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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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side:マホ
嘘の終わり。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



アイツが好きだと誰もが知っているもの、オンナノコ全般。
私が好きだと誰もが思っているもの、オトコノコ全般。
後腐れなく波風立たない、静かな関係。
 

 
放課後の教室。
 
「あ」
 
委員会を終えて教室にカバンを取りに戻ると、
誰もいない教室の片隅でタバコを吸う彼の姿が目に入った。
 
「イタルじゃない。今日はデートじゃなかったの?」
 
ふざけた調子で声を掛けると、彼は少し面倒そうに下を向いて、
 
「……別れた」
 
と告げた。
 
「へえ。あの子、もう飽きちゃったの?」
 
笑いながら問うと、彼の顔はますます険しくなった。
 
「……フラれたんだよ」
 
ぼそりと呟かれた言葉に、どくどくと脈打つ心臓の鼓動を隠して
 
「あら、珍しい」
 
と平然と相槌を打つ。
 
「だからさ……今日は、マホが慰めてよ」
 
「やだ、それで私のこと待ってたの? イタルちゃんたらか~わいい」
 
私の肩に頭を寄せてくる彼に、内心の動揺を感じさせないように冗談を言う。
彼が、傷ついているのが分かったから。
彼のそんな顔を見たのは、初めてのことだったから。
 
「でもさイタル……、こんなことばっかしてるから、フラれるんだよ……」
 
静かな呟きに、彼はにこっと微笑んで
 
「だって、マホと過ごす時間は俺にとって大切だもん」
 
と言った。
 
「私もイタルとイチャつくの好きー」
 
私は彼の、浮気相手。すぐに笑顔を返して、激しいキスをしたけれど。
いつもの行為の最中、彼が涙をこぼしていたのを、私が気づかないはずがなかった。
初めて見た、彼の涙。
 
そんなに、そんなに彼女のことが好きだったなら――私にそんなこと、言わないで。
これ以上深みに、落とし入れないで――
 

~~~

 
それから三ヶ月。私と彼の関係は、何も変わらない。かと言って私が、
“本命彼女”に昇格したわけではない。初めから、そういう約束だったから。
お互い“遊んでる”者同士、後腐れないお遊びを楽しもう、と。
 
「よりによって、同じガッコの後輩くんに取られちゃうとはねー」
 
傍らに立っているサヤカの呟きに、私はふと彼女の視線の先を見る。
電車を待つ、駅のホーム。目に映ったのは、仲の良さそうな二人の姿。
男の子の方は、うちの学校の制服を着て、サッカー部のカバンを持っている。
爽やかで、明るい笑顔。そして女の子の方は……
何だかまた、可愛くなったように思える。N高の制服を着た、彼の元カノだ。
 
「スガも落ちたもんだね」
 
ため息まじりに呟いたサヤカは、彼と元カノと同じ中学出身だ。
私と彼が知り合ったのも、共通の友人である彼女を介してのことだった。
 
「……そうね。あの子、今の方が幸せそう」
 
私の呟きに、サヤカはぷっ、と吹き出して
 
「そりゃそーだ、あんた浮気相手の筆頭じゃん!」
 
と叫んだ。
 
「でも……羨ましい」
 
好きになって。同じくらい、好きって気持ちをもらって。
 
「マホ……?」
 
怪訝な眼差しから、逃げるように電車に飛び乗った。
  

~~~

 
「どうしたの?」
 
彼と待ち合わせて、いつも通りに喫茶店に入る。
ずっと黙ったままの彼に、声を掛けると、彼は少し戸惑いがちにこちらを見つめた。
 
「あのさ……もう、こんな風に会うの、やめようと思って」
 
心臓を凍らせる言葉。
 
「……どうして?」
 
かろうじて表情をとりつくろって、冷静に返すと、彼は照れくさそうに、
けれど真剣な目をして、こう言った。
 
「この間おまえに言われただろ。『こんなことばっかしてるから、フラれるんだ』って。
俺、ミチのことちょっとやっぱキツかった、っつーか。今度誰かを好きになった時は、
ちゃんと恋愛したいと思って。今からその準備、きっちりしとこうと思ってさ」
 
