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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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当初のモチーフはアン・ブーリン。※近親間の恋愛要素あり

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



おまえは今、どこにいるの?

この薄暗い塔のてっぺんに閉じ込められて、もうどれくらいになるかしら?
あの娘は泣いていないかしら?
お姉様とその子どもはどこに消えたのかしら?
あの女はもう堂々と王の隣に侍っているのかしら?

自由を縛る錆び付いた鎖に、埃にまみれた黴臭い寝台。
それだけが、今私が持ちうる全て。

ぜんぶ、全部おまえのためだった。
憎まれても、蔑まれても、世界の全てが敵となっても……
おまえがいたから、私は此処にいた。

処刑は明日だと告げられた。それでも良い。
あの女が幸せになっても、私の娘が不幸になっても。
ただ、おまえが生きていてくれるなら。
 

~~~
 

「姉上」

控えめに呼びかける声、少しぎこちない笑顔。
父と同じはしばみ色の瞳が映し出す、穏やかな優しさが好きだった。

「また、叔父さまに嫌味を言われて何も言い返せなかったの?
ひいおじいさまやおじいさまが頑張ってこられたおかげで、今があるのですよ。
折角ここまで来たのに……あなたは気弱過ぎて、我が家を潰してしまうわ」

弟とは正反対の華やかで気の強い姉が、小言を言うのはいつものこと。

そう、本来ここにいたのは姉だった。
王の求める母と良く似た容姿を持つ、あの美しい姉……!
王の子を身篭った姉の代わりに、王妃に仕えたことは幸運だったのか、
それとも不運であったのだろうか?
王に近づけば、望むものが手に入る。母のように、姉のように、王妃のように……。

生まれつき視力の弱い弟。
不具の彼が、一族の跡取りとして遇されることへの風当たりは強かった。
はしばみ色は己を取り巻く冷たい空気に怯え、杖を片手に邸に引きこもってばかりいた。
話し相手と言えば私だけ。いつも二人きり、此処と同じように、薄暗い部屋で。
父も母も溜め息混じりに彼を見詰め、
水面下で従弟を養子に迎える話が進んでいるとの噂が広まっていた。

弟を、誰にも文句を言われない存在にしたかった。
私が王を誘惑したのか、王が私をかどわかしたのか分からぬまま、その関係は始まった。

王は子どもを欲していた。国を継ぐことの出来る男の子を。
王妃の持たぬその子を生まねば、私は今の地位を追われる。そして、弟も……。

あの男と手を結んだのはそのためだった。
 

~~~


「姉上、もうおやめください……」

はしばみ色が哀しみに揺らぎ、私を射る。

「私は姉上に、犠牲になってほしくはないのです。お願いです。
私はこれ以上何も望みません。お優しかった以前の姉上に、どうかお戻り下さい……」

「弟よ……」

以前の私。
万事控えめに楚々として、部屋の端に縮こまって立ちすくんでいたあの田舎娘……!

