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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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まぼろしシリーズ番外SSSで拍手お礼にしようかと思ってたんですが、
読む人を選ぶのでこちらに置きます(^^;

※近親相姦要素あり。後世の学者による考察調。


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ヴィラール帝国エステン皇朝第二代皇帝アウグスト。
五十年近くに渡る在位を誇り、
『賢帝』と呼ばれた彼の生涯において唯一の汚点とされるのが、
彼が三十三歳のとき皇宮に迎えた庶子、ルーペルトの存在である。
そのとき彼は既に皇后クリステルとの間に皇太子ジークムントを生していたが、
何故かこの庶子を自らの手元へと引き取った。
 
一般的に、このとき生まれて一年にも満たなかったとされる庶子ルーペルトは、
その前年に十七歳の若さで亡くなった皇妹ミレーヌの遺児である、
との説が根強い。ミレーヌはどこにも嫁がぬまま世を去った。
ではこの息子の父親は誰であるのか。
それこそがアウグストの治世唯一の汚点であり、葬り去られた歴史の闇である。
 
アウグストの実弟にしてミレーヌの実兄、皇弟オスヴァルト。
即位した当時、若年でもあり多忙を極めた皇帝アウグストは、
母亡き赤子であった妹のミレーヌをこの二つ年下の弟へと託した。
そのためミレーヌは実質的にオスヴァルトの元で育てられた。
そこからそのまま他の妹たちと同じように貴族へ降嫁、
もしくは他国へ嫁入りさせるはずが、アウグストはその道を選ばなかった。
 『重篤な病であり、治療が必要である』
との理由から十六歳のミレーヌを無理やり鄙の城へ閉じ込めると同時に、
彼はそれまで腹心として傍に置いてきた弟のオスヴァルトを辺境へと追いやった。 
『病のため他人とまともに会話を交わすことは困難であったが、
神々しいまでに美しい容姿のため誰からも愛された』
庶子ルーペルトが皇宮に迎えられるのはその二年後である。

会話に不自由を生じるような『病』とは、近親間に生まれた子に
起こりやすい知的障害の一種であった、と現在では考えられている。
『白皙の美男子』と讃えられたというオスヴァルトと、
『姉妹中誰よりも母后に似た美しい面ざしを持つ皇女』と記されるミレーヌ。
二人の間に生まれた子供が、美しくない訳がなかろう。
皇帝アウグストは容姿に関しては父帝ゲオルクに似て、
『頑健で男らしいなりをしていた』と記録されている。
対して彼の庶子とされるルーペルトと、弟であるオスヴァルトには
『極めて中性的で艶めいた魅力がある』との共通項があった。
この二人は瞳の色さえ共通している。
かつて、ヴィラール皇族のみが持つとされた碧。
それは皇妹ミレーヌの瞳の色でもあった。
遺伝しにくいとされるこの碧(父帝ゲオルクと母后リリアーヌの間に生まれた
七人の子のうち、この色の瞳を持って生まれた子供は二人のみであった)
の瞳を宿した子供がたった一人で生まれてきたのは何故か。
それは父母共に同じ色の瞳を有していたからではないのか。
 
また、ルーペルトの成人の儀式や初陣などの場で、本来父帝アウグストが
務めるべき役割は全て叔父であるはずの皇弟オスヴァルトが引き受けている。
オスヴァルトは度々実の息子たちにも与えたことが無いような高価な贈り物を
ルーペルトへと贈っているし、ルーペルト側もまたオスヴァルトに対し
他の叔父たちには類を見ないほど礼を配り、『外交任務』と称した外遊
(これは知的障害のある庶子を権謀策術の渦巻く宮廷に長く留まらせておくことを
憂慮した皇帝アウグストが意図的に送り出したものと思われる)
から戻る度に、彼に対して何がしかの土産の品を贈っている。

更に、オスヴァルトが自身の日記に
『子供たちの誰よりも、ルーペルトが一番愛しい』
と記していた事実も確認できる。
皇弟オスヴァルトはランベール侯爵令嬢フェリシテを妃に迎え、
彼女との間に二男一女を生しているが、夫婦仲は極めて悪かったとされている。
母親に似た女性的で柔らかな美貌を好んだ彼にとって、どちらかと言うと
『凛々しく整った』顔立ちをした彼女はタイプから外れていたのかもしれない。
また、古くからのヴィラール貴族として慣例や掟を重視する彼女の古風な性格から
考えて、夫と義妹の関係は到底認めることができないものであったのだろう。
彼らは二男アルブレヒトが生まれた頃から完全に別居し、
ほぼ絶縁も同然の状態であったと思われる。
ミレーヌがルーペルトを身籠ったと推測されるのはそれから三年後。
おそらくは第二次性徴を迎え、女性の身体へと変化しつつあった義妹に
手を出し始めた夫の姿を知ったフェリシテが、堪え切れずに
子供たちを連れ田舎の領地へ引き払ったものと思われる。
 
金の髪に碧の瞳、『“典型的なヴィラール皇族の容姿”を持った最後の皇族』
と言われる庶子ルーペルトは、その障害故か一人の子も残さぬままこの世を去る。
かくしてヴィラール帝国初代皇朝の皇族の容貌は失われ、
以後はごく稀に一部の皇族に碧の瞳が見られるのみとなった。