「……私以外の女の子にも、みんなにちゃんとそう言って別れたの?」
 
彼が最近、女の子と会う回数が少なくなっているらしい、というのは知っていた。
“タラシ”の副会長が真面目になりだした、というのは校内でも徐々に噂になりつつある。
 
「ああ。おまえで最後。……別に、お前を女として見れなくなったとか
そういうわけじゃないから安心しろよ。マホは十分魅力的だよ。おまえはその勢いで
俺みたいな情けないヤツじゃなくて、ドンドンいい男を開拓してってくれ!」
 
冗談めかして言う彼の台詞に、私の中の何かが切れる。
 
「……私じゃだめなの?」
 
気がつくと、口が勝手に動いていた。
 
「え?」
 
イタルの戸惑いの表情なんて、目に入らなかった。
 
「本気の恋愛の相手、私じゃダメなの?」
 
「マホ……?」
 
「私、ずっとイタルが好きだった! でもイタルは、誰にも本気にならないから……。
彼女になっても、辛いだけだから。ずっと一緒にはいられないから。
だから、必死に遊んでるフリして……。浮気相手なら、別れなくていいもん!
なのに、それなのに……なんであの子には、本気になるの!?
なんで、今更本気の恋愛しようとするの!?
なんで、その対象に私は入れてくれないの……っ!?」
 
叫ぶだけ叫んで、私は店を飛び出した。
 
 
 
全部、彼が悪いわけじゃない。私だって、彼に謝らないといけないことがある。
彼女が見ていることを知ってて、彼の腕に自分の腕を絡ませた。
彼は、彼女の存在に気づいていなかった。
「別れた」と聞いた時、残酷な喜びに胸が震えた。
 
どうしようもなく惨めな気分で、公園のベンチで泣いた。
 
カナシイ、クヤシイ、コイシイ……
 
涙を乾かしてくれる風は、一筋も吹かなかった。





Gusty Day(side:イタル)

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アイツが好きだと誰もが知っているもの、オンナノコ全般。
私が好きだと誰もが思っているもの、オトコノコ全般。
後腐れなく波風立たない、静かな関係。
 

 
放課後の教室。
 
「あ」
 
委員会を終えて教室にカバンを取りに戻ると、
誰もいない教室の片隅でタバコを吸う彼の姿が目に入った。
 
「イタルじゃない。今日はデートじゃなかったの?」
 
ふざけた調子で声を掛けると、彼は少し面倒そうに下を向いて、
 
「……別れた」
 
と告げた。
 
「へえ。あの子、もう飽きちゃったの?」
 
笑いながら問うと、彼の顔はますます険しくなった。
 
「……フラれたんだよ」
 
ぼそりと呟かれた言葉に、どくどくと脈打つ心臓の鼓動を隠して
 
「あら、珍しい」
 
と平然と相槌を打つ。
 
「だからさ……今日は、マホが慰めてよ」
 
「やだ、それで私のこと待ってたの? イタルちゃんたらか~わいい」
 
私の肩に頭を寄せてくる彼に、内心の動揺を感じさせないように冗談を言う。
彼が、傷ついているのが分かったから。
彼のそんな顔を見たのは、初めてのことだったから。
 
「でもさイタル……、こんなことばっかしてるから、フラれるんだよ……」
 
静かな呟きに、彼はにこっと微笑んで
 
「だって、マホと過ごす時間は俺にとって大切だもん」
 
と言った。
 
「私もイタルとイチャつくの好きー」
 
私は彼の、浮気相手。すぐに笑顔を返して、激しいキスをしたけれど。
いつもの行為の最中、彼が涙をこぼしていたのを、私が気づかないはずがなかった。
初めて見た、彼の涙。
 
