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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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水晶の夏』・『金剛石の冬』・『黄玉の秋』占い師視点続編SSS。
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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



全てを失ったのは突然だった。
恋も、家族も、幸せも全て。
ただ彼に恋をしたというだけで。
彼が、王に選ばれたというだけで。

愛していた。指輪を嵌めた手がこの上もなく嬉しかった。
家族と共に寒々しい荒野の地へ送られ、都で行われた華やかな国王夫妻の
結婚式の様子を伝え聞いた時も、この指輪があれば生きていけると思った。
母は心労で亡くなり、父は酒浸りになり、
貴族の娘とは思えない生活に耐え忍んでいた日々。
王女を生まれた妃殿下がお亡くなりになったと聞いたときも、
本当にお気の毒に思った。そう、思おうとしていた。
あの男が私を訪ねてきたのは、その頃だった。


~~~


「国王陛下の後添えを我が国の貴族から立てることに決まりました。
十六歳のモントロン公爵令嬢がほぼ確定されているようです。
お悔しくはありませんか?
隣国から妃殿下を迎えるという理由で、あなたはお払い箱になられたのに、
今度は自国の若いご令嬢をお妃に据えようというのですよ?
第一、昔の恋人であられたあなたに陛下は何もして下さらない。
ご一家のこの窮状を、陛下は見て見ぬふりをなさっているのかもしれない」

全てを信じたわけではないのに、その男の口車に乗せられてしまったのは、
私の中に彼への憎しみが、恨みが宿っていたということなのだろうか。
黄玉はいつのまにか色褪せて、偽物へと変貌を遂げてしまった。


~~~


男の命ずるまま、評判の占い師としてルイーズに近づいた私は、計画通り
彼女を使ってシャルロットを殺し、シェフェール公爵をも追い込んだ。
寂しそうに微笑うルイーズ、無邪気に笑うシャルロット。
哀れな結末を迎えた二人の女。愛した男の妃と娘。
私は二人を憎んでいるはずだった。恨んでいるはずだった。



夕闇の中、黄玉に口づける王の姿に、私は真の過ちを知った。

「国王陛下」

私は歩み出た。
城に出入りするようになってからいつも身につけていた
深いフードの付いたマントを取り払い、素顔をさらして。
彼はこちらを振り向き、私を見て驚愕に言葉を失った。

「お伝えしなければならぬことがございます。
妃殿下に王女殿下の殺害を唆したのは……」

「やめろ」

跪いて彼を見上げた私の言を、彼は絞り出すような声で止めた。

「何があっても…何をされても……そなただけは恨めぬ。
私におまえを……いや、これ以上誰も、憎ませないでくれ」


~~~


城を去った私は酒に溺れる父の酒瓶に毒を盛った。
父がその酒瓶を口にしたのを目にした後、自らもその酒を杯に注いだ。

偽っていたのは私の方。
憎んでいないふり。憎んでいるふり。
捨てたふり。捨てていないふり。
名前も、姿も、感情すらも、私は“本物”を忘れてしまった。
春も夏も秋も冬も、あなたと離れてから、いつも己を偽って生きてきた。
だから、水晶も金剛石も翡翠も何も持たない女は、
かつて手放した黄玉によく似たまがい物の指輪を手にこの世を去る。

「さようなら、ごめんなさい……」






ブログ初出2009/6/9

後書き

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全てを失ったのは突然だった。
恋も、家族も、幸せも全て。
ただ彼に恋をしたというだけで。
彼が、王に選ばれたというだけで。

愛していた。指輪を嵌めた手がこの上もなく嬉しかった。
家族と共に寒々しい荒野の地へ送られ、都で行われた華やかな国王夫妻の
結婚式の様子を伝え聞いた時も、この指輪があれば生きていけると思った。
母は心労で亡くなり、父は酒浸りになり、
貴族の娘とは思えない生活に耐え忍んでいた日々。
王女を生まれた妃殿下がお亡くなりになったと聞いたときも、
本当にお気の毒に思った。そう、思おうとしていた。
あの男が私を訪ねてきたのは、その頃だった。


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「国王陛下の後添えを我が国の貴族から立てることに決まりました。
十六歳のモントロン公爵令嬢がほぼ確定されているようです。
お悔しくはありませんか?
隣国から妃殿下を迎えるという理由で、あなたはお払い箱になられたのに、
今度は自国の若いご令嬢をお妃に据えようというのですよ?
第一、昔の恋人であられたあなたに陛下は何もして下さらない。
ご一家のこの窮状を、陛下は見て見ぬふりをなさっているのかもしれない」

全てを信じたわけではないのに、その男の口車に乗せられてしまったのは、
私の中に彼への憎しみが、恨みが宿っていたということなのだろうか。
黄玉はいつのまにか色褪せて、偽物へと変貌を遂げてしまった。


~~~


男の命ずるまま、評判の占い師としてルイーズに近づいた私は、計画通り
彼女を使ってシャルロットを殺し、シェフェール公爵をも追い込んだ。
寂しそうに微笑うルイーズ、無邪気に笑うシャルロット。
哀れな結末を迎えた二人の女。愛した男の妃と娘。
私は二人を憎んでいるはずだった。恨んでいるはずだった。



夕闇の中、黄玉に口づける王の姿に、私は真の過ちを知った。

「国王陛下」

私は歩み出た。
城に出入りするようになってからいつも身につけていた
深いフードの付いたマントを取り払い、素顔をさらして。
彼はこちらを振り向き、私を見て驚愕に言葉を失った。

「お伝えしなければならぬことがございます。
妃殿下に王女殿下の殺害を唆したのは……」

「やめろ」

跪いて彼を見上げた私の言を、彼は絞り出すような声で止めた。

「何があっても…何をされても……そなただけは恨めぬ。
私におまえを……いや、これ以上誰も、憎ませないでくれ」


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城を去った私は酒に溺れる父の酒瓶に毒を盛った。
父がその酒瓶を口にしたのを目にした後、自らもその酒を杯に注いだ。

偽っていたのは私の方。
憎んでいないふり。憎んでいるふり。
捨てたふり。捨てていないふり。
名前も、姿も、感情すらも、私は“本物”を忘れてしまった。
春も夏も秋も冬も、あなたと離れてから、いつも己を偽って生きてきた。
だから、水晶も金剛石も翡翠も何も持たない女は、
かつて手放した黄玉によく似たまがい物の指輪を手にこの世を去る。

「さようなら、ごめんなさい……」






ブログ初出2009/6/9

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