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以下、11~13章読了。(相変わらず宗教や時事への辛口、私的な病みぶっちゃけも相変わらず含みますのでご注意願いますm(__)m)
11章、キルスティンのフラグ回収キター(´Д`;) 可哀想なキルスティンとビル・・・。反面一転して正気回復というかオカルト信奉から脱け出す主教様(笑)そう考えると本当キルスティンって何のために存在してたの? てか彼女の人生の意味って何だったんだ?とビキビキ来ちゃいますねー(^ω^#) オメーが主教の分際で手なんか出してなければキルスティンがあんなにコソコソ愛人生活続けるストレスとか、ジェフの自殺への罪悪感や降霊会に付き合わされたり苦しむことなく、闘志に燃える女性運動家としての生涯全うできたんじゃねーの?と。友人であり、ある意味ではライバルでもあったのだろうエンジェルの、キルスティンの死に対する複雑な感情。「何という悪意。・・・本当にあたしたちを憎んでたのね。これがあたしたちの罰。ずっと、自分に責任があったと思うだろう。・・・あたしたちのだれも責任なんかなくて、でもある意味でみんなに責任があって。でもどのみちそんなものどうでもよくて、後付けで無意味で空疎で、まったく空虚」そして残されたビルのことも思い起こしながらオペラ『ヴォツェック』の一節を思い出す、「世界は最悪」これぞ高踏芸術。「芸術家にお金を払ってやらせてるのはそういうこと、これをあたしたちに伝え、解明することで連中は生計を立てる。なんとお見事で鋭い洞察かしら。なんと刺すような知性」・・・正直、とてもよく共感します。反骨精神から生まれたロックミュージック聞いててもプロレタリア文学読んでも、もちろんスポンサー・観客ともに世の勝ち組のはずのオペラさえ。エリートの愛する純文学、大陸の古典ですら根底に流れている人間の哀しさ、世間の虚しさというものは悲惨過ぎる。(でもだからこそその中で必死にもがく人という生き物は素晴らしいのだ、回り、進化し、退化し変動していく世界は美しいのだ、と私は思っているけどね!(^^)b もちろん友人を亡くした後のエンジェルにそんな考えが浮かばない道理は承知ですが)
そして彼女の死に対するエンジェルの“責任”は「圧制者たる死よ、ここに」の名付け親が自分だと明かしてしまったことが最も大きいと本人は思ってるんだ(@_@;) ティムは本気で自分で考えたと思い込んでしまっていたから。悪気なくこの世の全てを知り、また知る権利があるのは自分だと彼は信じ切ってしまっている、とエンジェルの目には見える。「いかなるものもそのままではいられない、そして万物はイカレきってる。」それでもティムへの信仰(こう呼んでも差し支えないレベルだろ、ここまでくれば)を捨てきれないエンジェルが本当に憐れ。霊媒を信じることを止めたティムは結局またキ○ストにすがり出した。霊媒によるジェフからの伝言、死の運命を免れるために、未来を変えるためにキリ○トの存在を、力を求めようとする男の滑稽さ。でもとりあえず「私の希望はイ○ス・キリス○にある。・・・私は決して二人のようには逝かない。屠られる羊のようには」と彼の戦う意志を見て安堵するエンジェルが(つД`)
でも例のオカルト本の出版について、ティムが差し止めず後に修正本を書く、と言っているくだりが彼の人間性がやはり並々ならぬものだったんだな、と思わず感心させられてしまった。「人は自分の愚行から目をそらすべきではない――そしてそれを直視したら、それを正そうとすればいい。」オボちゃんもこういう精神であの本出して、S井さんのご遺族や若き研究者の皆様に売り上げ金寄付でもして下さるとおっしゃるならまだマシに捉えられたのかもしれないですが(´-`) S鬼薔薇の本があんなバカ売れする日/本社会にそんな良心期待するだけ無駄か。不倫タレントは叩きまくられてメディア追放されるのにホント謎。イヤ私もあれは嫁の立場なら許せないってかドン引きだけど、最近ハーフだの二世だの軍団売りみたいなのに嫌気さしてたトコだったんで、別に彼女が消えるの自体はS○AP並みに何とも思わないっつーかどうでも良いというか(以下略)
12章、キルスティンの死がもたらしたポジティヴな面(アーチャー主教の復活)に触れつつ、その喪失は利益に対して比べようもないものだった、というエンジェルの語りは真実だと感じた。「驚かされるのは、人の死が人々をいかに我に返らせるかということ。どんな言葉も議論もかなわない究極の力。無理にでも関心と時間を割かせ、そして人を変えてしまう。」葬式の手配や連絡、遺産の管理やお墓の件なんかで一気に仕事増えますもんね。(ここで言ってんのはそんなリアルの話じゃないよ!)夏に父がICU入りした時なんか色々気張り過ぎて無理しようとして、結局色々余計に己のダメさ加減に気づいた挙句このザマだもんな。もう半年くらい経つのに(笑)つくづく自分なっさけなーorz でもティムはそれを力に変える性質を持っていて、それこそが彼を優秀な人間にしていた。自体が悪くなればなるほど強くなる。「死が好きではなかったけれど、死を恐れもせず、死を理解していた。」インチキな解決策を試したら死が増えてしまったから、今度はギヤチェンジして合理的になろうと試みる。今度は自分自身の命が懸かっているから。周り散々巻き込んで死に追いやったも同然のクセして、スゲェなこのオッサン(゜Д゜)ポカーン
古代の思索家たちの死に対する発想も面白い。「死は万人にくるものだから死そのものは邪悪ではないけれど、早すぎる死は正しく邪悪。人がその仕事を終える前にやってくる死、熟する前に断ち切られる果実のように、死はそれを奪って捨ててしまう。まるで何ら興味が持てない――死にとってすら関心がないとでも言うように。」こういう死も確かに何件か(特に直近の五年前の出来事では一気に)見てきたので、本当に胸に刺さる言葉です。エンジェルの「若い子の自殺は生まれる前に死ぬことと同じ」って発想と同じだな。(そういうのにも立ち会った。というか同名の方がそうだった。しかも同級生の身内だし、ホント絶対家では出来ないな、と@病みMAXで重ね重ねm(__)m)ティムは死んだ息子や愛人よりも年上だったのに、それでもまだ仕事を終えておらず、断ち切られ生命から切り離される気はなかった。最後の瞬間に思考停止状態から目を覚ましたであろうヴァレンシュタインとティムとの違いについてのエンジェルの推察がいつもながら鋭い。(かつティム信者として若干の希望的楽観主義が垣間見える(-_-;))「まずティムは偉大な人物が愚行でどうなるのかというヴァレンシュタインの前例を見ることができた。第二に彼は根本的には現実主義者だった。・・・破滅的なナンセンスですら彼の人生でのもっと大きな経済の中で、ある種の効用を持っていた。彼は自分の役割が持つ堅苦しい縛りに捕らわれたいとは思わなかった。・・・彼は人であり、自分がそういうものだと思っていた。・・・多くの領域で生きて各種のベクトルに広がった人間であると。」
かーらーのティムのルネサンス解釈がまた鳥肌もんで面白い!「ルネサンスは中世世界を打倒したり廃止したりはしておらず、中世を成就させた」と。でもってまた『神曲』(´-`)=3 何これ遺作だから?「『神曲』は中世の世界観をまとめ上げている至高の作品でありながら、広範に広がるビジョンを持ち、たとえばミケランジェロの世界観に対立させたりはできない」「ティムはキリ○ト教がルネサンス期にこそ頂点に達したと見ていた。・・・ルネサンスは古い異教世界が信仰に勝利したものではなく、むしろ信仰、特にキリ○ト教信仰の最終的で最も豊かな開花だった。」私もこの意見には同意します。何しろ中心地が総本山近郊でしたし(少なくとも同じ言葉を解する地域)、ルネサンス期の交易を通じてどれほど“異教”の地にも“キリス○教的芸術・文化”が伝わったか、計り知れない影響があったと思う。後に続く「だから有名なルネサンス人(あらゆることについて多少は知る万能人)は理想的なキ○スト教徒で、この世でもあの世でも戸惑うことがない。物質と精神の完全なブレンド、聖別された物質。二つの領域、この世とあの世が大いなる墜落以前のように結び合わされた物質だと」ダ・ヴィ○チコードですね分かります(^ω^)
