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7~10章まで。(※しつこいですが病み&宗教ネタ辛口含め入りまくりですm(__)m)
7章、前章のビルとのやりとりで涙するエンジェル、そんな終わりのない絶望的な作業に従事する自分が亡き夫ジェフみたい、って語るところに彼の人間性と彼への彼女の愛が見えるようで切ない(´;ω;`) 精神病の分類についてのくだりで「存在できないはずなのに存在するものを関心を持って眺めたいのであれば、偏執狂じみた狂気はすばらしいものかもしれない」という言葉にナルホド、と思った@人間ファンの偏執狂として(笑)「過剰誘発力」「固定観念」「力の概念」の説明からの「いったん特定の人間の心に入り込んでしまうと、決して消え失せないどころか、心の中のその他すべてのものを食い尽くして、最終的にはその人物が、心そのものが消えてしまい、その過剰誘発力を持つ考えだけが残るようになる」ウン、それが自意識過剰の最終形態ってヤツなんですなー(^ω^) エンジェルはビルとティムのこと考えてこの問題を論じているんだろうけど、私には自分への警告っつーか耳に痛い忠告としか(以下略)ユング先輩の文にも同意せざるを得ない。「ある日やって来た何らかの考えが心に入ったことでその心では何も新しいことが起きなくなり、時間は止まってその心は死ぬ。生きて成長する存在としての心が死んでも、その人はある意味で生き続ける」という。これほど虚しくて悲しいことがあるか、っての。過剰誘発力の例として出されている車のライトの件みたいなこともよくやりますよ。「見たのにそれを信じない。逆に何も見なかったのにそれを信じちゃう。・・・この時の自分は機械なのよ、もはや人間じゃない。」それでも人はその“力”が問題として生じたならともかく、解決策として生じたならニセの一時しのぎだと分かっていても抗おうとはしない、「自分が必要としているからそれをでっち上げた」自覚があるから、という点も真理だなー、と。
で、ストーリーはフラグを回収してジェフの霊の帰還というオカルト話に繋がるわけですが。全くそれを信じられないエンジェル「信じたいという意志が合理的な精神と対立する場合はいつでもどこでも必ず前者が後者を蹴倒す」コレを普段から自分たちみんながやっていることだ、と結論付けた上で、その話を亡きジェフの妻、キルスティンとティムの友人という立場で聞かなければいけなかった彼女の心境を思うと(つД`) この件を大っぴらに本にまですることでティムが彼自身の地位を貶めることを知っていながら、できることが何もなかったという彼女の無力感。エンジェルの知性の存在は彼女にとって最大の不幸をもたらしたと言えるのかもしれない。彼女は愛する人たちの心情や考え方も、同時にそのバカらしさも全てが見えすぎてしまった。結果から遡って望む答えを得ようとするティムとキルスティン。「現実を確認せず、願望充足と自閉で自分を見失っている。不気味な自閉だわ、だってそれがたった一つの考えを核にしたものだから。」でも、ビルと違って日常生活を普通に送れるが故に、他者・社会は彼らの狂気に気づかず、彼らは閉じ込められもしないし、ある意味ではまるで狂っていないということになる。この辺の鳥肌立ちっぷりがマジ共感できる(((゜Д゜;)))
「目に見えない神様を信じてるのと、目に見えない死んだ息子を信じてるのと、どう違うの?ある目に見えなさと別の目に見えなさをどう区別すればいい?・・・前者は多くの人が信じてるけど、後者を信じる人はいないも同然――これがちがいだし、こういう言い方をするとこの主観性は明確になる。・・・神様を信じてる人々がまちがいをしてるのか、そういう信念体系は検証のしようがないからわからない。単純に信仰なのよ。」あーこの辺、エンジェルの気持ちに自分が乗り移ったみたい(´Д`;) こんだけ論理的にバカらしいと考えていながら、「ジェフを愛してたから信じたい」と思ってしまうエンジェル。更に「もっとひどいことに」と前置きした上で「ティムとキルスティンの信念をぶち壊したくないから」否定できないと告白する。彼らに排除されることへの恐怖、有名人である彼らとの繋がりが、落ちぶれたインテリ(少なくとも彼女はその点に非常に大きなコンプレックスを抱いている女性として描写されてきた)としての彼女のアイデンティティの一部であり、彼女自身のプライドを形成するものであったと認めたエンジェルの深淵の苦悩と切なさ。「たぶん世界ってのはこういう具合に動かされてるのね。弱さによって。」彼女の孤独と嘆きが胸に沁みました(;_;)
8章、『高い城~』を思えば、二十年ほど後に書かれた遺作の主人公がホンダ車に乗ってるのはグッと来ますな。そこからビルとの車の話で彼が「安物と高級品の差が縮まるのはいいこと、当時といまの社会の変化を示すもの」と言う点には心から同意。それが進歩だって、少なくとも日.本人はそう信じて製品を作り続けてのし上がった時代だもんね、当時は(´-`) ビルについて神の実在について問われた主教の苦しそうなこと!(爆笑)その後「死んだ息子が戻ってくるなんてあり得ない」と言われてブチ切れてメチャクチャな理屈こね始めるティム(ノ∀`) 「目に見える物質しか信じないビルの信念体系の方に問題がある」って?「魂や霊的な目に見えないものを否定することはすべての存在を否定することになる」だって?「人が何を信じるか、何を知るかは最終的には神に依存する。同意するしないは自分の意志では決められない。・・・だったら君は何を信じるんだ?・・・私たちにはわからない。神を信じるしかない。・・・信仰がほとんどない現代において、死んだのは神ではない。死んだのは私たちの信仰なのだ。」この怒涛のティモシー主教のセリフに私のキリ○ト教(ほか宗教全般)への忌避、不信の理由が全力で込められているような気が致しました^^ その後に続くこれまた長いセリフで「創造者がいなければ生まれてきた意味がない」とティムが考えていること、そんな生き方は(おそらく彼にとっては)とてつもなく虚しく恐ろしいものであること、また自分で作ったものでなければ必ずどこかに「創造主」がいるはずだ、という基本的な一神教信者の思想は把握できた。しっかしビルは容赦ないな!「だけど何の証明にもなっていない。あなたたちが勝手に想定しているだけ」「原因はすぐにはわからなくても調べられる。」おお、ビルくんやっぱりただのキ○ガイじゃなかったのね・・・GJ!(@_@;)b
