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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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童話の悪役モチーフSSS集。その3。

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私は魔女の家に生まれた。
余りにも強大な魔力を持った私は、昔から周囲の魔女たちと同じことができなかった。
種から花を咲かそうとすれば一気に枯れて実が落ちる。
卵から鶏を出そうとすれば既に老い果てた瀕死の鶏が崩れ落ちる。
万事が万事その有様、魔女たちはそれを見て馬鹿にし、私のことを嘲笑った。
そうして私は、人前に出ることを嫌うようになった。
そんなある日のことだった。
 
『ねぇ、私たち、人間の王様について戦に赴くことになったのだけれど、
あなたも一緒に行きましょうよ』
 
普段ならば絶対にかけられぬ言葉に私の気持ちは高揚し、喜び勇んで戦というものに赴いた。
 
『これ、そこの魔女。敵軍のあそこからあそこまでを、一気に炎で燃やすのだ』
 
人間の王に命じられ、私は魔法を唱えた。
 
『炎の精霊たちよ、大地を紅く燃やし尽くせ!』
 
するとたちまち辺りは火の海に包まれ、私たちがついてきた敵のみならず
王の従える兵たちの半分以上が次々と火だるまになっていった。
 
『うわああああ! 助けてくれ!』
 
朱に染まる大地、木霊する叫び声。
 
『おまえは何ということをしてくれる! 邪悪な魔女め、不吉な魔女め!』
 
王の怒鳴り声に、私と共についてきた他の魔女たちはクスクスと笑い声を上げた。
彼女たちがついていればこそ、私は呪文を唱えた。
味方の兵を守る結界を、彼女たちは張っていてくれる、と私に伝えてきたのだから。
私は自分が騙されたことを知った。
それから私は、“災いを呼ぶ魔女”として国の外れの塔へと押し込められた。
何年も何年も、他の魔女と顔を合わせることも、王に城へ呼ばれることも無かった。
そんなある日、耳にした一つの仰々しい噂。
 
『王様とお妃様の間に、待ちに待った姫君がお生まれになった!
お二人は祝の宴に、十二人の魔女たちを招くという。
金の皿が食卓に並ぶ、豪勢で華やかな宴らしい』
 
私は腸が煮え繰り返るような激しい苛立ちを覚えた。
私を陥れた女たちを招いて、私を僻地へと追いやった王が、赤子の祝に宴を開く!?
金の皿が並び、色とりどりの料理がのせられた光景を思い浮かべるだけで、
私の心にあの日の炎が燃え広がった。
 
そうして私は、久方ぶりに塔から出た。
突然姿を現した“不吉な魔女”に慌てて設けられた席には、金の皿ではなく銀の皿が並んでいた。
私は激怒した。
何故、魔女たちの中で最も力の強い私が銀の食器などを用いねばならない!?
何故いつも塔に閉じこもり、災いを呼ぶ厄介者として扱われねばならないのだ!?
募る怒りは憎悪へ変わり、私は赤子に呪いを残した。
最も力の強い私だけにかけられる、重い重い呪い。
他の魔女たちが決して解くことのできぬ、恐ろしい糸車の呪いを!
 
果たして私の(はかりごと)は水泡に帰した。
百年の時を経て、あの日の赤子――王女は目覚めてしまった。あの女たちの魔法の力で。
彼女を愛する王子は“邪悪な魔女”を滅ぼすことに決めたらしい。
それも良い、やれるものならやってみるがいい。
 
私は後悔していない。
“良き魔女”と呼ばれる十二人の女の醜い嫉妬が引き起こした惨劇も、
百年もの間眠り続けた王女の苦悶も、全てが私のせいであると、言いたいならば言えば良い。
だが誰も問いかけはしない。
何故私が“邪悪な魔女”となったのか? 
何故私が皿ごときで王女に呪いをかけたのか?
問われぬ問いへの答えは無い。
全ては闇の中、謎は謎のまま、ただ消え行くのみなのだから!





