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あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願い致しますm(__)m
ということで、初詣SSSです。
今年もよろしくお願い致しますm(__)m
ということで、初詣SSSです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
吐く息が白い。漆黒の闇の中に異なる唇から放たれたそれが浮き上がり、混じり合う様をぼんやりと眺めていると、頭の上から少し震えた声が降ってきた。
「寒いねー」
声の主は彼。幼なじみまでいかない同級生。十年来の友だち。昔、好きだったひと。
声の主は彼。幼なじみまでいかない同級生。十年来の友だち。昔、好きだったひと。
「でも雪降らなくて良かった」
「ホントにね」
小さな呟きに返った柔らかい笑みに、少しだけ胸が軋んだ。
「覚えてる? 五年前も、一緒に初詣行ったよね」
「ああ、受験の時! タマとかチイとかと、みんなでお守り買ったよな!」
楽しそうに答える彼に、ほんの少し――あの日の、あの頃の切なさが蘇る。あの日、あの時、本当は……大声で叫んでしまいたかった、彼が好きだと。好きだった、彼が。タマやチイと喋っていることにすら嫉妬した。俯いて自嘲する私を不思議そうに覗きこむ彼に、困ったように微笑んだ。
「……まぁ、おまえはちょっとご利益薄かったかもしんねーけど」
ポンポン、と頭を撫でる彼の誤解を解くことはしないまま、私は優しい温もりに身を委ねた。神様に祈る瞬間すら、私は彼のことを想っていた。進学して離れ離れになるのが嫌だった。だから、本命の不合格は当然の報い。彼は、それを知らない。
「タマもチイも地元出ちゃって、大分寂しくなったねー」
「ホントだよなー。おまえが戻ってきて良かった」
眩い笑顔が、何のてらいも無い言葉が、凪いでいたはずの心を揺らす。
そんなこと、言わないで。そんな笑顔、見せないで――
「あ、明るくなってきた」
目の前にはほの白い光に包まれた水平線。未だ姿を見せない太陽に、私と彼の不確かな関係を思う。あの頃の私には勇気が無かった。彼を自分のものにしたい、誰にも渡したくないという妄執を抱きながら、関係を壊すほどの覚悟も、強烈な欲求ですら持ち得なかった。そうして、言葉を捨てた私は今、彼の隣を歩いている。この年の初めの静謐な時間を、彼と並んで共有していることが少し不思議だ。これは、あの頃の私にとっては夢のようなことなのかもしれない。途方も無いほど幸せで、愛しい時間なのかもしれない。でも、今の私は――
「何、いきなり首振って。何か今日のおまえ、おっかしー」
首を振って俯いた私に、彼が声を上げて笑い出す。
「何か、結局何も変わってなんかいないんだなぁ、って思って」
私が唇を尖らせれば、彼は急に真面目な調子で呟いた。
私が唇を尖らせれば、彼は急に真面目な調子で呟いた。
「そりゃそうだろ、おまえはおまえで、俺は俺。五年前も今も、これからも、ずっと変わらないよ」
思わず視線を滑らせた先にある彼の横顔は美しい。その美しい横顔を、触れることのできない横顔を、新しい日はまた飲み込んでゆく。
五年前も今も、これからも、変わらなければずっと傍にいてくれる――?
生まれては消えてゆく、声に出せない言葉たち。変わらない、変われない、それでも。
「今年は縁結びのお守り、買おっかな……」
「え、何て!?」
小さな呟きに大きく目を見開いて素っ頓狂な声を上げた彼に、今年初めて心からの笑みがこぼれた。
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吐く息が白い。漆黒の闇の中に異なる唇から放たれたそれが浮き上がり、混じり合う様をぼんやりと眺めていると、頭の上から少し震えた声が降ってきた。
「寒いねー」
声の主は彼。幼なじみまでいかない同級生。十年来の友だち。昔、好きだったひと。
声の主は彼。幼なじみまでいかない同級生。十年来の友だち。昔、好きだったひと。
「でも雪降らなくて良かった」
「ホントにね」
小さな呟きに返った柔らかい笑みに、少しだけ胸が軋んだ。
「覚えてる? 五年前も、一緒に初詣行ったよね」
「ああ、受験の時! タマとかチイとかと、みんなでお守り買ったよな!」
楽しそうに答える彼に、ほんの少し――あの日の、あの頃の切なさが蘇る。あの日、あの時、本当は……大声で叫んでしまいたかった、彼が好きだと。好きだった、彼が。タマやチイと喋っていることにすら嫉妬した。俯いて自嘲する私を不思議そうに覗きこむ彼に、困ったように微笑んだ。
「……まぁ、おまえはちょっとご利益薄かったかもしんねーけど」
ポンポン、と頭を撫でる彼の誤解を解くことはしないまま、私は優しい温もりに身を委ねた。神様に祈る瞬間すら、私は彼のことを想っていた。進学して離れ離れになるのが嫌だった。だから、本命の不合格は当然の報い。彼は、それを知らない。
「タマもチイも地元出ちゃって、大分寂しくなったねー」
「ホントだよなー。おまえが戻ってきて良かった」
眩い笑顔が、何のてらいも無い言葉が、凪いでいたはずの心を揺らす。
そんなこと、言わないで。そんな笑顔、見せないで――
「あ、明るくなってきた」
目の前にはほの白い光に包まれた水平線。未だ姿を見せない太陽に、私と彼の不確かな関係を思う。あの頃の私には勇気が無かった。彼を自分のものにしたい、誰にも渡したくないという妄執を抱きながら、関係を壊すほどの覚悟も、強烈な欲求ですら持ち得なかった。そうして、言葉を捨てた私は今、彼の隣を歩いている。この年の初めの静謐な時間を、彼と並んで共有していることが少し不思議だ。これは、あの頃の私にとっては夢のようなことなのかもしれない。途方も無いほど幸せで、愛しい時間なのかもしれない。でも、今の私は――
「何、いきなり首振って。何か今日のおまえ、おっかしー」
首を振って俯いた私に、彼が声を上げて笑い出す。
「何か、結局何も変わってなんかいないんだなぁ、って思って」
私が唇を尖らせれば、彼は急に真面目な調子で呟いた。
私が唇を尖らせれば、彼は急に真面目な調子で呟いた。
「そりゃそうだろ、おまえはおまえで、俺は俺。五年前も今も、これからも、ずっと変わらないよ」
思わず視線を滑らせた先にある彼の横顔は美しい。その美しい横顔を、触れることのできない横顔を、新しい日はまた飲み込んでゆく。
五年前も今も、これからも、変わらなければずっと傍にいてくれる――?
生まれては消えてゆく、声に出せない言葉たち。変わらない、変われない、それでも。
「今年は縁結びのお守り、買おっかな……」
「え、何て!?」
小さな呟きに大きく目を見開いて素っ頓狂な声を上げた彼に、今年初めて心からの笑みがこぼれた。
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