そんなに、そんなに彼女のことが好きだったなら――私にそんなこと、言わないで。
これ以上深みに、落とし入れないで――
 

~~~

 
それから三ヶ月。私と彼の関係は、何も変わらない。かと言って私が、
“本命彼女”に昇格したわけではない。初めから、そういう約束だったから。
お互い“遊んでる”者同士、後腐れないお遊びを楽しもう、と。
 
「よりによって、同じガッコの後輩くんに取られちゃうとはねー」
 
傍らに立っているサヤカの呟きに、私はふと彼女の視線の先を見る。
電車を待つ、駅のホーム。目に映ったのは、仲の良さそうな二人の姿。
男の子の方は、うちの学校の制服を着て、サッカー部のカバンを持っている。
爽やかで、明るい笑顔。そして女の子の方は……
何だかまた、可愛くなったように思える。N高の制服を着た、彼の元カノだ。
 
「スガも落ちたもんだね」
 
ため息まじりに呟いたサヤカは、彼と元カノと同じ中学出身だ。
私と彼が知り合ったのも、共通の友人である彼女を介してのことだった。
 
「……そうね。あの子、今の方が幸せそう」
 
私の呟きに、サヤカはぷっ、と吹き出して
 
「そりゃそーだ、あんた浮気相手の筆頭じゃん!」
 
と叫んだ。
 
「でも……羨ましい」
 
好きになって。同じくらい、好きって気持ちをもらって。
 
「マホ……?」
 
怪訝な眼差しから、逃げるように電車に飛び乗った。
  

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「どうしたの?」
 
彼と待ち合わせて、いつも通りに喫茶店に入る。
ずっと黙ったままの彼に、声を掛けると、彼は少し戸惑いがちにこちらを見つめた。
 
「あのさ……もう、こんな風に会うの、やめようと思って」
 
心臓を凍らせる言葉。
 
「……どうして?」
 
かろうじて表情をとりつくろって、冷静に返すと、彼は照れくさそうに、
けれど真剣な目をして、こう言った。
 
「この間おまえに言われただろ。『こんなことばっかしてるから、フラれるんだ』って。
俺、ミチのことちょっとやっぱキツかった、っつーか。今度誰かを好きになった時は、
ちゃんと恋愛したいと思って。今からその準備、きっちりしとこうと思ってさ」
 
「……私以外の女の子にも、みんなにちゃんとそう言って別れたの?」
 
彼が最近、女の子と会う回数が少なくなっているらしい、というのは知っていた。
“タラシ”の副会長が真面目になりだした、というのは校内でも徐々に噂になりつつある。
 
「ああ。おまえで最後。……別に、お前を女として見れなくなったとか
そういうわけじゃないから安心しろよ。マホは十分魅力的だよ。おまえはその勢いで
俺みたいな情けないヤツじゃなくて、ドンドンいい男を開拓してってくれ!」
 
冗談めかして言う彼の台詞に、私の中の何かが切れる。
 
「……私じゃだめなの?」
 
気がつくと、口が勝手に動いていた。
 
「え?」
 
イタルの戸惑いの表情なんて、目に入らなかった。
 
「本気の恋愛の相手、私じゃダメなの?」
 
「マホ……?」
 
「私、ずっとイタルが好きだった! でもイタルは、誰にも本気にならないから……。
彼女になっても、辛いだけだから。ずっと一緒にはいられないから。
だから、必死に遊んでるフリして……。浮気相手なら、別れなくていいもん!
なのに、それなのに……なんであの子には、本気になるの!?
なんで、今更本気の恋愛しようとするの!?
なんで、その対象に私は入れてくれないの……っ!?」
 
叫ぶだけ叫んで、私は店を飛び出した。
 
 
 
全部、彼が悪いわけじゃない。私だって、彼に謝らないといけないことがある。
彼女が見ていることを知ってて、彼の腕に自分の腕を絡ませた。
彼は、彼女の存在に気づいていなかった。
「別れた」と聞いた時、残酷な喜びに胸が震えた。
 
どうしようもなく惨めな気分で、公園のベンチで泣いた。
 
カナシイ、クヤシイ、コイシイ……
 
涙を乾かしてくれる風は、一筋も吹かなかった。





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