そして何故か目薬αで思い出したコリントの手紙、第一の方が出て来ちゃった。あーぁ、全然関係ないだろと思ってたらこういう巡り合わせだったのかよチクショウ!とエンジェルの言葉遣いが移る勢いでウンザリ(-_-)=3 「死人がよみがえらないとしたら神が実際よみがえらせなかったはずのキリ○トをよみがえらせたと言って、神に反するあかしを立てたことになる。・・・もしキリス○がよみがえらなかったとすれば、あなたがたの信仰は空虚なものとなり、あなたがたはいまなお罪の中にいることになろう。」10章でコレに対するキルスティンの反論「パウロがでっち上げてキ○ストの磔刑を説明したのよ。彼の死を筋が通るものにしようとして。でも実は原罪なんてものを信じてない限り何のためにもならない話!」ってのに拍手喝采(^m^)ヒャーッハッハッハ! 人が生まれながらに罪人だなんて、何て残酷なイカレた教義、その通り!「キリ○ト教って病気」マジでそれ以外の何物でもないと思いますとも、正直言って。(かなり私情が入ってしまってスミマセンm(__)m)
8章ビルのくだりに戻ると、彼の病気の完治見込みはゼロ、というのにああやっぱり(´・ω・`)と感じてしまう。そして不思議なことに宗教に関する語りでは嫌悪しか覚えないティムの芸術や音楽に対する感性には共感してしまう、という。「それらが不合理に苦闘する意志を、自分自身に向けて、自分自身の中に立ち戻らせ、苦闘をやめさせる力を持っていると信じていた」ショーペンハウエルの話。「決して満たされるはずのない生物学的な衝動を不動のものにする力を持つ音楽」・・・これはキルスティンとの関係についての後悔や懺悔でもあるのかな? でもってまた出てくる『ファウスト』ね。この後聖/書に向かえば良いのかソッチに行けば良いのか惑わせてくんなぁ、この本orz 「およそ生活と自由を自力で得た者とは、日々にこれを獲得してやまぬ者だけ」ウン、やっぱり自分にコレ以上生きる資格はないな!と思わされる一節ですね☆(今日も妹と散々揉めて鬱MAX☆「鬱うつ言うなら何でとっととタヒなないわけ!?」とまで言われたとも! 体重は45切っちゃったし。どうやってももう無理、腹イテーし過呼吸も前よりすぐ出る(^^;なっさけなーorz ・・・エンジェルはビルに同情してたけど、それって身内じゃないからできることだよ。ホント家族にとったらメンヘラなんて害虫でしかない。でも入院や施設も金が要るからどうしようもない。だから煮詰まった時こうやって本と海外ネタと貴重な友達の温情にすがるわけ。最低だけど、そうやって踏みとどまるしかない。だってそれこそ互いの家が見えるくらいの近所で同名の方が先にやらかして下さってるんだもの/(^O^)\ だから絶対家での実行は避けなきゃだし、なるべくならソレと分からない形で終わらせなきゃいけないという。本当病み極まってて重ね重ねスミマセン)
ドイツ啓蒙主義からヴァレンシュタインについて、ティムが「あんなに知的で学のある、当時の最も強力な偉人がどうして占星術なんかを少しでも信じられたんだろう?」と言うのは、彼自身が息子の降霊を信じて疑わない状態になってしまった主教であることを考えるととてつもない皮肉ですね。彼が疲れている、と感じる以上にエンジェルの精神的摩耗が身に沁みる。相容れない奇妙な二つの世界を行き来している彼女の。
9章、遂にキ○ストの否定には至ったものの、前章を見る限り神――創造主――の存在についてはまだ信仰を捨てられないでいるだろうティムの精いっぱいの妥協とも言える決意。今度は霊媒を通じて「死後の世界」を証明しようとする彼と、死してなお父に利用されようとする夫へのエンジェルの同情が切ない(つД`) キリ○ト教が有効かどうか? すべての宗教がシステムとしては有効だよ、信者がいて、その存在自体が力を持つ以上「神」は存在すると言っても良い。そんなバカなことで悩んでんのかこのオッサンは、息子が死んで愛人が病気なのに、いい加減にしろよ、ってイライラしてくるな(^ω^#)ビキビキ でも彼がその「信念欠如」とやらのために自分の生涯とキャリアを捨て去る、とか「有効か」という言葉では彼の心と精神の内部で激突している力の規模を示すには悲しいほど不十分、と他者の目にも見えてしまうというのは、何というか信仰者のおっそろしいトコやな、と感じた(´-`) 当たり前だけど、あちら側にはあちら側の苦しみもあるんや・・・私いっつも神様にすがって逃げられる人は良いなぁ、と羨んできたクチですけど。相手の立場に立って、その痛みを考えることを怠ってきたことに今更ながら反省しました。
そして、ティムとキルスティン二人の関係性が実は希薄なもの、というか意外と互いに自分のことしか考えていない状態にすぐ陥ってしまうんだ、ということも明らかになってきたなー。クスリの影響でイカレてどん底に向かいつつあるキルスティンに、ティムとまとめて引きずられつつあることに怯えるエンジェル。自分が出すオカルト本へのティムの冷静な分析「教会にとってあの本は反動的過ぎて辞職せざるを得なくなるだろうから、その前に主教を辞職する」そこまで分かっていながら、反戦運動で体制の屈服に成功したから今回もできるはずだ、と。前回は若者の支持があって今回は世間に力を持つ誰からの支持も得られないことが明らかなのに。ジェフの死、あるいは主教とキルスティンとの過ちから、みんなまとめて狂ってしまった。「死んだジェフと話すことがティム・アーチャーの信仰体系すべて、信仰そのものの総括。信仰か、あるいはその喪失か。彼にとってキ○ストを失うのはすべてを失うこと・・・そしてそれは既に失ってる・・・ビルによって、あるいはその前か。」エンジェルの洞察力相変わらず冴えわたり過ぎて悲しい。「ティムの息子、あたしの夫が知的問題に従属させられる――あたしなら決してそんな見方はできない。それはジェフを非人間化して道具に、喋る本に変えられるに等しい。・・・ジェフがもし重要なら、それは人間としてじゃなくて本として重要なのであって、それは本のための本であり、知識でも知識のための本ですらないってこと。本が現実。ティムが息子を愛するには、息子を一種の本として扱わなきゃいけない。・・・『ファウスト』の一節とは反対にティムは「留まれ」という瞬間を見つけてはいない」って本当にジェフの妻、ティムの信奉者として気づいてしまうと切な過ぎる事実(´;ω;`)
