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童話の悪役モチーフSSS集。その1。
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私は魔女の家に生まれた。
ある日、我が家に代々伝わる魔法の鏡の向こうに、一人の凛々しき青年の姿を見た。
魔女の家には女しか存在しない。
私は初めて見る“男”という存在に、そのたくましさに、その強い眼差しに一目で恋をした。
そうして私は“人間”の世界へと足を踏み入れた。
彼は一目で私と恋に落ちた。
私たちは深く愛し合い、互いに幸せを感じていると信じていた。
私たちは深く愛し合い、互いに幸せを感じていると信じていた。
それが覆されたのは、一体いつのことだったのだろう。
ある日、彼が私に贈ってくれた大切な指輪を、不注意から湖に落としてしまった。
慌てた私は彼の前で、とっさに呪文を唱えてしまった。
『水の精霊たちよ、指輪を拾い上げておくれ!』
私の魔法を見た彼は驚きに目を見開き、次にその顔に浮かんだのは畏怖と嫌悪であった。
『君は……魔女なのか?』
私が黙って頷くと、彼は後ずさってこう告げた。
『何てことだ! よりによって魔女だなんて!
魔女を妃に迎えるわけにはいかない。もう君とは会えない。
いいや、今までのことももしかして全部、おまえの魔法の仕業なのか?
魔女を妃に迎えるわけにはいかない。もう君とは会えない。
いいや、今までのことももしかして全部、おまえの魔法の仕業なのか?
ああ、そうに違いない。そうでなければ誰が、恐ろしい魔女などと!』
『違うわ、待って!』
叫んだ私の声は、白馬に跨り走り去った彼の耳には届かなかった。
それでも私は、彼を思い切れなかった。
我が家へと戻った後も、ずっと鏡を通じて彼のことを見つめ続けてきた。
私と別れて半年が過ぎた頃、彼は妃を娶った。
彼の妃となったのは、人間にしては美しい、けれど私に比べれば見劣りのする、
雪のように白い肌、窓枠のように黒い瞳、血のように紅い唇をした女だった。
『君のことを世界で一番愛しているよ』
彼は妃に、私に囁いていたのとそっくり同じ愛の言葉を告げた。
許せなかった。
あの時間の思い出だけを胸に生きる私に、鏡よ、何て酷い仕打ちを見せてくれるのだ!?
嫉妬の炎は怨嗟に代わり、やがて強い強い憎悪へと変化する。
私は彼を、その妃を、その子孫を憎むようになった。
いつか必ず復讐を遂げてやる。
そう思いながら、彼の死も、妃の死も、二人の間の子供や孫の死も見届けてきた。
そうして数百の年を数えた頃のことだった。
魔法の鏡が、私から彼を、彼の言葉も、思い出も何もかもを奪い去った
あの妃にそっくりな赤ん坊を目の前に映し出したのは。
今こそ復讐の時が来た!
私は歓喜した。
私は歓喜した。
すぐに魔法を使ってその母親を殺し、父親を籠絡してその妃の座に収まった。
義理の娘となった幼子は、日を追うごとにあの女へと似通ってくる。
私は数百年の間積もり積もった憎しみを、全てその娘へとぶつけた。
ところが娘は、成長すればするほどに、辛く当たれば当たるほどに
不思議とその美しさを増していった。
不思議とその美しさを増していった。
そうしてある日、鏡が告げた。
『この世で一番美しいのは最早あなたではありません。
あなたの義娘、あなたの復讐の相手、白雪姫こそが、この世で一番美しい!』
私は己の最後の砦がガラガラと崩れ落ちていく音を聞いた。
言葉も、思い出も、私が唯一あの女より勝っていたはずの美しさでさえも、
あの女の子孫に奪われてしまったというのか!?
そうして私は、彼女を殺すことに決めた。
例え焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬより辛い罰が待ち受けていようと、
私が私を救うためには、あの娘を殺すより他無かった。
私は後悔していない。詫びの一つとて、するつもりはない。
あの娘を愛する王子にどれだけ責め立てられようと、
幸せになった娘の姿に、どれだけ屈辱を感じようと。
幸せになった娘の姿に、どれだけ屈辱を感じようと。
おまえたちは知らない。
私の想いも、私の悲しみも、私の憎しみも!
私の想いも、私の悲しみも、私の憎しみも!
