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大切な家族。お父様と、お母様と、それからルイーズとエミール。
今度はもう一人増えることになったの、それがあなたよ、アルマン。
花が咲き、鳥が歌う春、私はあなたに出会った。私の旦那さまになる人。
これでもうお父様にご心配をおかけすることも、ルイーズに憂い顔をさせることもない。
エミールに、ずっと笑顔でいてもらえる。
エミールと私とルイーズ、ずっと仲良しでいられるわよね?
アルマンはとても良い人よ。
ハンサムで、優しくて、いつも穏やかな瞳で私を見つめてくれる。
彼が私に恋をしていないことは知ってるの。
でも、結婚に恋なんか必要ない、ってお母様がおっしゃっていたから。
私たち、きっと良い夫婦になれると思うわ。お父様とルイーズのように。
~~~
ルイーズ、あなたに出会ったのも緑輝き、透きとおるせせらぎが流れゆく春だったわね。
初めて見たとき、お人形さんのように可愛らしい人だと思ったわ。
私にはきょうだいがいなかったから、それこそお姉さまのように思って、
いつも後を追いかけていた。
あれはもう、十年以上前のことになるかしら?
ルイーズとしばらく会えない日が続いて、ようやくお城にやってきたとき。
ルイーズは薄汚れた人形を大事そうに抱えて、隅の方に蹲っていた。
悲しそうな顔で、口を引き結んで、私が話しかけても、少しも応えてくれなかった。
笑って、くれなかった。だから私まで悲しくなって。
ルイーズを悲しくさせているのは、あのお人形のせいだと思ったの。
ただ、笑ってほしかっただけなの。
ルイーズのお母様が亡くなったことを教えられたのは、
ルイーズが壊れたお人形を手に泣きながら部屋を出て行った後だった。
ルイーズはそれから半年間、一度も城へは来なかった。
ルイーズに謝らなくちゃ、何とかして元気を出してもらわなくちゃ、
そう思っていた私が新しいお人形を用意してルイーズを待っていたあの日。
現れた彼女は笑っていた。
お母様のことなんて、お人形のことなんて少しも覚えていないかのように、
朗らかに笑い、私に旅先でお父様に買ってもらったのだという宝物をくれた。
綺麗な翡翠の耳飾り。
『ルイーズのものじゃないの? いいの?』
と聞くと、ルイーズは首を振って
『わたくしは別のものをいただきましたから、それは姫様に差し上げます』
と少し寂しそうに微笑んだ。
それから、私のお母様が亡くなったとき。
ルイーズは私をそっと抱きしめて、傍にいてくれた。
そんなルイーズがお父様の後添えに立たれると決まったとき、
私は余りにも嬉しくて、思わず城にやってきたあなたに飛びついてしまった。
ルイーズが新しいお母様になったことも、
念願のきょうだいが生まれたこともとてもとても嬉しくて、幸せで。
温かい春の日のようなこの幸せを壊したくなくて、アルマンとの結婚を決めたのです。
それなのに、何故かしら?
ルイーズ、あなたの瞳がまた、悲しみに陰って見える。
アルマン、あなたの唇からもまた、溜息が逃げていく。
私はまた何か間違えてしまったのかしら?
あのお人形を壊しては、あの翡翠を受け取ってはいけなかった?
ただ、幸せになりたかっただけなのに。ただ、皆に幸せでいてほしかっただけなのに。
ブログ初出2009/6/9
→黄玉の秋(国王視点。拍手ログ)
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大切な家族。お父様と、お母様と、それからルイーズとエミール。
今度はもう一人増えることになったの、それがあなたよ、アルマン。
花が咲き、鳥が歌う春、私はあなたに出会った。私の旦那さまになる人。
これでもうお父様にご心配をおかけすることも、ルイーズに憂い顔をさせることもない。
エミールに、ずっと笑顔でいてもらえる。
エミールと私とルイーズ、ずっと仲良しでいられるわよね?
アルマンはとても良い人よ。
ハンサムで、優しくて、いつも穏やかな瞳で私を見つめてくれる。
彼が私に恋をしていないことは知ってるの。
でも、結婚に恋なんか必要ない、ってお母様がおっしゃっていたから。
私たち、きっと良い夫婦になれると思うわ。お父様とルイーズのように。
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ルイーズ、あなたに出会ったのも緑輝き、透きとおるせせらぎが流れゆく春だったわね。
初めて見たとき、お人形さんのように可愛らしい人だと思ったわ。
私にはきょうだいがいなかったから、それこそお姉さまのように思って、
いつも後を追いかけていた。
あれはもう、十年以上前のことになるかしら?
ルイーズとしばらく会えない日が続いて、ようやくお城にやってきたとき。
ルイーズは薄汚れた人形を大事そうに抱えて、隅の方に蹲っていた。
悲しそうな顔で、口を引き結んで、私が話しかけても、少しも応えてくれなかった。
笑って、くれなかった。だから私まで悲しくなって。
ルイーズを悲しくさせているのは、あのお人形のせいだと思ったの。
ただ、笑ってほしかっただけなの。
ルイーズのお母様が亡くなったことを教えられたのは、
ルイーズが壊れたお人形を手に泣きながら部屋を出て行った後だった。
ルイーズはそれから半年間、一度も城へは来なかった。
ルイーズに謝らなくちゃ、何とかして元気を出してもらわなくちゃ、
そう思っていた私が新しいお人形を用意してルイーズを待っていたあの日。
現れた彼女は笑っていた。
お母様のことなんて、お人形のことなんて少しも覚えていないかのように、
朗らかに笑い、私に旅先でお父様に買ってもらったのだという宝物をくれた。
綺麗な翡翠の耳飾り。
『ルイーズのものじゃないの? いいの?』
と聞くと、ルイーズは首を振って
『わたくしは別のものをいただきましたから、それは姫様に差し上げます』
と少し寂しそうに微笑んだ。
それから、私のお母様が亡くなったとき。
ルイーズは私をそっと抱きしめて、傍にいてくれた。
そんなルイーズがお父様の後添えに立たれると決まったとき、
私は余りにも嬉しくて、思わず城にやってきたあなたに飛びついてしまった。
ルイーズが新しいお母様になったことも、
念願のきょうだいが生まれたこともとてもとても嬉しくて、幸せで。
温かい春の日のようなこの幸せを壊したくなくて、アルマンとの結婚を決めたのです。
それなのに、何故かしら?
ルイーズ、あなたの瞳がまた、悲しみに陰って見える。
アルマン、あなたの唇からもまた、溜息が逃げていく。
私はまた何か間違えてしまったのかしら?
あのお人形を壊しては、あの翡翠を受け取ってはいけなかった?
ただ、幸せになりたかっただけなのに。ただ、皆に幸せでいてほしかっただけなのに。
ブログ初出2009/6/9
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