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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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第四話。雪美視点。


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ワタシは知っている。
小さなパレットの上に均等に並べられた絵具のような四人の関係に、
僅かな綻びが生じていることを。
その綻びに入り込んだ異物が、他ならぬワタシ自身だということを。
 
「それじゃあ今日は本当にお世話になりました。
どうもありがとう、月子ちゃん、ハナちゃん、紅登さん」
 
「解らないことがあったらまたいつでも聞いて」
 
「また遊びに来てねー!」
 
「……チッス」
 
従姉妹二人と紅登さんに頭を下げたワタシを、玄関で待っていてくれたのは青斗先輩。
従姉妹たちの幼なじみで、ワタシの高校の先輩、そして“彼氏”だ。
 
「先輩、今日も送ってってくれるんですかー? わぁい、やったー♪」
 
外に出て前を歩き出した彼に、後ろから抱きついて腕を絡める。
一瞬ビクリと引かれた腕は、だが決して振りほどかれることはない。
 
「こんな時間に女の子一人じゃ、危ないだろ?」
 
そっけなく答える彼の言葉に、少しだけ唇を尖らせてかたちばかりの文句を言う。
 
「えーっ、そこはフツウ、大事な彼女を一人で帰らせるのが心配だから、
って答えるもんですよぅ!」
 
「ははっ、なら言ってあげるよ。
『大事な彼女を一人で帰らせるのが心配だから』、どう? 満足した?」
 
「えーっ! ちっとも気持ちが籠もってなぁい!」
 
ワタシの言葉に悪戯に微笑んでみせた彼に、頬を染めながらポカポカと
その腕を叩いても彼は一向に意に介する風も無く淡々と歩みを進める。
本当に、ただの“義務”みたい。
いつもと同じ、静かな帰り道。二人でいても決して険悪な雰囲気に
なることは無いが、特にドキドキするようなことも起こらない。
何故なら彼の瞳はいつでも、私を映してはいないから。どこか遠くを見ているから。
 
「あっ、見て先輩、今日は綺麗な満月……」
 
ワタシの言葉に、今度こそ何も答えなかった彼は、既に夜空の上をじっと見上げていた。
暗闇に優しい光を放つ、黄金色の丸い月。
一目惚れの衝動がなせる業だったあの告白に承諾の返事をもらい、
有頂天になっていた頃は気づかなかった、彼の視線の先。
それを、今のワタシは知っている。
月子ちゃん――美しく聡明な、憧れの従姉。彼の幼なじみにして、お兄さんの恋人。
彼女を通じて彼と知り合い、そして付き合うようになって、お兄さんを紹介されて。
小さなパレットの上に乗せられて、ワタシはようやく知ったのだ。
青斗先輩の本当の気持ちも、その気持ちに気づきながら
長年に渡り彼を見つめ続けてきたあの子の気持ちも。
ああ、邪魔者はワタシだった。
ワタシが彼と出会わなければ、ワタシが彼に告白なんかしなければ……!
 
「あぁゴメン、今なにか言った?」
 
緩んだ腕の力のためか、虚空を見上げていた彼がワタシの方に眼差しを向ける。
偽りだっていい、ずるくたって仕方がない。
ワタシはこの人が欲しい。この人の、傍にいたい。
 
「何でもないです、先輩」
 
にっこりと微笑んだワタシに、先輩もゆっくりと笑い、ワタシたちは美しい月に背を向けた。
パレットの上で、ワタシは青にだけ染まりたい。




Blue

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ワタシは知っている。
小さなパレットの上に均等に並べられた絵具のような四人の関係に、
僅かな綻びが生じていることを。
その綻びに入り込んだ異物が、他ならぬワタシ自身だということを。
 
「それじゃあ今日は本当にお世話になりました。
どうもありがとう、月子ちゃん、ハナちゃん、紅登さん」
 
「解らないことがあったらまたいつでも聞いて」
 
「また遊びに来てねー!」
 
「……チッス」
 
従姉妹二人と紅登さんに頭を下げたワタシを、玄関で待っていてくれたのは青斗先輩。
従姉妹たちの幼なじみで、ワタシの高校の先輩、そして“彼氏”だ。
 
「先輩、今日も送ってってくれるんですかー? わぁい、やったー♪」
 
外に出て前を歩き出した彼に、後ろから抱きついて腕を絡める。
一瞬ビクリと引かれた腕は、だが決して振りほどかれることはない。
 
「こんな時間に女の子一人じゃ、危ないだろ?」
 
そっけなく答える彼の言葉に、少しだけ唇を尖らせてかたちばかりの文句を言う。
 
「えーっ、そこはフツウ、大事な彼女を一人で帰らせるのが心配だから、
って答えるもんですよぅ!」
 
「ははっ、なら言ってあげるよ。
『大事な彼女を一人で帰らせるのが心配だから』、どう? 満足した?」
 
「えーっ! ちっとも気持ちが籠もってなぁい!」
 
ワタシの言葉に悪戯に微笑んでみせた彼に、頬を染めながらポカポカと
その腕を叩いても彼は一向に意に介する風も無く淡々と歩みを進める。
本当に、ただの“義務”みたい。
いつもと同じ、静かな帰り道。二人でいても決して険悪な雰囲気に
なることは無いが、特にドキドキするようなことも起こらない。
何故なら彼の瞳はいつでも、私を映してはいないから。どこか遠くを見ているから。
 
「あっ、見て先輩、今日は綺麗な満月……」
 
ワタシの言葉に、今度こそ何も答えなかった彼は、既に夜空の上をじっと見上げていた。
暗闇に優しい光を放つ、黄金色の丸い月。
一目惚れの衝動がなせる業だったあの告白に承諾の返事をもらい、
有頂天になっていた頃は気づかなかった、彼の視線の先。
それを、今のワタシは知っている。
月子ちゃん――美しく聡明な、憧れの従姉。彼の幼なじみにして、お兄さんの恋人。
彼女を通じて彼と知り合い、そして付き合うようになって、お兄さんを紹介されて。
小さなパレットの上に乗せられて、ワタシはようやく知ったのだ。
青斗先輩の本当の気持ちも、その気持ちに気づきながら
長年に渡り彼を見つめ続けてきたあの子の気持ちも。
ああ、邪魔者はワタシだった。
ワタシが彼と出会わなければ、ワタシが彼に告白なんかしなければ……!
 
「あぁゴメン、今なにか言った?」
 
緩んだ腕の力のためか、虚空を見上げていた彼がワタシの方に眼差しを向ける。
偽りだっていい、ずるくたって仕方がない。
ワタシはこの人が欲しい。この人の、傍にいたい。
 
「何でもないです、先輩」
 
にっこりと微笑んだワタシに、先輩もゆっくりと笑い、ワタシたちは美しい月に背を向けた。
パレットの上で、ワタシは青にだけ染まりたい。




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