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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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入り乱れる四人の想い。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「なん……だと?」
 
戦場から邸に帰還したばかりのヴィクトルはその話を聞き、己が耳を疑った。
己が戦地に行っている間に起こった宮中の変化。
兄である王太子アンリの寵愛する側室、パメラの懐妊。
そして先日、彼が戦地から帰ってきたその日に
王太子妃エリアーヌの部屋で起こった彼女の流産。
パメラの流産が王太子妃の出した紅茶のせいではないか、との疑いをかけられ、
エリアーヌは現在自室に押し込められ、処分の決定を待っているのだという。
 
「そんな馬鹿な! 義姉(あね)上が……エリアーヌがそんなことをするはずはない!
それは兄上とて、よく解っておいでのはずだ」
 
王太子妃エリアーヌと彼ら兄弟はいとこ同士だった。
幼い頃より父に連れられ王宮に出入りしていた彼女と、
アンリとヴィクトルは春も夏も秋も冬も、長い時間を共に過ごしてきた。
どちらかというと大人しい気性だったエリアーヌと、穏やかなアンリはよく並んで本を眺め、
その向こうで活発な子供だったヴィクトルが木に登り二人に声をかける。
心配そうに彼を見上げる灰色の瞳の少女と、そのすぐ傍で笑って手を振る兄の姿に、
この二人はきっと似合いの夫婦になるのだろう、とヴィクトルは幼心に思った。
エリアーヌは、彼の兄の婚約者だった。だから、彼は己の気持ちを封じ込めざるを得なかった。
兄が王となり、エリアーヌが王妃となり、二人の間に生まれた子供が王太子となる。
そんな日を夢見て、彼はその支えとなるべく軍に入り、戦功を成してきた。それなのに。
 
パメラという女が宮中にやって来たのは、一体何時のことであっただろうか。
初めは、ただの下働きの侍女の一人であった。しかし彼女は美しかった。
他人(ひと)を惹きつける天性の魅力を、艶やかな香気を放つ女だった。
 
これはよくない。この女は危険だ――
 
そう感じたヴィクトルが、侍従長にパメラの転属を申しつけたその日。
アンリはパメラを閨に召した。翌日から、既にパメラは王太子の側室となっていた。
第二王子であるヴィクトルにはどうすることも出来ない、地位と身分を得ていた。
パメラが側室となってから、アンリとその正妃エリアーヌの仲は急速に遠ざかっていった。
アンリはパメラに夢中になり、元々派手なことを嫌い、流行にも余り
興味を示さないエリアーヌは宮中でもその存在感を徐々に失っていった。
 
これでは、一体何のために彼女を諦めたというのか?
彼女と兄の幸せを願い、ひたすらに耐えてきたというのに……!
 
ヴィクトルは立ち上がった。
 
「パメラ殿の見舞いに行く。先方にそう申しつけておくように」
 
 
~~~
 
 
「パメラ! ……パメラ!」
 
アンリがピクリとも動かない白い相貌に向かって必死に呼びかけると、
閉じられた瞼が僅かに震え出し、女はその翠の瞳を徐々に見開いていった。
 
「……殿下」
 
色を失った唇から細い声が聞こえ、アンリはほっと胸を撫で下ろす。
 
「ああ、良かった。パメラ。もう何も心配はいらない。
何を盛られたかは知らないが、正妃はきちんと罰しておく。
そなたの身体の方も、最善を尽くして治療させる」
 
「え……? 妃殿下が、何か?」
 
未だ状況がよく分からない、といった表情(かお)でこちらを窺うパメラの身体を、アンリはそっと抱き締めた。
 
「……酷な事実かもしれないが、そなたと私の子は流れたのだ。おそらく
エリアーヌが紅茶に何かを混ぜたのではないか、という侍医の判断だ。
大丈夫だパメラ。おまえの身体はきっと元に戻る。子もいずれ……また作れる」
 
白い手を握りしめてパメラを見つめるアンリの言葉は、彼女の耳には届かない。
パメラの頭のなかは真っ白だった。
 
この方は、一体何をおっしゃっているのだろう! 王太子妃殿下が私に毒を盛る?
そんなことをなさるはずが無いことくらい、私はよく知っている。子を流したのは私のせい!
子の父ではないあの方を想い続け、あの方の無事なお姿を見て高揚し、
そしてあの方の想う妃殿下への嫉妬が激情となって我が子を……!
 
パメラは両手で顔を覆った。
アンリと侍医は何を勘違いしたのか、その様子を腹の子を失った女特有の
嘆きと思い込み、彼女一人を寝台に残して静かに部屋を去って行った。
 
 
~~~
 