そんな彼女が自分もティムと大差ない、と気づいた神曲のエピソードでこちらもまぁた歯痛が出てきやがった(((゜Д゜;)))gkbr え、何ソレ文学的にそんな多用されるテーマなの?私軽いの二回くらいしかなったこと無いんだけど。(親知らずも五分で抜けたし。笑)それともコッチの読書の流れ見抜かれてんのか、どっかから? 『諸々の実態、諸々の偶有、またそれらの相関物が、唯一つの単純な光にほかならぬかのように、溶融しているのを』この一節がエンジェルの枠組みを作り、彼女を今の彼女にした言葉の並び。「これこそがあたしの源、このビジョンと報告、この最後のものの見方こそが」「この驚異は忘れられない」あー、何か先日尾骨痛に苦しみながら『地下室~』読んでた気分思い出すわ。もしくは中学上がる前の不安にドッキンコしながらカフカに出会った時のような。私にとっての“その瞬間”は『変身』との出会いだったのだろう、と。アイデンティティも世の中の捉え方も人生の不条理も、全て漠然と感じてきたことをあの一作品が代弁してくれているように感じてしまった。その瞬間からまさに自分自身も皮を被る努力を放棄して毒虫そのものに“変身”してしまったのかもしれない(´-`)
「学ぶものは苦しまねばならない。忘れがたい痛みが一滴また一滴と心に滴り、自分自身の絶望の中で意志に反し、叡智が神の恐ろしい恩寵を通じてやってくる」それでエンジェルはこんなにも聡明で知的で見たくないものまで見通してしまえるようになっちゃたのかー(つД`)可哀想や!「本と現実は融合して乖離できない。・・・本は物事の総合性を見せてくれる。・・・本によって、そのすべてが現実だということを理解せざるを得なかった。それ以上でも以下でもない。」全ての読書家の皆さんにとってコレは真実以外の何物でもないのではないでしょうか?少なくとも私は同意する。その体験から「自分が一変した、かつての自分には決して戻らなかった。本は他の人の心と自分を結び付けてくれるだけでなく、他の心のビジョンと結び付けてくれる。そうした心が理解して見ているものと繋がる。他の人の世界が、自分自身の世界を見るようにきれいに見える・・・空想なんかじゃない。・・・あらゆる領域は本物で、お互いに溶け合い、混じり合う。ここには調和があり、まったくの断絶というのはない。・・・でも神のちくしょうめが、あの夜を生き抜かなければ、あたしは決して真の意味で生まれなかっただろう。あれがあたしの現実世界への誕生だった。そして現実世界とは苦痛と美の混合であり、それが現実の正しい見方。だってそれが現実を造り上げる構成要素なんだから。」一言一句『変身』読後の自分と共通する心情。アレは短編だけど。でもその後エンジェルが「ティムは本と苦痛を統合していないか、やり方を間違った。・・・そのために思考の無限ループに入っていて当人はそれに気づいていない。・・・おそらくかなりの確率で疑問自体存在しないもの」という点にドキッと来ちゃった。当時の自分は心理的苦痛やプレッシャーは感じていても(まぁ小さい頃から自家中毒だの鉛筆噛みだの皮膚はがしだの堪えきれない子どもでしたので)、肉体的な苦痛と結びつくという点では先日の『地下室~』の方が大きいわけだし(-_-;) でも正直そこまでのインパクトを受けるにはトシ取りすぎてたかな(笑)
10章、霊媒の「心を読む」テクニックに翻弄される彼らが哀れ。特にキルスティン。「あたし自身の恐怖をオウム返しにしてる」エンジェルがジェフとの結びつき、宿命について考えた時、ティムが「キリ○ト教は宿命の圧政を廃止する手段として存在するようになったのに、結局それをあらかじめ決まった運命として再導入してしまった」と教えてくれた話を思い出す皮肉。「彼らの教義では二重の意味であらかじめ運命が決まっている、地獄か天国か」そんなエンジェルの言葉に「運命なんか古代世界、占星術と共に消えたのよ」と答える、霊媒に死を予言されたキルスティンの気持ち(´;ω;`)ブワッ 「いい目」と「罪悪感」についての女二人のやりとりも胸に迫るものがありますね。やっぱり隣の芝生は女性というか人間の業なのかなぁ?「自殺なんてDNAに刻まれたコードに命じられないとできない」なるほど、ソレでまだ父も私ものうのうと生き長らえてしまってんのか。妹にそういうことらしい、ってこの本読ませるかなー(笑)
キルスティンと寝ながら毎週そのことについて告解して、彼女にもそれを強いるティムは病的としか思えないし、キルスティンが病む道理も納得。そして彼の主教としての立場や経歴を奪ったのは全て自分だと、「あたしのせい」だと考えてしまうキルスティンの切なさ。FEM活動の先頭に立っていた彼女が女性としての己を嫌悪し出すまでに至るとか(つД`)何でや・・・?二人を出会わせてしまったエンジェルも更に可哀想じゃん。「あの降霊会に感謝する唯一の点は、他の人があたし自身や人生や、あたしのなれの果てについての認識を表現してくれたってこと。これから直面しなきゃいけないものに直面し、やるべきことをやるだけの勇気をもらった」フラグ立ちまくってますがなー(´Д`;) 若い内に本の文言に自己の規範や価値観を見出したエンジェルと対照的に、人生の終わりに直接他者によって己が何者であるか形を教えてもらった、というのがキルスティンの姿なんですね。上手いわーディックさんのキャラ対比!