ティムがますますサドカイ派文書、アノキにのめり込むフラグがビンビン(笑)「完全なる人物は、どんなに仕事で成功してもその仕事に自分を閉じ込めたりしない。(万能人でなければならないから^^)だからその一環として主教の領域を逸脱するために性に走った」と。この思い込みの激しさと自信は一体どこから、どうすれば得られるんだ? ガチで一つの神を信仰する、し続けるって行為が可能な人間だからこそできることなの?(´Д`;) エンジェルがその「色々試してみる」やり方がティムを破滅させた、ってちゃんと分かってる辺り・・・。それでも彼女は「一部のアイデアがまるで独自の生命を持つかのようにぐるっと裏手の奥に回って彼を出し抜き、その結果としてティムは死んだ。」って彼を庇い続けている。どう見てもオッサン無責任な自業自得にしか思えないんだがなぁ。「歴史ってそういうもの。これは歴史的な事実。」と認めながらティムを運命と格闘した勇者のように称える、というところに彼女の病的な彼への信仰と愛情を感じて怖気が立った((((;゜Д゜|||)))
一方で夫に続く親友の死の痛手からエンジェルはどんな苦しみを受けていたか。「内省の問題というのは終わりがない」「あたしはメタファーのジャンキー、学がありすぎて頭がいい。考えすぎ、読みすぎ、愛する者たちのことを心配しすぎる。愛する者たちは死にはじめていた。この世に残っている者はあまり多くない。ほとんどが逝った。」ヘンリー・ヴォーンの詩を含め、このくだり、この2~3ページの彼女の心情には共感し過ぎて(´;ω;`)ブワッ 友達とか家族と喋ってても、ブログ書いたり本読んでても思っちゃうんだよ、何でこんなヒネたことしか浮かばないんだ、もっと他人を楽しませるような会話ができないのか、本だの大学だのくだらないネットだので拾ってきたネタ偉そうに喋ったってソレは自分のものじゃないのに、自分自身は空っぽなのに、って。私はエンジェルほどの学もないし(西洋文学・歴史に関してはお手上げ)頭も良くないけど、大学で聞きかじったことを生きる糧にしてしまっている部分は多少ある。(だって少なくとも好きだったり興味が持てることを沢山得られたから。卒業してないんですけど!\(^O^)/)
愛する人たちの死によって思考が17世紀の詩人たちのように、あの世の方に向いてしまったエンジェル。そしてティムとの断絶が彼女に最悪の打撃をもたらしたという点がもう(つД`) 彼女はキリス○なんかどうでも良くても、ティム個人の最も熱烈な信者だったのに。「大好きだった。・・・ティムが恋しかった。」「あたしにとって、これは悲劇だった。ジェフとキルスティンを失ったよりもひどかったかもしれない。でもあたしはこれをだれにも話さなかったし、セラピストにすら言わなかった。」そうなんだよねー、本当に一番つらいことは精神科医にも誰にも言えないんだよ。言っても解ってもらえないというか自分でどうにかするしかない苦しみだからさ、ぶっちゃけ。だって他人は自分にはなれないから、決して同等の痛みの共有は不可能で、それができない以上はより深い傷や孤独を自分自身にもたらすだけ。切ないなぁ、エンジェル!そして彼女を切り離したティムは聖教会を去った後、サドカイ派文書にますますのめり込んでいった。「ティムは面倒ごとを置いて立ち去るってことができなかったから、彼と面倒ごとはいずれ道を共にする運命だったんだわ。」って自身に言い聞かせるようなエンジェルの述懐がまた泣かせる(;_;)
ティムとの繋がりが切れ、知り合いをすべて失ったエンジェルは新しい道を歩き出す。レコード店の仕事を天職と決め、自分の殻を脱し、もっと人に会うようになり、新しい恋人と暮らし始めた。(こういうところは本当に私と違って地に足つけててスゴイと思う。人間として当たり前の生き方なんだろうけど(^^;)ティムからの久々の連絡に浮き足立つエンジェルをからかう恋人のハンプトンに、「その二人(自殺したジェフとキルスティン)はひどく苦しんだのよ。あれほど苦しんだ人のどこがそんなに可笑しいのよ」という彼女のセリフには同意というか胸打たれた。死ぬ瞬間は誰だって肉体的に苦しい。ましてや自殺者は、その決断に至るまでの精神的苦痛がどれほど長く重いものであったか。何回か立ち会ってるから解りますよ、絶対に揶揄することなんかできない。だからあんだけのことやらかしときながらのうのうと生きて、挙句に印税入る手記なんか出すS鬼薔薇もオボも許せないし、買ったりする人の気が知れない@一人の本好きとして。出版社もバカじゃねーの、いくらこんな時代だからって書物の存在意義軽んじてんのか、ネットで無料のブログにでも載せとけ、あっという間に炎上するから、としか思えないんだよねぇ(´-`)
ティムからイス○エル行きの話を聞かされて、彼の関心があの世から地面へ、本来あるべきところへ戻るかもしれない、と期待するエンジェル。そして一緒にそこへ行けば、自分自身も知識や皮肉から解放されるかも、と。「中古のフレーズ、あちこちから拝借してきたかけら。大学での日々からの断片、暗記はしたけれど理解できなかった断片、理解はしても使ってない断片、使っても決して成功しなかった断片。友人たちの破滅の見物人。そのだれ一人として救えない人物」としての自分から。この部分も大変に共感する。「心が言葉の使い回しで問題を解決しようとする」ってくだり。もう自分自身に対してはそれすら諦めてどれほど経ったか分からないけど、他人に対しては未だにコレをやっちゃう上に(自分さえ救えてない以前にそんなご立派な立場じゃないのに)、それがやっぱり借り物のメタファーでしかなくて自分自身の考えや言葉じゃないんだよ。少なくとも自分にはそうとしか思えないしその自覚がある。自分の中身が空っぽだから、そうやって会話するしかない。だから他人との会話が嫌になる。ますます内にこもっていく。リアルな経験積めば良いって? それができたらどんなに(以下略)とにかく人の性質や生き方はそう簡単には変えられなくて(というか生まれた時から定まってしまっているのでは?)、無理をしようとするといつか壊れて戻らなくなる、と言い訳かもしれないけど個人的にはそう思います。身体か、精神か、無意識の行動に出ちゃって結局他人様に迷惑をかけることになるんだよね(-_-;) 発作、吐き気、目まい、眠気。起きられない、歩けない、人の顔や話の内容を覚えられない。論文の作成にどこから手を付けて良いか分からず頭が真っ白になり、趣味の創作活動さえ困難になる。こんなに折り目付けて線引きまくって小説を読み、長々と感想を書く作業はある種のリハビリなのかもしれない。いずれまた冷静に専門書が読めるように、自分の文章を書けるように(ホント病みが深くてサーセンm(__)m)
