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side:ユウ
失恋の後に……。
失恋の後に……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
彼が嫌いなもの。部活が潰れる雨の日。女の子たちの甲高い騒ぎ声。
たぶん……親友の彼女。
お昼のパン屋さん。
「あ」
思わず立ち止まったのは、視線の先に二人がいたから。
「あれ、ユウちゃんじゃん」
「こんにちはー」
にこっ、と微笑む可愛い彼女の隣には、私の好きな人。
一月前に付き合いだした彼女は、他校の女の子だ。
偶然にも駅で出会い、紹介されたのはついこの間。
苦しくて、痛くて、堪らない気持ちは、今も消えない。だけど……
一月前に付き合いだした彼女は、他校の女の子だ。
偶然にも駅で出会い、紹介されたのはついこの間。
苦しくて、痛くて、堪らない気持ちは、今も消えない。だけど……
「リョウ、何やってんの? ミチちゃん、N高だろ?
お昼にこんなとこいて……五限、間に合うのかよ?」
私の後ろから現れたのは、好きな人の親友。
「マサくん」
彼は少し怒っているようだ。
けれど、
「あ、おはよー、ユウちゃん」
私に対してはいつものごとく穏やかに挨拶をする彼に、少し驚いてしまう。
「あ、あのねマサくん……私の学校はそんなに遠くないし、
リョウと一緒にお昼食べても急げば間に合うと思うの」
リョウと一緒にお昼食べても急げば間に合うと思うの」
おずおずと口を開いた彼女を庇うように、リョウくんが言葉を重ねる。
「そうだよ、マサ。俺ら学校違ってあんまり一緒にいれないんだから、
たまに昼一緒に食べるくらいいいだろ」
たまに昼一緒に食べるくらいいいだろ」
寄り添う二人の姿に、ツキン、と胸が痛む。
「そういう問題じゃないだろ。いくら一緒にいたいからって、
今は部活だってそんなキツくねえし、放課後とかいくらでも会えるじゃねえか。
今は部活だってそんなキツくねえし、放課後とかいくらでも会えるじゃねえか。
学校は学校なんだから、ちゃんとやることやってから遊べよ」
どうやらマサくんは、リョウくんの彼女……ミチちゃんのことが嫌いらしい。
基本的に他人への干渉を好まないマサくんが、ここまで口を出すのは珍しい。
「マ、マサくん、そこまで言わなくても。付き合い始めってそんなもんだよ」
思わずフォローの言葉を挟むと、
「ありがとう、さっすがユウちゃん! やっさしい~!」
とリョウくんに手を握られた。ちょっとやめてよ、彼女の前で!
思わず顔が赤く染まりそうになるのを、必死で抑える。
「……別にいいけど。困るのはお前だし」
そう言ってレジに向かったマサくんがこちらに向けた視線は、
どこか苛立たしげな、哀しそうな色を帯びていた。
どこか苛立たしげな、哀しそうな色を帯びていた。
~~~
「……マサくん」
パン屋から戻った後、私が向かったのは学校の屋上だった。
「ユウちゃん」
そこには一人フェンスに寄りかかってパンを齧る彼の姿があった。
「やっぱりここにいた」
私は彼の隣にそっと腰を下ろす。リョウくんに彼女が出来る前、二人はいつもここにいた。
お昼を食べたり、昼寝をしたり、話し込んだり……。
私も、リョウくんに少しでも近づきたくて、よくここに来ていたっけ……。
「マサくんは、ミチちゃんが嫌いなの?」
呟いた問いに、彼は少し驚いたような顔をした。
「そんなことないけど……」
「じゃあなんでミチちゃんが彼女になってから、リョウくんにあんなに突っかかるようになったの?
……ミチちゃん、いい子だと思うけどなあ。リョウくんも楽しそうだし」
……ミチちゃん、いい子だと思うけどなあ。リョウくんも楽しそうだし」
言いながら、ズキズキと胸が軋む。空気がピリピリと肌に沁みる。
「なんで、アイツらのフォローを、ユウちゃんがしてんの?」
彼が腹立たしそうに吐き出した言葉の意味が、初め私には飲み込めなかった。
「え……?」
「何で、一番二人のこと見たくないと思ってるユウちゃんが、二人のこと庇うんだよ!?
俺はもう……見たくないよ、ユウちゃんが無理してるとこ」
俺はもう……見たくないよ、ユウちゃんが無理してるとこ」
思わず言葉を失った私の胸に、彼の言葉が突き刺さる。
彼が私の気持ちを知っていることは、何となく気づいていた。
彼は繊細で敏感な人だから。私の好きな、あの人よりずっと。
「……涼しくなってきたね」
「……涼しくなってきたね」
私に吐き出せたのは、話題と全く関係のない言葉で。
「一人で屋上にいるの、寒くない?」
見当違いな私の台詞に、彼は静かに答えを返す。
「……今は一人じゃないから、寒くない。それに秋の空は……キレイだから」
「私も好きだよ、秋晴れの空。気分がスカーッとするよね」
私は思わず微笑んだ。何日ぶりだろう、こんなに自然に笑えたのは。
「……ユウちゃん」
「なに?」
「……好きだよ」
「うん……」
私は気づいていた。彼の気持ちに、というより、彼がなぜあんなにも、
リョウくんとミチちゃんを避けようとしていたのか。
リョウくんとミチちゃんを避けようとしていたのか。
私を傷つけないように。私を、守るために。ずっと、ずっと大切にしてくれていた。
今はまだ、あの人が忘れられないけれど。
彼が大切だ、という気持ちは私の中にも確かにある。
スコシダケ、マッテテクレル?
