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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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『It's A Fine Day!』番外編SSS。(※単品でも読めます)微GL要素あり。
恋をしなければならない理由。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



恋を、しようと思った。
しなければならない、と思った。
 
このモヤモヤをスッキリと、心の中から追い払ってしまうために。
 
 
 
十七歳。
今の今まで、彼氏が欲しい、と思ったことはなかった。
友達みんなに彼氏ができても、クラスの半分以上の子に好きな人がいても。
“レンアイ”が必要だと思ったことなんて、なかった。
 
それなのに。
 
 
 
「唯。あのね、聞いて欲しいことがあるの……」
 
昼休みの教室にやってきたのは、顔を真っ赤にした幼馴染の彼女。
彼女が何を言おうとしているのか、その先は聞かなくても分かっていた。
私は知っている。
彼女が昨日、誰と会っていたのか。
 
「ああ、やっとくっついたの?」
 
「! なんで……?」
 
「見てればわかるよ。よかったじゃん。
アイツなら、ちゃんとあんたのこと大事にしてくれそーだし」
 
「唯……」
 
「須賀みたいな変な男に引っかかりっぱなしじゃなくて良かった」
 
笑顔が引きつる。
心臓がドクドク脈打つ。
これは焦り?
それとも嫉妬?
一歩先に進んでしまった親友への。
 
違う。
ただの嫉妬なら。
こんなに、痛くない……。
 
「唯には何でもわかっちゃうんだね。
いっつも心配かけちゃって、ごめんね……」
 
自分を見つめる、潤んだ瞳。
頬が、胸が、熱を持つ。
 
「ならもうちょっとしっかりしてよね、未知。
まあ、オトコを見る目は少しは養われたみたいだけど?」
 
言いながら、小柄な彼女の頭をぐしゃぐしゃ撫でる。
何かをごまかしてしまいたくて。
 

 
彼女がうちの中学のアイドルだった生徒会長を追いかけていた時は、よかった。
『タラシ』のヤツが未知に本気になることはなかったし、
未知の方も、半分以上は“憧れ”の気持ちが強かったから。
最もあの男も最後は未知にかなり気持ちが傾いていたらしく、
別れる時は大変だったらしいけど。
バカな男。
今頃未知のほんとうの良さに気づいたって遅いのに。
いい気味。
『別れた』と聞いたとき、初めは確かにそう思っていた。
でも、その原因を知ってからは……
今度は、あの男とは違う。
他校のサッカー部の、いかにも体育会系な能天気そうなアイツ。
「未知を泣かせたら本気でぶっ殺すからね!」と告げた私の脅しに、
「大丈夫だよ、俺、未知のこと大好きだもん」と返したアイツ。
見ているだけで、未知のことが本当に好きなんだと、
大切なんだと分かってしまう、アイツ。
アイツの本気は、未知を攫ってしまった。
あの男からも、私からも、未知自身からも。
未知――
私の、未知。
 
ああ、恋をしようと思う時点で、私は恋に落ちていたのだ。
絶対に叶わない恋に。
 
 
~~~

 
 「あれ?やだ、降ってきたみたい。外晴れてるのにねー」
 
「え~、ホントだ。体育どうするんだろ?」
 
「すぐ止むって」
 
窓の外を見ていたクラスメートのざわめきに、未知もそちらを見つめた。
真っ直ぐな視線の先には、輝きながら濡れる空。
 
「お天気雨かぁ……キレイだね」
 
その、たった一つの言葉が、胸を射る。
 
ああ。
そっか……。
 
「“親友”なら、永遠だもんね」
 
「何か言った?」
 
小さく呟いた私に、未知がくるりと振り返った。
 
「ううん、なんでもない」
 
私はすぐに笑顔を作る。
ずっとそばにいるために。
泣くのは、心の中でだけ。





 

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恋を、しようと思った。
しなければならない、と思った。
 
このモヤモヤをスッキリと、心の中から追い払ってしまうために。
 
 
 
十七歳。
今の今まで、彼氏が欲しい、と思ったことはなかった。
友達みんなに彼氏ができても、クラスの半分以上の子に好きな人がいても。
“レンアイ”が必要だと思ったことなんて、なかった。
 
それなのに。
 
 
 
「唯。あのね、聞いて欲しいことがあるの……」
 
昼休みの教室にやってきたのは、顔を真っ赤にした幼馴染の彼女。
彼女が何を言おうとしているのか、その先は聞かなくても分かっていた。
私は知っている。
彼女が昨日、誰と会っていたのか。
 
「ああ、やっとくっついたの?」
 
「! なんで……?」
 
「見てればわかるよ。よかったじゃん。
アイツなら、ちゃんとあんたのこと大事にしてくれそーだし」
 
「唯……」
 
「須賀みたいな変な男に引っかかりっぱなしじゃなくて良かった」
 
笑顔が引きつる。
心臓がドクドク脈打つ。
これは焦り?
それとも嫉妬?
一歩先に進んでしまった親友への。
 
違う。
ただの嫉妬なら。
こんなに、痛くない……。
 
「唯には何でもわかっちゃうんだね。
いっつも心配かけちゃって、ごめんね……」
 
自分を見つめる、潤んだ瞳。
頬が、胸が、熱を持つ。
 
「ならもうちょっとしっかりしてよね、未知。
まあ、オトコを見る目は少しは養われたみたいだけど?」
 
言いながら、小柄な彼女の頭をぐしゃぐしゃ撫でる。
何かをごまかしてしまいたくて。
 

 
彼女がうちの中学のアイドルだった生徒会長を追いかけていた時は、よかった。
『タラシ』のヤツが未知に本気になることはなかったし、
未知の方も、半分以上は“憧れ”の気持ちが強かったから。
最もあの男も最後は未知にかなり気持ちが傾いていたらしく、
別れる時は大変だったらしいけど。
バカな男。
今頃未知のほんとうの良さに気づいたって遅いのに。
いい気味。
『別れた』と聞いたとき、初めは確かにそう思っていた。
でも、その原因を知ってからは……
今度は、あの男とは違う。
他校のサッカー部の、いかにも体育会系な能天気そうなアイツ。
「未知を泣かせたら本気でぶっ殺すからね!」と告げた私の脅しに、
「大丈夫だよ、俺、未知のこと大好きだもん」と返したアイツ。
見ているだけで、未知のことが本当に好きなんだと、
大切なんだと分かってしまう、アイツ。
アイツの本気は、未知を攫ってしまった。
あの男からも、私からも、未知自身からも。
未知――
私の、未知。
 
ああ、恋をしようと思う時点で、私は恋に落ちていたのだ。
絶対に叶わない恋に。
 
 
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 「あれ?やだ、降ってきたみたい。外晴れてるのにねー」
 
「え~、ホントだ。体育どうするんだろ?」
 
「すぐ止むって」
 
窓の外を見ていたクラスメートのざわめきに、未知もそちらを見つめた。
真っ直ぐな視線の先には、輝きながら濡れる空。
 
「お天気雨かぁ……キレイだね」
 
その、たった一つの言葉が、胸を射る。
 
ああ。
そっか……。
 
「“親友”なら、永遠だもんね」
 
「何か言った?」
 
小さく呟いた私に、未知がくるりと振り返った。
 
「ううん、なんでもない」
 
私はすぐに笑顔を作る。
ずっとそばにいるために。
泣くのは、心の中でだけ。





 

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