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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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第二話。紅登視点。

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「ハナ、おまえF高受けんの?」
 
自分とは脳みその出来が違う三人に囲まれた妹も同然の幼なじみを前に
一人蚊帳の外だった俺が席を外して戻ってくると、彼女の姉と
俺の弟の“生徒”は既に彼らの後輩の少女へと移っていた。
一通り宿題を終え、ソファの上で小休止、というようにアイスティーを
口にする花香の姿に、俺はふと抱いていた問いを投げかけた。
 
「うん、今のところは……第一志望に書いてるよ、一応」
 
ポツリと返ってきた返事に、そっと視線を滑らせる。
花香の見つめる先には、彼女の第一志望校に通う三人。
月子と、弟と、その彼女。
俺は気づいていた。俺たちの関係が不自然な歪みを生じていることに。
そしてその切欠を生みだしたのは、紛れもなく自分なのだということに。
 
「そっか、じゃあ俺一人ぼっちかー。
なぁんだ、花香だけはうちの高校に来てくれるかと思ったのに、つまんねぇの」
 
誤魔化すように頭を撫でた俺の言葉に、花香は困ったように微笑んだ。
 
「だって、紅登くんのとこ私立じゃない。
紅登くんはスポーツ特待生だからいいかもしれないけど、ウチじゃ学費払えないよ。
大体わたしが入るころにはもう紅登くん卒業しちゃってるじゃん!」
 
「それもそうだな。……まぁ頑張れよ、F高受験」
 
違う、本当に言いたかったのはこんな言葉じゃない。
おまえは良いのか?
F高に行ったら、いつでもあの三人を見ていなければならなくなる。
辛くないのか? 想い人と、その彼女と、それから――
 
「紅登! なに花香のこと勧誘してんの!?
やめてよね、私たち花香が来てくれるの楽しみに待ってるんだから!」
 
険のある声音にムッとしてそちらを見返せば、
花香の姉である月子が俺のことをじっと睨みつけていた。
美人が怒ると怖いとは言うが、俺は昔からこの顔を見慣れてしまったせいで、
今は“あぁ、いつもの月子だな”という思いしか感じない。
俺はずっと、月子を怒らせることしかできなかったから。
弟のように穏やかに月子と笑い合ったり、熱心に話し込んだりすることは一度も無かった。
だから、あのやけっぱちのような告白に何故月子が頷いてくれたのか、
一年が経つ今でも時たま分からなくなる。
もしかして月子は、花香の気持ちを知っていたのではないだろうか?
妹思いの彼女のことだ、花香のために、
“本当に好きだった相手”を遠ざけようと俺を選んだのではないか?
月子と並んで座る弟の方をそっと見やる。俺とは何もかもが異なる青斗。
他人(ひと)を惹きつける、俺に無いものばかりを備えた一つ年下の弟。
弟に彼女が出来たと聞いたとき、正直言って俺は慌てた。
それでは全てが台無しになるではないか、月子の思いも、花香の想いも――
そこまで考えて、結局ことの発端を作った張本人が自分だという事実に気づいた。
俺があのとき告白をしなかったら、同じ高校に進んだ二人は、
いつの日か結ばれていたのかもしれない。
花香だって、もっと早く気持ちをふっ切ることができただろう。
それを、俺が……!
 
「ハナ、無理すんなよ? 俺だけは、解ってるから……」
 
自分の気持ちを誤魔化すように、今度は花香の柔らかな髪の毛を
グシャグシャと掻き混ぜる。
俺の言葉に花香は一瞬泣き出しそうに顔を歪め、小さくコクリと頷いた。
 
「あっ、なに花香の髪グチャグチャにしてんのよ!?
もういい、ちょっとこっち来なさい、花香! 紅登の傍にいると馬鹿菌が移る!」
 
そんな俺たちの様子に目ざとく声を上げた月子の可愛げの無い一言が、
二人の間に漂うどこか重苦しい、そして切ない空気を遮断する。
 
「誰が馬鹿菌だよ!? おまえだって体育3のくせして!」
 
何事も無かったかのように怒鳴り返した自分に、ほとほと嫌気が差して胸が焼けた。
 
いつまでもこのままじゃいけない。そう思っているのに、俺は彼女を手放せない。
自らの手で汚してしまったパレットを、洗い流す勇気が持てないのだ。
情けないやつだと、嗤いたいなら嗤ってほしい。そうして俺を罰してくれ。
俺から月子を、奪い取ってやってくれ。早く気づけよ。なぁ、青斗……。