で、ストーリーはフラグを回収してジェフの霊の帰還というオカルト話に繋がるわけですが。全くそれを信じられないエンジェル「信じたいという意志が合理的な精神と対立する場合はいつでもどこでも必ず前者が後者を蹴倒す」コレを普段から自分たちみんながやっていることだ、と結論付けた上で、その話を亡きジェフの妻、キルスティンとティムの友人という立場で聞かなければいけなかった彼女の心境を思うと(つД`) この件を大っぴらに本にまですることでティムが彼自身の地位を貶めることを知っていながら、できることが何もなかったという彼女の無力感。エンジェルの知性の存在は彼女にとって最大の不幸をもたらしたと言えるのかもしれない。彼女は愛する人たちの心情や考え方も、同時にそのバカらしさも全てが見えすぎてしまった。結果から遡って望む答えを得ようとするティムとキルスティン。「現実を確認せず、願望充足と自閉で自分を見失っている。不気味な自閉だわ、だってそれがたった一つの考えを核にしたものだから。」でも、ビルと違って日常生活を普通に送れるが故に、他者・社会は彼らの狂気に気づかず、彼らは閉じ込められもしないし、ある意味ではまるで狂っていないということになる。この辺の鳥肌立ちっぷりがマジ共感できる(((゜Д゜;)))
「目に見えない神様を信じてるのと、目に見えない死んだ息子を信じてるのと、どう違うの?ある目に見えなさと別の目に見えなさをどう区別すればいい?・・・前者は多くの人が信じてるけど、後者を信じる人はいないも同然――これがちがいだし、こういう言い方をするとこの主観性は明確になる。・・・神様を信じてる人々がまちがいをしてるのか、そういう信念体系は検証のしようがないからわからない。単純に信仰なのよ。」あーこの辺、エンジェルの気持ちに自分が乗り移ったみたい(´Д`;) こんだけ論理的にバカらしいと考えていながら、「ジェフを愛してたから信じたい」と思ってしまうエンジェル。更に「もっとひどいことに」と前置きした上で「ティムとキルスティンの信念をぶち壊したくないから」否定できないと告白する。彼らに排除されることへの恐怖、有名人である彼らとの繋がりが、落ちぶれたインテリ(少なくとも彼女はその点に非常に大きなコンプレックスを抱いている女性として描写されてきた)としての彼女のアイデンティティの一部であり、彼女自身のプライドを形成するものであったと認めたエンジェルの深淵の苦悩と切なさ。「たぶん世界ってのはこういう具合に動かされてるのね。弱さによって。」彼女の孤独と嘆きが胸に沁みました(;_;)
8章、『高い城~』を思えば、二十年ほど後に書かれた遺作の主人公がホンダ車に乗ってるのはグッと来ますな。そこからビルとの車の話で彼が「安物と高級品の差が縮まるのはいいこと、当時といまの社会の変化を示すもの」と言う点には心から同意。それが進歩だって、少なくとも日.本人はそう信じて製品を作り続けてのし上がった時代だもんね、当時は(´-`) ビルについて神の実在について問われた主教の苦しそうなこと!(爆笑)その後「死んだ息子が戻ってくるなんてあり得ない」と言われてブチ切れてメチャクチャな理屈こね始めるティム(ノ∀`) 「目に見える物質しか信じないビルの信念体系の方に問題がある」って?「魂や霊的な目に見えないものを否定することはすべての存在を否定することになる」だって?「人が何を信じるか、何を知るかは最終的には神に依存する。同意するしないは自分の意志では決められない。・・・だったら君は何を信じるんだ?・・・私たちにはわからない。神を信じるしかない。・・・信仰がほとんどない現代において、死んだのは神ではない。死んだのは私たちの信仰なのだ。」この怒涛のティモシー主教のセリフに私のキリ○ト教(ほか宗教全般)への忌避、不信の理由が全力で込められているような気が致しました^^ その後に続くこれまた長いセリフで「創造者がいなければ生まれてきた意味がない」とティムが考えていること、そんな生き方は(おそらく彼にとっては)とてつもなく虚しく恐ろしいものであること、また自分で作ったものでなければ必ずどこかに「創造主」がいるはずだ、という基本的な一神教信者の思想は把握できた。しっかしビルは容赦ないな!「だけど何の証明にもなっていない。あなたたちが勝手に想定しているだけ」「原因はすぐにはわからなくても調べられる。」おお、ビルくんやっぱりただのキ○ガイじゃなかったのね・・・GJ!(@_@;)b
そして何故か目薬αで思い出したコリントの手紙、第一の方が出て来ちゃった。あーぁ、全然関係ないだろと思ってたらこういう巡り合わせだったのかよチクショウ!とエンジェルの言葉遣いが移る勢いでウンザリ(-_-)=3 「死人がよみがえらないとしたら神が実際よみがえらせなかったはずのキリ○トをよみがえらせたと言って、神に反するあかしを立てたことになる。・・・もしキリス○がよみがえらなかったとすれば、あなたがたの信仰は空虚なものとなり、あなたがたはいまなお罪の中にいることになろう。」10章でコレに対するキルスティンの反論「パウロがでっち上げてキ○ストの磔刑を説明したのよ。彼の死を筋が通るものにしようとして。でも実は原罪なんてものを信じてない限り何のためにもならない話!」ってのに拍手喝采(^m^)ヒャーッハッハッハ! 人が生まれながらに罪人だなんて、何て残酷なイカレた教義、その通り!「キリ○ト教って病気」マジでそれ以外の何物でもないと思いますとも、正直言って。(かなり私情が入ってしまってスミマセンm(__)m)
8章ビルのくだりに戻ると、彼の病気の完治見込みはゼロ、というのにああやっぱり(´・ω・`)と感じてしまう。そして不思議なことに宗教に関する語りでは嫌悪しか覚えないティムの芸術や音楽に対する感性には共感してしまう、という。「それらが不合理に苦闘する意志を、自分自身に向けて、自分自身の中に立ち戻らせ、苦闘をやめさせる力を持っていると信じていた」ショーペンハウエルの話。「決して満たされるはずのない生物学的な衝動を不動のものにする力を持つ音楽」・・・これはキルスティンとの関係についての後悔や懺悔でもあるのかな? でもってまた出てくる『ファウスト』ね。この後聖/書に向かえば良いのかソッチに行けば良いのか惑わせてくんなぁ、この本orz 「およそ生活と自由を自力で得た者とは、日々にこれを獲得してやまぬ者だけ」ウン、やっぱり自分にコレ以上生きる資格はないな!と思わされる一節ですね☆(今日も妹と散々揉めて鬱MAX☆「鬱うつ言うなら何でとっととタヒなないわけ!?」とまで言われたとも! 体重は45切っちゃったし。どうやってももう無理、腹イテーし過呼吸も前よりすぐ出る(^^;なっさけなーorz ・・・エンジェルはビルに同情してたけど、それって身内じゃないからできることだよ。ホント家族にとったらメンヘラなんて害虫でしかない。でも入院や施設も金が要るからどうしようもない。だから煮詰まった時こうやって本と海外ネタと貴重な友達の温情にすがるわけ。最低だけど、そうやって踏みとどまるしかない。だってそれこそ互いの家が見えるくらいの近所で同名の方が先にやらかして下さってるんだもの/(^O^)\ だから絶対家での実行は避けなきゃだし、なるべくならソレと分からない形で終わらせなきゃいけないという。本当病み極まってて重ね重ねスミマセン)
