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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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中学3年生、大人になりたくない女の子と早く大人になりたい男の子の話。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ウェンディは、ネバーランドを選ばなかった。
ウェンディは、大人になった。
どうしてだろう……?



「ねぇ、一緒にネバーランド、探しに行かない?」

金網のフェンス越しに、遠くの空を見つめていた幼馴染みが、
突然フェンスに背を預けて座り込む俺に向かって発した言葉。
俺は思わず、咥えていたアイスキャンディを
コンクリートの床の上に落としそうになった。

「はぁ?」

怪訝な表情の俺に対し、彼女は少し寂しそうに、こう呟いた。

「……だって、大人になりたく、ないんだもん……」

一学期の終業式を終えたばかりの学校の屋上。
降り注ぐ日差しに、夏休みを前にした高揚は意外なほど感じない。
それは俺が年に似合わず感情の起伏が余り起こらない性質だからだろうか。
それとも、受験の天王山を前にした中学三年生だからだろうか。

「よくさぁ、コドモはオトナに憧れて早くオトナになりたい、
って思うって言うじゃない?」

彼女の視線が、再び宙をさ迷う。
少し色が抜けて傷んだ髪を、くるくると指に絡ませるのはいつもの癖。
ぽってりとした唇にのせたグロスの輝きが、
幼さの残る顔立ちに合っているのかいないのか。

「……でも、あたしは一度だって、大人になりたいなんて思ったことないのに。
なりたい人だけなればいいのに、何で、
なりたくない人までなっちゃうんだろうね……?」

「そりゃ、おまえはコドモの時からオトナの特権全部味わってきたからだろ?
酒もタバコも……おまえんち、放任し過ぎ」

少し震える声に、溜め息を吐きながら呆れたように口を挟むと、
彼女はクスクスと笑って

「エッチも小5でやっちゃったしね?」

と返した。

大きな瞳に、不似合いな化粧。校則を一切守らない派手な外見に、
枠に捉われない奇抜な発言や行動は、彼女に『学校一の問題児』の称号を与えた。
彼女は、コドモなだけなのだ。ただ純粋に、天真爛漫に生きている。
子供の頃と、少しも変わることなく。
小学校に入り、卒業し、中学校に入り……世界が大きくなるにつれ、
“変わらない”彼女が生きづらくなってきていることは知っていた。
許されてきたことが許されなくなり、
選ばなければならぬ道の量も、長さも、道幅も増した。
小さな歩道を、未だ手を引かれて歩いている彼女が、
先の見えない幾つもの広い分かれ道の前で立ちすくんでいることは、
知っていたんだ――何故なら俺も、同じだから。

「……ネバーランドなんてわざわざ探さなくても、
腹ん中ピーターパンな大人なんてそこら中にいるだろ。
別に無理して大人になることないんじゃねぇの?」

溜息まじりに答えた俺に、彼女はポツリと呟いた。

「でも、ウェンディはさ、」

「は?」

眉根を寄せて彼女を見つめる。

「ウェンディは、結局大人になったんだよ。ネバーランドを出て。
……残されたピーターパンは、その時どんな気持ちだったのかなぁ?」

「何言ってんだ、おま……」

「あたしは!」

こちらを向いた彼女の目には、涙が溢れていた。
いつもにこにこと笑う彼女の涙を見たのは、何年ぶりのことだろう。
思わず声を失くした俺の耳に、彼女の甲高い泣き声が響く。

「……あたしは、やだよ。置いてかれんの、やだよぉ……っ!」

きっと、ピーターパンもそうだった。
でも、追い掛けることはできなくて。
追い付くことはできなくて。

「ごめんな……ごめんな……」

鳴咽を漏らす華奢な体を、そっと抱き寄せる俺の腕はまだ細くて、
頭を撫でる手はまだ小さくて。
だから俺はやっぱり、大人になりたい。もっともっと、大きくなりたい。
彼女に対する感情は、レンアイみたいな甘いものではないけれど。
俺はきっと、たぶん一生、傍にいるから。


君がずっとコドモでいられるように、俺が君を守るから。
だから君を置いてオトナになる俺を許して?
寂しいなんて、泣かないで……。





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ウェンディは、ネバーランドを選ばなかった。
ウェンディは、大人になった。
どうしてだろう……?



