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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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Summer Snow』関連作。東アジア風。薬物・近親間の恋愛を想起させる描写があります。





ふう、と白い煙を吐きだして、秋櫻は卓子の上に煙管を置いた。魂がゆうるりと、煙と共に漂い出ていくようだ。西から来たという枯れた草の葉がもたらしてくれるものは、甘い香りと酩酊感、そして強い快楽とその果てのとめどなく堪え難い虚無。それでも彼女は手放せない、束の間の夢を見るための道具を。
 
「それで、兄上様はどうなさるおつもりなの?」
 
至高の位に座す者の方を見ずして、秋櫻は薄い唇を釣り上げた。切れ長の目はぼんやりと、その黒い光を曇らせている――もう幾年も。
 
「環の隣国、燐から妃を召そうかと思っている。小国の田舎者だが、仮にも我らの血を分け与えた“王”の一族であるからな。仕方あるまい」
 
苦虫を噛み潰したような顔で溜息を吐く兄、皇帝であるその人の言に秋櫻は目を瞬かす。
 
「なぁんだ、たったそれだけ?」
 
同母妹の遠慮の無い言い草に、年若い皇帝は顔を赤らめ立ち上がった。
 
「環は果ての国ぞ! 燐が“帝国”に従うことを明白にすれば奴らは孤立し、いずれ自滅しよう。王の娘を差し出す誉れを得た燐は我らと環の間で揺らぐこともなくなり、その妃を人質として圧することもできよう。最良の判断ではないか!」
 
唾を飛ばして叫び捨て、到底優雅とは言えない足取りで去って行く兄の背を見送り、公主は口端を上げた。
 
「さすがは陛下、面白い方」
 
彼らの暮らす“帝国”――この世に唯一つの国であるのだから名など持つ必要は無い、西の夷どもは“イースタン・エンパイア”等と呼ぶようだが――が形骸化しつつあることは誰の目にも明らかだ。皇帝が世界の中心であり、支配する国々に服従を誓わせて権威を誇示するという仕組みがとうに崩れ去ったことは。個々の国への影響力は弱まり、太守や王すら時を重ね都の血は大分薄められてしまっている。彼らから忠誠心や帰属意識が失われていくのは避けがたいことなのだ。今や腐敗と因習に満ちた、沈みゆく存在なのだから――その帝国に公主として生まれた己を省みながら秋櫻は嗤った。
都から遠く離れた辺境の国・環が帝国に反旗を翻し、西の蛮族と通じたという。かの地の太守は“帝国”に属するはずの臣や民を続々と西へ送り込み、あまつさえ東の地への居住を禁じている西の民をも招き入れてその知識や技術を学んでいるという話だ。皇帝を激怒させたのはそれだけではない。環は船と武器を大量に西の国より譲り受けた。本来ならば貨幣を鋳造する都を介さなければならないはずのそのやりとりを、自国から取れる金銀をもって直接、皇帝に無断で行ったのだ。絹や毛皮、茶や香料といった他愛ない交易であるならば、これまでにも目こぼしをしてきたこと。けれど大量の輸送手段、兵器、そして学問となれば話は別だ。環は帝国に抗しようとしているのではないか――西から持ち込まれた、邪悪な思想の名の元に。そんな懸念が高まる頃、環の太守が初めて公の場で次のような宣言を出した。曰く、
 
『我らは帝国の一部として皇帝に従うものではなく、太守を君とし環の法に則って政(まつりごと)を行う独立国家である』
 
と。都は深い衝撃を受け、皇帝は激怒した。我も我もと束ねる小国全てに同様の宣言を出されれば、臣民の信を失い帝国は瓦解する。既に内側が溶け腐っていることを嫌と言うほどに自覚していた役人たちも、否、認めていたからこそ表面の権威が剥がれ落ちることを何よりも恐れたのは、当然の反応と言えるだろう。
 
『環を攻めよ! 小さき鼠が虎の尾に噛みついてどういう目に遭うか、思い知らせてやらねばならぬ!』
 
勇んで出兵した帝国側は、事態を予測した上で独立を宣言し、西の大国オーデンと結び周到に迎撃体勢を整えていた環の前に虚しく破れ去ることになる――毒の効用は知っていても太刀の切れ味は知らぬ貴族たち、金を得ることと貯めること、そのための地位を得る戦いしか知らぬ官僚たち、都人は刃の交え方も弓の射方も忘れ、また銃と砲弾の威力に全く興味を示すことなく余りにも長い時を過ごしてきた。
帝国の誇りは大いに傷つき、人々は何かを忘れたがるように――直視することを恐れるかのように、束の間の幸福を求め、まどろみに夢を追うようになった。付け入ったのは強欲な蛮族、西の者ども。夢を見られる魔法の薬、これさえあれば決して負けない。この高価な草をこれほど大量に買うことができるのは帝国だけ、帝国であったればこそ。環の地には全くと言って良いほど流通していないその草に人々はあっという間に夢中になり、公主たる秋櫻さえも何の抵抗も持たず、少しも悪びれること無く女官に勧められたそれを吸い、今も身体の一部であるかのように煙を吐き出しているわけだ。
 