Yellow

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「ハナ、おまえF高受けんの?」
 
自分とは脳みその出来が違う三人に囲まれた妹も同然の幼なじみを前に
一人蚊帳の外だった俺が席を外して戻ってくると、彼女の姉と
俺の弟の“生徒”は既に彼らの後輩の少女へと移っていた。
一通り宿題を終え、ソファの上で小休止、というようにアイスティーを
口にする花香の姿に、俺はふと抱いていた問いを投げかけた。
 
「うん、今のところは……第一志望に書いてるよ、一応」
 
ポツリと返ってきた返事に、そっと視線を滑らせる。
花香の見つめる先には、彼女の第一志望校に通う三人。
月子と、弟と、その彼女。
俺は気づいていた。俺たちの関係が不自然な歪みを生じていることに。
そしてその切欠を生みだしたのは、紛れもなく自分なのだということに。
 
「そっか、じゃあ俺一人ぼっちかー。
なぁんだ、花香だけはうちの高校に来てくれるかと思ったのに、つまんねぇの」
 
誤魔化すように頭を撫でた俺の言葉に、花香は困ったように微笑んだ。
 
「だって、紅登くんのとこ私立じゃない。
紅登くんはスポーツ特待生だからいいかもしれないけど、ウチじゃ学費払えないよ。
大体わたしが入るころにはもう紅登くん卒業しちゃってるじゃん!」
 
「それもそうだな。……まぁ頑張れよ、F高受験」
 
違う、本当に言いたかったのはこんな言葉じゃない。
おまえは良いのか?
F高に行ったら、いつでもあの三人を見ていなければならなくなる。
辛くないのか? 想い人と、その彼女と、それから――
 
「紅登! なに花香のこと勧誘してんの!?
やめてよね、私たち花香が来てくれるの楽しみに待ってるんだから!」
 
険のある声音にムッとしてそちらを見返せば、
花香の姉である月子が俺のことをじっと睨みつけていた。
美人が怒ると怖いとは言うが、俺は昔からこの顔を見慣れてしまったせいで、
今は“あぁ、いつもの月子だな”という思いしか感じない。
俺はずっと、月子を怒らせることしかできなかったから。
弟のように穏やかに月子と笑い合ったり、熱心に話し込んだりすることは一度も無かった。
だから、あのやけっぱちのような告白に何故月子が頷いてくれたのか、
一年が経つ今でも時たま分からなくなる。
もしかして月子は、花香の気持ちを知っていたのではないだろうか?
妹思いの彼女のことだ、花香のために、
“本当に好きだった相手”を遠ざけようと俺を選んだのではないか?
月子と並んで座る弟の方をそっと見やる。俺とは何もかもが異なる青斗。
他人(ひと)を惹きつける、俺に無いものばかりを備えた一つ年下の弟。
弟に彼女が出来たと聞いたとき、正直言って俺は慌てた。
それでは全てが台無しになるではないか、月子の思いも、花香の想いも――
そこまで考えて、結局ことの発端を作った張本人が自分だという事実に気づいた。
俺があのとき告白をしなかったら、同じ高校に進んだ二人は、
いつの日か結ばれていたのかもしれない。
花香だって、もっと早く気持ちをふっ切ることができただろう。
それを、俺が……!
 
「ハナ、無理すんなよ? 俺だけは、解ってるから……」
 
自分の気持ちを誤魔化すように、今度は花香の柔らかな髪の毛を
グシャグシャと掻き混ぜる。
俺の言葉に花香は一瞬泣き出しそうに顔を歪め、小さくコクリと頷いた。
 
「あっ、なに花香の髪グチャグチャにしてんのよ!?
もういい、ちょっとこっち来なさい、花香! 紅登の傍にいると馬鹿菌が移る!」
 
そんな俺たちの様子に目ざとく声を上げた月子の可愛げの無い一言が、
二人の間に漂うどこか重苦しい、そして切ない空気を遮断する。
 
「誰が馬鹿菌だよ!? おまえだって体育3のくせして!」
 
何事も無かったかのように怒鳴り返した自分に、ほとほと嫌気が差して胸が焼けた。
 
いつまでもこのままじゃいけない。そう思っているのに、俺は彼女を手放せない。
自らの手で汚してしまったパレットを、洗い流す勇気が持てないのだ。
情けないやつだと、嗤いたいなら嗤ってほしい。そうして俺を罰してくれ。
俺から月子を、奪い取ってやってくれ。早く気づけよ。なぁ、青斗……。





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