ドイツ啓蒙主義からヴァレンシュタインについて、ティムが「あんなに知的で学のある、当時の最も強力な偉人がどうして占星術なんかを少しでも信じられたんだろう?」と言うのは、彼自身が息子の降霊を信じて疑わない状態になってしまった主教であることを考えるととてつもない皮肉ですね。彼が疲れている、と感じる以上にエンジェルの精神的摩耗が身に沁みる。相容れない奇妙な二つの世界を行き来している彼女の。
9章、遂にキ○ストの否定には至ったものの、前章を見る限り神――創造主――の存在についてはまだ信仰を捨てられないでいるだろうティムの精いっぱいの妥協とも言える決意。今度は霊媒を通じて「死後の世界」を証明しようとする彼と、死してなお父に利用されようとする夫へのエンジェルの同情が切ない(つД`) キリ○ト教が有効かどうか? すべての宗教がシステムとしては有効だよ、信者がいて、その存在自体が力を持つ以上「神」は存在すると言っても良い。そんなバカなことで悩んでんのかこのオッサンは、息子が死んで愛人が病気なのに、いい加減にしろよ、ってイライラしてくるな(^ω^#)ビキビキ でも彼がその「信念欠如」とやらのために自分の生涯とキャリアを捨て去る、とか「有効か」という言葉では彼の心と精神の内部で激突している力の規模を示すには悲しいほど不十分、と他者の目にも見えてしまうというのは、何というか信仰者のおっそろしいトコやな、と感じた(´-`) 当たり前だけど、あちら側にはあちら側の苦しみもあるんや・・・私いっつも神様にすがって逃げられる人は良いなぁ、と羨んできたクチですけど。相手の立場に立って、その痛みを考えることを怠ってきたことに今更ながら反省しました。
そして、ティムとキルスティン二人の関係性が実は希薄なもの、というか意外と互いに自分のことしか考えていない状態にすぐ陥ってしまうんだ、ということも明らかになってきたなー。クスリの影響でイカレてどん底に向かいつつあるキルスティンに、ティムとまとめて引きずられつつあることに怯えるエンジェル。自分が出すオカルト本へのティムの冷静な分析「教会にとってあの本は反動的過ぎて辞職せざるを得なくなるだろうから、その前に主教を辞職する」そこまで分かっていながら、反戦運動で体制の屈服に成功したから今回もできるはずだ、と。前回は若者の支持があって今回は世間に力を持つ誰からの支持も得られないことが明らかなのに。ジェフの死、あるいは主教とキルスティンとの過ちから、みんなまとめて狂ってしまった。「死んだジェフと話すことがティム・アーチャーの信仰体系すべて、信仰そのものの総括。信仰か、あるいはその喪失か。彼にとってキ○ストを失うのはすべてを失うこと・・・そしてそれは既に失ってる・・・ビルによって、あるいはその前か。」エンジェルの洞察力相変わらず冴えわたり過ぎて悲しい。「ティムの息子、あたしの夫が知的問題に従属させられる――あたしなら決してそんな見方はできない。それはジェフを非人間化して道具に、喋る本に変えられるに等しい。・・・ジェフがもし重要なら、それは人間としてじゃなくて本として重要なのであって、それは本のための本であり、知識でも知識のための本ですらないってこと。本が現実。ティムが息子を愛するには、息子を一種の本として扱わなきゃいけない。・・・『ファウスト』の一節とは反対にティムは「留まれ」という瞬間を見つけてはいない」って本当にジェフの妻、ティムの信奉者として気づいてしまうと切な過ぎる事実(´;ω;`)
そんな彼女が自分もティムと大差ない、と気づいた神曲のエピソードでこちらもまぁた歯痛が出てきやがった(((゜Д゜;)))gkbr え、何ソレ文学的にそんな多用されるテーマなの?私軽いの二回くらいしかなったこと無いんだけど。(親知らずも五分で抜けたし。笑)それともコッチの読書の流れ見抜かれてんのか、どっかから? 『諸々の実態、諸々の偶有、またそれらの相関物が、唯一つの単純な光にほかならぬかのように、溶融しているのを』この一節がエンジェルの枠組みを作り、彼女を今の彼女にした言葉の並び。「これこそがあたしの源、このビジョンと報告、この最後のものの見方こそが」「この驚異は忘れられない」あー、何か先日尾骨痛に苦しみながら『地下室~』読んでた気分思い出すわ。もしくは中学上がる前の不安にドッキンコしながらカフカに出会った時のような。私にとっての“その瞬間”は『変身』との出会いだったのだろう、と。アイデンティティも世の中の捉え方も人生の不条理も、全て漠然と感じてきたことをあの一作品が代弁してくれているように感じてしまった。その瞬間からまさに自分自身も皮を被る努力を放棄して毒虫そのものに“変身”してしまったのかもしれない(´-`)
「学ぶものは苦しまねばならない。忘れがたい痛みが一滴また一滴と心に滴り、自分自身の絶望の中で意志に反し、叡智が神の恐ろしい恩寵を通じてやってくる」それでエンジェルはこんなにも聡明で知的で見たくないものまで見通してしまえるようになっちゃたのかー(つД`)可哀想や!「本と現実は融合して乖離できない。・・・本は物事の総合性を見せてくれる。・・・本によって、そのすべてが現実だということを理解せざるを得なかった。それ以上でも以下でもない。」全ての読書家の皆さんにとってコレは真実以外の何物でもないのではないでしょうか?少なくとも私は同意する。その体験から「自分が一変した、かつての自分には決して戻らなかった。本は他の人の心と自分を結び付けてくれるだけでなく、他の心のビジョンと結び付けてくれる。そうした心が理解して見ているものと繋がる。他の人の世界が、自分自身の世界を見るようにきれいに見える・・・空想なんかじゃない。