「どうでもよろしいではないですか、皇帝陛下(あにうえ)。環も燐も……どうして、」
 
また新たに妃など迎えようとおっしゃるのですか、と吐き出しかけて公主は口をつぐんだ。気短でありながら小心者、幼き頃より幾度となく命を狙われ、生き延びなければ、今在る地位を維持しなければ殺される、と身を持って教え込まされ育った兄。己とよく似た細面に青白い肌、いつも固く引き結ばれている紫色の薄い唇を持つ兄をそこまで怯えさせるのは、あるいは自分の存在ゆえだったのかもしれない、と彼女は時に考える。父は女色に溺れ、その果てに生まれた子どもたちの跡目争いには一切の関心を示さずに、良くも悪くも放っておかれた。母はといえば病弱の上に酷い癇癪持ちで、伏せっているか、甲高い叫び声を上げて女官や幼子を折檻するかのどちらかだったのだ。小さな手で兄の袖を掴む妹だけが、彼にとって真実向き合い、笑顔を向けることのできる無二となってしまっても、誰が責めることができようか。
 
『あなた様が失脚なされば、お妹君が――』
 
成長するにつれ、秋櫻本人の耳にもそのようなことを兄に吹き込む輩の囁き声が届くようになった。それほど皇帝は、彼女を大事にしていたのだ。同じ腹から生まれた、けれど直接に跡目を争う必要の無い妹という存在を。皇帝が公主を降嫁させないのは、その夫が己の地位を脅かすことを恐れるためだ、と陰口を叩く者もある。臆病で怠惰な皇帝――西への弱腰も、今に至るまで環に復讐を果たせずにいるのもそのせいだと。けれど秋櫻は愛しく思う、そんな愚かで哀れな、分かち難い絆で結ばれた兄という男を。
 
「燐の件はどうなりました?」
 
卓子の向こう、金が張られた屏風の奥に向かって問いかけると、
 
「既に主に伝えてございます」
 
と静かに答える声がある。
 
「環の忍は本当に、身を隠すのが上手いこと」
 
公主はころころと、鈴を転がすように笑った。
現皇帝の手が最初についた女は、入内から半年後、湯治に出かけた先で行方知れずになった。最初の子を生むはずだった女は不幸な事故に遭い、皇帝の眼前で石の柱に潰され死んだ。皇后の地位にある者は時を経ても身籠らず、肌と爪が黄色く染まる原因不明の病に長く悩まされ続けている。その全ての偶然に関わる者を、後宮に住む者――否、都の闇に身を浸す者が気づいていない訳もない。
 
「かの姫君は、我が国が丁重にお迎えすることになろうかと存じますが……」
 
言い淀む声の主に、秋櫻はパチンと扇を鳴らして応えた。
 
「それは良かった、生き永らえる良い道ですわ」
 
妖しく笑う公主の顔に、影は黙って頷いた。兄への執着、依存、その果てに何があるのかなど秋櫻は考えない。ただ彼に、あの男に己より大切なものができることが気に食わない。彼が己ではない何かに夢中になることは、それが国であれ人であれ政であれ――長らく彼女が占めてきた部分を他の存在に奪われ、兄の視界に己が映らなくなってしまうことは、秋櫻に取って許しがたいことだった。
 
「帝国は滅びません、皇帝(あにうえ)そのものが“帝国”なのですから。愚能な臣どもが主張するのはただの木箱、とうの昔に朽ちている。本当に大切なのはその内、輝く玉たる我々だけよ。何物にも代えがたい、誰にも滅ぼせない、“血”を持つ私たちだけが……」
 
卓子に置かれた長い煙管に、再び白い手が伸びた。吐き出される煙の流れから逸れるように、影が小さく身じろぎする気配を感じ、公主は鼻で笑ってみせた。得られるものは甘い夢などではなく、ただのごまかしなのだと彼女とてよく解っている。それでも、一時であれ現(うつつ)に還る日を遅らせることができるなら――この手に取って口にするまで。例え己が身を蝕む毒であろうとも、彼女の知ったことではない。後宮の実力者、皇帝の溺愛する妹、嫁き遅れの煙管中毒――仄暗い噂が様々に囁かれる女の望みを測りかねたまま、影は室を後にする。確かな病巣、引けぬ決意。連綿と続く地の平穏が、今音を立てて引き裂かれようとしていた。







