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遥香の付箋
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あなただけがいればいい。あなた以外、何もいらない。
『竜ちゃんは理系に進むんだねー』
『おうっ! 数学ⅢC、頑張るぜぃ!』
入学当初に言っていた言葉、覚えていたのに。
~~~
「もう、一緒に宿題できなくなっちゃうね。」
寂しそうに呟くと、彼はきょとんとした顔で
「え、何で? おれが物理やってる脇で遥香世界史やりゃいいじゃん」
と言った。
「一緒のがいーんだもん」
唇を尖らせた私の頭に、彼は苦笑して優しく手を乗せた。
暖かい手。大きな手。私の大好きな、彼の手のひら。
「大丈夫だよ。おれは遥香の、側にいるから」
「うん……」
ずっと一緒なんて、無理なことは理解ってる。
でも、それでも……いつも、あなたの一番近くにいたい。
この世界に、あなたと私の二人だけが存在していたら良かったのに。
~~~
「神田!」
学校の帰り道。見知った後ろ姿を見つけて、彼は私の隣から駆け出していく。
弟の友人である祥ちゃん……神田祥太郎は、彼の中学時代の部活の後輩だ。
サッカーが巧く、頭の回転も速い祥ちゃんのことを、竜ちゃんはとても気に入っている。
高校のサッカー部への勧誘は断られたようだが、
それでも私の弟と仲が良いせいもあってか、何かと気にかけているようだ。
彼が声をかけている姿を、よく目にするから。
誰にでも優しい彼。 誰からも好かれる彼。 私だけのものじゃない、彼。
嫌、いや……!
話し込む二人を見ている内に、もやもやした気持ちが沸き起こる。
「竜ちゃん!」
思わず大きな声で叫ぶと、彼はハッとしたようにこちらを振り向いた。
「あぁ、ごめんごめん」
全て解っているというように微笑んだ彼は、祥ちゃんと二言三言言葉を交すと、
こちらに向かって走ってきた。スタスタと歩き出した私に、祥ちゃんがペコリと頭を下げる。
私は祥ちゃんに軽く会釈をして、その横を通り過ぎた。小さな声で「ごめんね」と告げて。
隣を歩く竜ちゃんが、何度も祥ちゃんをチラチラと振り返っていたのは、見なかったことにした。
私の目には、竜ちゃんしか映らない。
彼の頭の中から、私以外のものを全部追い出してしまえたらいいのに。
彼の目に映るものが、ずっと私だけであればいいのに。
今にもこぼれ落ちそうな涙を堪えながら、私の小さな手では
包み込むことのできない彼の大きな手を、ぎゅっと握り締めた。
→後書き
=(玲奈の付箋)
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あなただけがいればいい。あなた以外、何もいらない。
『竜ちゃんは理系に進むんだねー』
『おうっ! 数学ⅢC、頑張るぜぃ!』
入学当初に言っていた言葉、覚えていたのに。
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「もう、一緒に宿題できなくなっちゃうね。」
寂しそうに呟くと、彼はきょとんとした顔で
「え、何で? おれが物理やってる脇で遥香世界史やりゃいいじゃん」
と言った。
「一緒のがいーんだもん」
唇を尖らせた私の頭に、彼は苦笑して優しく手を乗せた。
暖かい手。大きな手。私の大好きな、彼の手のひら。
「大丈夫だよ。おれは遥香の、側にいるから」
「うん……」
ずっと一緒なんて、無理なことは理解ってる。
でも、それでも……いつも、あなたの一番近くにいたい。
この世界に、あなたと私の二人だけが存在していたら良かったのに。
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「神田!」
学校の帰り道。見知った後ろ姿を見つけて、彼は私の隣から駆け出していく。
弟の友人である祥ちゃん……神田祥太郎は、彼の中学時代の部活の後輩だ。
サッカーが巧く、頭の回転も速い祥ちゃんのことを、竜ちゃんはとても気に入っている。
高校のサッカー部への勧誘は断られたようだが、
それでも私の弟と仲が良いせいもあってか、何かと気にかけているようだ。
彼が声をかけている姿を、よく目にするから。
誰にでも優しい彼。 誰からも好かれる彼。 私だけのものじゃない、彼。
嫌、いや……!
話し込む二人を見ている内に、もやもやした気持ちが沸き起こる。
「竜ちゃん!」
思わず大きな声で叫ぶと、彼はハッとしたようにこちらを振り向いた。
「あぁ、ごめんごめん」
全て解っているというように微笑んだ彼は、祥ちゃんと二言三言言葉を交すと、
こちらに向かって走ってきた。スタスタと歩き出した私に、祥ちゃんがペコリと頭を下げる。
私は祥ちゃんに軽く会釈をして、その横を通り過ぎた。小さな声で「ごめんね」と告げて。
隣を歩く竜ちゃんが、何度も祥ちゃんをチラチラと振り返っていたのは、見なかったことにした。
私の目には、竜ちゃんしか映らない。
彼の頭の中から、私以外のものを全部追い出してしまえたらいいのに。
彼の目に映るものが、ずっと私だけであればいいのに。
今にもこぼれ落ちそうな涙を堪えながら、私の小さな手では
包み込むことのできない彼の大きな手を、ぎゅっと握り締めた。
→後書き
=(玲奈の付箋)
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