤魔化すかのように、オレは思わず携帯を握りしめ、
見慣れた番号の発信ボタンを押していた。
 
『わっ、先輩! どうしたんですか? 電話なんて珍しい』
 
「ちょっと“大切な彼女の声が聞きたくなった”の。どう? 今度は合格?」
 
『バッチリです! もうワタシ今顔ゆでダコですよぉ』
 
受話器の向こうから聞こえてくる明るい声の持ち主は、一つ年下の雪美。
オレの“彼女”で、幼なじみの二人の従姉妹。
口元と輪郭が少しだけ、月子に似ている――
そこまで考えて、オレはハッとして現実に戻った。
 
「ははっ、それは見てみたかったな。ゆでダコの雪美」
 
どうにか上滑りな言葉を吐き出した俺に、彼女は不自然な間には
少しも触れることなく、いつものように朗らかな返事を返してくる。
 
『もう、冗談言わないでくださいよぉ~!』
 
オレは、彼女を利用している。何のためにかは分からない。
いいや、本当は解っていて、気づきたくない。
彼女の好意を欺いて、尊敬する兄を欺いて、そして幼なじみを――
耐えきれなくなって、オレはとうとう告げた。
 
「なぁ、雪美。大事な話が、あるんだ……」

~~~
 
雪美との通話を終え、カラカラに喉を乾かしたオレがキッチンに向かうと、
そこには今まさにシャワーを浴びてきたばかり、といった風体の兄が
ゴクゴクとペットボトルの炭酸飲料に口を付ける姿があった。
 
「あー、もうまた……。オレも飲みたかったのに、それ」
 
「先に手を付けない方が悪い」
 
俺の小言に常の如く傍若無人な理論を展開する兄に、
溜息を吐きながら仕方なく冷蔵庫の中のミネラルウォーターを取り出す。
透明な水をコップに注ぎながら、俺の口からは兄への問いがポツリとこぼれた。
 
「なぁ紅登、大学決まったのはめでたいけど、おまえ月子のことはどうすんの?
月子、まだ志望校決めてないみたいだけど……
少なくとも一年は、遠恋になるわけじゃん」
 
「……おまえは、どうすればいいと思う?
俺が月子に、付いてきてくれ、って言えばいいと思う?
それとも俺が……いっそ月子と、別れればいいと思う?」
 
炭酸飲料を飲み干し、ボトルを投げ捨てた兄の鋭い眼差しが己を射た瞬間。
俺はこれ以上抑えようのない自分の想いを知った。
兄がその想いに気づいていることを知った。
 
「オレには……分かんないよ。二人が話し合って決めることだから」
 
それなのに、口にできたのはまた偽りの言葉。自分自身すらも欺く言葉。
 
「そうか。なら俺は月子に言うよ。傍にいてくれ、って」
 
少し俯いたオレに向かい、挑発的にぶつけられた返事。
月子が、いなくなってしまう? 紅登と一緒に、オレを置いて。
いつも傍にいた。例え彼女の瞳が俺に向けられることはなくとも、
隣にいたのはいつも俺のはずだった。ところが一年前、紅登が彼女に
告白してからは、その隣すらもオレのものではなくなりつつある。
彼女の眼差しを、心を独り占めにして、その上隣まで奪っていった兄が、
今度は完全に俺の目の前から彼女を連れ去ってしまおうとしている。
俺は初めて、実の兄に憎しみを抱いた。そんな自分の、醜い感情に気づいた。
思わず顔を上げ、睨みつけたオレを嘲笑うかのように兄が呟く。
 
「……こえー顔」
 
オレは家を飛び出した。
目指すのは馴染み深い隣家、ようやくその存在に気づいた想い人の元。
変えてやる。残らず洗い落としてやる。
例え二度と同じ色が作れなくても、オレは後悔なんかしない。
穏やかな幼なじみの関係も、見ているだけだった自分自身も、それから全て――
もう戻れない。解っていて、オレはパレットの上を空にすることに決めたのだ。


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第四話。雪美視点。

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ワタシは知っている。
小さなパレットの上に均等に並べられた絵具のような四人の関係に、
僅かな綻びが生じていることを。
その綻びに入り込んだ異物が、他ならぬワタシ自身だということを。
 
「それじゃあ今日は本当にお世話になりました。
どうもありがとう、月子ちゃん、ハナちゃん、紅登さん」
 
「解らないことがあったらまたいつでも聞いて」
 
「また遊びに来てねー!」
 
「……チッス」
 
従姉妹二人と紅登さんに頭を下げたワタシを、玄関で待っていてくれたのは青斗先輩。
従姉妹たちの幼なじみで、ワタシの高校の先輩、そして“彼氏”だ。
 
「先輩、今日も送ってってくれるんですかー? わぁい、やったー♪」
 
外に出て前を歩き出した彼に、後ろから抱きついて腕を絡める。
一瞬ビクリと引かれた腕は、だが決して振りほどかれることはない。
 
「こんな時間に女の子一人じゃ、危ないだろ?」
 
そっけなく答える彼の言葉に、少しだけ唇を尖らせてかたちばかりの文句を言う。
 
「えーっ、そこはフツウ、大事な彼女を一人で帰らせるのが心配だから、
って答えるもんですよぅ!」
 
「ははっ、なら言ってあげるよ。
『大事な彼女を一人で帰らせるのが心配だから』、どう? 満足した?」
 
「えーっ! ちっとも気持ちが籠もってなぁい!」
 