13章、ティムの「関心」についてのくだりが面白い。「簡単に関心が消えるのではなく、焦点が変わる。関心そのものは変わらない。関心の対象が変わるのよ。ティムは果てしなく変転する世界に住んでるにちがいないわ。ヘラクレイトスの流転世界が人格化したようなものね。」なるほどー((゜Д゜)ウンウン アノキへのティムの執着が病的で怖い。「キ○ストがいまそこにいる。・・・私が生き延びる唯一の方法は、だれかが運命の支配を破って解放してくれることだ。・・・キリ○トならそれができる。」おいマジかホント誰かこのオッサン止めたげて!(再)「神様はどこにでもいる」と言うエンジェルに「神はあの(キノコのある。笑)涸谷にしかいない」と答えるティムはかなりの重症┐(´Д`)┌ 「サドカイ派文書はあらゆる人間の未来が天地創造以前から書かれている本について語っている。それが『つむぎ手たちの書』であり、つむぎ手というのは運命を人格化したもの。キリス○だけがこれを奪い、それを読み、その情報を各人に伝え、運命を教え、その絶対的な叡智を通じて運命を回避する方法を教える」だって? アンタそれ救世主の範疇超えちゃってるオカルトと何ら変わらない域の思想だけど良いのか元主教・・・。以前語ってたサタンが神に対してやったこととまるで同じ、とエンジェルにも指摘されちゃってますがな(・・;) 一緒にイスラ○ルに行くよう必死に懇願するティムに対して、前章の終わりでは「連れて行ってほしい」と願っていたエンジェルが「迷子になるわ。迷子になってる。いまも迷子よ。・・・バークレーを離れたくないの――ここがあたしの家だから。・・・それが神かけて真実なの。」と断るセリフ、これが永遠の断絶であることを分かっていての決意が込められた瞬間が何とも切ない(´;ω;`)
「あたしを許してください。」というエンジェルの言葉、「あたしの人生は、いまのいままであたしにとって重要すぎた。何よりも、あたしはこの人物と関わり合いになるのが怖かった。・・・そういうのを過去のものにしたかった。あたしはもうやり直したんだ。振り返ったりしない。・・・あたしが欲しいものは即時的で、決まっていて、現実で、実体があった。この世の中にあり、触って把握できる。・・・やっとのことで頭から観念を追い払うことにも関連していた。他の観念についての観念、その無限後退が、永遠にスパイラルを形成するのに陥らないようにするんだ。」この必死さがねー(つД`) どれほどティムに、ジェフに、キルスティンに囚われていたのか、どれほど彼らが彼女にとって必要で大切な存在だったのかがうかがえて逆に真に迫ってくる。
そして食後のティムの言葉「もし私が求めるものを見つけたら、私のほうは変わるよ。・・・すべての文書を読んだが、答えはそこにはない。文書は答えが何なのかは示し、その答えがどこにあるかも示すが、答え自体はそこにはない。」私が文献史学への違和感というか疑問を感じたのもそういうところが始まりだったのかもしれない。でもそもそも昔のものがそのままの形で残ってることなんか特に湿度高い日.本じゃぶっちゃけあり得ないし、考古学はほぼイキナリ古代以前の分野になってしまう。ただ実物・ありのままの現実を知りたいだけなのに、それが何より難しい、って歴オタの一番ツラいところです>< そしてティムが最後にエンジェルに突きつける辛辣な現実。「いまだに大学に縛られてバークレーにいる、完全に大人にはなれない」『神曲』を読んだ日に生まれた、と応じる彼女に「それは生まれはじめただけ。・・・死海砂漠こそがきみの生まれるところ。そここそは人間の霊的な命が始まったところだから。・・・神性示現、人類史上最も偉大な瞬間だ。」「きみは本当の意味では生きていない。まだ未生の状態だ。イエ○が第二の誕生の話をしたのはそういう意味だ。聖霊の中または聖霊からの誕生。天上からの誕生だ。砂漠で待っているのはそれであり、それを私は見つける」教祖様からの誘いとしてどれほど断るのがしんどかったか!「きみの魂は救う価値がある。・・・今夜は漁師だったんだ、きみを釣り損ねた」また次の機会に、と返したエンジェルが「いや、次はない」とティムに言われ、彼の言う通り、と納得してしまう。この通じっぷり、信者っぷりがもう本当に。・゜・(ノД`)・゜・。
結局ティムは日/産車で死んだんですかー。もう、砂漠はTOY○TA様で走らなきゃ、とテロリストも証明してるっていうのに!ティムが死んだと聞いて涙も出なかったエンジェル。以前の二人の時のような情動も感情もなく、魂が死んだ機械になってしまった。「ティムが言った通り決して完全には生まれていない魂、未生ではあるけど少しは生まれていてもっと生まれたいと願っている魂、完全に生まれきりたいと思っている魂が死んで、身体だけが動き続けた。 あの週に失った魂は決して戻ってこなかった。何年も経ったいまも、あたしはもう機械なのだ。・・・うさんくさいセミナーに参加したのだって、ひどいことを迎える機械なりのやり方だから。機械はそれよりましなことができない。単にそのまま先に進み、たまに空回りすることもあるくらい。機械にできるのはそれだけ。・・・それは知的には理解するけれど、心で理解は起きない。というのもその心は機械的なもので、ポンプとして動くよう設計されてるから。 だからそれはポンプを続けて、そしてヨタヨタと動き続けて進み続け、知ってるけど知らない。そして決まりきった動きを続ける。人生とされるものを生きてみせる。・・・それは自分が考え聞いたことを自分に繰り返す。生命のシュミレーション。それがかつては所有していたが、いまや失ってしまった生命の。その機械は自分が何を知らないかを知っている、と哲学の本が混乱した哲学者について言っているようなもの。・・・ あたしはプロ学生で、今後もそれは変わらない。変わる機会が提供されたのに、それを断ってしまった。・・・そして自分で言ったように、何を知らぬかのみを知る。」
自分を“それ”呼ばわりするエンジェルが(つД`) 電気羊で描かれたアンドロイドと人間の違いは究極的にはこういう点で、人間もいつその魂・心・人間性を象徴するものを失って“機械”の側に堕ちてしまうか分からない、ということがあるいは本当に作者が残したかった遺言のようなものだったのかもしれない。でも私は、それでも、機械としてでも生き続けようとするエンジェルが、深く傷つき過ぎた結果としてそうなったのだとしても(自殺するにも気力が要る)、十分に強く偉く立派で失ったものを取り戻す可能性をもまだ残しているんじゃないか、と思った。ぶっちゃけ途中で、全てはティム信者のエンジェルの妄想、あるいは登場人物の全てが精神病患者の彼女が創り出したものなのかなー、とも考えたんですけど(前二作未読なので)。どういうオチになるか楽しみです!(SFファン的にはもう古典の域なんでしょうが、ネタバレ踏まないように何とかここまでやって来ました(´∀`;) だってメッチャ面白いんだもん!宗教コンプ的にも熱いネタ満載だし。笑)
いやーしかし米・肉・油物以外はメッチャ吐きそうになるまで食べてるのに痩せ止まらないのは何で?\(^O^)/「ダイエットしなきゃ!」とか言ってた期間考えるとウケる(笑)
そして彼女の死に対するエンジェルの“責任”は「圧制者たる死よ、ここに」の名付け親が自分だと明かしてしまったことが最も大きいと本人は思ってるんだ(@_@;) ティムは本気で自分で考えたと思い込んでしまっていたから。悪気なくこの世の全てを知り、また知る権利があるのは自分だと彼は信じ切ってしまっている、とエンジェルの目には見える。「いかなるものもそのままではいられない、そして万物はイカレきってる。」それでもティムへの信仰(こう呼んでも差し支えないレベルだろ、ここまでくれば)を捨てきれないエンジェルが本当に憐れ。霊媒を信じることを止めたティムは結局またキ○ストにすがり出した。霊媒によるジェフからの伝言、死の運命を免れるために、未来を変えるためにキリ○トの存在を、力を求めようとする男の滑稽さ。でもとりあえず「私の希望はイ○ス・キリス○にある。・・・私は決して二人のようには逝かない。屠られる羊のようには」と彼の戦う意志を見て安堵するエンジェルが(つД`)
