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何色の薔薇が好き?
「国王は黒。王妃は黄色。お兄様は紫。お義姉様は、きっと白ね」
湯船に浮かぶ色とりどりの薔薇の花びらを指先で弄びながら、ぼんやりと
呟いた言葉に、傍らに控えていた侍女が不思議そうな顔でこちらを見た。
「私は、何色だと思う?」
その言葉にようやく合点がいったように笑顔を浮かべた侍女は、こう答えた。
「紅に決まっていますわ、ローズ様。
皆があなたのことをこう仰っているではありませんか……紅薔薇姫、と」
王侯貴族が薔薇の紋章をそれぞれの家紋とするこの国で、
『紅薔薇』の呼び名は最高級の賛辞と言える。でも、違う……私がなりたかったのは
「私は、青い薔薇になりたかったわ」
禁断の名に侍女の顔面は蒼白となり、金切り声で私に叫ぶ。
「ローズ様! 滅多なことを!」
「だってそうでしょう? 血に染まった手で深紅に染め上げられるより、
自ら青い水の中に沈んであの方の後を追った方がよっぽどマシ。そうではなくて?」
にっこりと微笑んで湯の中に深く潜ってみせようとすれば、
侍女は今にも卒倒しそうな顔で震え出した。
「ローズ、止さぬか。それ以上苛めるな」
浴室の入り口から聞こえてきた低い声に、ローズの心は暗く、重く沈んでいく。
かつて、青薔薇の紋章を与えられた王子がいた。
存在しない花を戴いた王子……存在を認められなかった王子。
実の兄にその命を奪われた、ローズのかつての婚約者。
「私が、いなかったら……
せめてあの方は少しでも、命を長らえることが出来たのでしょうか?」
湯船の傍に腰を降ろした国王に向かい、問うた言葉への答えはない。
漆黒の国王はその無骨な指先で、紅の姫の華奢な顎を掴む。
「さあ、どうだろうな……?」
冷えた口付けに、愛は無い。そこにあるのは、純粋な欲望と、憎しみだけ。
→後書き
番外『The Garden Of Roses』
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あのひとが死んだ夢を見た。
三階の窓辺から飛び降りて。
その次の日、家族が談笑する食卓の中で
「明日、同じ窓辺から飛び降りて死のう」
と考えている自分がいた。
そう思うことに、何の疑問も抱かなかった。
笑いながら、当たり前のようにお皿を並べながら、
私の気持ちはとても穏やかで、そして自然だった。
あのひとのいる世界に
あのひとの傍に
行きたくなったのだ。
それは多分、どうしてもあのひとと一緒にいたいだとか
あのひとのいない世界では生きていけないだとか
そういうことではないのだ。
ただ、あのひとの見ているものを見たい。
あのひとの世界に、少しでも近付きたい。
そんな、単純な欲求。
ああ、私はあのひとが好きなのかもしれない。
→後書き
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