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思わぬ邂逅。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「オイ、どーしたんだよ、いきなり黙り込んで、気色悪ぃ」
突然掛けられた声に、私はハッとして調子を取り戻す。
「なんでもありません!」
プイッと顔をそらした私に苦笑しながら、アーノルドが
「シャープ兄さん、気にしないで。ミチルは時々こうなるんだ」
とフォローの言葉を入れた。
「……ご気分がお悪い、とかじゃないんですか?
さっきシャープさんがあんなこと言ったから……」
さっきシャープさんがあんなこと言ったから……」
心配そうにこちらを見る可愛い少女に、私は慌てて笑顔を取り繕った。
「ううん、本当に何でもないのよ。ところで、オトさんて私と同じように
違う世界からアナースに来たんですって? 元いた世界はどんなところだったの?」
さりげなく話題を変えつつ、核心に迫る……THE☆一石二鳥! 私ったら、あったまいー!
「あ~、えぇっと、正確に申しますと太陽系第三惑星地球の日本国A県B市……」
「ストップ!」
私の手は震えていた。
彼女の真っ黒いつやつやの髪、くりくりした漆黒の瞳を見たときから、そうじゃないかとは思っていた。
いかにも東洋人なベビーフェイスといい、自然な白さの肌の色といい……
いかにも東洋人なベビーフェイスといい、自然な白さの肌の色といい……
でも世界が多様なら人種も多様、あんまり期待しちゃいけないかしら、なんて……
でも……でも、ありがとう神様! (そんなの信じたことないけど!)
「キターーーーーーッッッ!!!」
私は思わず彼女の顔を指差して(幼稚園で一番最初にならう、
「他人様に向けてやってはいけないこと」その1)叫んでいた。
「は?」
キョトンとする彼女がもう可愛くて可愛くてたまらなかった。
「私もA県出身なの! 今は東京に住んでるけど……。
私、駅の階段から落ちて、気がついたらここに来ていたのよ!」
「ええっ!? ええっ……日本の方、ですかぁ……!?」
心底驚いて腰が抜けた様子の彼女を、ダンナが支える。
「大丈夫か、オト?」
「じゃあ、ミチルとオトさんは、やっぱり同じ世界から来ていたんだね」
ポツリと呟いたアルに視線を向けると、彼はどこか寂しそうな、けれど同時に
嬉しそうな微笑をこちらに向けてきた。その視線にチクリ、と胸が痛む。
嬉しそうな微笑をこちらに向けてきた。その視線にチクリ、と胸が痛む。
「シャープ兄さん、僕らはそろそろ会談の時間だ。
ミュージックキングダム国王の話を楽しみにしている臣下も多い。
ミチルとオトさんは故郷のことで積もる話も沢山あるだろうし、
いまのところはミチルにオトさんのお相手はまかせて、そちらに移動しないかい?」
唐突に席を立ったアーノルドに、サイテー男はこちらに睨みを効かせながらも立ち上がった。
部屋を出る直前、ヤツはどこか不安げな眼差しで、オトさんのほうを振り返った。
それに気づいたオトさんは、優しい微笑を浮かべて、ヤツを見返す。
その、キラキラした、暖かい眼差し。ヤツはそれを見ると安心したようにふっと相好を崩して、
一瞬だけ微笑んだ。アーノルドが私に向けるのと同じような、とろけるような甘い微笑み。
一瞬だけ微笑んだ。アーノルドが私に向けるのと同じような、とろけるような甘い微笑み。
あんな男でも、こんな顔できるんだ……! 驚くと同時に、少し羨ましくもある。
二人が本当に想い合っていることが、嫌でも伝わってきてしまうから。
この世界で、彼女は何を見たのだろう? そして何を、見つけたのだろう?
そんな疑問を抱きながら、私は思いもよらぬ場所で巡り合った同胞の少女をじっと見つめていた。
~~~
「え、学校の階段から落ちた?」
「はい、それで気づいたら、こっちに来てたみたいです」
「やっぱり、キーワードは階段か……」
お茶をすすりながらのんびりと説明されたのは、オトさん……ええっと、
もう「ちゃん」でいいわね、彼女がアナースにやって来た時の具体的な状況。
“それ”が起こったのは一年前……当時17歳の現役女子高生(マジ羨ましい)だったそうだ。
てことは今も18歳……見た目より大人で良かったけど、ホントならまだ高校生ってことじゃない!
あのロリコン男、犯罪よ! 犯罪!!