でも例のオカルト本の出版について、ティムが差し止めず後に修正本を書く、と言っているくだりが彼の人間性がやはり並々ならぬものだったんだな、と思わず感心させられてしまった。「人は自分の愚行から目をそらすべきではない――そしてそれを直視したら、それを正そうとすればいい。」オボちゃんもこういう精神であの本出して、S井さんのご遺族や若き研究者の皆様に売り上げ金寄付でもして下さるとおっしゃるならまだマシに捉えられたのかもしれないですが(´-`) S鬼薔薇の本があんなバカ売れする日/本社会にそんな良心期待するだけ無駄か。不倫タレントは叩きまくられてメディア追放されるのにホント謎。イヤ私もあれは嫁の立場なら許せないってかドン引きだけど、最近ハーフだの二世だの軍団売りみたいなのに嫌気さしてたトコだったんで、別に彼女が消えるの自体はS○AP並みに何とも思わないっつーかどうでも良いというか(以下略)
12章、キルスティンの死がもたらしたポジティヴな面(アーチャー主教の復活)に触れつつ、その喪失は利益に対して比べようもないものだった、というエンジェルの語りは真実だと感じた。「驚かされるのは、人の死が人々をいかに我に返らせるかということ。どんな言葉も議論もかなわない究極の力。無理にでも関心と時間を割かせ、そして人を変えてしまう。」葬式の手配や連絡、遺産の管理やお墓の件なんかで一気に仕事増えますもんね。(ここで言ってんのはそんなリアルの話じゃないよ!)夏に父がICU入りした時なんか色々気張り過ぎて無理しようとして、結局色々余計に己のダメさ加減に気づいた挙句このザマだもんな。もう半年くらい経つのに(笑)つくづく自分なっさけなーorz でもティムはそれを力に変える性質を持っていて、それこそが彼を優秀な人間にしていた。自体が悪くなればなるほど強くなる。「死が好きではなかったけれど、死を恐れもせず、死を理解していた。」インチキな解決策を試したら死が増えてしまったから、今度はギヤチェンジして合理的になろうと試みる。今度は自分自身の命が懸かっているから。周り散々巻き込んで死に追いやったも同然のクセして、スゲェなこのオッサン(゜Д゜)ポカーン
古代の思索家たちの死に対する発想も面白い。「死は万人にくるものだから死そのものは邪悪ではないけれど、早すぎる死は正しく邪悪。人がその仕事を終える前にやってくる死、熟する前に断ち切られる果実のように、死はそれを奪って捨ててしまう。まるで何ら興味が持てない――死にとってすら関心がないとでも言うように。」こういう死も確かに何件か(特に直近の五年前の出来事では一気に)見てきたので、本当に胸に刺さる言葉です。エンジェルの「若い子の自殺は生まれる前に死ぬことと同じ」って発想と同じだな。(そういうのにも立ち会った。というか同名の方がそうだった。しかも同級生の身内だし、ホント絶対家では出来ないな、と@病みMAXで重ね重ねm(__)m)ティムは死んだ息子や愛人よりも年上だったのに、それでもまだ仕事を終えておらず、断ち切られ生命から切り離される気はなかった。最後の瞬間に思考停止状態から目を覚ましたであろうヴァレンシュタインとティムとの違いについてのエンジェルの推察がいつもながら鋭い。(かつティム信者として若干の希望的楽観主義が垣間見える(-_-;))「まずティムは偉大な人物が愚行でどうなるのかというヴァレンシュタインの前例を見ることができた。第二に彼は根本的には現実主義者だった。・・・破滅的なナンセンスですら彼の人生でのもっと大きな経済の中で、ある種の効用を持っていた。彼は自分の役割が持つ堅苦しい縛りに捕らわれたいとは思わなかった。・・・彼は人であり、自分がそういうものだと思っていた。・・・多くの領域で生きて各種のベクトルに広がった人間であると。」
かーらーのティムのルネサンス解釈がまた鳥肌もんで面白い!「ルネサンスは中世世界を打倒したり廃止したりはしておらず、中世を成就させた」と。でもってまた『神曲』(´-`)=3 何これ遺作だから?「『神曲』は中世の世界観をまとめ上げている至高の作品でありながら、広範に広がるビジョンを持ち、たとえばミケランジェロの世界観に対立させたりはできない」「ティムはキリ○ト教がルネサンス期にこそ頂点に達したと見ていた。・・・ルネサンスは古い異教世界が信仰に勝利したものではなく、むしろ信仰、特にキリ○ト教信仰の最終的で最も豊かな開花だった。」私もこの意見には同意します。何しろ中心地が総本山近郊でしたし(少なくとも同じ言葉を解する地域)、ルネサンス期の交易を通じてどれほど“異教”の地にも“キリス○教的芸術・文化”が伝わったか、計り知れない影響があったと思う。後に続く「だから有名なルネサンス人(あらゆることについて多少は知る万能人)は理想的なキ○スト教徒で、この世でもあの世でも戸惑うことがない。物質と精神の完全なブレンド、聖別された物質。二つの領域、この世とあの世が大いなる墜落以前のように結び合わされた物質だと」ダ・ヴィ○チコードですね分かります(^ω^)
ティムがますますサドカイ派文書、アノキにのめり込むフラグがビンビン(笑)「完全なる人物は、どんなに仕事で成功してもその仕事に自分を閉じ込めたりしない。(万能人でなければならないから^^)だからその一環として主教の領域を逸脱するために性に走った」と。この思い込みの激しさと自信は一体どこから、どうすれば得られるんだ? ガチで一つの神を信仰する、し続けるって行為が可能な人間だからこそできることなの?(´Д`;) エンジェルがその「色々試してみる」やり方がティムを破滅させた、ってちゃんと分かってる辺り・・・。それでも彼女は「一部のアイデアがまるで独自の生命を持つかのようにぐるっと裏手の奥に回って彼を出し抜き、その結果としてティムは死んだ。」って彼を庇い続けている。どう見てもオッサン無責任な自業自得にしか思えないんだがなぁ。「歴史ってそういうもの。これは歴史的な事実。」と認めながらティムを運命と格闘した勇者のように称える、というところに彼女の病的な彼への信仰と愛情を感じて怖気が立った((((;゜Д゜|||)))
一方で夫に続く親友の死の痛手からエンジェルはどんな苦しみを受けていたか。「内省の問題というのは終わりがない」「あたしはメタファーのジャンキー、学がありすぎて頭がいい。考えすぎ、読みすぎ、愛する者たちのことを心配しすぎる。愛する者たちは死にはじめていた。この世に残っている者はあまり多くない。ほとんどが逝った。」ヘンリー・ヴォーンの詩を含め、このくだり、この2~3ページの彼女の心情には共感し過ぎて(´;ω;`)ブワッ 友達とか家族と喋ってても、ブログ書いたり本読んでても思っちゃうんだよ、何でこんなヒネたことしか浮かばないんだ、もっと他人を楽しませるような会話ができないのか、本だの大学だのくだらないネットだので拾ってきたネタ偉そうに喋ったってソレは自分のものじゃないのに、自分自身は空っぽなのに、って。私はエンジェルほどの学もないし(西洋文学・歴史に関してはお手上げ)頭も良くないけど、大学で聞きかじったことを生きる糧にしてしまっている部分は多少ある。(だって少なくとも好きだったり興味が持てることを沢山得られたから。卒業してないんですけど!\(^O^)/)
愛する人たちの死によって思考が17世紀の詩人たちのように、あの世の方に向いてしまったエンジェル。そしてティムとの断絶が彼女に最悪の打撃をもたらしたという点がもう(つД`) 彼女はキリス○なんかどうでも良くても、ティム個人の最も熱烈な信者だったのに。「大好きだった。・・・ティムが恋しかった。」「あたしにとって、これは悲劇だった。ジェフとキルスティンを失ったよりもひどかったかもしれない。でもあたしはこれをだれにも話さなかったし、セラピストにすら言わなかった。」そうなんだよねー、本当に一番つらいことは精神科医にも誰にも言えないんだよ。言っても解ってもらえないというか自分でどうにかするしかない苦しみだからさ、ぶっちゃけ。だって他人は自分にはなれないから、決して同等の痛みの共有は不可能で、それができない以上はより深い傷や孤独を自分自身にもたらすだけ。切ないなぁ、エンジェル!そして彼女を切り離したティムは聖教会を去った後、サドカイ派文書にますますのめり込んでいった。「ティムは面倒ごとを置いて立ち去るってことができなかったから、彼と面倒ごとはいずれ道を共にする運命だったんだわ。」って自身に言い聞かせるようなエンジェルの述懐がまた泣かせる(;_;)
