忍者ブログ
ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


焔の声 雫の歌』完結編。拍手ログ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



コウとレンは、双子の火の神として天上に生まれた。
二人の母は火の神を身ごもったことで全身が焼けただれ、
二人を産み落としてすぐに世を去った。
母を焼き殺した双子を神々は奇異の目で見つめ、
父である神さえ彼らに近づこうとはしなかった。
大人も、子供も誰もが二人の姿を見ると逃げていく。
二人が物心のつく頃には、余りに強大な力を持った二神に畏れをなした他の神々が
岩屋の牢獄へと二人を閉じ込めてしまった。
薄暗い牢獄の中を煌々と燃える炎で照らし、火の玉を飛ばしてはどちらがより大きく、
遠くまで飛ばせるかを競う遊びをするしか、退屈を忘れる術が無かった。
コウとレンは、いつも二人きりだった。
感情というものを与えてくれる母も、神々の掟を躾てくれる父もいなかった。
ただ、己と同じように未熟な互いの存在のみが、二人にとっての全てだった。
 
ある日、ほんの少し開け放たれた牢獄の隙間から一羽の蝙蝠が迷い込んできた。
その正体は、蝙蝠に姿を変え、二神を堕天させんとする悪魔だった。
けれど、それまでコウ以外の存在(モノ)と接する機会の少なかったレンは
何の違和感も持たずにその蝙蝠を招きいれ、あまつさえ甘言に耳を貸してしまった。
 
 
~~~
 
 
「コウ! コウ! 今日は翼のある生き物から面白い遊びを聞いたのよ!
お父様とお母様もその“遊び”をなさって、私たちを作られたのですって!」
 
レンの言葉に、暇を持て余していたコウはすぐに飛びついた。
 
「どんな遊びなんだ、レン? 早速やってみようじゃないか!」
 
そうして二人は、あっという間に快楽の虜となった。
 
神々が“そのこと”に気づいたのは、見張りの神がレンの妊娠に気づいてようやくのことであった。
神々は、レンを孕ませたコウと、コウの子を身籠ったレンを許さなかった。
幼い二人に何の知識も与えず、二人きりで牢獄に閉じ込め続けた
非を決して認めることなく、“下界”へと追いやった。
 
 
~~~
 
 
しかして地上は、コウとレンにとって天上よりも遥かに自由な楽園であった。
自分たちを閉じ込める岩屋も、遠巻きに眺める他の神々もいない。
生き物は簡単に死に絶え、泉はすぐに枯らすことができる。
楽しくて、楽しくて二人は毎日遊び回った。
コウが火を起こし、レンがそれを煽ると、
天上では考えられないくらい一瞬で炎は舞い上がり、辺りは紅く染まっていった。
 
やがてレンが臨月を迎え、生まれた子供の髪の色を見てうっとりと呟いた。
 
「見て、コウ。この子、あなたと同じ燃えるように紅い髪をしているわ」
 
「それを言うならレン、この子の瞳はおまえと同じ火花のように輝く赤い色じゃないか」
 
二人はくすくすと笑い合い、生まれた赤子を放り出して褥へともつれ込んだ。
 
 
 
“エン”と名付けた我が子を、二人が構うことは全くと言って良いほど無かった。
コウとレン自身が“親”というものを知らぬ以上、
二人に父性や母性を求めるのは到底不可能な話であった。
しかし、コウとレンは知っていた。
エンが、二人の力を遥かに凌ぐ強大な力の持ち主である、という事実を。
そしてそんなエンが、自分たちを何よりも恐れ、
毛嫌いしている水の里に熱心に通い詰めている理由を。
 
「駒は揃ったわ、コウ」
 
「じゃあレン、始めようか? 遊戯(ゲーム)を」
 
コウとレンはそれまでにも増して“遊び”回った。
特に元より不仲だった水の民に対しては、わざとこちらから刺激するように襲い、
泉や川を枯らして回った。
ばら撒かれる炎に、募る怨嗟の声。
 