・・・あらゆる領域は本物で、お互いに溶け合い、混じり合う。ここには調和があり、まったくの断絶というのはない。・・・でも神のちくしょうめが、あの夜を生き抜かなければ、あたしは決して真の意味で生まれなかっただろう。あれがあたしの現実世界への誕生だった。そして現実世界とは苦痛と美の混合であり、それが現実の正しい見方。だってそれが現実を造り上げる構成要素なんだから。」一言一句『変身』読後の自分と共通する心情。アレは短編だけど。でもその後エンジェルが「ティムは本と苦痛を統合していないか、やり方を間違った。・・・そのために思考の無限ループに入っていて当人はそれに気づいていない。・・・おそらくかなりの確率で疑問自体存在しないもの」という点にドキッと来ちゃった。当時の自分は心理的苦痛やプレッシャーは感じていても(まぁ小さい頃から自家中毒だの鉛筆噛みだの皮膚はがしだの堪えきれない子どもでしたので)、肉体的な苦痛と結びつくという点では先日の『地下室~』の方が大きいわけだし(-_-;) でも正直そこまでのインパクトを受けるにはトシ取りすぎてたかな(笑)
10章、霊媒の「心を読む」テクニックに翻弄される彼らが哀れ。特にキルスティン。「あたし自身の恐怖をオウム返しにしてる」エンジェルがジェフとの結びつき、宿命について考えた時、ティムが「キリ○ト教は宿命の圧政を廃止する手段として存在するようになったのに、結局それをあらかじめ決まった運命として再導入してしまった」と教えてくれた話を思い出す皮肉。「彼らの教義では二重の意味であらかじめ運命が決まっている、地獄か天国か」そんなエンジェルの言葉に「運命なんか古代世界、占星術と共に消えたのよ」と答える、霊媒に死を予言されたキルスティンの気持ち(´;ω;`)ブワッ 「いい目」と「罪悪感」についての女二人のやりとりも胸に迫るものがありますね。やっぱり隣の芝生は女性というか人間の業なのかなぁ?「自殺なんてDNAに刻まれたコードに命じられないとできない」なるほど、ソレでまだ父も私ものうのうと生き長らえてしまってんのか。妹にそういうことらしい、ってこの本読ませるかなー(笑)
キルスティンと寝ながら毎週そのことについて告解して、彼女にもそれを強いるティムは病的としか思えないし、キルスティンが病む道理も納得。そして彼の主教としての立場や経歴を奪ったのは全て自分だと、「あたしのせい」だと考えてしまうキルスティンの切なさ。FEM活動の先頭に立っていた彼女が女性としての己を嫌悪し出すまでに至るとか(つД`)何でや・・・?二人を出会わせてしまったエンジェルも更に可哀想じゃん。「あの降霊会に感謝する唯一の点は、他の人があたし自身や人生や、あたしのなれの果てについての認識を表現してくれたってこと。これから直面しなきゃいけないものに直面し、やるべきことをやるだけの勇気をもらった」フラグ立ちまくってますがなー(´Д`;) 若い内に本の文言に自己の規範や価値観を見出したエンジェルと対照的に、人生の終わりに直接他者によって己が何者であるか形を教えてもらった、というのがキルスティンの姿なんですね。上手いわーディックさんのキャラ対比!
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で、ストーリーはフラグを回収してジェフの霊の帰還というオカルト話に繋がるわけですが。全くそれを信じられないエンジェル「信じたいという意志が合理的な精神と対立する場合はいつでもどこでも必ず前者が後者を蹴倒す」コレを普段から自分たちみんながやっていることだ、と結論付けた上で、その話を亡きジェフの妻、キルスティンとティムの友人という立場で聞かなければいけなかった彼女の心境を思うと(つД`) この件を大っぴらに本にまですることでティムが彼自身の地位を貶めることを知っていながら、できることが何もなかったという彼女の無力感。エンジェルの知性の存在は彼女にとって最大の不幸をもたらしたと言えるのかもしれない。彼女は愛する人たちの心情や考え方も、同時にそのバカらしさも全てが見えすぎてしまった。結果から遡って望む答えを得ようとするティムとキルスティン。「現実を確認せず、願望充足と自閉で自分を見失っている。不気味な自閉だわ、だってそれがたった一つの考えを核にしたものだから。」でも、ビルと違って日常生活を普通に送れるが故に、他者・社会は彼らの狂気に気づかず、彼らは閉じ込められもしないし、ある意味ではまるで狂っていないということになる。この辺の鳥肌立ちっぷりがマジ共感できる(((゜Д゜;)))
「目に見えない神様を信じてるのと、目に見えない死んだ息子を信じてるのと、どう違うの?ある目に見えなさと別の目に見えなさをどう区別すればいい?・・・前者は多くの人が信じてるけど、後者を信じる人はいないも同然――これがちがいだし、こういう言い方をするとこの主観性は明確になる。・・・神様を信じてる人々がまちがいをしてるのか、そういう信念体系は検証のしようがないからわからない。単純に信仰なのよ。」あーこの辺、エンジェルの気持ちに自分が乗り移ったみたい(´Д`;) こんだけ論理的にバカらしいと考えていながら、「ジェフを愛してたから信じたい」と思ってしまうエンジェル。更に「もっとひどいことに」と前置きした上で「ティムとキルスティンの信念をぶち壊したくないから」否定できないと告白する。彼らに排除されることへの恐怖、有名人である彼らとの繋がりが、落ちぶれたインテリ(少なくとも彼女はその点に非常に大きなコンプレックスを抱いている女性として描写されてきた)としての彼女のアイデンティティの一部であり、彼女自身のプライドを形成するものであったと認めたエンジェルの深淵の苦悩と切なさ。「たぶん世界ってのはこういう具合に動かされてるのね。弱さによって。」彼女の孤独と嘆きが胸に沁みました(;_;)
