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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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二万打記念SSS。やっぱり死ネタですm(__)m

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「ねぇねぇ、海の底を二万マイル旅して怪物とか遺跡とかに出会えるんなら、
空の果てを二万マイル旅したら何に出会えると思う?」
 
あれはいつのことだったろう。ベッドの上に寝そべって、
冒険物語の古典と言われる本を開きながら問いかけてきた
二海(ふみ)の言葉に、パソコンに向かっていた俺は呆れながら溜息を吐いた。
確か二海はその本を、『自分の名前と一字被ってて何か面白そうだから!』
という理由で図書館から借りてきたばかりだったのだと思う。
 
「はあ?空の果てなんか行ったって、宇宙に飛び出して終わりだろ。
大体おまえ、二万マイルが何キロかも分かってねぇだろ?」
 
「もう、万里(まさと)は夢が無さすぎ!せっかく名前だけは壮大でステキなのに……」
 
そっけない俺の返事に溜息を吐き返されて、少しムッとして二海の方を見やれば、
彼女はふくれっ面をして再びページへと視線を戻していた。
ただ単に親が万里の長城旅行した時にデキた子だから、
ってだけで付けられた名前なんだけど……。まぁそれも凄いよな、色んな意味で。
 
「きっとさぁ、空の果てには怪物も戦いの跡も、
滅びた国も復讐とか策略も、暗いものはなーんもなくて、
綺麗な鳥とか、羽の生えた馬とか、天使とかが飛んでるんだよ。
いーっつもお日さまに照らされてるから、誰も、何も悪いこととか出来ないの!
それでさ、きっとどこかには天国の扉があって、神様が両手を広げて
「ウェルカム!」って迎えてくれるんだと、あたしは思うなぁ」
 
「おまえ、ハリポの読み過ぎじゃねぇ?
その年でそんなこと言うとか、正直引くわー」
 
大体「ウェルカム!」ってどこの国の神だよ?
イエスもブッダもアッラーも、きっと英語は喋んねぇぞ?
余りにも夢見がちな二海の言葉に、若干顔を引きつらせながら返事を返すと、
彼女は無言で俺の顔にクッションを投げつけてきた。
懐かしい思い出。俺の大切な、大切な記憶。
 