「あの……みちるさんは、日本に帰ろうと思ってらっしゃるんですか?」
またまた自分の世界に入り込んでいた私に、おずおずと掛けられた言葉に、
先ほど知らずに呟いた言葉を思い出し、少し慌てながら
「うっ、ううん、まさか! こっちにいれば贅沢できるし、仕事に追われることもないし。
日本なんかよりずーっと楽しい暮らしができるもの!」
と答える。しがないOLの私にしてみたら、ここでの生活はまさに夢のような日々だ。
けれど……
「オトちゃんは……何で、ここに残ろうと思ったの?」
若くて、可愛くて……純粋で。彼女なら日本でも、十分に欲しいものを
手に入れることができただろう。それなのに……
手に入れることができただろう。それなのに……
私の問いに、彼女は一瞬、沈黙した。
「……確かに、ここに来て最初の頃は、帰りたい、と思ってました。
家族や……向こうの人たちに会いたい、とは今でも思います。でも……」
パッと顔を上げて、こちらを見据えた彼女の瞳に、迷いは見えない。
「シャープさんの傍にいたいから、この世界にいるんです」
にっこり微笑んだ顔は、幼くて可愛らしい少女のそれではなく、私よりも
ずっと美しい女性の顔だった。その笑顔が、言葉が、私の胸に突き刺さる。
ずっと美しい女性の顔だった。その笑顔が、言葉が、私の胸に突き刺さる。
「あの男の……どこがいいの?」
「……シャープさんは、本当は優しいんです。私はいつも、助けてもらってばかりで……」
私の問いに、彼女は少しだけ顔を赤らめながら答えた。
「私もみちるさんみたいに綺麗で、大人だったら良かったんですけど」
寂しそうに呟かれた言葉に、彼女が置かれた<王妃>という立場の難しさが少しだけ感じ取れた。
「あのね、敵の数はいいオンナの証なのよ」
「え?」
私のせりふに目を丸くしてこちらを見つめる彼女に向かって、にこっと微笑む。
「私なんかこっちに来てまだ三ヶ月だけど、もう101人も敵がいるもの。
あ、ちなみに101人目はおたくのダンナ様だけど」
そう言うと彼女はぷっと吹き出した。うんうん、やっぱり可愛い子は笑顔でなくちゃ!
「アイツが選んだのはあなたなんだから、周囲の雑音なんか気にしないで、堂々としてればいいのよ」
「……ありがとう、ございます」
返ってきたのは年相応のあどけない微笑みだった。
「みちるさんは、どうしてアーノルドさんを好きになったんですか?」
「えっ……」
思ってもみなかった問いに、固まってしまった私に向かって、オトちゃんは無邪気な言葉を続ける。
「みちるさんも、アーノルドさんがいるからアナースに残ろうと思ったんでしょう?」
純粋すぎる言葉が、私を貫く。
「え、ええ、もちろん……」
どこまでも真っ直ぐに、人を愛することができる彼女に対して、
ハッキリと頷けない自分が惨めで堪らなかった。私は、弱い。そして、醜い……。
ハッキリと頷けない自分が惨めで堪らなかった。私は、弱い。そして、醜い……。
バンッ!
黙り込んだ私にオトちゃんの不安げなまなざしが注がれた瞬間、部屋の扉が開いた。
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「オイ、どーしたんだよ、いきなり黙り込んで、気色悪ぃ」
突然掛けられた声に、私はハッとして調子を取り戻す。
「なんでもありません!」
プイッと顔をそらした私に苦笑しながら、アーノルドが
「シャープ兄さん、気にしないで。ミチルは時々こうなるんだ」
とフォローの言葉を入れた。
「……ご気分がお悪い、とかじゃないんですか?
さっきシャープさんがあんなこと言ったから……」
さっきシャープさんがあんなこと言ったから……」
心配そうにこちらを見る可愛い少女に、私は慌てて笑顔を取り繕った。
「ううん、本当に何でもないのよ。ところで、オトさんて私と同じように
違う世界からアナースに来たんですって? 元いた世界はどんなところだったの?」
さりげなく話題を変えつつ、核心に迫る……THE☆一石二鳥! 私ったら、あったまいー!
「あ~、えぇっと、正確に申しますと太陽系第三惑星地球の日本国A県B市……」
「ストップ!」
私の手は震えていた。
彼女の真っ黒いつやつやの髪、くりくりした漆黒の瞳を見たときから、そうじゃないかとは思っていた。
いかにも東洋人なベビーフェイスといい、自然な白さの肌の色といい……
いかにも東洋人なベビーフェイスといい、自然な白さの肌の色といい……
でも世界が多様なら人種も多様、あんまり期待しちゃいけないかしら、なんて……
でも……でも、ありがとう神様! (そんなの信じたことないけど!)