8章、『高い城~』を思えば、二十年ほど後に書かれた遺作の主人公がホンダ車に乗ってるのはグッと来ますな。そこからビルとの車の話で彼が「安物と高級品の差が縮まるのはいいこと、当時といまの社会の変化を示すもの」と言う点には心から同意。それが進歩だって、少なくとも日.本人はそう信じて製品を作り続けてのし上がった時代だもんね、当時は(´-`) ビルについて神の実在について問われた主教の苦しそうなこと!(爆笑)その後「死んだ息子が戻ってくるなんてあり得ない」と言われてブチ切れてメチャクチャな理屈こね始めるティム(ノ∀`) 「目に見える物質しか信じないビルの信念体系の方に問題がある」って?「魂や霊的な目に見えないものを否定することはすべての存在を否定することになる」だって?「人が何を信じるか、何を知るかは最終的には神に依存する。同意するしないは自分の意志では決められない。・・・だったら君は何を信じるんだ?・・・私たちにはわからない。神を信じるしかない。・・・信仰がほとんどない現代において、死んだのは神ではない。死んだのは私たちの信仰なのだ。」この怒涛のティモシー主教のセリフに私のキリ○ト教(ほか宗教全般)への忌避、不信の理由が全力で込められているような気が致しました^^ その後に続くこれまた長いセリフで「創造者がいなければ生まれてきた意味がない」とティムが考えていること、そんな生き方は(おそらく彼にとっては)とてつもなく虚しく恐ろしいものであること、また自分で作ったものでなければ必ずどこかに「創造主」がいるはずだ、という基本的な一神教信者の思想は把握できた。しっかしビルは容赦ないな!「だけど何の証明にもなっていない。あなたたちが勝手に想定しているだけ」「原因はすぐにはわからなくても調べられる。」おお、ビルくんやっぱりただのキ○ガイじゃなかったのね・・・GJ!(@_@;)b
そして何故か目薬αで思い出したコリントの手紙、第一の方が出て来ちゃった。あーぁ、全然関係ないだろと思ってたらこういう巡り合わせだったのかよチクショウ!とエンジェルの言葉遣いが移る勢いでウンザリ(-_-)=3 「死人がよみがえらないとしたら神が実際よみがえらせなかったはずのキリ○トをよみがえらせたと言って、神に反するあかしを立てたことになる。・・・もしキリス○がよみがえらなかったとすれば、あなたがたの信仰は空虚なものとなり、あなたがたはいまなお罪の中にいることになろう。」10章でコレに対するキルスティンの反論「パウロがでっち上げてキ○ストの磔刑を説明したのよ。彼の死を筋が通るものにしようとして。でも実は原罪なんてものを信じてない限り何のためにもならない話!」ってのに拍手喝采(^m^)ヒャーッハッハッハ! 人が生まれながらに罪人だなんて、何て残酷なイカレた教義、その通り!「キリ○ト教って病気」マジでそれ以外の何物でもないと思いますとも、正直言って。(かなり私情が入ってしまってスミマセンm(__)m)
8章ビルのくだりに戻ると、彼の病気の完治見込みはゼロ、というのにああやっぱり(´・ω・`)と感じてしまう。そして不思議なことに宗教に関する語りでは嫌悪しか覚えないティムの芸術や音楽に対する感性には共感してしまう、という。「それらが不合理に苦闘する意志を、自分自身に向けて、自分自身の中に立ち戻らせ、苦闘をやめさせる力を持っていると信じていた」ショーペンハウエルの話。「決して満たされるはずのない生物学的な衝動を不動のものにする力を持つ音楽」・・・これはキルスティンとの関係についての後悔や懺悔でもあるのかな? でもってまた出てくる『ファウスト』ね。この後聖/書に向かえば良いのかソッチに行けば良いのか惑わせてくんなぁ、この本orz 「およそ生活と自由を自力で得た者とは、日々にこれを獲得してやまぬ者だけ」ウン、やっぱり自分にコレ以上生きる資格はないな!と思わされる一節ですね☆(今日も妹と散々揉めて鬱MAX☆「鬱うつ言うなら何でとっととタヒなないわけ!?」とまで言われたとも! 体重は45切っちゃったし。どうやってももう無理、腹イテーし過呼吸も前よりすぐ出る(^^;なっさけなーorz ・・・エンジェルはビルに同情してたけど、それって身内じゃないからできることだよ。ホント家族にとったらメンヘラなんて害虫でしかない。でも入院や施設も金が要るからどうしようもない。だから煮詰まった時こうやって本と海外ネタと貴重な友達の温情にすがるわけ。最低だけど、そうやって踏みとどまるしかない。だってそれこそ互いの家が見えるくらいの近所で同名の方が先にやらかして下さってるんだもの/(^O^)\ だから絶対家での実行は避けなきゃだし、なるべくならソレと分からない形で終わらせなきゃいけないという。本当病み極まってて重ね重ねスミマセン)
ドイツ啓蒙主義からヴァレンシュタインについて、ティムが「あんなに知的で学のある、当時の最も強力な偉人がどうして占星術なんかを少しでも信じられたんだろう?」と言うのは、彼自身が息子の降霊を信じて疑わない状態になってしまった主教であることを考えるととてつもない皮肉ですね。彼が疲れている、と感じる以上にエンジェルの精神的摩耗が身に沁みる。相容れない奇妙な二つの世界を行き来している彼女の。
9章、遂にキ○ストの否定には至ったものの、前章を見る限り神――創造主――の存在についてはまだ信仰を捨てられないでいるだろうティムの精いっぱいの妥協とも言える決意。今度は霊媒を通じて「死後の世界」を証明しようとする彼と、死してなお父に利用されようとする夫へのエンジェルの同情が切ない(つД`) キリ○ト教が有効かどうか? すべての宗教がシステムとしては有効だよ、信者がいて、その存在自体が力を持つ以上「神」は存在すると言っても良い。そんなバカなことで悩んでんのかこのオッサンは、息子が死んで愛人が病気なのに、いい加減にしろよ、ってイライラしてくるな(^ω^#)ビキビキ でも彼がその「信念欠如」とやらのために自分の生涯とキャリアを捨て去る、とか「有効か」という言葉では彼の心と精神の内部で激突している力の規模を示すには悲しいほど不十分、と他者の目にも見えてしまうというのは、何というか信仰者のおっそろしいトコやな、と感じた(´-`) 当たり前だけど、あちら側にはあちら側の苦しみもあるんや・・・私いっつも神様にすがって逃げられる人は良いなぁ、と羨んできたクチですけど。相手の立場に立って、その痛みを考えることを怠ってきたことに今更ながら反省しました。