 
~~~
 
 
「おーい……実際空の果てには、何があったんだー?」
 
屋上から見上げる、晴れ渡った青い空の向こうへと呼びかける。
あれから、数年。
彼女は本当に空の果てへと旅立ってしまった。今頃は夢見た場所で、
綺麗な鳥や羽の生えた馬や天使たちと戯れているのだろうか。
天国の扉は、果たしてちゃんと見つけることが出来たのだろうか。
神様は、本当に彼女を歓迎してくれているだろうか。
ふと頬に手をやると、冷たい液体が指に触れた。
 
「俺が、連れて行きたかったな……。一般人(おまえ)でも乗れるようなロケット
開発してさ、「どうだ!?空の果てには雲があって、オゾン層があって、
そのまた向こうには宇宙があるだけだろ!?」
って、神様の「ウェルカム!」より先に、おまえに言ってやりたかった……!」
 
拳を握りしめ、フェンスに向かって打ちつける。
今さら、なんだ。
二海の病気が判って、俺がこの道に進むことを決めて、
時間が足りないって分かっていても、俺は諦めきれなかった。
二海に、こっち側の“空の果て”を見せたかった。
それが、叶わないのなら……
 
「なんで俺も一緒に連れて行ってくれないんだよ……!?」
 
見上げた青空は沈黙したまま、何の答えも返してくれない。
俺だけじゃ、空の果てに夢なんか見れない。
二万マイルもたった一人で旅することなんか、不可能に決まってるんだ。
だからきっと、二海だって。
 
「俺が行くまで、待ってろよぉー!」
 
空の向こうに向かって、大声で叫ぶ。
天国の扉を、一人でなんか開けさせない。
俺がいつか、此処できちんとロケットを造って、それからあっち側に行くまで。
 
だってそうだろう?
甘ったれのあいつが、一人っきりで旅なんかできるわけがない。
方向音痴のあいつが、一人っきりで天国まで辿り着けるわけがない。
冒険ものには仲間が必要って、相場が決まってるんだから。
今日も俺は、空の果てに思いを馳せる。
そこで身動きできずに俺を待っているであろう、大切な大切な宝物(ひと)に向かって。





7/24 改題

後書き

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「ねぇねぇ、海の底を二万マイル旅して怪物とか遺跡とかに出会えるんなら、
空の果てを二万マイル旅したら何に出会えると思う?」
 
あれはいつのことだったろう。ベッドの上に寝そべって、
冒険物語の古典と言われる本を開きながら問いかけてきた
二海(ふみ)の言葉に、パソコンに向かっていた俺は呆れながら溜息を吐いた。
確か二海はその本を、『自分の名前と一字被ってて何か面白そうだから!』
という理由で図書館から借りてきたばかりだったのだと思う。
 
「はあ?空の果てなんか行ったって、宇宙に飛び出して終わりだろ。
大体おまえ、二万マイルが何キロかも分かってねぇだろ?」
 
「もう、万里(まさと)は夢が無さすぎ!せっかく名前だけは壮大でステキなのに……」
 
そっけない俺の返事に溜息を吐き返されて、少しムッとして二海の方を見やれば、
彼女はふくれっ面をして再びページへと視線を戻していた。
ただ単に親が万里の長城旅行した時にデキた子だから、
ってだけで付けられた名前なんだけど……。まぁそれも凄いよな、色んな意味で。
 
「きっとさぁ、空の果てには怪物も戦いの跡も、
滅びた国も復讐とか策略も、暗いものはなーんもなくて、
綺麗な鳥とか、羽の生えた馬とか、天使とかが飛んでるんだよ。
いーっつもお日さまに照らされてるから、誰も、何も悪いこととか出来ないの!
それでさ、きっとどこかには天国の扉があって、神様が両手を広げて
「ウェルカム!」って迎えてくれるんだと、あたしは思うなぁ」
 
「おまえ、ハリポの読み過ぎじゃねぇ?
その年でそんなこと言うとか、正直引くわー」
 
大体「ウェルカム!」ってどこの国の神だよ?
イエスもブッダもアッラーも、きっと英語は喋んねぇぞ?
余りにも夢見がちな二海の言葉に、若干顔を引きつらせながら返事を返すと、
彼女は無言で俺の顔にクッションを投げつけてきた。
懐かしい思い出。俺の大切な、大切な記憶。
 
 
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「おーい……実際空の果てには、何があったんだー?」
 
屋上から見上げる、晴れ渡った青い空の向こうへと呼びかける。
あれから、数年。
彼女は本当に空の果てへと旅立ってしまった。今頃は夢見た場所で、
綺麗な鳥や羽の生えた馬や天使たちと戯れているのだろうか。
天国の扉は、果たしてちゃんと見つけることが出来たのだろうか。
神様は、本当に彼女を歓迎してくれているだろうか。
ふと頬に手をやると、冷たい液体が指に触れた。
 
「俺が、連れて行きたかったな……。一般人(おまえ)でも乗れるようなロケット
開発してさ、「どうだ!?空の果てには雲があって、オゾン層があって、
そのまた向こうには宇宙があるだけだろ!?」
って、神様の「ウェルカム!」より先に、おまえに言ってやりたかった……!」
 
拳を握りしめ、フェンスに向かって打ちつける。
今さら、なんだ。
二海の病気が判って、俺がこの道に進むことを決めて、
時間が足りないって分かっていても、俺は諦めきれなかった。
二海に、こっち側の“空の果て”を見せたかった。
それが、叶わないのなら……
 
「なんで俺も一緒に連れて行ってくれないんだよ……!?」
 
見上げた青空は沈黙したまま、何の答えも返してくれない。
俺だけじゃ、空の果てに夢なんか見れない。
二万マイルもたった一人で旅することなんか、不可能に決まってるんだ。
だからきっと、二海だって。
 
「俺が行くまで、待ってろよぉー!」
 
空の向こうに向かって、大声で叫ぶ。
天国の扉を、一人でなんか開けさせない。
俺がいつか、此処できちんとロケットを造って、それからあっち側に行くまで。
 
だってそうだろう?
甘ったれのあいつが、一人っきりで旅なんかできるわけがない。
方向音痴のあいつが、一人っきりで天国まで辿り着けるわけがない。
冒険ものには仲間が必要って、相場が決まってるんだから。
今日も俺は、空の果てに思いを馳せる。
そこで身動きできずに俺を待っているであろう、大切な大切な宝物(ひと)に向かって。





7/24 改題

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