ヴィクトルがパメラの室への見舞いを許可されたのは、
それから十日ばかりの時が過ぎたころのことだった。
パメラは未だ臥せったまま、寝台の上でヴィクトルを迎えた。
 
「……ヴィクトル殿下、まさかあなた様にもお見舞いいただけるとは思ってもおりませんでした。
むさ苦しい格好ではございますが、どうぞご容赦下さいませ」
 
ヴィクトルはやせ衰え、憔悴しきった女の姿に驚きの表情を隠せなかった。
そんな彼の様子に、パメラは力なく笑う。
 
「私が、王太子妃殿下を陥れるために“わざと”子を流したとでもお思いになりまして?
それで、あの方の無実を証明してくれるようお願いなさりに来たのではございませんか?」
 
図星を突かれて、ヴィクトルは黙り込む。パメラは不意に彼から視線を逸らし窓辺を見つめた。
 
「この際だから申し上げます。私は元々、子を生むということが難しい身体なのです。
侍医(せんせい)からそのお話を伺った王太子殿下は、私に暫く後宮を離れて療養することを
お命じになられました。……王太子殿下とて、解っておいでなのです。
ご自分の果たすべき役割が何か……一刻も早く、子を生すことの必要性を」
 
意外とも言えるパメラの言葉に、ヴィクトルは目を瞠る。
 
「良かったではありませんか、ヴィクトル殿下。
憎い女は宮廷を去り、いずれは目を覚まされた王太子殿下が、
エリアーヌ様の軟禁も解かれましょう。全てはあなたのお望み通り」
 
微笑んで再び己を振り返った美しい女に、ヴィクトルは俯いた。
 
「そんな顔をなさらないで下さい。ヴィクトル殿下。
私はあなたをお恨み申し上げたことは一度としてございません。
……いいえむしろ、ずっとお慕いして参りましたわ。王太子殿下より、義父(ちち)より、誰よりも」

鼓膜を震わす信じがたい囁きに、ヴィクトルは思わず顔を上げた。
 
「……今、何と言った?」

男の問いに、パメラはどこか遠い目をして微笑んだ。
 
「殿下は覚えておいででしょうか?
オラールの離宮からの帰り道、橋の下で震えていた幼い乞食の娘のことを」
 
彼女の言葉に、ヴィクトルは己の記憶を必死に辿った。
彼が最後にオラールの離宮を訪ねてから、既に十年近い歳月が経過している。
あそこは彼の母が最期を迎えた場所だった。
そしてこれから、目の前に横たわるパメラが送られる場所でもある……。
 
「あの時、殿下は薄汚れた私を馬車の中に拾い上げ、食べ物と暖かい衣服を恵んで下さいました。
そうして、大量の金貨と共に近くに住む気の優しい夫婦の元に私を託して下さいました。
……結局、私はどうしても殿下に再度のお目通りを、
という願いを堪え切れずに飛び出してしまいましたけれど」

嬉しそうに過去を語るパメラに、ヴィクトルは戸惑いを隠しきれなかった。
 
「あの橋の下の娘が……何故ここにいる?」
 
パメラは、今度は自嘲するように目を背けてみせた。
 
「それは、言わずともご想像がつくのではございませんか?
私は、此処に来るためなら何でも致しました。その結果が、今度(こたび)の流産です。
軽蔑なさっていただいても構いません」
 
ヴィクトルは愕然とした。彼女が卑しい女だ、という噂は宮廷中で囁かれていたし、
彼自身もそれを信じてきた。そのような女に邪険にされる初恋の人が哀れで、
許せなくて、彼は何かにつけ彼女と対立してきた。
それが全て、自分のためだったというのなら、自分は……!
 
