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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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拍手ログSSS。花言葉からネタをもらおうシリーズ第二弾(^^;
(※第一弾は掌編『エリカ』(本作と関連なし)です)
王子さまとお姫さま(笑)な少女小説風。


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「ねえ?スミレはどうして父上のところに来たの?」

「そうみんなが望んだからよ」

「みんなの望みはスミレの望みと同じだったの?」

「……ええ、そう信じてたわ」

「今は?」

「え?」

「今のスミレの望みはなぁに?」

「さぁ……何かしら。分からないわ」

「じゃあさ、スミレ。君自身の望みがわからないなら、僕の願いを叶えてくれる?」

「ウィロー……」

その日、シオンの攻勢によるサンタビリア王宮の落城と共に王妃と太子は姿を消した。

全ては、シオン宰相の娘とサンタビリア国王の婚礼が成った三年前から定められていたこと。
実の父より間諜として生きるための術を叩き込まれて育った娘は、務めとして彼の国に赴いた。
年の離れた国王との閨も、侍女たちを騙すことも、気まぐれに近寄ってくる家臣たちの相手も……
何もかもが、淡々と過ぎていった。全てが終わる、その時まで。
“予定通り”シオンはサンタビリアに攻め込み、己が身は人質として王宮の一室に込められ。
娘はただただ、処刑の時を待った。何も感じなかった。
そうしろと言われたから、それが自分の運命(さだめ)なのだから。
虚空を見つめて佇む娘の手を握ったのは彼だった。
娘にとっては義理の息子、サンタビリアの第一王子。
娘より七つ年下の、ふわりと微笑う顔が愛らしい、不思議な少年。
少年の快活を娘は厭い、娘の空虚を少年は嗤った。
家族でもなく、恋人でもなかった。ただ、いつもそこにいた。
目を合わせることがなくとも、真っ当な会話が成り立たずとも。いつもいつも、気がつけば共に。
少年と他愛もないやりとりをする時だけ、娘は己が人として息をしているような気持ちを感じた。

「スミレ、行こう。僕はスミレの“望み”を探したいんだ」

少年は太子だ。娘は彼を『殺せ』と命じられていた。
少年は、ただ命が惜しいだけなのかもしれない。
王宮(ここ)から逃げる言い訳に、娘を使っているだけなのかもしれない。
いざとなれば、娘を人質として扱うかもしれない……。それでも。

「ウィロー、それは本当にあなたの願い?」

少年はそっと娘の頬に触れた。

「そうだよ、スミレ」

目じりを擦るような少年の細い指の感触に、娘は気づいた。

「ウィロー、私、はじめて泣いたわ」

少年は瞠目し、そして微笑んだ。

「それは良かった」

シオンは二人を追わなかった。苦労知らずの少年と非力な女。
どうせ目立つ二人なのだから、探さずともそのうち出てくるだろうとたかをくくった。
そうして二人は逃げ延びた。遠い遠い場所へ。

「ウィロー、この草はなにかしら?
何だかふわふわした、猫のしっぽみたいなものが付いてるわ」

「うん、だからネコヤナギって言うんだよ。“自由”の草だ」

「そうなの?ふふ、何だかこのふわふわ、あなたみたいだわ」

だってウィロー、あなたは、柔らかくて、あったかくて、私に望む自由をくれたんだもの!





 

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「ねえ?スミレはどうして父上のところに来たの?」

「そうみんなが望んだからよ」

「みんなの望みはスミレの望みと同じだったの?」

「……ええ、そう信じてたわ」

「今は?」

「え?」

「今のスミレの望みはなぁに?」

「さぁ……何かしら。分からないわ」

「じゃあさ、スミレ。君自身の望みがわからないなら、僕の願いを叶えてくれる?」

「ウィロー……」

その日、シオンの攻勢によるサンタビリア王宮の落城と共に王妃と太子は姿を消した。

全ては、シオン宰相の娘とサンタビリア国王の婚礼が成った三年前から定められていたこと。
実の父より間諜として生きるための術を叩き込まれて育った娘は、務めとして彼の国に赴いた。
年の離れた国王との閨も、侍女たちを騙すことも、気まぐれに近寄ってくる家臣たちの相手も……
何もかもが、淡々と過ぎていった。全てが終わる、その時まで。
“予定通り”シオンはサンタビリアに攻め込み、己が身は人質として王宮の一室に込められ。
娘はただただ、処刑の時を待った。何も感じなかった。
そうしろと言われたから、それが自分の運命(さだめ)なのだから。
虚空を見つめて佇む娘の手を握ったのは彼だった。
娘にとっては義理の息子、サンタビリアの第一王子。
娘より七つ年下の、ふわりと微笑う顔が愛らしい、不思議な少年。
少年の快活を娘は厭い、娘の空虚を少年は嗤った。
家族でもなく、恋人でもなかった。ただ、いつもそこにいた。
目を合わせることがなくとも、真っ当な会話が成り立たずとも。いつもいつも、気がつけば共に。
少年と他愛もないやりとりをする時だけ、娘は己が人として息をしているような気持ちを感じた。

「スミレ、行こう。僕はスミレの“望み”を探したいんだ」

少年は太子だ。娘は彼を『殺せ』と命じられていた。
少年は、ただ命が惜しいだけなのかもしれない。
王宮(ここ)から逃げる言い訳に、娘を使っているだけなのかもしれない。
いざとなれば、娘を人質として扱うかもしれない……。それでも。

「ウィロー、それは本当にあなたの願い?」

少年はそっと娘の頬に触れた。

「そうだよ、スミレ」

目じりを擦るような少年の細い指の感触に、娘は気づいた。

「ウィロー、私、はじめて泣いたわ」

少年は瞠目し、そして微笑んだ。

「それは良かった」

シオンは二人を追わなかった。苦労知らずの少年と非力な女。
どうせ目立つ二人なのだから、探さずともそのうち出てくるだろうとたかをくくった。
そうして二人は逃げ延びた。遠い遠い場所へ。

「ウィロー、この草はなにかしら?
何だかふわふわした、猫のしっぽみたいなものが付いてるわ」

「うん、だからネコヤナギって言うんだよ。“自由”の草だ」

「そうなの?ふふ、何だかこのふわふわ、あなたみたいだわ」

だってウィロー、あなたは、柔らかくて、あったかくて、私に望む自由をくれたんだもの!





 

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