→シンデレラの継母
目次(その他)
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私は魔女の家に生まれた。
ある日、我が家に代々伝わる魔法の鏡の向こうに、一人の凛々しき青年の姿を見た。
魔女の家には女しか存在しない。
私は初めて見る“男”という存在に、そのたくましさに、その強い眼差しに一目で恋をした。
そうして私は“人間”の世界へと足を踏み入れた。
彼は一目で私と恋に落ちた。
私たちは深く愛し合い、互いに幸せを感じていると信じていた。
私たちは深く愛し合い、互いに幸せを感じていると信じていた。
それが覆されたのは、一体いつのことだったのだろう。
ある日、彼が私に贈ってくれた大切な指輪を、不注意から湖に落としてしまった。
慌てた私は彼の前で、とっさに呪文を唱えてしまった。
『水の精霊たちよ、指輪を拾い上げておくれ!』
私の魔法を見た彼は驚きに目を見開き、次にその顔に浮かんだのは畏怖と嫌悪であった。
『君は……魔女なのか?』
私が黙って頷くと、彼は後ずさってこう告げた。
『何てことだ! よりによって魔女だなんて!
魔女を妃に迎えるわけにはいかない。もう君とは会えない。
いいや、今までのことももしかして全部、おまえの魔法の仕業なのか?
魔女を妃に迎えるわけにはいかない。もう君とは会えない。
いいや、今までのことももしかして全部、おまえの魔法の仕業なのか?
ああ、そうに違いない。そうでなければ誰が、恐ろしい魔女などと!』
『違うわ、待って!』
叫んだ私の声は、白馬に跨り走り去った彼の耳には届かなかった。
それでも私は、彼を思い切れなかった。
我が家へと戻った後も、ずっと鏡を通じて彼のことを見つめ続けてきた。
私と別れて半年が過ぎた頃、彼は妃を娶った。
彼の妃となったのは、人間にしては美しい、けれど私に比べれば見劣りのする、
雪のように白い肌、窓枠のように黒い瞳、血のように紅い唇をした女だった。
『君のことを世界で一番愛しているよ』
彼は妃に、私に囁いていたのとそっくり同じ愛の言葉を告げた。
許せなかった。
あの時間の思い出だけを胸に生きる私に、鏡よ、何て酷い仕打ちを見せてくれるのだ!?
嫉妬の炎は怨嗟に代わり、やがて強い強い憎悪へと変化する。
私は彼を、その妃を、その子孫を憎むようになった。
いつか必ず復讐を遂げてやる。
そう思いながら、彼の死も、妃の死も、二人の間の子供や孫の死も見届けてきた。
そうして数百の年を数えた頃のことだった。
魔法の鏡が、私から彼を、彼の言葉も、思い出も何もかもを奪い去った
あの妃にそっくりな赤ん坊を目の前に映し出したのは。
今こそ復讐の時が来た!
私は歓喜した。
私は歓喜した。
すぐに魔法を使ってその母親を殺し、父親を籠絡してその妃の座に収まった。
義理の娘となった幼子は、日を追うごとにあの女へと似通ってくる。
私は数百年の間積もり積もった憎しみを、全てその娘へとぶつけた。
ところが娘は、成長すればするほどに、辛く当たれば当たるほどに
不思議とその美しさを増していった。
不思議とその美しさを増していった。
そうしてある日、鏡が告げた。
『この世で一番美しいのは最早あなたではありません。
あなたの義娘、あなたの復讐の相手、白雪姫こそが、この世で一番美しい!』
私は己の最後の砦がガラガラと崩れ落ちていく音を聞いた。
言葉も、思い出も、私が唯一あの女より勝っていたはずの美しさでさえも、
あの女の子孫に奪われてしまったというのか!?
そうして私は、彼女を殺すことに決めた。
例え焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬより辛い罰が待ち受けていようと、
私が私を救うためには、あの娘を殺すより他無かった。
私は後悔していない。詫びの一つとて、するつもりはない。
あの娘を愛する王子にどれだけ責め立てられようと、
幸せになった娘の姿に、どれだけ屈辱を感じようと。
幸せになった娘の姿に、どれだけ屈辱を感じようと。
おまえたちは知らない。
私の想いも、私の悲しみも、私の憎しみも!
私の想いも、私の悲しみも、私の憎しみも!
→シンデレラの継母
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