返事を返してくれたのは、物言わぬ秋の青空だった。
→Snowy Day(side:リョウ)
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彼が嫌いなもの。部活が潰れる雨の日。女の子たちの甲高い騒ぎ声。
たぶん……親友の彼女。
お昼のパン屋さん。
「あ」
思わず立ち止まったのは、視線の先に二人がいたから。
「あれ、ユウちゃんじゃん」
「こんにちはー」
にこっ、と微笑む可愛い彼女の隣には、私の好きな人。
一月前に付き合いだした彼女は、他校の女の子だ。
偶然にも駅で出会い、紹介されたのはついこの間。
苦しくて、痛くて、堪らない気持ちは、今も消えない。だけど……
一月前に付き合いだした彼女は、他校の女の子だ。
偶然にも駅で出会い、紹介されたのはついこの間。
苦しくて、痛くて、堪らない気持ちは、今も消えない。だけど……
「リョウ、何やってんの? ミチちゃん、N高だろ?
お昼にこんなとこいて……五限、間に合うのかよ?」
私の後ろから現れたのは、好きな人の親友。
「マサくん」
彼は少し怒っているようだ。
けれど、
「あ、おはよー、ユウちゃん」
私に対してはいつものごとく穏やかに挨拶をする彼に、少し驚いてしまう。
「あ、あのねマサくん……私の学校はそんなに遠くないし、
リョウと一緒にお昼食べても急げば間に合うと思うの」
リョウと一緒にお昼食べても急げば間に合うと思うの」
おずおずと口を開いた彼女を庇うように、リョウくんが言葉を重ねる。
「そうだよ、マサ。俺ら学校違ってあんまり一緒にいれないんだから、
たまに昼一緒に食べるくらいいいだろ」
たまに昼一緒に食べるくらいいいだろ」
寄り添う二人の姿に、ツキン、と胸が痛む。
「そういう問題じゃないだろ。いくら一緒にいたいからって、
今は部活だってそんなキツくねえし、放課後とかいくらでも会えるじゃねえか。
今は部活だってそんなキツくねえし、放課後とかいくらでも会えるじゃねえか。
学校は学校なんだから、ちゃんとやることやってから遊べよ」
どうやらマサくんは、リョウくんの彼女……ミチちゃんのことが嫌いらしい。
基本的に他人への干渉を好まないマサくんが、ここまで口を出すのは珍しい。
「マ、マサくん、そこまで言わなくても。付き合い始めってそんなもんだよ」
思わずフォローの言葉を挟むと、
「ありがとう、さっすがユウちゃん! やっさしい~!」
とリョウくんに手を握られた。ちょっとやめてよ、彼女の前で!
思わず顔が赤く染まりそうになるのを、必死で抑える。
「……別にいいけど。困るのはお前だし」
そう言ってレジに向かったマサくんがこちらに向けた視線は、
どこか苛立たしげな、哀しそうな色を帯びていた。
どこか苛立たしげな、哀しそうな色を帯びていた。
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「……マサくん」
パン屋から戻った後、私が向かったのは学校の屋上だった。
「ユウちゃん」
そこには一人フェンスに寄りかかってパンを齧る彼の姿があった。
「やっぱりここにいた」
私は彼の隣にそっと腰を下ろす。リョウくんに彼女が出来る前、二人はいつもここにいた。
お昼を食べたり、昼寝をしたり、話し込んだり……。
私も、リョウくんに少しでも近づきたくて、よくここに来ていたっけ……。
「マサくんは、ミチちゃんが嫌いなの?」
呟いた問いに、彼は少し驚いたような顔をした。
「そんなことないけど……」
「じゃあなんでミチちゃんが彼女になってから、リョウくんにあんなに突っかかるようになったの?
……ミチちゃん、いい子だと思うけどなあ。リョウくんも楽しそうだし」
……ミチちゃん、いい子だと思うけどなあ。リョウくんも楽しそうだし」
言いながら、ズキズキと胸が軋む。空気がピリピリと肌に沁みる。
「なんで、アイツらのフォローを、ユウちゃんがしてんの?」
彼が腹立たしそうに吐き出した言葉の意味が、初め私には飲み込めなかった。
「え……?」
「何で、一番二人のこと見たくないと思ってるユウちゃんが、二人のこと庇うんだよ!?
俺はもう……見たくないよ、ユウちゃんが無理してるとこ」
俺はもう……見たくないよ、ユウちゃんが無理してるとこ」
思わず言葉を失った私の胸に、彼の言葉が突き刺さる。
彼が私の気持ちを知っていることは、何となく気づいていた。
彼は繊細で敏感な人だから。私の好きな、あの人よりずっと。
「……涼しくなってきたね」
「……涼しくなってきたね」
私に吐き出せたのは、話題と全く関係のない言葉で。
「一人で屋上にいるの、寒くない?」
見当違いな私の台詞に、彼は静かに答えを返す。
「……今は一人じゃないから、寒くない。それに秋の空は……キレイだから」
「私も好きだよ、秋晴れの空。気分がスカーッとするよね」
私は思わず微笑んだ。何日ぶりだろう、こんなに自然に笑えたのは。
「……ユウちゃん」
「なに?」
「……好きだよ」
「うん……」
私は気づいていた。彼の気持ちに、というより、彼がなぜあんなにも、
リョウくんとミチちゃんを避けようとしていたのか。
リョウくんとミチちゃんを避けようとしていたのか。
私を傷つけないように。私を、守るために。ずっと、ずっと大切にしてくれていた。
今はまだ、あの人が忘れられないけれど。
彼が大切だ、という気持ちは私の中にも確かにある。
スコシダケ、マッテテクレル?
返事を返してくれたのは、物言わぬ秋の青空だった。
→Snowy Day(side:リョウ)
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