ティムとの繋がりが切れ、知り合いをすべて失ったエンジェルは新しい道を歩き出す。レコード店の仕事を天職と決め、自分の殻を脱し、もっと人に会うようになり、新しい恋人と暮らし始めた。(こういうところは本当に私と違って地に足つけててスゴイと思う。人間として当たり前の生き方なんだろうけど(^^;)ティムからの久々の連絡に浮き足立つエンジェルをからかう恋人のハンプトンに、「その二人(自殺したジェフとキルスティン)はひどく苦しんだのよ。あれほど苦しんだ人のどこがそんなに可笑しいのよ」という彼女のセリフには同意というか胸打たれた。死ぬ瞬間は誰だって肉体的に苦しい。ましてや自殺者は、その決断に至るまでの精神的苦痛がどれほど長く重いものであったか。何回か立ち会ってるから解りますよ、絶対に揶揄することなんかできない。だからあんだけのことやらかしときながらのうのうと生きて、挙句に印税入る手記なんか出すS鬼薔薇もオボも許せないし、買ったりする人の気が知れない@一人の本好きとして。出版社もバカじゃねーの、いくらこんな時代だからって書物の存在意義軽んじてんのか、ネットで無料のブログにでも載せとけ、あっという間に炎上するから、としか思えないんだよねぇ(´-`)
ティムからイス○エル行きの話を聞かされて、彼の関心があの世から地面へ、本来あるべきところへ戻るかもしれない、と期待するエンジェル。そして一緒にそこへ行けば、自分自身も知識や皮肉から解放されるかも、と。「中古のフレーズ、あちこちから拝借してきたかけら。大学での日々からの断片、暗記はしたけれど理解できなかった断片、理解はしても使ってない断片、使っても決して成功しなかった断片。友人たちの破滅の見物人。そのだれ一人として救えない人物」としての自分から。この部分も大変に共感する。「心が言葉の使い回しで問題を解決しようとする」ってくだり。もう自分自身に対してはそれすら諦めてどれほど経ったか分からないけど、他人に対しては未だにコレをやっちゃう上に(自分さえ救えてない以前にそんなご立派な立場じゃないのに)、それがやっぱり借り物のメタファーでしかなくて自分自身の考えや言葉じゃないんだよ。少なくとも自分にはそうとしか思えないしその自覚がある。自分の中身が空っぽだから、そうやって会話するしかない。だから他人との会話が嫌になる。ますます内にこもっていく。リアルな経験積めば良いって? それができたらどんなに(以下略)とにかく人の性質や生き方はそう簡単には変えられなくて(というか生まれた時から定まってしまっているのでは?)、無理をしようとするといつか壊れて戻らなくなる、と言い訳かもしれないけど個人的にはそう思います。身体か、精神か、無意識の行動に出ちゃって結局他人様に迷惑をかけることになるんだよね(-_-;) 発作、吐き気、目まい、眠気。起きられない、歩けない、人の顔や話の内容を覚えられない。論文の作成にどこから手を付けて良いか分からず頭が真っ白になり、趣味の創作活動さえ困難になる。こんなに折り目付けて線引きまくって小説を読み、長々と感想を書く作業はある種のリハビリなのかもしれない。いずれまた冷静に専門書が読めるように、自分の文章を書けるように(ホント病みが深くてサーセンm(__)m)
13章、ティムの「関心」についてのくだりが面白い。「簡単に関心が消えるのではなく、焦点が変わる。関心そのものは変わらない。関心の対象が変わるのよ。ティムは果てしなく変転する世界に住んでるにちがいないわ。ヘラクレイトスの流転世界が人格化したようなものね。」なるほどー((゜Д゜)ウンウン アノキへのティムの執着が病的で怖い。「キ○ストがいまそこにいる。・・・私が生き延びる唯一の方法は、だれかが運命の支配を破って解放してくれることだ。・・・キリ○トならそれができる。」おいマジかホント誰かこのオッサン止めたげて!(再)「神様はどこにでもいる」と言うエンジェルに「神はあの(キノコのある。笑)涸谷にしかいない」と答えるティムはかなりの重症┐(´Д`)┌ 「サドカイ派文書はあらゆる人間の未来が天地創造以前から書かれている本について語っている。それが『つむぎ手たちの書』であり、つむぎ手というのは運命を人格化したもの。キリス○だけがこれを奪い、それを読み、その情報を各人に伝え、運命を教え、その絶対的な叡智を通じて運命を回避する方法を教える」だって? アンタそれ救世主の範疇超えちゃってるオカルトと何ら変わらない域の思想だけど良いのか元主教・・・。以前語ってたサタンが神に対してやったこととまるで同じ、とエンジェルにも指摘されちゃってますがな(・・;) 一緒にイスラ○ルに行くよう必死に懇願するティムに対して、前章の終わりでは「連れて行ってほしい」と願っていたエンジェルが「迷子になるわ。迷子になってる。いまも迷子よ。・・・バークレーを離れたくないの――ここがあたしの家だから。・・・それが神かけて真実なの。」と断るセリフ、これが永遠の断絶であることを分かっていての決意が込められた瞬間が何とも切ない(´;ω;`)
「あたしを許してください。」というエンジェルの言葉、「あたしの人生は、いまのいままであたしにとって重要すぎた。何よりも、あたしはこの人物と関わり合いになるのが怖かった。・・・そういうのを過去のものにしたかった。あたしはもうやり直したんだ。振り返ったりしない。・・・あたしが欲しいものは即時的で、決まっていて、現実で、実体があった。この世の中にあり、触って把握できる。・・・やっとのことで頭から観念を追い払うことにも関連していた。他の観念についての観念、その無限後退が、永遠にスパイラルを形成するのに陥らないようにするんだ。」この必死さがねー(つД`) どれほどティムに、ジェフに、キルスティンに囚われていたのか、どれほど彼らが彼女にとって必要で大切な存在だったのかがうかがえて逆に真に迫ってくる。
そして食後のティムの言葉「もし私が求めるものを見つけたら、私のほうは変わるよ。・・・すべての文書を読んだが、答えはそこにはない。文書は答えが何なのかは示し、その答えがどこにあるかも示すが、答え自体はそこにはない。」私が文献史学への違和感というか疑問を感じたのもそういうところが始まりだったのかもしれない。でもそもそも昔のものがそのままの形で残ってることなんか特に湿度高い日.本じゃぶっちゃけあり得ないし、考古学はほぼイキナリ古代以前の分野になってしまう。ただ実物・ありのままの現実を知りたいだけなのに、それが何より難しい、って歴オタの一番ツラいところです>< そしてティムが最後にエンジェルに突きつける辛辣な現実。「いまだに大学に縛られてバークレーにいる、完全に大人にはなれない」『神曲』を読んだ日に生まれた、と応じる彼女に「それは生まれはじめただけ。・・・死海砂漠こそがきみの生まれるところ。そここそは人間の霊的な命が始まったところだから。・・・神性示現、人類史上最も偉大な瞬間だ。」「きみは本当の意味では生きていない。まだ未生の状態だ。イエ○が第二の誕生の話をしたのはそういう意味だ。聖霊の中または聖霊からの誕生。天上からの誕生だ。砂漠で待っているのはそれであり、それを私は見つける」教祖様からの誘いとしてどれほど断るのがしんどかったか!「きみの魂は救う価値がある。・・・今夜は漁師だったんだ、きみを釣り損ねた」また次の機会に、と返したエンジェルが「いや、次はない」とティムに言われ、彼の言う通り、と納得してしまう。この通じっぷり、信者っぷりがもう本当に。・゜・(ノД`)・゜・。