「全ては過ぎた話にございます。私は願いを果たし、宮中も本来の姿を取り戻すことでしょう。
どうか、今の話はお忘れ下さい。最後にお目にかかれて幸せでございました。
さようなら、ヴィクトル殿下」
 
目について離れない、毒々しいまでに艶やかな容貌を誇った女の最後の微笑みは、
どこまでも清らかで儚げなものだった。ヴィクトルはその表情(かお)を忘れられなかった。
二十年近くに渡り彼の心の一番深いところに住んでいた義姉の姿が、
すっかりパメラの姿に置き換えられてしまったかのようだった。

 
 
その後、王太子妃エリアーヌは軟禁を解かれ、元の地位を復活する。
王太子アンリと彼女の間には無事に王子が生まれ、アンリの即位後太子として立つ。
オラールの離宮に送られたパメラは三年間の療養生活を経た後、突然の死を遂げる。
彼女が不必要になった“義父”、もしくは後宮の混乱を鎮めようとする
一派による暗殺だったのか、長年の無理がたたったのか……。
パメラの墓に花を捧げた王族はたった三人。
王太子アンリ、王太子妃エリアーヌ、そして第二王子ヴィクトル。
第二王子ヴィクトルは兄の即位後も自ら戦場に出て次々と武勲を打ち立て、
最期は初陣の王太子を庇い戦死を遂げることとなる。
生涯独身を貫いたヴィクトルが愛した女は果たして誰であったのか、
それはオラールの橋の袂に手向けられた薔薇の花束だけが知る真実である。





後書き
 番外編『表の裏

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「なん……だと?」
 
戦場から邸に帰還したばかりのヴィクトルはその話を聞き、己が耳を疑った。
己が戦地に行っている間に起こった宮中の変化。
兄である王太子アンリの寵愛する側室、パメラの懐妊。
そして先日、彼が戦地から帰ってきたその日に
王太子妃エリアーヌの部屋で起こった彼女の流産。
パメラの流産が王太子妃の出した紅茶のせいではないか、との疑いをかけられ、
エリアーヌは現在自室に押し込められ、処分の決定を待っているのだという。
 
「そんな馬鹿な! 義姉(あね)上が……エリアーヌがそんなことをするはずはない!
それは兄上とて、よく解っておいでのはずだ」
 
王太子妃エリアーヌと彼ら兄弟はいとこ同士だった。
幼い頃より父に連れられ王宮に出入りしていた彼女と、
アンリとヴィクトルは春も夏も秋も冬も、長い時間を共に過ごしてきた。
どちらかというと大人しい気性だったエリアーヌと、穏やかなアンリはよく並んで本を眺め、
その向こうで活発な子供だったヴィクトルが木に登り二人に声をかける。
心配そうに彼を見上げる灰色の瞳の少女と、そのすぐ傍で笑って手を振る兄の姿に、
この二人はきっと似合いの夫婦になるのだろう、とヴィクトルは幼心に思った。
エリアーヌは、彼の兄の婚約者だった。だから、彼は己の気持ちを封じ込めざるを得なかった。
兄が王となり、エリアーヌが王妃となり、二人の間に生まれた子供が王太子となる。
そんな日を夢見て、彼はその支えとなるべく軍に入り、戦功を成してきた。それなのに。
 
パメラという女が宮中にやって来たのは、一体何時のことであっただろうか。
初めは、ただの下働きの侍女の一人であった。しかし彼女は美しかった。
他人(ひと)を惹きつける天性の魅力を、艶やかな香気を放つ女だった。
 
