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『温と冷』続編。拍手ログ。
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ウンとキリは水の里の長の家に生まれた双子の兄弟であった。
二人が双子である、という事実に戦々恐々としていた里人は、
生まれたのがどちらも男であると知るや否や、ホッと胸を撫で下ろしたと聞く。
その理由は、火の神の血を引く父にあるのだと言う。
水の里で語り継がれるその恐怖の二神は、双子として生まれたにも
関わらず倫を超えて交わり、子を生して天上より追放された。
そうして生まれた子がウンとキリの祖父に当たる火の神子・エンだった。
今では長として多くの里人に慕われている父だが、幼いころは
双子の祖母である水の巫女・スイを誑かし、死に至らしめた火の神子の子、
双子の祖母である水の巫女・スイを誑かし、死に至らしめた火の神子の子、
として随分と辛い目にあってきたらしい。
父は決してそれを自分たちには告げず、ぽつぽつとそうした事実を
教えてくれるのは母であり、現在の水の巫女であるレイなのだが。
教えてくれるのは母であり、現在の水の巫女であるレイなのだが。
本来なら、父の持つぬくもりは水の里人には毒に等しく、
父を育てた老婆もその熱に中てられて死んでしまったのだと言う。
しかし、水の巫女として、また長の一族として強大な力を持つ母にとって
父のぬくもりは返って力を高め、浄化する作用があるのだ、といつか母が言っていた。
『例え兄弟であったとしても、火の神の血を引く双子は不吉だ』
としてウンとキリを引き離そうとする里人に、必死で抵抗を示した父と母。
最後は祖父に当たる先代の長・ヒョウの鶴の一声で片が付いたが、強い意志と
力を持ち、仲睦まじい両親のことを、ウンとキリはとても誇りに思っていた。
火の神子の血を引いているためか、長の一族に生まれたせいか、
双子は普通の里人とは異なり、変幻自在にその姿を変えることが出来た。
里人の行く手を遮る白い壁になって道を惑わすことも、
里人の頭上にぷかりと浮かび上がって彼らをおどかしてみせることも出来た。
現れては消え、消えては現れ、といった悪戯を繰り返す双子に里人は困りはて、
怒ったオンは二人に水の里を出ていくことを命じた。
「自分たちの行いがどれだけ愚かなものであったか、理解するまで戻るのではない!」
~~~
父の叱責に唇を尖らせながら里を出たウンとキリは、方々を旅して回った。
祖父の故郷であるという火の社、緑豊かな木の村、木枯らしと春風の同居する風の町……
弟のキリは、風の町がすっかり気に入ってしまったようだった。
「だって、この町にいれば、僕がつい作り出してしまう白い壁で
みんなを困らせてしまうこともないだろう? ここの人々は風を操る。
水でできた僕の壁なんて、一瞬で吹き飛ばしてしまえるじゃないか!」
「ううん、違うな。俺は知っているぞ、キリ。
おまえはこの町に暮らす、フウという女の子が好きになってしまったんだろう?
いいさ、旅は俺一人で続ける。
おまえはこの町に残って、フウに結婚を申し込めばいい。
おまえはこの町に残って、フウに結婚を申し込めばいい。
父様と母様には、俺からちゃんと伝えておくさ」
弟の言葉にニヤリと微笑んでウンが本当のところを言い当ててやると、
キリは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「ごめん、兄さん……。兄さんは、これから何処へ行くの?
兄さんもここで一緒に暮らせばいいのに」
言い募る弟にウンはふるふると首を振ってみせた。
「行くあてなんて決まってないさ。
ただこの町にいると、俺はふうっ、とかき消えることの出来るおまえとは違って、
一々町外れまで吹き飛ばされてしまうからね。たまったもんじゃないよ。
じゃあな、キリ。おまえの幸せを願っているよ」
~~~
風の町を後にして、一人歩きだしたウンの上から、小さな小さな声が聞こえてきた。
「ねえ、あなたでしょう? 水の里の長の息子で、
身体を白くふわふわと浮かせることのできる双子の片割れ、って」
いきなり耳に届いた不躾な質問に、ウンはいささか憤慨し、無視して歩きだした。
すると、空の上から一人の少女が舞い降りてきて、ウンの目の前に立ちはだかった。
「ちょっと待ってよ! あたしはクウ。空の民。あなたにお願いがあって来たの!」
ウンは驚いて目を見張り、
次に少女と同じ高さまで浮かび上がってじっとその瞳を見つめた。
次に少女と同じ高さまで浮かび上がってじっとその瞳を見つめた。
「確かに、俺は水の里の長・オンの息子のウンだ。俺に何の用がある?」
ウンがそう問いかけると、少女は嬉しそうに顔をほころばせ、こう告げた。
「あなたの身体で、お日さまを隠してほしいの。もちろん毎日とは言わないわ。
ただ近頃あんまりにもお日さまが眩しいから、近くに住むあたしたち空の民も、
下に住むあちらこちらの民たちも、みんな困り果てているのよ。
下に住むあちらこちらの民たちも、みんな困り果てているのよ。
お願い、ウン。あたしと一緒に、空の国へ来てくれない……?」
少女の必死の懇願に釣られるように、ウンは思わず頷いてしまった。
水の里人皆に迷惑がられた白く浮かび上がる己の身体を必要としてくれる存在に
初めて出会ったことが、嬉しくて堪らなかったのかもしれない。
それともそのときから、クウに一目で恋をしてしまっていたのかもしれない。
空の国で暮らすようになって暫しの時を重ね、ウンはクウと結ばれた。
同じ頃、風の町からも弟のキリと彼が恋していたフウとの間に
可愛い赤ん坊が生まれた、との便りが届いていた。
可愛い赤ん坊が生まれた、との便りが届いていた。