後書き

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ヴィラール帝国エステン皇朝第二代皇帝アウグスト。
五十年近くに渡る在位を誇り、
『賢帝』と呼ばれた彼の生涯において唯一の汚点とされるのが、
彼が三十三歳のとき皇宮に迎えた庶子、ルーペルトの存在である。
そのとき彼は既に皇后クリステルとの間に皇太子ジークムントを生していたが、
何故かこの庶子を自らの手元へと引き取った。
 
一般的に、このとき生まれて一年にも満たなかったとされる庶子ルーペルトは、
その前年に十七歳の若さで亡くなった皇妹ミレーヌの遺児である、
との説が根強い。ミレーヌはどこにも嫁がぬまま世を去った。
ではこの息子の父親は誰であるのか。
それこそがアウグストの治世唯一の汚点であり、葬り去られた歴史の闇である。
 
アウグストの実弟にしてミレーヌの実兄、皇弟オスヴァルト。
即位した当時、若年でもあり多忙を極めた皇帝アウグストは、
母亡き赤子であった妹のミレーヌをこの二つ年下の弟へと託した。
そのためミレーヌは実質的にオスヴァルトの元で育てられた。
そこからそのまま他の妹たちと同じように貴族へ降嫁、
もしくは他国へ嫁入りさせるはずが、アウグストはその道を選ばなかった。
 『重篤な病であり、治療が必要である』
との理由から十六歳のミレーヌを無理やり鄙の城へ閉じ込めると同時に、
彼はそれまで腹心として傍に置いてきた弟のオスヴァルトを辺境へと追いやった。 
『病のため他人とまともに会話を交わすことは困難であったが、
神々しいまでに美しい容姿のため誰からも愛された』
庶子ルーペルトが皇宮に迎えられるのはその二年後である。

会話に不自由を生じるような『病』とは、近親間に生まれた子に
起こりやすい知的障害の一種であった、と現在では考えられている。
『白皙の美男子』と讃えられたというオスヴァルトと、
『姉妹中誰よりも母后に似た美しい面ざしを持つ皇女』と記されるミレーヌ。
二人の間に生まれた子供が、美しくない訳がなかろう。
皇帝アウグストは容姿に関しては父帝ゲオルクに似て、
『頑健で男らしいなりをしていた』と記録されている。
対して彼の庶子とされるルーペルトと、弟であるオスヴァルトには
『極めて中性的で艶めいた魅力がある』との共通項があった。
この二人は瞳の色さえ共通している。
かつて、ヴィラール皇族のみが持つとされた碧。
それは皇妹ミレーヌの瞳の色でもあった。
遺伝しにくいとされるこの碧(父帝ゲオルクと母后リリアーヌの間に生まれた
七人の子のうち、この色の瞳を持って生まれた子供は二人のみであった)
の瞳を宿した子供がたった一人で生まれてきたのは何故か。
それは父母共に同じ色の瞳を有していたからではないのか。
 
また、ルーペルトの成人の儀式や初陣などの場で、本来父帝アウグストが
務めるべき役割は全て叔父であるはずの皇弟オスヴァルトが引き受けている。
オスヴァルトは度々実の息子たちにも与えたことが無いような高価な贈り物を
ルーペルトへと贈っているし、ルーペルト側もまたオスヴァルトに対し
他の叔父たちには類を見ないほど礼を配り、『外交任務』と称した外遊
(これは知的障害のある庶子を権謀策術の渦巻く宮廷に長く留まらせておくことを
憂慮した皇帝アウグストが意図的に送り出したものと思われる)
から戻る度に、彼に対して何がしかの土産の品を贈っている。

更に、オスヴァルトが自身の日記に
『子供たちの誰よりも、ルーペルトが一番愛しい』
と記していた事実も確認できる。
皇弟オスヴァルトはランベール侯爵令嬢フェリシテを妃に迎え、
彼女との間に二男一女を生しているが、夫婦仲は極めて悪かったとされている。
母親に似た女性的で柔らかな美貌を好んだ彼にとって、どちらかと言うと
『凛々しく整った』顔立ちをした彼女はタイプから外れていたのかもしれない。
また、古くからのヴィラール貴族として慣例や掟を重視する彼女の古風な性格から
考えて、夫と義妹の関係は到底認めることができないものであったのだろう。
彼らは二男アルブレヒトが生まれた頃から完全に別居し、
ほぼ絶縁も同然の状態であったと思われる。
ミレーヌがルーペルトを身籠ったと推測されるのはそれから三年後。
おそらくは第二次性徴を迎え、女性の身体へと変化しつつあった義妹に
手を出し始めた夫の姿を知ったフェリシテが、堪え切れずに
子供たちを連れ田舎の領地へ引き払ったものと思われる。
 
金の髪に碧の瞳、『“典型的なヴィラール皇族の容姿”を持った最後の皇族』
と言われる庶子ルーペルトは、その障害故か一人の子も残さぬままこの世を去る。
かくしてヴィラール帝国初代皇朝の皇族の容貌は失われ、
以後はごく稀に一部の皇族に碧の瞳が見られるのみとなった。





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