これはよくない。この女は危険だ――
 
そう感じたヴィクトルが、侍従長にパメラの転属を申しつけたその日。
アンリはパメラを閨に召した。翌日から、既にパメラは王太子の側室となっていた。
第二王子であるヴィクトルにはどうすることも出来ない、地位と身分を得ていた。
パメラが側室となってから、アンリとその正妃エリアーヌの仲は急速に遠ざかっていった。
アンリはパメラに夢中になり、元々派手なことを嫌い、流行にも余り
興味を示さないエリアーヌは宮中でもその存在感を徐々に失っていった。
 
これでは、一体何のために彼女を諦めたというのか?
彼女と兄の幸せを願い、ひたすらに耐えてきたというのに……!
 
ヴィクトルは立ち上がった。
 
「パメラ殿の見舞いに行く。先方にそう申しつけておくように」
 
 
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「パメラ! ……パメラ!」
 
アンリがピクリとも動かない白い相貌に向かって必死に呼びかけると、
閉じられた瞼が僅かに震え出し、女はその翠の瞳を徐々に見開いていった。
 
「……殿下」
 
色を失った唇から細い声が聞こえ、アンリはほっと胸を撫で下ろす。
 
「ああ、良かった。パメラ。もう何も心配はいらない。
何を盛られたかは知らないが、正妃はきちんと罰しておく。
そなたの身体の方も、最善を尽くして治療させる」
 
「え……? 妃殿下が、何か?」
 
未だ状況がよく分からない、といった表情(かお)でこちらを窺うパメラの身体を、アンリはそっと抱き締めた。
 
「……酷な事実かもしれないが、そなたと私の子は流れたのだ。おそらく
エリアーヌが紅茶に何かを混ぜたのではないか、という侍医の判断だ。
大丈夫だパメラ。おまえの身体はきっと元に戻る。子もいずれ……また作れる」
 
白い手を握りしめてパメラを見つめるアンリの言葉は、彼女の耳には届かない。
パメラの頭のなかは真っ白だった。
 
この方は、一体何をおっしゃっているのだろう! 王太子妃殿下が私に毒を盛る?
そんなことをなさるはずが無いことくらい、私はよく知っている。子を流したのは私のせい!
子の父ではないあの方を想い続け、あの方の無事なお姿を見て高揚し、
そしてあの方の想う妃殿下への嫉妬が激情となって我が子を……!
 
パメラは両手で顔を覆った。
アンリと侍医は何を勘違いしたのか、その様子を腹の子を失った女特有の
嘆きと思い込み、彼女一人を寝台に残して静かに部屋を去って行った。
 
 
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ヴィクトルがパメラの室への見舞いを許可されたのは、
それから十日ばかりの時が過ぎたころのことだった。
パメラは未だ臥せったまま、寝台の上でヴィクトルを迎えた。
 
「……ヴィクトル殿下、まさかあなた様にもお見舞いいただけるとは思ってもおりませんでした。
むさ苦しい格好ではございますが、どうぞご容赦下さいませ」
 
ヴィクトルはやせ衰え、憔悴しきった女の姿に驚きの表情を隠せなかった。
そんな彼の様子に、パメラは力なく笑う。
 
「私が、王太子妃殿下を陥れるために“わざと”子を流したとでもお思いになりまして?
それで、あの方の無実を証明してくれるようお願いなさりに来たのではございませんか?」
 
図星を突かれて、ヴィクトルは黙り込む。パメラは不意に彼から視線を逸らし窓辺を見つめた。
 
「この際だから申し上げます。私は元々、子を生むということが難しい身体なのです。
侍医(せんせい)からそのお話を伺った王太子殿下は、私に暫く後宮を離れて療養することを
お命じになられました。……王太子殿下とて、解っておいでなのです。
ご自分の果たすべき役割が何か……一刻も早く、子を生すことの必要性を」
 