結局ティムは日/産車で死んだんですかー。もう、砂漠はTOY○TA様で走らなきゃ、とテロリストも証明してるっていうのに!ティムが死んだと聞いて涙も出なかったエンジェル。以前の二人の時のような情動も感情もなく、魂が死んだ機械になってしまった。「ティムが言った通り決して完全には生まれていない魂、未生ではあるけど少しは生まれていてもっと生まれたいと願っている魂、完全に生まれきりたいと思っている魂が死んで、身体だけが動き続けた。 あの週に失った魂は決して戻ってこなかった。何年も経ったいまも、あたしはもう機械なのだ。・・・うさんくさいセミナーに参加したのだって、ひどいことを迎える機械なりのやり方だから。機械はそれよりましなことができない。単にそのまま先に進み、たまに空回りすることもあるくらい。機械にできるのはそれだけ。・・・それは知的には理解するけれど、心で理解は起きない。というのもその心は機械的なもので、ポンプとして動くよう設計されてるから。 だからそれはポンプを続けて、そしてヨタヨタと動き続けて進み続け、知ってるけど知らない。そして決まりきった動きを続ける。人生とされるものを生きてみせる。・・・それは自分が考え聞いたことを自分に繰り返す。生命のシュミレーション。それがかつては所有していたが、いまや失ってしまった生命の。その機械は自分が何を知らないかを知っている、と哲学の本が混乱した哲学者について言っているようなもの。・・・ あたしはプロ学生で、今後もそれは変わらない。変わる機会が提供されたのに、それを断ってしまった。・・・そして自分で言ったように、何を知らぬかのみを知る。」
自分を“それ”呼ばわりするエンジェルが(つД`) 電気羊で描かれたアンドロイドと人間の違いは究極的にはこういう点で、人間もいつその魂・心・人間性を象徴するものを失って“機械”の側に堕ちてしまうか分からない、ということがあるいは本当に作者が残したかった遺言のようなものだったのかもしれない。でも私は、それでも、機械としてでも生き続けようとするエンジェルが、深く傷つき過ぎた結果としてそうなったのだとしても(自殺するにも気力が要る)、十分に強く偉く立派で失ったものを取り戻す可能性をもまだ残しているんじゃないか、と思った。ぶっちゃけ途中で、全てはティム信者のエンジェルの妄想、あるいは登場人物の全てが精神病患者の彼女が創り出したものなのかなー、とも考えたんですけど(前二作未読なので)。どういうオチになるか楽しみです!(SFファン的にはもう古典の域なんでしょうが、ネタバレ踏まないように何とかここまでやって来ました(´∀`;) だってメッチャ面白いんだもん!宗教コンプ的にも熱いネタ満載だし。笑)
いやーしかし米・肉・油物以外はメッチャ吐きそうになるまで食べてるのに痩せ止まらないのは何で?\(^O^)/「ダイエットしなきゃ!」とか言ってた期間考えるとウケる(笑)
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そして彼女の死に対するエンジェルの“責任”は「圧制者たる死よ、ここに」の名付け親が自分だと明かしてしまったことが最も大きいと本人は思ってるんだ(@_@;) ティムは本気で自分で考えたと思い込んでしまっていたから。悪気なくこの世の全てを知り、また知る権利があるのは自分だと彼は信じ切ってしまっている、とエンジェルの目には見える。「いかなるものもそのままではいられない、そして万物はイカレきってる。」それでもティムへの信仰(こう呼んでも差し支えないレベルだろ、ここまでくれば)を捨てきれないエンジェルが本当に憐れ。霊媒を信じることを止めたティムは結局またキ○ストにすがり出した。霊媒によるジェフからの伝言、死の運命を免れるために、未来を変えるためにキリ○トの存在を、力を求めようとする男の滑稽さ。でもとりあえず「私の希望はイ○ス・キリス○にある。・・・私は決して二人のようには逝かない。屠られる羊のようには」と彼の戦う意志を見て安堵するエンジェルが(つД`)
でも例のオカルト本の出版について、ティムが差し止めず後に修正本を書く、と言っているくだりが彼の人間性がやはり並々ならぬものだったんだな、と思わず感心させられてしまった。「人は自分の愚行から目をそらすべきではない――そしてそれを直視したら、それを正そうとすればいい。」オボちゃんもこういう精神であの本出して、S井さんのご遺族や若き研究者の皆様に売り上げ金寄付でもして下さるとおっしゃるならまだマシに捉えられたのかもしれないですが(´-`) S鬼薔薇の本があんなバカ売れする日/本社会にそんな良心期待するだけ無駄か。不倫タレントは叩きまくられてメディア追放されるのにホント謎。イヤ私もあれは嫁の立場なら許せないってかドン引きだけど、最近ハーフだの二世だの軍団売りみたいなのに嫌気さしてたトコだったんで、別に彼女が消えるの自体はS○AP並みに何とも思わないっつーかどうでも良いというか(以下略)
12章、キルスティンの死がもたらしたポジティヴな面(アーチャー主教の復活)に触れつつ、その喪失は利益に対して比べようもないものだった、というエンジェルの語りは真実だと感じた。「驚かされるのは、人の死が人々をいかに我に返らせるかということ。どんな言葉も議論もかなわない究極の力。無理にでも関心と時間を割かせ、そして人を変えてしまう。」葬式の手配や連絡、遺産の管理やお墓の件なんかで一気に仕事増えますもんね。(ここで言ってんのはそんなリアルの話じゃないよ!)夏に父がICU入りした時なんか色々気張り過ぎて無理しようとして、結局色々余計に己のダメさ加減に気づいた挙句このザマだもんな。もう半年くらい経つのに(笑)つくづく自分なっさけなーorz でもティムはそれを力に変える性質を持っていて、それこそが彼を優秀な人間にしていた。自体が悪くなればなるほど強くなる。「死が好きではなかったけれど、死を恐れもせず、死を理解していた。」インチキな解決策を試したら死が増えてしまったから、今度はギヤチェンジして合理的になろうと試みる。今度は自分自身の命が懸かっているから。周り散々巻き込んで死に追いやったも同然のクセして、スゲェなこのオッサン(゜Д゜)ポカーン
古代の思索家たちの死に対する発想も面白い。「死は万人にくるものだから死そのものは邪悪ではないけれど、早すぎる死は正しく邪悪。人がその仕事を終える前にやってくる死、熟する前に断ち切られる果実のように、死はそれを奪って捨ててしまう。まるで何ら興味が持てない――死にとってすら関心がないとでも言うように。」こういう死も確かに何件か(特に直近の五年前の出来事では一気に)見てきたので、本当に胸に刺さる言葉です。エンジェルの「若い子の自殺は生まれる前に死ぬことと同じ」って発想と同じだな。(そういうのにも立ち会った。というか同名の方がそうだった。しかも同級生の身内だし、ホント絶対家では出来ないな、と@病みMAXで重ね重ねm(__)m)ティムは死んだ息子や愛人よりも年上だったのに、それでもまだ仕事を終えておらず、断ち切られ生命から切り離される気はなかった。最後の瞬間に思考停止状態から目を覚ましたであろうヴァレンシュタインとティムとの違いについてのエンジェルの推察がいつもながら鋭い。(かつティム信者として若干の希望的楽観主義が垣間見える(-_-;))「まずティムは偉大な人物が愚行でどうなるのかというヴァレンシュタインの前例を見ることができた。第二に彼は根本的には現実主義者だった。・・・破滅的なナンセンスですら彼の人生でのもっと大きな経済の中で、ある種の効用を持っていた。彼は自分の役割が持つ堅苦しい縛りに捕らわれたいとは思わなかった。・・・彼は人であり、自分がそういうものだと思っていた。・・・多くの領域で生きて各種のベクトルに広がった人間であると。」
