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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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曇りときどきレズビアン』続編。
性的トラウマをお持ちの方はご覧にならない方が良いかと思われます。

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雨が降っている。
部活動も中止となり、ほとんど人の気配のしない放課後の教室に、私と彼女はいた。
中学校以来の同級生の彼女は、数少ない“私”を知っている人間だ。
 
「初めて“性行為”ってやつを経験したのは、多分4歳のとき」

オレンジジュースの入った紙パックに刺さったストローを吸う彼女の唇は紅い。
ルージュもグロスも、一切付けてはいないはずなのに。

「相手? 同い年の男の子。同じクラスのね」

少し乾いた茶色の髪をかき上げて、彼女は淡々と続けた。

「保育所の昼寝の時間だった。
あんたは幼稚園育ちだから知らないかもしれないけど、
保育所には必ずお昼の後に“おひるねのじかん”てのがあってね。
ホールに布団を敷き詰めて全員で昼寝するんだけど」

一旦言葉を切ってストローを口から遠ざけた彼女の手が、少し震えている。

「あいつは隣に寝てた。気がついたら私の布団に潜り込んできた。
『あっちに行ってよ』って言っても、聞いてくれなくて……」

彼女は苦しそうに瞳を閉じた。

「からだ中をまさぐられたわ。胸も、大事なところも全部触られて、舐められた。
もちろん子どもよ? 濡れるわけないし、とにかく怖かった。
怖くて、怖くて……声も出せなかった。相手が同じ4歳児でもね」

吐き棄てるように、彼女は言った。

「“おひるねのじかん”が恐怖だった。毎日毎日どうやって彼の隣を避けるか、
そればっかり考えてた。でも、運悪く隣になると、同じことをされた。
あの時の私には、“それ”がどんな意味を持つのか分からなかった。
私の処女膜が破かれなかったのは偏に彼に精通がなかったおかげだと思う」

「ヤエ……」

かけられた声に、彼女は嗤った。

「彼だけじゃない。保育所の庭で“トモダチ”の女の子に足を広げられて
木の枝で大事な部分を弄られたこともある。
体に噛み付かれて消えない痕を残されたことも、何度もある。
私がいたのは、そういう場所だった」

彼女の虚ろな瞳は、最早何も映してはいない。

「そのうち、時が経って、あの子達のしていたことが何を真似ていたのか
分かるようになって……AVを見てたんだか生のセックスを見てたんだか
分からないけど? 何とか、理解しようと思った。
人間誰もがいずれすることなら、好きになろうと思った。
だから、そういう本を読み漁ったし、
周りの友達にも積極的にそういう話題を振るようになった」

そう、だから彼女は、周りから“そういう目”で見られている。
 『エッチのことはヤエに聞けばいい』と。

「でも、ダメだった。頭では完璧に分かっているはずなのに。キスすら出来ない。
他人の唇が、唾液が自分のどこかに付着するって、
それだけで気持ち悪くて堪らないのよ。吐き気がして止まらなくなる。
思い出すのよ、怖くて怖くて、どうしようもなかったあの感覚を。
そんな風になる自分が怖くて、気持ち悪くて、恥ずかしくて堪らないの。
あれから何年も経ってるのに、周りの子がとっくに“ハジメテ”を経験してるのに……。
ねえ、笑えるでしょう? 男の子にはAVを回して、女の子にはゴムを配る私が、
本当はセックスなんて一生しなくていいと思ってるなんてね?」

『経験豊富』と囁かれるヤエに、彼氏がいるという噂はついぞ聞いたことがない。
学校のみんなは『年上の社会人と付き合ってる』とか、『他校にセフレがいる』とか
囁くけれど、八重にそんな相手がいないことは私が一番よく知っている。

「彼氏のいる子が、羨ましくないわけじゃない。好きな人だってちゃんといた。
でも、ダメなの。一人じゃないと、ダメなの。だって今でも、本当はみんなが怖い。
触れてくる手が、恐くて、怖くて堪らないんだもの」