「ねぇ、一緒にネバーランド、探しに行かない?」

金網のフェンス越しに、遠くの空を見つめていた幼馴染みが、
突然フェンスに背を預けて座り込む俺に向かって発した言葉。
俺は思わず、咥えていたアイスキャンディを
コンクリートの床の上に落としそうになった。

「はぁ?」

怪訝な表情の俺に対し、彼女は少し寂しそうに、こう呟いた。

「……だって、大人になりたく、ないんだもん……」

一学期の終業式を終えたばかりの学校の屋上。
降り注ぐ日差しに、夏休みを前にした高揚は意外なほど感じない。
それは俺が年に似合わず感情の起伏が余り起こらない性質だからだろうか。
それとも、受験の天王山を前にした中学三年生だからだろうか。

「よくさぁ、コドモはオトナに憧れて早くオトナになりたい、
って思うって言うじゃない?」

彼女の視線が、再び宙をさ迷う。
少し色が抜けて傷んだ髪を、くるくると指に絡ませるのはいつもの癖。
ぽってりとした唇にのせたグロスの輝きが、
幼さの残る顔立ちに合っているのかいないのか。

「……でも、あたしは一度だって、大人になりたいなんて思ったことないのに。
なりたい人だけなればいいのに、何で、
なりたくない人までなっちゃうんだろうね……?」

「そりゃ、おまえはコドモの時からオトナの特権全部味わってきたからだろ?
酒もタバコも……おまえんち、放任し過ぎ」

少し震える声に、溜め息を吐きながら呆れたように口を挟むと、
彼女はクスクスと笑って

「エッチも小5でやっちゃったしね?」

と返した。

大きな瞳に、不似合いな化粧。校則を一切守らない派手な外見に、
枠に捉われない奇抜な発言や行動は、彼女に『学校一の問題児』の称号を与えた。
彼女は、コドモなだけなのだ。ただ純粋に、天真爛漫に生きている。
子供の頃と、少しも変わることなく。
小学校に入り、卒業し、中学校に入り……世界が大きくなるにつれ、
“変わらない”彼女が生きづらくなってきていることは知っていた。
許されてきたことが許されなくなり、
選ばなければならぬ道の量も、長さも、道幅も増した。
小さな歩道を、未だ手を引かれて歩いている彼女が、
先の見えない幾つもの広い分かれ道の前で立ちすくんでいることは、
知っていたんだ――何故なら俺も、同じだから。

「……ネバーランドなんてわざわざ探さなくても、
腹ん中ピーターパンな大人なんてそこら中にいるだろ。
別に無理して大人になることないんじゃねぇの?」

溜息まじりに答えた俺に、彼女はポツリと呟いた。

「でも、ウェンディはさ、」

「は?」

眉根を寄せて彼女を見つめる。

「ウェンディは、結局大人になったんだよ。ネバーランドを出て。
……残されたピーターパンは、その時どんな気持ちだったのかなぁ?」

「何言ってんだ、おま……」

「あたしは!」

こちらを向いた彼女の目には、涙が溢れていた。
いつもにこにこと笑う彼女の涙を見たのは、何年ぶりのことだろう。
思わず声を失くした俺の耳に、彼女の甲高い泣き声が響く。

「……あたしは、やだよ。置いてかれんの、やだよぉ……っ!」

きっと、ピーターパンもそうだった。
でも、追い掛けることはできなくて。
追い付くことはできなくて。

「ごめんな……ごめんな……」

鳴咽を漏らす華奢な体を、そっと抱き寄せる俺の腕はまだ細くて、
頭を撫でる手はまだ小さくて。
だから俺はやっぱり、大人になりたい。もっともっと、大きくなりたい。
彼女に対する感情は、レンアイみたいな甘いものではないけれど。
俺はきっと、たぶん一生、傍にいるから。


君がずっとコドモでいられるように、俺が君を守るから。
だから君を置いてオトナになる俺を許して?
寂しいなんて、泣かないで……。





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