そしてとうとう待ちに待った“その日”がやってきた――
 
 
~~~
 
 
「ようやく終わりね、コウ。意外と長く楽しめたんじゃない?」
 
「そうだな、レン。最後の遊戯にふさわしく、今までで一番楽しい“遊び”だったな」
 
「ねえコウ、私、幸せね。
あなたの腕の中で、あなたの血を受け継ぐ息子に殺されて逝けるんですもの!」
 
「レン、俺も幸せだよ。
おまえを腕に抱いて、おまえの力を受け継ぐ息子に殺されて逝けるんだから!」
 
二人の狂った笑い声が、燃え盛る火の社に響く。
皆が恐れ、憎んだ火の神の哀しき真実を知る者は、
最期のときまで一人として存在することは無かった。





後書き
 

拍手[0回]

PR


追記を閉じる▲

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



コウとレンは、双子の火の神として天上に生まれた。
二人の母は火の神を身ごもったことで全身が焼けただれ、
二人を産み落としてすぐに世を去った。
母を焼き殺した双子を神々は奇異の目で見つめ、
父である神さえ彼らに近づこうとはしなかった。
大人も、子供も誰もが二人の姿を見ると逃げていく。
二人が物心のつく頃には、余りに強大な力を持った二神に畏れをなした他の神々が
岩屋の牢獄へと二人を閉じ込めてしまった。
薄暗い牢獄の中を煌々と燃える炎で照らし、火の玉を飛ばしてはどちらがより大きく、
遠くまで飛ばせるかを競う遊びをするしか、退屈を忘れる術が無かった。
コウとレンは、いつも二人きりだった。
感情というものを与えてくれる母も、神々の掟を躾てくれる父もいなかった。
ただ、己と同じように未熟な互いの存在のみが、二人にとっての全てだった。
 
ある日、ほんの少し開け放たれた牢獄の隙間から一羽の蝙蝠が迷い込んできた。
その正体は、蝙蝠に姿を変え、二神を堕天させんとする悪魔だった。
けれど、それまでコウ以外の存在(モノ)と接する機会の少なかったレンは
何の違和感も持たずにその蝙蝠を招きいれ、あまつさえ甘言に耳を貸してしまった。
 
 
~~~
 
 
「コウ! コウ! 今日は翼のある生き物から面白い遊びを聞いたのよ!
お父様とお母様もその“遊び”をなさって、私たちを作られたのですって!」
 
レンの言葉に、暇を持て余していたコウはすぐに飛びついた。
 
「どんな遊びなんだ、レン? 早速やってみようじゃないか!」
 
そうして二人は、あっという間に快楽の虜となった。
 
神々が“そのこと”に気づいたのは、見張りの神がレンの妊娠に気づいてようやくのことであった。
神々は、レンを孕ませたコウと、コウの子を身籠ったレンを許さなかった。
幼い二人に何の知識も与えず、二人きりで牢獄に閉じ込め続けた
非を決して認めることなく、“下界”へと追いやった。
 
 
~~~
 
 
しかして地上は、コウとレンにとって天上よりも遥かに自由な楽園であった。
自分たちを閉じ込める岩屋も、遠巻きに眺める他の神々もいない。
生き物は簡単に死に絶え、泉はすぐに枯らすことができる。
楽しくて、楽しくて二人は毎日遊び回った。
コウが火を起こし、レンがそれを煽ると、
天上では考えられないくらい一瞬で炎は舞い上がり、辺りは紅く染まっていった。
 
やがてレンが臨月を迎え、生まれた子供の髪の色を見てうっとりと呟いた。
 
「見て、コウ。この子、あなたと同じ燃えるように紅い髪をしているわ」
 
「それを言うならレン、この子の瞳はおまえと同じ火花のように輝く赤い色じゃないか」
 
二人はくすくすと笑い合い、生まれた赤子を放り出して褥へともつれ込んだ。
 
 
 
“エン”と名付けた我が子を、二人が構うことは全くと言って良いほど無かった。
コウとレン自身が“親”というものを知らぬ以上、
二人に父性や母性を求めるのは到底不可能な話であった。
しかし、コウとレンは知っていた。
エンが、二人の力を遥かに凌ぐ強大な力の持ち主である、という事実を。
そしてそんなエンが、自分たちを何よりも恐れ、
毛嫌いしている水の里に熱心に通い詰めている理由を。
 
「駒は揃ったわ、コウ」
 
「じゃあレン、始めようか? 遊戯(ゲーム)を」
 
コウとレンはそれまでにも増して“遊び”回った。
特に元より不仲だった水の民に対しては、わざとこちらから刺激するように襲い、
泉や川を枯らして回った。
ばら撒かれる炎に、募る怨嗟の声。
 
そしてとうとう待ちに待った“その日”がやってきた――
 
 
~~~
 
 
「ようやく終わりね、コウ。意外と長く楽しめたんじゃない?」
 
「そうだな、レン。最後の遊戯にふさわしく、今までで一番楽しい“遊び”だったな」
 
「ねえコウ、私、幸せね。
あなたの腕の中で、あなたの血を受け継ぐ息子に殺されて逝けるんですもの!」
 
「レン、俺も幸せだよ。
おまえを腕に抱いて、おまえの力を受け継ぐ息子に殺されて逝けるんだから!」
 
二人の狂った笑い声が、燃え盛る火の社に響く。
皆が恐れ、憎んだ火の神の哀しき真実を知る者は、
最期のときまで一人として存在することは無かった。





後書き
 

拍手[0回]

PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック