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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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廉1ページ目

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「祥、祥、ここ分かんない。教えて?」

「あぁ? どこだよ……ってお前こんなのも分かんねぇの!?」

数学の教科書と睨み合う佑樹の側に、祥太郎が腰を降ろす。
雑誌を片手に寝転ぶオレはその様子を横目で眺めていた。
馬鹿なくせに真面目な佑。頭は良いのに不真面目な祥。馬鹿で不真面目なオレ。
オレら三人は、いつも一緒。

ブーッ……ブーッ……
ポケットの中でバイブが鳴る。正直、出るのはめんどくさい。
ディスプレイに浮かんだ名前は、更にオレの気分を憂鬱にさせた。 
そのまま、電源ボタンをプチンと押したオレの不機嫌な顔に気づいたのだろう、
教科書を間に押し問答を繰り広げていた二人が、黙り込んでこちらを見ていた。

「……電話、出なくて良かったの?」

もっともな佑の言葉に、オレはにっこりと微笑んで答えた。

「ああ、玲奈だから」

オレの返答に、祥は眉をひそめてあーぁ、という表情を作る。
以前、一週間電話に出なかった時、
祥はオレの行方を探す玲奈に家まで押し掛けられたことがあったらしい。

「どうせ結婚するんだから、ちょっとは優しくしてやりゃいいのに」

憮然とした顔で呟く祥に、オレは悪戯に舌を出して見せる。

「ジョーダン。嫌でも結婚しなきゃいけないんだから、今くらい離れさせてよ」

玲奈はオレの、又従妹で婚約者。
老舗のホテルを経営するオレの家は、ちょっとした資産家。
昔からの名家に、あんまり他の血を入れたくない、とかいう
訳の分からない理由で、オレと玲奈の婚約が決まったのはもう随分前のこと。

