忍者ブログ
ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


水晶の夏』・『金剛石の冬』シャルロット視点SSS。
拍手ログです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



大切な家族。お父様と、お母様と、それからルイーズとエミール。
今度はもう一人増えることになったの、それがあなたよ、アルマン。
花が咲き、鳥が歌う春、私はあなたに出会った。私の旦那さまになる人。
これでもうお父様にご心配をおかけすることも、ルイーズに憂い顔をさせることもない。
エミールに、ずっと笑顔でいてもらえる。
エミールと私とルイーズ、ずっと仲良しでいられるわよね?
アルマンはとても良い人よ。
ハンサムで、優しくて、いつも穏やかな瞳で私を見つめてくれる。
彼が私に恋をしていないことは知ってるの。
でも、結婚に恋なんか必要ない、ってお母様がおっしゃっていたから。
私たち、きっと良い夫婦になれると思うわ。お父様とルイーズのように。


~~~


ルイーズ、あなたに出会ったのも緑輝き、透きとおるせせらぎが流れゆく春だったわね。
初めて見たとき、お人形さんのように可愛らしい人だと思ったわ。
私にはきょうだいがいなかったから、それこそお姉さまのように思って、
いつも後を追いかけていた。

あれはもう、十年以上前のことになるかしら?
ルイーズとしばらく会えない日が続いて、ようやくお城にやってきたとき。
ルイーズは薄汚れた人形を大事そうに抱えて、隅の方に蹲っていた。
悲しそうな顔で、口を引き結んで、私が話しかけても、少しも応えてくれなかった。
笑って、くれなかった。だから私まで悲しくなって。
ルイーズを悲しくさせているのは、あのお人形のせいだと思ったの。
ただ、笑ってほしかっただけなの。
ルイーズのお母様が亡くなったことを教えられたのは、
ルイーズが壊れたお人形を手に泣きながら部屋を出て行った後だった。
ルイーズはそれから半年間、一度も城へは来なかった。

ルイーズに謝らなくちゃ、何とかして元気を出してもらわなくちゃ、
そう思っていた私が新しいお人形を用意してルイーズを待っていたあの日。
現れた彼女は笑っていた。
お母様のことなんて、お人形のことなんて少しも覚えていないかのように、
朗らかに笑い、私に旅先でお父様に買ってもらったのだという宝物をくれた。
綺麗な翡翠の耳飾り。

『ルイーズのものじゃないの? いいの?』

と聞くと、ルイーズは首を振って

『わたくしは別のものをいただきましたから、それは姫様に差し上げます』

と少し寂しそうに微笑んだ。

それから、私のお母様が亡くなったとき。
ルイーズは私をそっと抱きしめて、傍にいてくれた。
そんなルイーズがお父様の後添えに立たれると決まったとき、
私は余りにも嬉しくて、思わず城にやってきたあなたに飛びついてしまった。
ルイーズが新しいお母様になったことも、
念願のきょうだいが生まれたこともとてもとても嬉しくて、幸せで。
温かい春の日のようなこの幸せを壊したくなくて、アルマンとの結婚を決めたのです。

それなのに、何故かしら?
ルイーズ、あなたの瞳がまた、悲しみに陰って見える。
アルマン、あなたの唇からもまた、溜息が逃げていく。
私はまた何か間違えてしまったのかしら?
あのお人形を壊しては、あの翡翠を受け取ってはいけなかった?
ただ、幸せになりたかっただけなのに。ただ、皆に幸せでいてほしかっただけなのに。







ブログ初出2009/6/9

黄玉の秋(国王視点。拍手ログ)

拍手[0回]

PR


追記を閉じる▲

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



大切な家族。お父様と、お母様と、それからルイーズとエミール。
今度はもう一人増えることになったの、それがあなたよ、アルマン。
花が咲き、鳥が歌う春、私はあなたに出会った。私の旦那さまになる人。
これでもうお父様にご心配をおかけすることも、ルイーズに憂い顔をさせることもない。
エミールに、ずっと笑顔でいてもらえる。
エミールと私とルイーズ、ずっと仲良しでいられるわよね?
アルマンはとても良い人よ。
ハンサムで、優しくて、いつも穏やかな瞳で私を見つめてくれる。
彼が私に恋をしていないことは知ってるの。
でも、結婚に恋なんか必要ない、ってお母様がおっしゃっていたから。
私たち、きっと良い夫婦になれると思うわ。お父様とルイーズのように。


~~~


ルイーズ、あなたに出会ったのも緑輝き、透きとおるせせらぎが流れゆく春だったわね。
初めて見たとき、お人形さんのように可愛らしい人だと思ったわ。
私にはきょうだいがいなかったから、それこそお姉さまのように思って、
いつも後を追いかけていた。

あれはもう、十年以上前のことになるかしら?
ルイーズとしばらく会えない日が続いて、ようやくお城にやってきたとき。
ルイーズは薄汚れた人形を大事そうに抱えて、隅の方に蹲っていた。
悲しそうな顔で、口を引き結んで、私が話しかけても、少しも応えてくれなかった。
笑って、くれなかった。だから私まで悲しくなって。
ルイーズを悲しくさせているのは、あのお人形のせいだと思ったの。
ただ、笑ってほしかっただけなの。
ルイーズのお母様が亡くなったことを教えられたのは、
ルイーズが壊れたお人形を手に泣きながら部屋を出て行った後だった。
ルイーズはそれから半年間、一度も城へは来なかった。

ルイーズに謝らなくちゃ、何とかして元気を出してもらわなくちゃ、
そう思っていた私が新しいお人形を用意してルイーズを待っていたあの日。
現れた彼女は笑っていた。
お母様のことなんて、お人形のことなんて少しも覚えていないかのように、
朗らかに笑い、私に旅先でお父様に買ってもらったのだという宝物をくれた。
綺麗な翡翠の耳飾り。

『ルイーズのものじゃないの? いいの?』

と聞くと、ルイーズは首を振って

『わたくしは別のものをいただきましたから、それは姫様に差し上げます』

と少し寂しそうに微笑んだ。

それから、私のお母様が亡くなったとき。
ルイーズは私をそっと抱きしめて、傍にいてくれた。
そんなルイーズがお父様の後添えに立たれると決まったとき、
私は余りにも嬉しくて、思わず城にやってきたあなたに飛びついてしまった。
ルイーズが新しいお母様になったことも、
念願のきょうだいが生まれたこともとてもとても嬉しくて、幸せで。
温かい春の日のようなこの幸せを壊したくなくて、アルマンとの結婚を決めたのです。

それなのに、何故かしら?
ルイーズ、あなたの瞳がまた、悲しみに陰って見える。
アルマン、あなたの唇からもまた、溜息が逃げていく。
私はまた何か間違えてしまったのかしら?
あのお人形を壊しては、あの翡翠を受け取ってはいけなかった?
ただ、幸せになりたかっただけなのに。ただ、皆に幸せでいてほしかっただけなのに。







ブログ初出2009/6/9

黄玉の秋(国王視点。拍手ログ)

拍手[0回]

PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック