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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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デンパンブックス『It’s A Fine Day!』より移行。
別名「お天気シリーズ」(笑)
高校生主役、恋愛メインの青春ものです。

Chronology

※初読は掲載順の方が分かりやすいかと思います
 
2~5月 『Snowy Day=雪の日』 side:リョウ
6月    『Windy Day=風のある日』 side:ミチ
7月    『Rainy Day=雨の日』 side:マサ
6~9月 『Calm Day=風の無い日』 side:マホ
9月      『Sunny Day=晴れの日』 side:ユウ
            『Gusty Day=風の強い日』 side:イタル
12月   『Cloudy Day=曇りの日』 side:?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



Rainy Day



彼女が好きなもの。犬のキャラクター“キッド”の地域限定キーホルダー。
ウサギグッズ。それから……俺の親友。
 
 深夜のコンビニ。ペットボトルの詰まった大きな冷蔵庫の前。
 
「あ」
 
手に取ったのはウサギのキャラクター“ペコウサギ”のストラップ付きの炭酸飲料。
彼女と出会ってから、無意識に根付いた習慣。
少し不安げに微笑む顔と、それが向けられる相手を思い出す。
どこか引っかかる気持ちを抱きながら、コンビニを後にした。
 

~~~
 
 
「あっついねー」
 
人気のまばらな学校の最寄り駅で、電車を待つ時間。傍らの彼女はパタパタと手を動かしている。
 
「あ、そーだ。この前これ付いてきたから」
 
先日の炭酸飲料のオマケを差し出すと、彼女の顔にパッと花が咲いたような笑みが広がる。
 
「え!? ペコウサギじゃん! わーい、マジで!? ありがとう~!」
 
無邪気に喜ぶ彼女に、心の中がふわっと暖かくなる。
 
「どうしたのー?」
 
そこへやってきたのは、俺の親友で。
 
「あ、リョウくん。見て見て、マサくんがこれくれたの~!」
 
どこかぎこちなくも、目をキラキラと輝かせて、親友を見つめる顔は
さっき俺がペコウサギを取り出した時より何倍も嬉しそうで。
 
「あ、そうなの? よかったじゃん、ユウちゃん」
 
笑顔でそう返し、こちらに向かってきた親友は、その背を見つめる切ない眼差しに気づかない。
だから俺も、気づかないふりをする。彼女の気持ちにも、自分の中の焦燥にも。
 
「マサくんにはいっつも協力してもらってるねー。
おかげでウサギグッズもキッドもいっぱい集まったよー」
 
ニコニコ微笑む彼女の顔が、どこか沈んで見える。
あいつは、ウサギのオマケ付きの飲み物をわざわざ選んだりしない。
あいつは、飲み物のオマケをわざわざ取っておいたりなんかしない。
あいつが彼女にあげたのは、たった二つのキッドだけ。
一つ目は、彼女にペンを貸してもらったお礼。二つ目は、ノートを見せてもらったお礼。
旅行に行ってもわざわざ限定キッドを探し回ったりなんて、しないんだ。……俺みたいに。
 
「マサくんは、優しいよねー。ホント、憎たらしくなるくらい……」
 
あいつが彼女の気持ちに気づいてるかなんて、わからない。
あいつにとって、彼女は“トモダチ”
あいつは今、違う学校の女の子に恋をしている。
彼女は、それを知らない……はずだった。彼女の声は、ほんの少し震えていた。
顔を見ないように、肩にそっと触れそうになって、寸前で手を引っ込めた。
 
アンナヤツヤメロヨ
オレニシトケバヨカッタノニ
 
声にならない言葉は、止まない雨と共に静かに降り注いでいた。





Sunny Day(side:ユウ)
 
目次(現代)
 

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Rainy Day



彼女が好きなもの。犬のキャラクター“キッド”の地域限定キーホルダー。
ウサギグッズ。それから……俺の親友。
 
 深夜のコンビニ。ペットボトルの詰まった大きな冷蔵庫の前。
 
「あ」
 
手に取ったのはウサギのキャラクター“ペコウサギ”のストラップ付きの炭酸飲料。
彼女と出会ってから、無意識に根付いた習慣。
少し不安げに微笑む顔と、それが向けられる相手を思い出す。
どこか引っかかる気持ちを抱きながら、コンビニを後にした。
 

~~~
 
 
「あっついねー」
 
人気のまばらな学校の最寄り駅で、電車を待つ時間。傍らの彼女はパタパタと手を動かしている。
 
「あ、そーだ。この前これ付いてきたから」
 
先日の炭酸飲料のオマケを差し出すと、彼女の顔にパッと花が咲いたような笑みが広がる。
 
「え!? ペコウサギじゃん! わーい、マジで!? ありがとう~!」
 
無邪気に喜ぶ彼女に、心の中がふわっと暖かくなる。
 
「どうしたのー?」
 
そこへやってきたのは、俺の親友で。
 
「あ、リョウくん。見て見て、マサくんがこれくれたの~!」
 
どこかぎこちなくも、目をキラキラと輝かせて、親友を見つめる顔は
さっき俺がペコウサギを取り出した時より何倍も嬉しそうで。
 
「あ、そうなの? よかったじゃん、ユウちゃん」
 
笑顔でそう返し、こちらに向かってきた親友は、その背を見つめる切ない眼差しに気づかない。
だから俺も、気づかないふりをする。彼女の気持ちにも、自分の中の焦燥にも。
 
「マサくんにはいっつも協力してもらってるねー。
おかげでウサギグッズもキッドもいっぱい集まったよー」
 
ニコニコ微笑む彼女の顔が、どこか沈んで見える。
あいつは、ウサギのオマケ付きの飲み物をわざわざ選んだりしない。
あいつは、飲み物のオマケをわざわざ取っておいたりなんかしない。
あいつが彼女にあげたのは、たった二つのキッドだけ。
一つ目は、彼女にペンを貸してもらったお礼。二つ目は、ノートを見せてもらったお礼。
旅行に行ってもわざわざ限定キッドを探し回ったりなんて、しないんだ。……俺みたいに。
 
「マサくんは、優しいよねー。ホント、憎たらしくなるくらい……」
 
あいつが彼女の気持ちに気づいてるかなんて、わからない。
あいつにとって、彼女は“トモダチ”
あいつは今、違う学校の女の子に恋をしている。
彼女は、それを知らない……はずだった。彼女の声は、ほんの少し震えていた。
顔を見ないように、肩にそっと触れそうになって、寸前で手を引っ込めた。
 
アンナヤツヤメロヨ
オレニシトケバヨカッタノニ
 
声にならない言葉は、止まない雨と共に静かに降り注いでいた。





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