「もう、戻れませぬ」

私の囁きに、弟はその瞳から黄金(こがね)の雫を溢し、私の身体を抱きしめた。
懐かしい、その温もり。たった一度、かすめた唇の潮の香りが、堪らなく愛しかった。
よもやそれを、見ている者があるとは思わずに……。
 

~~~
 

姦通、しかも近親姦の罪に問われた女が、王の傍に在り続けることは不可能だった。
己に害が及ぶことを恐れたあの男は、既に国を後にした。
残りの三人は、冤罪で共に裁きを受けることとなる。
そして、私の愛しい弟は……逃げ延びてくれたのだと、そう信じなければ死んでいけない。

結局娘の父親は、誰なのかは分からない。王であるのか、あの男であるのか……
この世で最も愛しい男の子を生むことが叶わぬ身なれば、最早どちらだって構わない。
父に母を殺される哀れな娘! 
これから私生児としてたった一人で生きねばならぬ哀れな娘!
許せとは言わない。ただ一つ、母の愚かな想いを伝えたい。

弟よ。ああ、弟よ!
もしも死んでしまったなら、もしも殺されてしまったなら。私はこの国を許さない。
あの女を許さない。王を、王の子を、王の子を生む女を許さない。
王がどこで何人女を抱こうが、そのため私が邪魔になろうが、
私が処刑されようが、そんなことはどうだって良い。
望みの果ての代償として、どんなものでも贖おう。

ただ一つだけ、一つだけ……おまえの命だけは。未来永劫渡しはしない。

愛するおまえ。
私の弟。
口付け一つで国を追われた、哀れな私の……





ブログ初出2008/5/9

後書き
  国王サイド『Love Love Love』
  弟サイド『Punish Punish Punish』
 

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おまえは今、どこにいるの?

この薄暗い塔のてっぺんに閉じ込められて、もうどれくらいになるかしら?
あの娘は泣いていないかしら?
お姉様とその子どもはどこに消えたのかしら?
あの女はもう堂々と王の隣に侍っているのかしら?

自由を縛る錆び付いた鎖に、埃にまみれた黴臭い寝台。
それだけが、今私が持ちうる全て。

ぜんぶ、全部おまえのためだった。
憎まれても、蔑まれても、世界の全てが敵となっても……
おまえがいたから、私は此処にいた。

処刑は明日だと告げられた。それでも良い。
あの女が幸せになっても、私の娘が不幸になっても。
ただ、おまえが生きていてくれるなら。
 

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「姉上」

控えめに呼びかける声、少しぎこちない笑顔。
父と同じはしばみ色の瞳が映し出す、穏やかな優しさが好きだった。

「また、叔父さまに嫌味を言われて何も言い返せなかったの?
ひいおじいさまやおじいさまが頑張ってこられたおかげで、今があるのですよ。
折角ここまで来たのに……あなたは気弱過ぎて、我が家を潰してしまうわ」

弟とは正反対の華やかで気の強い姉が、小言を言うのはいつものこと。

そう、本来ここにいたのは姉だった。
王の求める母と良く似た容姿を持つ、あの美しい姉……!
王の子を身篭った姉の代わりに、王妃に仕えたことは幸運だったのか、
それとも不運であったのだろうか?
王に近づけば、望むものが手に入る。母のように、姉のように、王妃のように……。

生まれつき視力の弱い弟。
不具の彼が、一族の跡取りとして遇されることへの風当たりは強かった。
はしばみ色は己を取り巻く冷たい空気に怯え、杖を片手に邸に引きこもってばかりいた。
話し相手と言えば私だけ。いつも二人きり、此処と同じように、薄暗い部屋で。
父も母も溜め息混じりに彼を見詰め、
水面下で従弟を養子に迎える話が進んでいるとの噂が広まっていた。

弟を、誰にも文句を言われない存在にしたかった。
私が王を誘惑したのか、王が私をかどわかしたのか分からぬまま、その関係は始まった。

王は子どもを欲していた。国を継ぐことの出来る男の子を。
王妃の持たぬその子を生まねば、私は今の地位を追われる。そして、弟も……。

あの男と手を結んだのはそのためだった。
 

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「姉上、もうおやめください……」

はしばみ色が哀しみに揺らぎ、私を射る。

「私は姉上に、犠牲になってほしくはないのです。お願いです。
私はこれ以上何も望みません。お優しかった以前の姉上に、どうかお戻り下さい……」

「弟よ……」

以前の私。
万事控えめに楚々として、部屋の端に縮こまって立ちすくんでいたあの田舎娘……!

「もう、戻れませぬ」

私の囁きに、弟はその瞳から黄金(こがね)の雫を溢し、私の身体を抱きしめた。
懐かしい、その温もり。たった一度、かすめた唇の潮の香りが、堪らなく愛しかった。
よもやそれを、見ている者があるとは思わずに……。
 

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姦通、しかも近親姦の罪に問われた女が、王の傍に在り続けることは不可能だった。
己に害が及ぶことを恐れたあの男は、既に国を後にした。
残りの三人は、冤罪で共に裁きを受けることとなる。
そして、私の愛しい弟は……逃げ延びてくれたのだと、そう信じなければ死んでいけない。

結局娘の父親は、誰なのかは分からない。王であるのか、あの男であるのか……
この世で最も愛しい男の子を生むことが叶わぬ身なれば、最早どちらだって構わない。
父に母を殺される哀れな娘! 
これから私生児としてたった一人で生きねばならぬ哀れな娘!
許せとは言わない。ただ一つ、母の愚かな想いを伝えたい。

弟よ。ああ、弟よ!
もしも死んでしまったなら、もしも殺されてしまったなら。私はこの国を許さない。
あの女を許さない。王を、王の子を、王の子を生む女を許さない。
王がどこで何人女を抱こうが、そのため私が邪魔になろうが、
私が処刑されようが、そんなことはどうだって良い。
望みの果ての代償として、どんなものでも贖おう。

ただ一つだけ、一つだけ……おまえの命だけは。未来永劫渡しはしない。

愛するおまえ。
私の弟。
口付け一つで国を追われた、哀れな私の……





ブログ初出2008/5/9

後書き
  国王サイド『Love Love Love』
  弟サイド『Punish Punish Punish』
 

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