かーらーのティムのルネサンス解釈がまた鳥肌もんで面白い!「ルネサンスは中世世界を打倒したり廃止したりはしておらず、中世を成就させた」と。でもってまた『神曲』(´-`)=3 何これ遺作だから?「『神曲』は中世の世界観をまとめ上げている至高の作品でありながら、広範に広がるビジョンを持ち、たとえばミケランジェロの世界観に対立させたりはできない」「ティムはキリ○ト教がルネサンス期にこそ頂点に達したと見ていた。・・・ルネサンスは古い異教世界が信仰に勝利したものではなく、むしろ信仰、特にキリ○ト教信仰の最終的で最も豊かな開花だった。」私もこの意見には同意します。何しろ中心地が総本山近郊でしたし(少なくとも同じ言葉を解する地域)、ルネサンス期の交易を通じてどれほど“異教”の地にも“キリス○教的芸術・文化”が伝わったか、計り知れない影響があったと思う。後に続く「だから有名なルネサンス人(あらゆることについて多少は知る万能人)は理想的なキ○スト教徒で、この世でもあの世でも戸惑うことがない。物質と精神の完全なブレンド、聖別された物質。二つの領域、この世とあの世が大いなる墜落以前のように結び合わされた物質だと」ダ・ヴィ○チコードですね分かります(^ω^)
ティムがますますサドカイ派文書、アノキにのめり込むフラグがビンビン(笑)「完全なる人物は、どんなに仕事で成功してもその仕事に自分を閉じ込めたりしない。(万能人でなければならないから^^)だからその一環として主教の領域を逸脱するために性に走った」と。この思い込みの激しさと自信は一体どこから、どうすれば得られるんだ? ガチで一つの神を信仰する、し続けるって行為が可能な人間だからこそできることなの?(´Д`;) エンジェルがその「色々試してみる」やり方がティムを破滅させた、ってちゃんと分かってる辺り・・・。それでも彼女は「一部のアイデアがまるで独自の生命を持つかのようにぐるっと裏手の奥に回って彼を出し抜き、その結果としてティムは死んだ。」って彼を庇い続けている。どう見てもオッサン無責任な自業自得にしか思えないんだがなぁ。「歴史ってそういうもの。これは歴史的な事実。」と認めながらティムを運命と格闘した勇者のように称える、というところに彼女の病的な彼への信仰と愛情を感じて怖気が立った((((;゜Д゜|||)))
一方で夫に続く親友の死の痛手からエンジェルはどんな苦しみを受けていたか。「内省の問題というのは終わりがない」「あたしはメタファーのジャンキー、学がありすぎて頭がいい。考えすぎ、読みすぎ、愛する者たちのことを心配しすぎる。愛する者たちは死にはじめていた。この世に残っている者はあまり多くない。ほとんどが逝った。」ヘンリー・ヴォーンの詩を含め、このくだり、この2~3ページの彼女の心情には共感し過ぎて(´;ω;`)ブワッ 友達とか家族と喋ってても、ブログ書いたり本読んでても思っちゃうんだよ、何でこんなヒネたことしか浮かばないんだ、もっと他人を楽しませるような会話ができないのか、本だの大学だのくだらないネットだので拾ってきたネタ偉そうに喋ったってソレは自分のものじゃないのに、自分自身は空っぽなのに、って。私はエンジェルほどの学もないし(西洋文学・歴史に関してはお手上げ)頭も良くないけど、大学で聞きかじったことを生きる糧にしてしまっている部分は多少ある。(だって少なくとも好きだったり興味が持てることを沢山得られたから。卒業してないんですけど!\(^O^)/)
愛する人たちの死によって思考が17世紀の詩人たちのように、あの世の方に向いてしまったエンジェル。そしてティムとの断絶が彼女に最悪の打撃をもたらしたという点がもう(つД`) 彼女はキリス○なんかどうでも良くても、ティム個人の最も熱烈な信者だったのに。「大好きだった。・・・ティムが恋しかった。」「あたしにとって、これは悲劇だった。ジェフとキルスティンを失ったよりもひどかったかもしれない。でもあたしはこれをだれにも話さなかったし、セラピストにすら言わなかった。」そうなんだよねー、本当に一番つらいことは精神科医にも誰にも言えないんだよ。言っても解ってもらえないというか自分でどうにかするしかない苦しみだからさ、ぶっちゃけ。だって他人は自分にはなれないから、決して同等の痛みの共有は不可能で、それができない以上はより深い傷や孤独を自分自身にもたらすだけ。切ないなぁ、エンジェル!そして彼女を切り離したティムは聖教会を去った後、サドカイ派文書にますますのめり込んでいった。「ティムは面倒ごとを置いて立ち去るってことができなかったから、彼と面倒ごとはいずれ道を共にする運命だったんだわ。」って自身に言い聞かせるようなエンジェルの述懐がまた泣かせる(;_;)
ティムとの繋がりが切れ、知り合いをすべて失ったエンジェルは新しい道を歩き出す。レコード店の仕事を天職と決め、自分の殻を脱し、もっと人に会うようになり、新しい恋人と暮らし始めた。(こういうところは本当に私と違って地に足つけててスゴイと思う。人間として当たり前の生き方なんだろうけど(^^;)ティムからの久々の連絡に浮き足立つエンジェルをからかう恋人のハンプトンに、「その二人(自殺したジェフとキルスティン)はひどく苦しんだのよ。あれほど苦しんだ人のどこがそんなに可笑しいのよ」という彼女のセリフには同意というか胸打たれた。死ぬ瞬間は誰だって肉体的に苦しい。ましてや自殺者は、その決断に至るまでの精神的苦痛がどれほど長く重いものであったか。何回か立ち会ってるから解りますよ、絶対に揶揄することなんかできない。だからあんだけのことやらかしときながらのうのうと生きて、挙句に印税入る手記なんか出すS鬼薔薇もオボも許せないし、買ったりする人の気が知れない@一人の本好きとして。出版社もバカじゃねーの、いくらこんな時代だからって書物の存在意義軽んじてんのか、ネットで無料のブログにでも載せとけ、あっという間に炎上するから、としか思えないんだよねぇ(´-`)
ティムからイス○エル行きの話を聞かされて、彼の関心があの世から地面へ、本来あるべきところへ戻るかもしれない、と期待するエンジェル。そして一緒にそこへ行けば、自分自身も知識や皮肉から解放されるかも、と。「中古のフレーズ、あちこちから拝借してきたかけら。大学での日々からの断片、暗記はしたけれど理解できなかった断片、理解はしても使ってない断片、使っても決して成功しなかった断片。友人たちの破滅の見物人。そのだれ一人として救えない人物」としての自分から。この部分も大変に共感する。「心が言葉の使い回しで問題を解決しようとする」ってくだり。もう自分自身に対してはそれすら諦めてどれほど経ったか分からないけど、他人に対しては未だにコレをやっちゃう上に(自分さえ救えてない以前にそんなご立派な立場じゃないのに)、それがやっぱり借り物のメタファーでしかなくて自分自身の考えや言葉じゃないんだよ。少なくとも自分にはそうとしか思えないしその自覚がある。自分の中身が空っぽだから、そうやって会話するしかない。だから他人との会話が嫌になる。ますます内にこもっていく。リアルな経験積めば良いって? それができたらどんなに(以下略)とにかく人の性質や生き方はそう簡単には変えられなくて(というか生まれた時から定まってしまっているのでは?)、無理をしようとするといつか壊れて戻らなくなる、と言い訳かもしれないけど個人的にはそう思います。身体か、精神か、無意識の行動に出ちゃって結局他人様に迷惑をかけることになるんだよね(-_-;) 発作、吐き気、目まい、眠気。起きられない、歩けない、人の顔や話の内容を覚えられない。論文の作成にどこから手を付けて良いか分からず頭が真っ白になり、趣味の創作活動さえ困難になる。こんなに折り目付けて線引きまくって小説を読み、長々と感想を書く作業はある種のリハビリなのかもしれない。いずれまた冷静に専門書が読めるように、自分の文章を書けるように(ホント病みが深くてサーセンm(__)m)