意外とも言えるパメラの言葉に、ヴィクトルは目を瞠る。
 
「良かったではありませんか、ヴィクトル殿下。
憎い女は宮廷を去り、いずれは目を覚まされた王太子殿下が、
エリアーヌ様の軟禁も解かれましょう。全てはあなたのお望み通り」
 
微笑んで再び己を振り返った美しい女に、ヴィクトルは俯いた。
 
「そんな顔をなさらないで下さい。ヴィクトル殿下。
私はあなたをお恨み申し上げたことは一度としてございません。
……いいえむしろ、ずっとお慕いして参りましたわ。王太子殿下より、義父(ちち)より、誰よりも」

鼓膜を震わす信じがたい囁きに、ヴィクトルは思わず顔を上げた。
 
「……今、何と言った?」

男の問いに、パメラはどこか遠い目をして微笑んだ。
 
「殿下は覚えておいででしょうか?
オラールの離宮からの帰り道、橋の下で震えていた幼い乞食の娘のことを」
 
彼女の言葉に、ヴィクトルは己の記憶を必死に辿った。
彼が最後にオラールの離宮を訪ねてから、既に十年近い歳月が経過している。
あそこは彼の母が最期を迎えた場所だった。
そしてこれから、目の前に横たわるパメラが送られる場所でもある……。
 
「あの時、殿下は薄汚れた私を馬車の中に拾い上げ、食べ物と暖かい衣服を恵んで下さいました。
そうして、大量の金貨と共に近くに住む気の優しい夫婦の元に私を託して下さいました。
……結局、私はどうしても殿下に再度のお目通りを、
という願いを堪え切れずに飛び出してしまいましたけれど」

嬉しそうに過去を語るパメラに、ヴィクトルは戸惑いを隠しきれなかった。
 
「あの橋の下の娘が……何故ここにいる?」
 
パメラは、今度は自嘲するように目を背けてみせた。
 
「それは、言わずともご想像がつくのではございませんか?
私は、此処に来るためなら何でも致しました。その結果が、今度(こたび)の流産です。
軽蔑なさっていただいても構いません」
 
ヴィクトルは愕然とした。彼女が卑しい女だ、という噂は宮廷中で囁かれていたし、
彼自身もそれを信じてきた。そのような女に邪険にされる初恋の人が哀れで、
許せなくて、彼は何かにつけ彼女と対立してきた。
それが全て、自分のためだったというのなら、自分は……!
 
「全ては過ぎた話にございます。私は願いを果たし、宮中も本来の姿を取り戻すことでしょう。
どうか、今の話はお忘れ下さい。最後にお目にかかれて幸せでございました。
さようなら、ヴィクトル殿下」
 
目について離れない、毒々しいまでに艶やかな容貌を誇った女の最後の微笑みは、
どこまでも清らかで儚げなものだった。ヴィクトルはその表情(かお)を忘れられなかった。
二十年近くに渡り彼の心の一番深いところに住んでいた義姉の姿が、
すっかりパメラの姿に置き換えられてしまったかのようだった。

 
 
その後、王太子妃エリアーヌは軟禁を解かれ、元の地位を復活する。
王太子アンリと彼女の間には無事に王子が生まれ、アンリの即位後太子として立つ。
オラールの離宮に送られたパメラは三年間の療養生活を経た後、突然の死を遂げる。
彼女が不必要になった“義父”、もしくは後宮の混乱を鎮めようとする
一派による暗殺だったのか、長年の無理がたたったのか……。
パメラの墓に花を捧げた王族はたった三人。
王太子アンリ、王太子妃エリアーヌ、そして第二王子ヴィクトル。
第二王子ヴィクトルは兄の即位後も自ら戦場に出て次々と武勲を打ち立て、
最期は初陣の王太子を庇い戦死を遂げることとなる。
生涯独身を貫いたヴィクトルが愛した女は果たして誰であったのか、
それはオラールの橋の袂に手向けられた薔薇の花束だけが知る真実である。





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