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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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祥太郎1ページ目

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「あ、祥ちゃん。来てたんだ」

「あ、お邪魔してました」

鈴の音を転がすような、とはこういう声のことを言うんだろうな。
佑樹の家の玄関で出くわしたのは、今学校から帰ってきたばかり、
という様子の佑樹の姉、遥香さん。 それと……

「おっ、神田! お前も来てたのか!」

いつも妙にテンションが高い三山先輩。遥香さんの彼氏だ。

「……チッス」

軽く会釈をすると、先輩はにこにこしながら俺の背中をバンバン、と叩いた。

「何でお前サッカー部入らなかったんだよ、もったいねーなぁ!
またお前とできんの楽しみにしてたのに!」

「……すいません」

苦笑しながら頭を掻くと、先輩は仕方ない、という風に笑って

「まぁ気が向いたらいつでも大歓迎だから」

と優しく告げた。

「竜ちゃん、早く宿題やっちゃおう」

遥香さんが先輩を呼ぶ。

白い手に握られているのは、数学ⅡBの教科書。

「わかったわかった、今行くから。んじゃまたな、神田!」

彼女の声に答えて、先輩が階段を上っていく。 
サッカー部に入らなかったのは、あんたがいたからだよ、先輩。
遥香さんの教科書はⅡB、先輩の教科書もⅡB。
だけどまだ、俺の教科書はⅠAだから。 

「ドンマイ、祥」

スニーカーを履きながら振り返ると、二人と入れ違いに階段を降りてきた佑樹と廉がいた。

「……うるせー」

気が短くすぐに不機嫌になる俺のことを、理解ってくれる人間はそう多くない。
佑と廉は、数少ない俺の友達。 だから二人には、つい甘えてしまう。
どんな俺でも受け入れてくれる、そんな気がして。

「じゃあ、佑樹。お邪魔しましたー」

明るく声をかける廉と違って、俺はむっつりと黙りこんだまま。

「あ~ぁ、ダメだ祥。カンペキ不機嫌モード入っちゃったよ。どうしよ、これ」

苦笑混じりの廉に、佑は俺の顔をチラッと見て

「その辺に棄てといたら?」

とすげなく返す。 さすがにムカついて佑をギロリと睨みつけた。

「……またな」

一応低い声を絞りだして玄関のドアを開けば、夕日はもう沈んでいた。
二階からは、楽しそうな遥香さんと先輩の声が聞こえてくる。 


~~~


触れれば汚してしまいそうな真っ白な肌に、佑樹と同じ栗色のサラサラの髪。
くるくると変わる表情は、そのよく動く焦茶色の瞳のせいだろう。
美人、と言われるその母親とは違い、どちらかというと可愛らしい顔立ちなのに、
一度見たら、何故か目をそらせない。 穏やかで優しい彼女は、昔からみんなの人気者だった。
そんな彼女が選んだのは、三山竜介先輩。 特別ハンサムな訳じゃない。特別目立つ訳じゃない。
でも彼は、いつも人の輪の中心にいる。 誰にでも優しくて、常に誰かのために一生懸命で。
負け試合の時は、つまらない冗談と変顔で周囲の笑いを誘い、
打ち上げの時は、誰よりも先にマイクを握り場を盛り上げる。

俺は彼が嫌いだった。 敵わない、と思ったから。
遥香さんによく似た、遥香さんの愛した男に。 

数学ⅡBなんて、学習塾でとっくの昔に終わらせたのに。 俺は今、あの教科書が欲しい。
薄っぺらなあの問題を、解きたくて堪らない。 遥香さんと、一緒に。





ⅠA(祥太郎2ページ目)
 

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「あ、祥ちゃん。来てたんだ」

「あ、お邪魔してました」

鈴の音を転がすような、とはこういう声のことを言うんだろうな。
佑樹の家の玄関で出くわしたのは、今学校から帰ってきたばかり、
という様子の佑樹の姉、遥香さん。 それと……

「おっ、神田! お前も来てたのか!」

いつも妙にテンションが高い三山先輩。遥香さんの彼氏だ。

「……チッス」

軽く会釈をすると、先輩はにこにこしながら俺の背中をバンバン、と叩いた。

「何でお前サッカー部入らなかったんだよ、もったいねーなぁ!
またお前とできんの楽しみにしてたのに!」

「……すいません」

苦笑しながら頭を掻くと、先輩は仕方ない、という風に笑って

「まぁ気が向いたらいつでも大歓迎だから」

と優しく告げた。

「竜ちゃん、早く宿題やっちゃおう」

遥香さんが先輩を呼ぶ。

白い手に握られているのは、数学ⅡBの教科書。

「わかったわかった、今行くから。んじゃまたな、神田!」

彼女の声に答えて、先輩が階段を上っていく。 
サッカー部に入らなかったのは、あんたがいたからだよ、先輩。
遥香さんの教科書はⅡB、先輩の教科書もⅡB。
だけどまだ、俺の教科書はⅠAだから。 

「ドンマイ、祥」

スニーカーを履きながら振り返ると、二人と入れ違いに階段を降りてきた佑樹と廉がいた。

「……うるせー」

気が短くすぐに不機嫌になる俺のことを、理解ってくれる人間はそう多くない。
佑と廉は、数少ない俺の友達。 だから二人には、つい甘えてしまう。
どんな俺でも受け入れてくれる、そんな気がして。

「じゃあ、佑樹。お邪魔しましたー」

明るく声をかける廉と違って、俺はむっつりと黙りこんだまま。

「あ~ぁ、ダメだ祥。カンペキ不機嫌モード入っちゃったよ。どうしよ、これ」

苦笑混じりの廉に、佑は俺の顔をチラッと見て

「その辺に棄てといたら?」

とすげなく返す。 さすがにムカついて佑をギロリと睨みつけた。

「……またな」

一応低い声を絞りだして玄関のドアを開けば、夕日はもう沈んでいた。
二階からは、楽しそうな遥香さんと先輩の声が聞こえてくる。 


~~~


触れれば汚してしまいそうな真っ白な肌に、佑樹と同じ栗色のサラサラの髪。
くるくると変わる表情は、そのよく動く焦茶色の瞳のせいだろう。
美人、と言われるその母親とは違い、どちらかというと可愛らしい顔立ちなのに、
一度見たら、何故か目をそらせない。 穏やかで優しい彼女は、昔からみんなの人気者だった。
そんな彼女が選んだのは、三山竜介先輩。 特別ハンサムな訳じゃない。特別目立つ訳じゃない。
でも彼は、いつも人の輪の中心にいる。 誰にでも優しくて、常に誰かのために一生懸命で。
負け試合の時は、つまらない冗談と変顔で周囲の笑いを誘い、
打ち上げの時は、誰よりも先にマイクを握り場を盛り上げる。

俺は彼が嫌いだった。 敵わない、と思ったから。
遥香さんによく似た、遥香さんの愛した男に。 

数学ⅡBなんて、学習塾でとっくの昔に終わらせたのに。 俺は今、あの教科書が欲しい。
薄っぺらなあの問題を、解きたくて堪らない。 遥香さんと、一緒に。





ⅠA(祥太郎2ページ目)
 

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