13章、ティムの「関心」についてのくだりが面白い。「簡単に関心が消えるのではなく、焦点が変わる。関心そのものは変わらない。関心の対象が変わるのよ。ティムは果てしなく変転する世界に住んでるにちがいないわ。ヘラクレイトスの流転世界が人格化したようなものね。」なるほどー((゜Д゜)ウンウン アノキへのティムの執着が病的で怖い。「キ○ストがいまそこにいる。・・・私が生き延びる唯一の方法は、だれかが運命の支配を破って解放してくれることだ。・・・キリ○トならそれができる。」おいマジかホント誰かこのオッサン止めたげて!(再)「神様はどこにでもいる」と言うエンジェルに「神はあの(キノコのある。笑)涸谷にしかいない」と答えるティムはかなりの重症┐(´Д`)┌ 「サドカイ派文書はあらゆる人間の未来が天地創造以前から書かれている本について語っている。それが『つむぎ手たちの書』であり、つむぎ手というのは運命を人格化したもの。キリス○だけがこれを奪い、それを読み、その情報を各人に伝え、運命を教え、その絶対的な叡智を通じて運命を回避する方法を教える」だって? アンタそれ救世主の範疇超えちゃってるオカルトと何ら変わらない域の思想だけど良いのか元主教・・・。以前語ってたサタンが神に対してやったこととまるで同じ、とエンジェルにも指摘されちゃってますがな(・・;) 一緒にイスラ○ルに行くよう必死に懇願するティムに対して、前章の終わりでは「連れて行ってほしい」と願っていたエンジェルが「迷子になるわ。迷子になってる。いまも迷子よ。・・・バークレーを離れたくないの――ここがあたしの家だから。・・・それが神かけて真実なの。」と断るセリフ、これが永遠の断絶であることを分かっていての決意が込められた瞬間が何とも切ない(´;ω;`)
「あたしを許してください。」というエンジェルの言葉、「あたしの人生は、いまのいままであたしにとって重要すぎた。何よりも、あたしはこの人物と関わり合いになるのが怖かった。・・・そういうのを過去のものにしたかった。あたしはもうやり直したんだ。振り返ったりしない。・・・あたしが欲しいものは即時的で、決まっていて、現実で、実体があった。この世の中にあり、触って把握できる。・・・やっとのことで頭から観念を追い払うことにも関連していた。他の観念についての観念、その無限後退が、永遠にスパイラルを形成するのに陥らないようにするんだ。」この必死さがねー(つД`) どれほどティムに、ジェフに、キルスティンに囚われていたのか、どれほど彼らが彼女にとって必要で大切な存在だったのかがうかがえて逆に真に迫ってくる。
そして食後のティムの言葉「もし私が求めるものを見つけたら、私のほうは変わるよ。・・・すべての文書を読んだが、答えはそこにはない。文書は答えが何なのかは示し、その答えがどこにあるかも示すが、答え自体はそこにはない。」私が文献史学への違和感というか疑問を感じたのもそういうところが始まりだったのかもしれない。でもそもそも昔のものがそのままの形で残ってることなんか特に湿度高い日.本じゃぶっちゃけあり得ないし、考古学はほぼイキナリ古代以前の分野になってしまう。ただ実物・ありのままの現実を知りたいだけなのに、それが何より難しい、って歴オタの一番ツラいところです>< そしてティムが最後にエンジェルに突きつける辛辣な現実。「いまだに大学に縛られてバークレーにいる、完全に大人にはなれない」『神曲』を読んだ日に生まれた、と応じる彼女に「それは生まれはじめただけ。・・・死海砂漠こそがきみの生まれるところ。そここそは人間の霊的な命が始まったところだから。・・・神性示現、人類史上最も偉大な瞬間だ。」「きみは本当の意味では生きていない。まだ未生の状態だ。イエ○が第二の誕生の話をしたのはそういう意味だ。聖霊の中または聖霊からの誕生。天上からの誕生だ。砂漠で待っているのはそれであり、それを私は見つける」教祖様からの誘いとしてどれほど断るのがしんどかったか!「きみの魂は救う価値がある。・・・今夜は漁師だったんだ、きみを釣り損ねた」また次の機会に、と返したエンジェルが「いや、次はない」とティムに言われ、彼の言う通り、と納得してしまう。この通じっぷり、信者っぷりがもう本当に。・゜・(ノД`)・゜・。
結局ティムは日/産車で死んだんですかー。もう、砂漠はTOY○TA様で走らなきゃ、とテロリストも証明してるっていうのに!ティムが死んだと聞いて涙も出なかったエンジェル。以前の二人の時のような情動も感情もなく、魂が死んだ機械になってしまった。「ティムが言った通り決して完全には生まれていない魂、未生ではあるけど少しは生まれていてもっと生まれたいと願っている魂、完全に生まれきりたいと思っている魂が死んで、身体だけが動き続けた。 あの週に失った魂は決して戻ってこなかった。何年も経ったいまも、あたしはもう機械なのだ。・・・うさんくさいセミナーに参加したのだって、ひどいことを迎える機械なりのやり方だから。機械はそれよりましなことができない。単にそのまま先に進み、たまに空回りすることもあるくらい。機械にできるのはそれだけ。・・・それは知的には理解するけれど、心で理解は起きない。というのもその心は機械的なもので、ポンプとして動くよう設計されてるから。 だからそれはポンプを続けて、そしてヨタヨタと動き続けて進み続け、知ってるけど知らない。そして決まりきった動きを続ける。人生とされるものを生きてみせる。・・・それは自分が考え聞いたことを自分に繰り返す。生命のシュミレーション。それがかつては所有していたが、いまや失ってしまった生命の。その機械は自分が何を知らないかを知っている、と哲学の本が混乱した哲学者について言っているようなもの。・・・ あたしはプロ学生で、今後もそれは変わらない。変わる機会が提供されたのに、それを断ってしまった。・・・そして自分で言ったように、何を知らぬかのみを知る。」
自分を“それ”呼ばわりするエンジェルが(つД`) 電気羊で描かれたアンドロイドと人間の違いは究極的にはこういう点で、人間もいつその魂・心・人間性を象徴するものを失って“機械”の側に堕ちてしまうか分からない、ということがあるいは本当に作者が残したかった遺言のようなものだったのかもしれない。でも私は、それでも、機械としてでも生き続けようとするエンジェルが、深く傷つき過ぎた結果としてそうなったのだとしても(自殺するにも気力が要る)、十分に強く偉く立派で失ったものを取り戻す可能性をもまだ残しているんじゃないか、と思った。ぶっちゃけ途中で、全てはティム信者のエンジェルの妄想、あるいは登場人物の全てが精神病患者の彼女が創り出したものなのかなー、とも考えたんですけど(前二作未読なので)。どういうオチになるか楽しみです!(SFファン的にはもう古典の域なんでしょうが、ネタバレ踏まないように何とかここまでやって来ました(´∀`;) だってメッチャ面白いんだもん!宗教コンプ的にも熱いネタ満載だし。笑)
いやーしかし米・肉・油物以外はメッチャ吐きそうになるまで食べてるのに痩せ止まらないのは何で?\(^O^)/「ダイエットしなきゃ!」とか言ってた期間考えるとウケる(笑)
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