玲奈はオレのことが好き。オレは玲奈を好きじゃない。

好きって気持ちが理解できない。理解できないものは、苦手。だから玲奈から逃げている。

オレは玲奈から逃げるために。祥は遥香さんの近くにいるために。
利用してるんだ、佑を。佑の傍は居心地がいい。


~~~


「ねぇ、何で昼間電話した時、出てくれなかったの?」

家に帰ると、玄関ホールには仁王立ちの玲奈が待っていた。
スラリと伸びた手足に、この辺では名の知れたお嬢様学校のセーラー服はよく似合う。
厳しい校則のために一度も染めたことの無い真っ黒なセミロングの髪に、
黒いつぶらな瞳。上唇が少しめくれた、薄い唇。
身内や関係企業のパーティなどの改まった席で婚約者だ、と紹介すれば、
周囲からは羨望の眼差しが返ってくる。遠慮しないで手ぇ出してくれればいいのに。

「……正直、ウザイ。学校いる時までかけて来んなよ。お前だって学校あんだろ?」

溜め息混じりに吐き出せば、それが彼女の勘に触ったようで。

「何それ!? 私達、婚約者でしょ!?
大体廉学校サボって他の女とホテル行ったりしてるじゃない!
いつでもどこでも確認の電話くらいしたくなるわよ!」

キャンキャンと詰め寄る玲奈は、本当に鬱陶しい。
結婚したら好きなだけオレの配偶者のポジションを独占できるのに、
どうして今からオレを束縛しようとするんだろう。
騒ぎ立てる玲奈を無視して自分の部屋に入ろうとすると、
玲奈はパタパタと追い掛けてきて、オレの腕を掴んだ。

「廉」

「何?」

うんざりと振り返るオレの顔をじっと覗きこんで、玲奈は言った。

「……しよう?」

オレは無言で玲奈を部屋の中に招き入れ、扉を閉める。
それは、承諾の合図。誘いを断ったことは、多分一度もない。

行為の最中、頭の片隅で「あぁ、また佑樹に怒られるな」とぼんやり思った。

『ヤっちゃうから、縛り付けたくなるんだよ』

『ホント馬鹿だな、お前』

いつかの佑と祥の声が、頭に響く。

『好きじゃないなら、ヤらなきゃいいのに』

“好き”って何? セックスはスキ。気持ちいいから。コイはできない。分かんないから。

何で、体と心を一緒に重ねようとすんの?
それとも、誰に誘われても断らないオレがおかしいのかな?
傍らに眠る玲奈を見ながら考えた。


あー……明日はどのこと約束してたっけ?
めんどくさいな。めんどくさいから佑んとこ行こうかな。

佑がⅠAの教科書にBのシャー芯で書いた答えみたいに、
世の中の恋だの愛だの全部、消しゴムで消しちゃえればいいのに。





後書き
  ≒(廉2ページ目)

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「祥、祥、ここ分かんない。教えて?」

「あぁ? どこだよ……ってお前こんなのも分かんねぇの!?」

数学の教科書と睨み合う佑樹の側に、祥太郎が腰を降ろす。
雑誌を片手に寝転ぶオレはその様子を横目で眺めていた。
馬鹿なくせに真面目な佑。頭は良いのに不真面目な祥。馬鹿で不真面目なオレ。
オレら三人は、いつも一緒。

ブーッ……ブーッ……
ポケットの中でバイブが鳴る。正直、出るのはめんどくさい。
ディスプレイに浮かんだ名前は、更にオレの気分を憂鬱にさせた。 
そのまま、電源ボタンをプチンと押したオレの不機嫌な顔に気づいたのだろう、
教科書を間に押し問答を繰り広げていた二人が、黙り込んでこちらを見ていた。

「……電話、出なくて良かったの?」

もっともな佑の言葉に、オレはにっこりと微笑んで答えた。

「ああ、玲奈だから」

オレの返答に、祥は眉をひそめてあーぁ、という表情を作る。
以前、一週間電話に出なかった時、
祥はオレの行方を探す玲奈に家まで押し掛けられたことがあったらしい。

「どうせ結婚するんだから、ちょっとは優しくしてやりゃいいのに」

憮然とした顔で呟く祥に、オレは悪戯に舌を出して見せる。

「ジョーダン。嫌でも結婚しなきゃいけないんだから、今くらい離れさせてよ」

玲奈はオレの、又従妹で婚約者。
老舗のホテルを経営するオレの家は、ちょっとした資産家。
昔からの名家に、あんまり他の血を入れたくない、とかいう
訳の分からない理由で、オレと玲奈の婚約が決まったのはもう随分前のこと。

玲奈はオレのことが好き。オレは玲奈を好きじゃない。

好きって気持ちが理解できない。理解できないものは、苦手。だから玲奈から逃げている。

オレは玲奈から逃げるために。祥は遥香さんの近くにいるために。
利用してるんだ、佑を。佑の傍は居心地がいい。


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「ねぇ、何で昼間電話した時、出てくれなかったの?」

家に帰ると、玄関ホールには仁王立ちの玲奈が待っていた。
スラリと伸びた手足に、この辺では名の知れたお嬢様学校のセーラー服はよく似合う。
厳しい校則のために一度も染めたことの無い真っ黒なセミロングの髪に、
黒いつぶらな瞳。上唇が少しめくれた、薄い唇。
身内や関係企業のパーティなどの改まった席で婚約者だ、と紹介すれば、
周囲からは羨望の眼差しが返ってくる。遠慮しないで手ぇ出してくれればいいのに。

「……正直、ウザイ。学校いる時までかけて来んなよ。お前だって学校あんだろ?」

溜め息混じりに吐き出せば、それが彼女の勘に触ったようで。

「何それ!? 私達、婚約者でしょ!?
大体廉学校サボって他の女とホテル行ったりしてるじゃない!
いつでもどこでも確認の電話くらいしたくなるわよ!」

キャンキャンと詰め寄る玲奈は、本当に鬱陶しい。
結婚したら好きなだけオレの配偶者のポジションを独占できるのに、
どうして今からオレを束縛しようとするんだろう。
騒ぎ立てる玲奈を無視して自分の部屋に入ろうとすると、
玲奈はパタパタと追い掛けてきて、オレの腕を掴んだ。

「廉」

「何?」

うんざりと振り返るオレの顔をじっと覗きこんで、玲奈は言った。

「……しよう?」

オレは無言で玲奈を部屋の中に招き入れ、扉を閉める。
それは、承諾の合図。誘いを断ったことは、多分一度もない。

行為の最中、頭の片隅で「あぁ、また佑樹に怒られるな」とぼんやり思った。

『ヤっちゃうから、縛り付けたくなるんだよ』

『ホント馬鹿だな、お前』

いつかの佑と祥の声が、頭に響く。

『好きじゃないなら、ヤらなきゃいいのに』

“好き”って何? セックスはスキ。気持ちいいから。コイはできない。分かんないから。

何で、体と心を一緒に重ねようとすんの?
それとも、誰に誘われても断らないオレがおかしいのかな?
傍らに眠る玲奈を見ながら考えた。


あー……明日はどのこと約束してたっけ?
めんどくさいな。めんどくさいから佑んとこ行こうかな。

佑がⅠAの教科書にBのシャー芯で書いた答えみたいに、
世の中の恋だの愛だの全部、消しゴムで消しちゃえればいいのに。





後書き
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