→関連作:夏に灼かれし春に恨みし

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ふう、と白い煙を吐きだして、秋櫻は卓子の上に煙管を置いた。魂がゆうるりと、煙と共に漂い出ていくようだ。西から来たという枯れた草の葉がもたらしてくれるものは、甘い香りと酩酊感、そして強い快楽とその果てのとめどなく堪え難い虚無。それでも彼女は手放せない、束の間の夢を見るための道具を。
 
「それで、兄上様はどうなさるおつもりなの?」
 
至高の位に座す者の方を見ずして、秋櫻は薄い唇を釣り上げた。切れ長の目はぼんやりと、その黒い光を曇らせている――もう幾年も。
 
「環の隣国、燐から妃を召そうかと思っている。小国の田舎者だが、仮にも我らの血を分け与えた“王”の一族であるからな。仕方あるまい」
 
苦虫を噛み潰したような顔で溜息を吐く兄、皇帝であるその人の言に秋櫻は目を瞬かす。
 
「なぁんだ、たったそれだけ?」
 
同母妹の遠慮の無い言い草に、年若い皇帝は顔を赤らめ立ち上がった。
 
「環は果ての国ぞ! 燐が“帝国”に従うことを明白にすれば奴らは孤立し、いずれ自滅しよう。王の娘を差し出す誉れを得た燐は我らと環の間で揺らぐこともなくなり、その妃を人質として圧することもできよう。最良の判断ではないか!」
 
唾を飛ばして叫び捨て、到底優雅とは言えない足取りで去って行く兄の背を見送り、公主は口端を上げた。
 
「さすがは陛下、面白い方」
 
彼らの暮らす“帝国”――この世に唯一つの国であるのだから名など持つ必要は無い、西の夷どもは“イースタン・エンパイア”等と呼ぶようだが――が形骸化しつつあることは誰の目にも明らかだ。皇帝が世界の中心であり、支配する国々に服従を誓わせて権威を誇示するという仕組みがとうに崩れ去ったことは。個々の国への影響力は弱まり、太守や王すら時を重ね都の血は大分薄められてしまっている。彼らから忠誠心や帰属意識が失われていくのは避けがたいことなのだ。今や腐敗と因習に満ちた、沈みゆく存在なのだから――その帝国に公主として生まれた己を省みながら秋櫻は嗤った。
都から遠く離れた辺境の国・環が帝国に反旗を翻し、西の蛮族と通じたという。かの地の太守は“帝国”に属するはずの臣や民を続々と西へ送り込み、あまつさえ東の地への居住を禁じている西の民をも招き入れてその知識や技術を学んでいるという話だ。皇帝を激怒させたのはそれだけではない。環は船と武器を大量に西の国より譲り受けた。本来ならば貨幣を鋳造する都を介さなければならないはずのそのやりとりを、自国から取れる金銀をもって直接、皇帝に無断で行ったのだ。絹や毛皮、茶や香料といった他愛ない交易であるならば、これまでにも目こぼしをしてきたこと。けれど大量の輸送手段、兵器、そして学問となれば話は別だ。環は帝国に抗しようとしているのではないか――西から持ち込まれた、邪悪な思想の名の元に。そんな懸念が高まる頃、環の太守が初めて公の場で次のような宣言を出した。曰く、
 
『我らは帝国の一部として皇帝に従うものではなく、太守を君とし環の法に則って政(まつりごと)を行う独立国家である』
 
と。都は深い衝撃を受け、皇帝は激怒した。我も我もと束ねる小国全てに同様の宣言を出されれば、臣民の信を失い帝国は瓦解する。既に内側が溶け腐っていることを嫌と言うほどに自覚していた役人たちも、否、認めていたからこそ表面の権威が剥がれ落ちることを何よりも恐れたのは、当然の反応と言えるだろう。
 
『環を攻めよ! 小さき鼠が虎の尾に噛みついてどういう目に遭うか、思い知らせてやらねばならぬ!』
 
勇んで出兵した帝国側は、事態を予測した上で独立を宣言し、西の大国オーデンと結び周到に迎撃体勢を整えていた環の前に虚しく破れ去ることになる――毒の効用は知っていても太刀の切れ味は知らぬ貴族たち、金を得ることと貯めること、そのための地位を得る戦いしか知らぬ官僚たち、都人は刃の交え方も弓の射方も忘れ、また銃と砲弾の威力に全く興味を示すことなく余りにも長い時を過ごしてきた。
帝国の誇りは大いに傷つき、人々は何かを忘れたがるように――直視することを恐れるかのように、束の間の幸福を求め、まどろみに夢を追うようになった。付け入ったのは強欲な蛮族、西の者ども。夢を見られる魔法の薬、これさえあれば決して負けない。この高価な草をこれほど大量に買うことができるのは帝国だけ、帝国であったればこそ。環の地には全くと言って良いほど流通していないその草に人々はあっという間に夢中になり、公主たる秋櫻さえも何の抵抗も持たず、少しも悪びれること無く女官に勧められたそれを吸い、今も身体の一部であるかのように煙を吐き出しているわけだ。
 