ワタシの言葉に悪戯に微笑んでみせた彼に、頬を染めながらポカポカと
その腕を叩いても彼は一向に意に介する風も無く淡々と歩みを進める。
本当に、ただの“義務”みたい。
いつもと同じ、静かな帰り道。二人でいても決して険悪な雰囲気に
なることは無いが、特にドキドキするようなことも起こらない。
何故なら彼の瞳はいつでも、私を映してはいないから。どこか遠くを見ているから。
 
「あっ、見て先輩、今日は綺麗な満月……」
 
ワタシの言葉に、今度こそ何も答えなかった彼は、既に夜空の上をじっと見上げていた。
暗闇に優しい光を放つ、黄金色の丸い月。
一目惚れの衝動がなせる業だったあの告白に承諾の返事をもらい、
有頂天になっていた頃は気づかなかった、彼の視線の先。
それを、今のワタシは知っている。
月子ちゃん――美しく聡明な、憧れの従姉。彼の幼なじみにして、お兄さんの恋人。
彼女を通じて彼と知り合い、そして付き合うようになって、お兄さんを紹介されて。
小さなパレットの上に乗せられて、ワタシはようやく知ったのだ。
青斗先輩の本当の気持ちも、その気持ちに気づきながら
長年に渡り彼を見つめ続けてきたあの子の気持ちも。
ああ、邪魔者はワタシだった。
ワタシが彼と出会わなければ、ワタシが彼に告白なんかしなければ……!
 
「あぁゴメン、今なにか言った?」
 
緩んだ腕の力のためか、虚空を見上げていた彼がワタシの方に眼差しを向ける。
偽りだっていい、ずるくたって仕方がない。
ワタシはこの人が欲しい。この人の、傍にいたい。
 
「何でもないです、先輩」
 
にっこりと微笑んだワタシに、先輩もゆっくりと笑い、ワタシたちは美しい月に背を向けた。
パレットの上で、ワタシは青にだけ染まりたい。




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第三話。月子視点。

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本当は嫉妬しているのに、それをちっとも素直に伝えられない。
今だって、花香にかこ付けて一方的に怒ってしまった。
紅登はいつだって、妹にばかり優しい。
私にはすぐに文句を言って、いつも喧嘩になってしまうのに。
花香にはどんなときでも、柔らかい言葉と暖かい手を差し伸べる。
羨ましい。妬ましい。
大切な妹に向かってそんな感情を抱く自分が嫌で嫌で堪らなかった。
だから、彼から好きだと告げられたとき、
自分は夢を見ているのではないか、という気分になった。
いつかこの夢は覚めてしまうのではないか、
彼は、本当は花香のように可愛らしい少女の方が好きなのではなかったか?
付き合い始めて一年が経った今でも、疑ってしまう。嫉妬してしまう。
花香、やめて。紅登と同じ高校なんか行かないで。私から彼を奪わないで!
 
「月子ちゃん、どうしたの?」
 
いつの間にか思考の淵に沈んでいたのか、心配そうに掛けられた声に顔を上げると
今の今まで勉強を教えていた従妹が驚いたようにこちらを覗きこんでいた。
 
「ううん、何でもない。どこまでやったっけ?」
 
明るく声を上げると、傍らにいた幼なじみが苦笑して答える。
 
「問五の(一)までだよ。ここは文法がこうなるから……」
 
引き続き解説を始めた幼なじみと、ふんふんと頷いてみせる彼女を見て、
素直に“お似合いだな”と感じる。
私と紅登も、そう思われているのだろうか?いいや、それは無いだろう。
見るからに体育会系の黒髪にスポーツ刈りの紅登、
進学校故の緩やかな校則の恩恵をもろに享受した見た目の私。
並んでいてもどこかちぐはぐだし、そもそもこの二人のように向かい合って
過ごす穏やかな時間、というのを紡いだことは一度も無い。
キスも、その先も辿り着きはしたけれど、
どちらもお互いに強情を張った末の半ばやけっぱち的な状況で、
何となくステップを上って来ただけのような気がする。
私は紅登に触れるとき、この上もない幸せを感じているのだけれど、
紅登の方は果たしてどうなのだろうか。私と一緒にいて、
“楽しい”とか、“嬉しい”とかいう気持ちを抱いてくれているのだろうか?
いつも仏頂面で口を開けば皮肉しか飛び出さない二人の関係を、
どう思っているのだろうか?それを知るのが堪らなく怖い。
これほど可愛げのない私に、紅登がいつ愛想を尽かしてしまうのか、
不安で不安で堪らない。それでなくとも今、高校三年生の紅登には
遠方の大学からのスポーツ推薦の話が持ち上がっている。
紅登は、まだ迷っているらしい。ここを離れるかどうか。
私と……花香の傍を離れるかどうか。本当は「行かないで」と叫びたい。
それとも、私に「一緒に来い」と告げてくれたなら――
花香のいない場所で、私はようやく素直になることができるかもしれない。
紅登に、きちんと好きだと伝えられるかもしれない。
縋るように視線を滑らせた先で、彼はまた愛おしそうに妹の頭を撫でていた。
私は唇を噛みしめた。
パレットの上に広がった汚らしい染みは、洗っても洗っても、中々落ちることは無い。





White


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