そして、ティムとキルスティン二人の関係性が実は希薄なもの、というか意外と互いに自分のことしか考えていない状態にすぐ陥ってしまうんだ、ということも明らかになってきたなー。クスリの影響でイカレてどん底に向かいつつあるキルスティンに、ティムとまとめて引きずられつつあることに怯えるエンジェル。自分が出すオカルト本へのティムの冷静な分析「教会にとってあの本は反動的過ぎて辞職せざるを得なくなるだろうから、その前に主教を辞職する」そこまで分かっていながら、反戦運動で体制の屈服に成功したから今回もできるはずだ、と。前回は若者の支持があって今回は世間に力を持つ誰からの支持も得られないことが明らかなのに。ジェフの死、あるいは主教とキルスティンとの過ちから、みんなまとめて狂ってしまった。「死んだジェフと話すことがティム・アーチャーの信仰体系すべて、信仰そのものの総括。信仰か、あるいはその喪失か。彼にとってキ○ストを失うのはすべてを失うこと・・・そしてそれは既に失ってる・・・ビルによって、あるいはその前か。」エンジェルの洞察力相変わらず冴えわたり過ぎて悲しい。「ティムの息子、あたしの夫が知的問題に従属させられる――あたしなら決してそんな見方はできない。それはジェフを非人間化して道具に、喋る本に変えられるに等しい。・・・ジェフがもし重要なら、それは人間としてじゃなくて本として重要なのであって、それは本のための本であり、知識でも知識のための本ですらないってこと。本が現実。ティムが息子を愛するには、息子を一種の本として扱わなきゃいけない。・・・『ファウスト』の一節とは反対にティムは「留まれ」という瞬間を見つけてはいない」って本当にジェフの妻、ティムの信奉者として気づいてしまうと切な過ぎる事実(´;ω;`)
そんな彼女が自分もティムと大差ない、と気づいた神曲のエピソードでこちらもまぁた歯痛が出てきやがった(((゜Д゜;)))gkbr え、何ソレ文学的にそんな多用されるテーマなの?私軽いの二回くらいしかなったこと無いんだけど。(親知らずも五分で抜けたし。笑)それともコッチの読書の流れ見抜かれてんのか、どっかから? 『諸々の実態、諸々の偶有、またそれらの相関物が、唯一つの単純な光にほかならぬかのように、溶融しているのを』この一節がエンジェルの枠組みを作り、彼女を今の彼女にした言葉の並び。「これこそがあたしの源、このビジョンと報告、この最後のものの見方こそが」「この驚異は忘れられない」あー、何か先日尾骨痛に苦しみながら『地下室~』読んでた気分思い出すわ。もしくは中学上がる前の不安にドッキンコしながらカフカに出会った時のような。私にとっての“その瞬間”は『変身』との出会いだったのだろう、と。アイデンティティも世の中の捉え方も人生の不条理も、全て漠然と感じてきたことをあの一作品が代弁してくれているように感じてしまった。その瞬間からまさに自分自身も皮を被る努力を放棄して毒虫そのものに“変身”してしまったのかもしれない(´-`)
「学ぶものは苦しまねばならない。忘れがたい痛みが一滴また一滴と心に滴り、自分自身の絶望の中で意志に反し、叡智が神の恐ろしい恩寵を通じてやってくる」それでエンジェルはこんなにも聡明で知的で見たくないものまで見通してしまえるようになっちゃたのかー(つД`)可哀想や!「本と現実は融合して乖離できない。・・・本は物事の総合性を見せてくれる。・・・本によって、そのすべてが現実だということを理解せざるを得なかった。それ以上でも以下でもない。」全ての読書家の皆さんにとってコレは真実以外の何物でもないのではないでしょうか?少なくとも私は同意する。その体験から「自分が一変した、かつての自分には決して戻らなかった。本は他の人の心と自分を結び付けてくれるだけでなく、他の心のビジョンと結び付けてくれる。そうした心が理解して見ているものと繋がる。他の人の世界が、自分自身の世界を見るようにきれいに見える・・・空想なんかじゃない。・・・あらゆる領域は本物で、お互いに溶け合い、混じり合う。ここには調和があり、まったくの断絶というのはない。・・・でも神のちくしょうめが、あの夜を生き抜かなければ、あたしは決して真の意味で生まれなかっただろう。あれがあたしの現実世界への誕生だった。そして現実世界とは苦痛と美の混合であり、それが現実の正しい見方。だってそれが現実を造り上げる構成要素なんだから。」一言一句『変身』読後の自分と共通する心情。アレは短編だけど。でもその後エンジェルが「ティムは本と苦痛を統合していないか、やり方を間違った。・・・そのために思考の無限ループに入っていて当人はそれに気づいていない。・・・おそらくかなりの確率で疑問自体存在しないもの」という点にドキッと来ちゃった。当時の自分は心理的苦痛やプレッシャーは感じていても(まぁ小さい頃から自家中毒だの鉛筆噛みだの皮膚はがしだの堪えきれない子どもでしたので)、肉体的な苦痛と結びつくという点では先日の『地下室~』の方が大きいわけだし(-_-;) でも正直そこまでのインパクトを受けるにはトシ取りすぎてたかな(笑)
10章、霊媒の「心を読む」テクニックに翻弄される彼らが哀れ。特にキルスティン。「あたし自身の恐怖をオウム返しにしてる」エンジェルがジェフとの結びつき、宿命について考えた時、ティムが「キリ○ト教は宿命の圧政を廃止する手段として存在するようになったのに、結局それをあらかじめ決まった運命として再導入してしまった」と教えてくれた話を思い出す皮肉。「彼らの教義では二重の意味であらかじめ運命が決まっている、地獄か天国か」そんなエンジェルの言葉に「運命なんか古代世界、占星術と共に消えたのよ」と答える、霊媒に死を予言されたキルスティンの気持ち(´;ω;`)ブワッ 「いい目」と「罪悪感」についての女二人のやりとりも胸に迫るものがありますね。やっぱり隣の芝生は女性というか人間の業なのかなぁ?「自殺なんてDNAに刻まれたコードに命じられないとできない」なるほど、ソレでまだ父も私ものうのうと生き長らえてしまってんのか。妹にそういうことらしい、ってこの本読ませるかなー(笑)
キルスティンと寝ながら毎週そのことについて告解して、彼女にもそれを強いるティムは病的としか思えないし、キルスティンが病む道理も納得。そして彼の主教としての立場や経歴を奪ったのは全て自分だと、「あたしのせい」だと考えてしまうキルスティンの切なさ。FEM活動の先頭に立っていた彼女が女性としての己を嫌悪し出すまでに至るとか(つД`)何でや・・・?二人を出会わせてしまったエンジェルも更に可哀想じゃん。「あの降霊会に感謝する唯一の点は、他の人があたし自身や人生や、あたしのなれの果てについての認識を表現してくれたってこと。これから直面しなきゃいけないものに直面し、やるべきことをやるだけの勇気をもらった」フラグ立ちまくってますがなー(´Д`;) 若い内に本の文言に自己の規範や価値観を見出したエンジェルと対照的に、人生の終わりに直接他者によって己が何者であるか形を教えてもらった、というのがキルスティンの姿なんですね。上手いわーディックさんのキャラ対比!
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