「どうでもよろしいではないですか、皇帝陛下(あにうえ)。環も燐も……どうして、」
 
また新たに妃など迎えようとおっしゃるのですか、と吐き出しかけて公主は口をつぐんだ。気短でありながら小心者、幼き頃より幾度となく命を狙われ、生き延びなければ、今在る地位を維持しなければ殺される、と身を持って教え込まされ育った兄。己とよく似た細面に青白い肌、いつも固く引き結ばれている紫色の薄い唇を持つ兄をそこまで怯えさせるのは、あるいは自分の存在ゆえだったのかもしれない、と彼女は時に考える。父は女色に溺れ、その果てに生まれた子どもたちの跡目争いには一切の関心を示さずに、良くも悪くも放っておかれた。母はといえば病弱の上に酷い癇癪持ちで、伏せっているか、甲高い叫び声を上げて女官や幼子を折檻するかのどちらかだったのだ。小さな手で兄の袖を掴む妹だけが、彼にとって真実向き合い、笑顔を向けることのできる無二となってしまっても、誰が責めることができようか。
 
『あなた様が失脚なされば、お妹君が――』
 
成長するにつれ、秋櫻本人の耳にもそのようなことを兄に吹き込む輩の囁き声が届くようになった。それほど皇帝は、彼女を大事にしていたのだ。同じ腹から生まれた、けれど直接に跡目を争う必要の無い妹という存在を。皇帝が公主を降嫁させないのは、その夫が己の地位を脅かすことを恐れるためだ、と陰口を叩く者もある。臆病で怠惰な皇帝――西への弱腰も、今に至るまで環に復讐を果たせずにいるのもそのせいだと。けれど秋櫻は愛しく思う、そんな愚かで哀れな、分かち難い絆で結ばれた兄という男を。
 
「燐の件はどうなりました?」
 
卓子の向こう、金が張られた屏風の奥に向かって問いかけると、
 
「既に主に伝えてございます」
 
と静かに答える声がある。
 
「環の忍は本当に、身を隠すのが上手いこと」
 
公主はころころと、鈴を転がすように笑った。
現皇帝の手が最初についた女は、入内から半年後、湯治に出かけた先で行方知れずになった。最初の子を生むはずだった女は不幸な事故に遭い、皇帝の眼前で石の柱に潰され死んだ。皇后の地位にある者は時を経ても身籠らず、肌と爪が黄色く染まる原因不明の病に長く悩まされ続けている。その全ての偶然に関わる者を、後宮に住む者――否、都の闇に身を浸す者が気づいていない訳もない。
 
「かの姫君は、我が国が丁重にお迎えすることになろうかと存じますが……」
 
言い淀む声の主に、秋櫻はパチンと扇を鳴らして応えた。
 
「それは良かった、生き永らえる良い道ですわ」
 
妖しく笑う公主の顔に、影は黙って頷いた。兄への執着、依存、その果てに何があるのかなど秋櫻は考えない。ただ彼に、あの男に己より大切なものができることが気に食わない。彼が己ではない何かに夢中になることは、それが国であれ人であれ政であれ――長らく彼女が占めてきた部分を他の存在に奪われ、兄の視界に己が映らなくなってしまうことは、秋櫻に取って許しがたいことだった。
 
「帝国は滅びません、皇帝(あにうえ)そのものが“帝国”なのですから。愚能な臣どもが主張するのはただの木箱、とうの昔に朽ちている。本当に大切なのはその内、輝く玉たる我々だけよ。何物にも代えがたい、誰にも滅ぼせない、“血”を持つ私たちだけが……」
 
卓子に置かれた長い煙管に、再び白い手が伸びた。吐き出される煙の流れから逸れるように、影が小さく身じろぎする気配を感じ、公主は鼻で笑ってみせた。得られるものは甘い夢などではなく、ただのごまかしなのだと彼女とてよく解っている。それでも、一時であれ現(うつつ)に還る日を遅らせることができるなら――この手に取って口にするまで。例え己が身を蝕む毒であろうとも、彼女の知ったことではない。後宮の実力者、皇帝の溺愛する妹、嫁き遅れの煙管中毒――仄暗い噂が様々に囁かれる女の望みを測りかねたまま、影は室を後にする。確かな病巣、引けぬ決意。連綿と続く地の平穏が、今音を立てて引き裂かれようとしていた。







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