「キターーーーーーッッッ!!!」
私は思わず彼女の顔を指差して(幼稚園で一番最初にならう、
「他人様に向けてやってはいけないこと」その1)叫んでいた。
「は?」
キョトンとする彼女がもう可愛くて可愛くてたまらなかった。
「私もA県出身なの! 今は東京に住んでるけど……。
私、駅の階段から落ちて、気がついたらここに来ていたのよ!」
「ええっ!? ええっ……日本の方、ですかぁ……!?」
心底驚いて腰が抜けた様子の彼女を、ダンナが支える。
「大丈夫か、オト?」
「じゃあ、ミチルとオトさんは、やっぱり同じ世界から来ていたんだね」
ポツリと呟いたアルに視線を向けると、彼はどこか寂しそうな、けれど同時に
嬉しそうな微笑をこちらに向けてきた。その視線にチクリ、と胸が痛む。
嬉しそうな微笑をこちらに向けてきた。その視線にチクリ、と胸が痛む。
「シャープ兄さん、僕らはそろそろ会談の時間だ。
ミュージックキングダム国王の話を楽しみにしている臣下も多い。
ミチルとオトさんは故郷のことで積もる話も沢山あるだろうし、
いまのところはミチルにオトさんのお相手はまかせて、そちらに移動しないかい?」
唐突に席を立ったアーノルドに、サイテー男はこちらに睨みを効かせながらも立ち上がった。
部屋を出る直前、ヤツはどこか不安げな眼差しで、オトさんのほうを振り返った。
それに気づいたオトさんは、優しい微笑を浮かべて、ヤツを見返す。
その、キラキラした、暖かい眼差し。ヤツはそれを見ると安心したようにふっと相好を崩して、
一瞬だけ微笑んだ。アーノルドが私に向けるのと同じような、とろけるような甘い微笑み。
一瞬だけ微笑んだ。アーノルドが私に向けるのと同じような、とろけるような甘い微笑み。
あんな男でも、こんな顔できるんだ……! 驚くと同時に、少し羨ましくもある。
二人が本当に想い合っていることが、嫌でも伝わってきてしまうから。
この世界で、彼女は何を見たのだろう? そして何を、見つけたのだろう?
そんな疑問を抱きながら、私は思いもよらぬ場所で巡り合った同胞の少女をじっと見つめていた。
~~~
「え、学校の階段から落ちた?」
「はい、それで気づいたら、こっちに来てたみたいです」
「やっぱり、キーワードは階段か……」
お茶をすすりながらのんびりと説明されたのは、オトさん……ええっと、
もう「ちゃん」でいいわね、彼女がアナースにやって来た時の具体的な状況。
“それ”が起こったのは一年前……当時17歳の現役女子高生(マジ羨ましい)だったそうだ。
てことは今も18歳……見た目より大人で良かったけど、ホントならまだ高校生ってことじゃない!
あのロリコン男、犯罪よ! 犯罪!!
「あの……みちるさんは、日本に帰ろうと思ってらっしゃるんですか?」
またまた自分の世界に入り込んでいた私に、おずおずと掛けられた言葉に、
先ほど知らずに呟いた言葉を思い出し、少し慌てながら
「うっ、ううん、まさか! こっちにいれば贅沢できるし、仕事に追われることもないし。
日本なんかよりずーっと楽しい暮らしができるもの!」
と答える。しがないOLの私にしてみたら、ここでの生活はまさに夢のような日々だ。
けれど……
「オトちゃんは……何で、ここに残ろうと思ったの?」
若くて、可愛くて……純粋で。彼女なら日本でも、十分に欲しいものを
手に入れることができただろう。それなのに……
手に入れることができただろう。それなのに……
私の問いに、彼女は一瞬、沈黙した。
「……確かに、ここに来て最初の頃は、帰りたい、と思ってました。
家族や……向こうの人たちに会いたい、とは今でも思います。でも……」
パッと顔を上げて、こちらを見据えた彼女の瞳に、迷いは見えない。
「シャープさんの傍にいたいから、この世界にいるんです」
にっこり微笑んだ顔は、幼くて可愛らしい少女のそれではなく、私よりも
ずっと美しい女性の顔だった。その笑顔が、言葉が、私の胸に突き刺さる。
ずっと美しい女性の顔だった。その笑顔が、言葉が、私の胸に突き刺さる。
「あの男の……どこがいいの?」
「……シャープさんは、本当は優しいんです。私はいつも、助けてもらってばかりで……」
私の問いに、彼女は少しだけ顔を赤らめながら答えた。
「私もみちるさんみたいに綺麗で、大人だったら良かったんですけど」
寂しそうに呟かれた言葉に、彼女が置かれた<王妃>という立場の難しさが少しだけ感じ取れた。
「あのね、敵の数はいいオンナの証なのよ」
「え?」
私のせりふに目を丸くしてこちらを見つめる彼女に向かって、にこっと微笑む。
「私なんかこっちに来てまだ三ヶ月だけど、もう101人も敵がいるもの。
あ、ちなみに101人目はおたくのダンナ様だけど」
そう言うと彼女はぷっと吹き出した。うんうん、やっぱり可愛い子は笑顔でなくちゃ!
「アイツが選んだのはあなたなんだから、周囲の雑音なんか気にしないで、堂々としてればいいのよ」
「……ありがとう、ございます」
返ってきたのは年相応のあどけない微笑みだった。
「みちるさんは、どうしてアーノルドさんを好きになったんですか?」
「えっ……」
思ってもみなかった問いに、固まってしまった私に向かって、オトちゃんは無邪気な言葉を続ける。
「みちるさんも、アーノルドさんがいるからアナースに残ろうと思ったんでしょう?」
純粋すぎる言葉が、私を貫く。
「え、ええ、もちろん……」
どこまでも真っ直ぐに、人を愛することができる彼女に対して、
ハッキリと頷けない自分が惨めで堪らなかった。私は、弱い。そして、醜い……。
ハッキリと頷けない自分が惨めで堪らなかった。私は、弱い。そして、醜い……。
バンッ!
黙り込んだ私にオトちゃんの不安げなまなざしが注がれた瞬間、部屋の扉が開いた。
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