壊れそうに微笑(わら)う彼女の手に、そっと触れようとして。
ビクリと遠ざけられたその細い指先に、彼女の言葉の真実を見た。





→『雷ときどき近親相姦
 

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雨が降っている。
部活動も中止となり、ほとんど人の気配のしない放課後の教室に、私と彼女はいた。
中学校以来の同級生の彼女は、数少ない“私”を知っている人間だ。
 
「初めて“性行為”ってやつを経験したのは、多分4歳のとき」

オレンジジュースの入った紙パックに刺さったストローを吸う彼女の唇は紅い。
ルージュもグロスも、一切付けてはいないはずなのに。

「相手? 同い年の男の子。同じクラスのね」

少し乾いた茶色の髪をかき上げて、彼女は淡々と続けた。

「保育所の昼寝の時間だった。
あんたは幼稚園育ちだから知らないかもしれないけど、
保育所には必ずお昼の後に“おひるねのじかん”てのがあってね。
ホールに布団を敷き詰めて全員で昼寝するんだけど」

一旦言葉を切ってストローを口から遠ざけた彼女の手が、少し震えている。

「あいつは隣に寝てた。気がついたら私の布団に潜り込んできた。
『あっちに行ってよ』って言っても、聞いてくれなくて……」

彼女は苦しそうに瞳を閉じた。

「からだ中をまさぐられたわ。胸も、大事なところも全部触られて、舐められた。
もちろん子どもよ? 濡れるわけないし、とにかく怖かった。
怖くて、怖くて……声も出せなかった。相手が同じ4歳児でもね」

吐き棄てるように、彼女は言った。

「“おひるねのじかん”が恐怖だった。毎日毎日どうやって彼の隣を避けるか、
そればっかり考えてた。でも、運悪く隣になると、同じことをされた。
あの時の私には、“それ”がどんな意味を持つのか分からなかった。
私の処女膜が破かれなかったのは偏に彼に精通がなかったおかげだと思う」

「ヤエ……」

かけられた声に、彼女は嗤った。

「彼だけじゃない。保育所の庭で“トモダチ”の女の子に足を広げられて
木の枝で大事な部分を弄られたこともある。
体に噛み付かれて消えない痕を残されたことも、何度もある。
私がいたのは、そういう場所だった」

彼女の虚ろな瞳は、最早何も映してはいない。

「そのうち、時が経って、あの子達のしていたことが何を真似ていたのか
分かるようになって……AVを見てたんだか生のセックスを見てたんだか
分からないけど? 何とか、理解しようと思った。
人間誰もがいずれすることなら、好きになろうと思った。
だから、そういう本を読み漁ったし、
周りの友達にも積極的にそういう話題を振るようになった」

そう、だから彼女は、周りから“そういう目”で見られている。
 『エッチのことはヤエに聞けばいい』と。

「でも、ダメだった。頭では完璧に分かっているはずなのに。キスすら出来ない。
他人の唇が、唾液が自分のどこかに付着するって、
それだけで気持ち悪くて堪らないのよ。吐き気がして止まらなくなる。
思い出すのよ、怖くて怖くて、どうしようもなかったあの感覚を。
そんな風になる自分が怖くて、気持ち悪くて、恥ずかしくて堪らないの。
あれから何年も経ってるのに、周りの子がとっくに“ハジメテ”を経験してるのに……。
ねえ、笑えるでしょう? 男の子にはAVを回して、女の子にはゴムを配る私が、
本当はセックスなんて一生しなくていいと思ってるなんてね?」

『経験豊富』と囁かれるヤエに、彼氏がいるという噂はついぞ聞いたことがない。
学校のみんなは『年上の社会人と付き合ってる』とか、『他校にセフレがいる』とか
囁くけれど、八重にそんな相手がいないことは私が一番よく知っている。

「彼氏のいる子が、羨ましくないわけじゃない。好きな人だってちゃんといた。
でも、ダメなの。一人じゃないと、ダメなの。だって今でも、本当はみんなが怖い。
触れてくる手が、恐くて、怖くて堪らないんだもの」

壊れそうに微笑(わら)う彼女の手に、そっと触れようとして。
ビクリと遠ざけられたその細い指先に、彼女の言葉の真実を見た。





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