後書き
 

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私は魔女の家に生まれた。
余りにも強大な魔力を持った私は、昔から周囲の魔女たちと同じことができなかった。
種から花を咲かそうとすれば一気に枯れて実が落ちる。
卵から鶏を出そうとすれば既に老い果てた瀕死の鶏が崩れ落ちる。
万事が万事その有様、魔女たちはそれを見て馬鹿にし、私のことを嘲笑った。
そうして私は、人前に出ることを嫌うようになった。
そんなある日のことだった。
 
『ねぇ、私たち、人間の王様について戦に赴くことになったのだけれど、
あなたも一緒に行きましょうよ』
 
普段ならば絶対にかけられぬ言葉に私の気持ちは高揚し、喜び勇んで戦というものに赴いた。
 
『これ、そこの魔女。敵軍のあそこからあそこまでを、一気に炎で燃やすのだ』
 
人間の王に命じられ、私は魔法を唱えた。
 
『炎の精霊たちよ、大地を紅く燃やし尽くせ!』
 
するとたちまち辺りは火の海に包まれ、私たちがついてきた敵のみならず
王の従える兵たちの半分以上が次々と火だるまになっていった。
 
『うわああああ! 助けてくれ!』
 
朱に染まる大地、木霊する叫び声。
 
『おまえは何ということをしてくれる! 邪悪な魔女め、不吉な魔女め!』
 
王の怒鳴り声に、私と共についてきた他の魔女たちはクスクスと笑い声を上げた。
彼女たちがついていればこそ、私は呪文を唱えた。
味方の兵を守る結界を、彼女たちは張っていてくれる、と私に伝えてきたのだから。
私は自分が騙されたことを知った。
それから私は、“災いを呼ぶ魔女”として国の外れの塔へと押し込められた。
何年も何年も、他の魔女と顔を合わせることも、王に城へ呼ばれることも無かった。
そんなある日、耳にした一つの仰々しい噂。
 
『王様とお妃様の間に、待ちに待った姫君がお生まれになった!
お二人は祝の宴に、十二人の魔女たちを招くという。
金の皿が食卓に並ぶ、豪勢で華やかな宴らしい』
 
私は腸が煮え繰り返るような激しい苛立ちを覚えた。
私を陥れた女たちを招いて、私を僻地へと追いやった王が、赤子の祝に宴を開く!?
金の皿が並び、色とりどりの料理がのせられた光景を思い浮かべるだけで、
私の心にあの日の炎が燃え広がった。
 
そうして私は、久方ぶりに塔から出た。
突然姿を現した“不吉な魔女”に慌てて設けられた席には、金の皿ではなく銀の皿が並んでいた。
私は激怒した。
何故、魔女たちの中で最も力の強い私が銀の食器などを用いねばならない!?
何故いつも塔に閉じこもり、災いを呼ぶ厄介者として扱われねばならないのだ!?
募る怒りは憎悪へ変わり、私は赤子に呪いを残した。
最も力の強い私だけにかけられる、重い重い呪い。
他の魔女たちが決して解くことのできぬ、恐ろしい糸車の呪いを!
 
果たして私の(はかりごと)は水泡に帰した。
百年の時を経て、あの日の赤子――王女は目覚めてしまった。あの女たちの魔法の力で。
彼女を愛する王子は“邪悪な魔女”を滅ぼすことに決めたらしい。
それも良い、やれるものならやってみるがいい。
 
私は後悔していない。
“良き魔女”と呼ばれる十二人の女の醜い嫉妬が引き起こした惨劇も、
百年もの間眠り続けた王女の苦悶も、全てが私のせいであると、言いたいならば言えば良い。
だが誰も問いかけはしない。
何故私が“邪悪な魔女”となったのか? 
何故私が皿ごときで王女に呪いをかけたのか?
問われぬ問いへの答えは無い。
全ては闇の中、謎は謎のまま、ただ消え行くのみなのだから!





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