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ウンとキリは水の里の長の家に生まれた双子の兄弟であった。
二人が双子である、という事実に戦々恐々としていた里人は、
生まれたのがどちらも男であると知るや否や、ホッと胸を撫で下ろしたと聞く。
その理由は、火の神の血を引く父にあるのだと言う。
水の里で語り継がれるその恐怖の二神は、双子として生まれたにも
関わらず倫を超えて交わり、子を生して天上より追放された。
そうして生まれた子がウンとキリの祖父に当たる火の神子・エンだった。
今では長として多くの里人に慕われている父だが、幼いころは
双子の祖母である水の巫女・スイを誑かし、死に至らしめた火の神子の子、
双子の祖母である水の巫女・スイを誑かし、死に至らしめた火の神子の子、
として随分と辛い目にあってきたらしい。
父は決してそれを自分たちには告げず、ぽつぽつとそうした事実を
教えてくれるのは母であり、現在の水の巫女であるレイなのだが。
教えてくれるのは母であり、現在の水の巫女であるレイなのだが。
本来なら、父の持つぬくもりは水の里人には毒に等しく、
父を育てた老婆もその熱に中てられて死んでしまったのだと言う。
しかし、水の巫女として、また長の一族として強大な力を持つ母にとって
父のぬくもりは返って力を高め、浄化する作用があるのだ、といつか母が言っていた。
『例え兄弟であったとしても、火の神の血を引く双子は不吉だ』
としてウンとキリを引き離そうとする里人に、必死で抵抗を示した父と母。
最後は祖父に当たる先代の長・ヒョウの鶴の一声で片が付いたが、強い意志と
力を持ち、仲睦まじい両親のことを、ウンとキリはとても誇りに思っていた。
火の神子の血を引いているためか、長の一族に生まれたせいか、
双子は普通の里人とは異なり、変幻自在にその姿を変えることが出来た。
里人の行く手を遮る白い壁になって道を惑わすことも、
里人の頭上にぷかりと浮かび上がって彼らをおどかしてみせることも出来た。
現れては消え、消えては現れ、といった悪戯を繰り返す双子に里人は困りはて、
怒ったオンは二人に水の里を出ていくことを命じた。
「自分たちの行いがどれだけ愚かなものであったか、理解するまで戻るのではない!」
~~~
父の叱責に唇を尖らせながら里を出たウンとキリは、方々を旅して回った。
祖父の故郷であるという火の社、緑豊かな木の村、木枯らしと春風の同居する風の町……
弟のキリは、風の町がすっかり気に入ってしまったようだった。
「だって、この町にいれば、僕がつい作り出してしまう白い壁で
みんなを困らせてしまうこともないだろう? ここの人々は風を操る。
水でできた僕の壁なんて、一瞬で吹き飛ばしてしまえるじゃないか!」
「ううん、違うな。俺は知っているぞ、キリ。
おまえはこの町に暮らす、フウという女の子が好きになってしまったんだろう?
いいさ、旅は俺一人で続ける。
おまえはこの町に残って、フウに結婚を申し込めばいい。
おまえはこの町に残って、フウに結婚を申し込めばいい。
父様と母様には、俺からちゃんと伝えておくさ」
弟の言葉にニヤリと微笑んでウンが本当のところを言い当ててやると、
キリは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「ごめん、兄さん……。兄さんは、これから何処へ行くの?
兄さんもここで一緒に暮らせばいいのに」
言い募る弟にウンはふるふると首を振ってみせた。
「行くあてなんて決まってないさ。
ただこの町にいると、俺はふうっ、とかき消えることの出来るおまえとは違って、
一々町外れまで吹き飛ばされてしまうからね。たまったもんじゃないよ。
じゃあな、キリ。おまえの幸せを願っているよ」
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風の町を後にして、一人歩きだしたウンの上から、小さな小さな声が聞こえてきた。
「ねえ、あなたでしょう? 水の里の長の息子で、
身体を白くふわふわと浮かせることのできる双子の片割れ、って」
いきなり耳に届いた不躾な質問に、ウンはいささか憤慨し、無視して歩きだした。
すると、空の上から一人の少女が舞い降りてきて、ウンの目の前に立ちはだかった。
「ちょっと待ってよ! あたしはクウ。空の民。あなたにお願いがあって来たの!」
ウンは驚いて目を見張り、
次に少女と同じ高さまで浮かび上がってじっとその瞳を見つめた。
次に少女と同じ高さまで浮かび上がってじっとその瞳を見つめた。
「確かに、俺は水の里の長・オンの息子のウンだ。俺に何の用がある?」
ウンがそう問いかけると、少女は嬉しそうに顔をほころばせ、こう告げた。
「あなたの身体で、お日さまを隠してほしいの。もちろん毎日とは言わないわ。
ただ近頃あんまりにもお日さまが眩しいから、近くに住むあたしたち空の民も、
下に住むあちらこちらの民たちも、みんな困り果てているのよ。
下に住むあちらこちらの民たちも、みんな困り果てているのよ。
お願い、ウン。あたしと一緒に、空の国へ来てくれない……?」
少女の必死の懇願に釣られるように、ウンは思わず頷いてしまった。
水の里人皆に迷惑がられた白く浮かび上がる己の身体を必要としてくれる存在に
初めて出会ったことが、嬉しくて堪らなかったのかもしれない。
それともそのときから、クウに一目で恋をしてしまっていたのかもしれない。
空の国で暮らすようになって暫しの時を重ね、ウンはクウと結ばれた。
同じ頃、風の町からも弟のキリと彼が恋していたフウとの間に
可愛い赤ん坊が生まれた、との便りが届いていた。
可愛い赤ん坊が生まれた、との便りが届いていた。
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