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珍しくハピエンなSSS(笑)
現代・幼なじみ。
現代・幼なじみ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
入社三年目、初めての海外転勤が決まった。
「お前、まだ独身だろ?海外で独りは寂しいぞ~?
いくら出社すれば日本語の話せる同僚がいるっつっても、
家に帰ってテレビをつけても外国語、売ってるメシも非日本食。
付き合ってるやつがいるなら、絶対ここで決めといた方がいいって」
いくら出社すれば日本語の話せる同僚がいるっつっても、
家に帰ってテレビをつけても外国語、売ってるメシも非日本食。
付き合ってるやつがいるなら、絶対ここで決めといた方がいいって」
二年間の海外赴任を終えて帰ってきた先輩に告げられた言葉。
残念ながら一年付き合っていた年下の彼女とは三か月前に別れたばかり。
海外勤務は学生時代からの夢だったし、
向こうには一か月のホームステイ経験もある。
向こうには一か月のホームステイ経験もある。
その間寂しいなんて一度も感じたことはなかったし……。
「まぁ、何とかなるだろ」
そう、思っていた。俺はまだ24才。
“身を固める”なんて、自分にはまだまだ早すぎる出来事だと思っていたのだ。
“身を固める”なんて、自分にはまだまだ早すぎる出来事だと思っていたのだ。
~~~
「な~んだ、引っ越しするって言うから何かもらえるもんあるかと思って
わざわざ来たのに、まだちっとも片付いてないじゃん」
わざわざ来たのに、まだちっとも片付いてないじゃん」
辞令が出てから一週間。
畳まれたままの段ボール箱が壁際に数枚重なる散らかりっぱなしの
部屋に現われたのは、隣に住む幼馴染の美緒だった。
部屋に現われたのは、隣に住む幼馴染の美緒だった。
「いーんだよ、持ってくのは最小限の荷物だけにするから。
だっておまえ、海渡るんだぞ?
輸送費だけでどんだけかかると思ってんだよ?」
だっておまえ、海渡るんだぞ?
輸送費だけでどんだけかかると思ってんだよ?」
ベッドに横たわって雑誌を眺めながら返した言葉に、
彼女は少しムッとしたように反論した。
彼女は少しムッとしたように反論した。
「この際だから、っていらないものとか整理しないの?
使えるもんあったら持ってこうと思ってたのに~!」
使えるもんあったら持ってこうと思ってたのに~!」
「なに、お前はどこぞのハゲタカ業者か?せこいな、相変わらず」
「だってそんなこと言って、真はぜーったいこの部屋散らかしたまま
出てくんだから。もうホントしょーがないよね。この段ボール勝手に
使っていいんでしょ?いいよ好きに整理させてもらうから。」
出てくんだから。もうホントしょーがないよね。この段ボール勝手に
使っていいんでしょ?いいよ好きに整理させてもらうから。」
寝そべる俺の横でテキパキと段ボール箱を組み立て、
その辺に散らばった衣類や雑貨を詰めていく美緒の横顔は、
鼻が低いせいか余りきれいではない。
その辺に散らばった衣類や雑貨を詰めていく美緒の横顔は、
鼻が低いせいか余りきれいではない。
小さなころから一緒にいて、家族ぐるみの付き合いで、
お互いの部屋に出入りするのも馴染んだものだった。
お互いの部屋に出入りするのも馴染んだものだった。
昔から美緒は整理整頓が得意で、
だらしのない俺の部屋を片付けるのはいつも美緒の役目だった。
だらしのない俺の部屋を片付けるのはいつも美緒の役目だった。
何で、おふくろじゃなくて美緒だったんだろう……?
そんな疑問を浮かべながらもう一度美緒を見直す。
俺が好きな映画のDVD、一時期ハマっていたゲームの機械、
実は密かに気に入っているUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみ……
乱雑に箱に突っ込んでいるようで、美緒は一つ一つを愛しむように、
優しい目で見つめながら、順番に箱に詰めていく。
実は密かに気に入っているUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみ……
乱雑に箱に突っ込んでいるようで、美緒は一つ一つを愛しむように、
優しい目で見つめながら、順番に箱に詰めていく。
いつも、いつも美緒はそうだった。
林間学校の前。修学旅行の前。
大学に進学するとき。就職して戻ってきたとき。
大学に進学するとき。就職して戻ってきたとき。
大切なものを忘れないように、俺のほしいものがすぐ傍に届くように、
必ず俺の部屋に来て、荷物を詰め、あるいは棚に並べていく。
必ず俺の部屋に来て、荷物を詰め、あるいは棚に並べていく。
普通なら、家族でもないのに恥ずかしいとか、
気持ち悪いとか思うのかもしれない。
気持ち悪いとか思うのかもしれない。
でも、何だか俺にとっては美緒がそうしてくれるのが当たり前すぎて、
いいや、安心しすぎて全てを委ねてしまう。
いいや、安心しすぎて全てを委ねてしまう。
向こうに行ったら、誰が俺の部屋を片付けてくれるんだろう?
誰が、俺に大事な荷物を渡してくれる?
忘れさせないでいてくれる?
そう思ったら、自然と唇が動いていた。
「あのさ、結婚しない?」
突然口から飛び出た言葉に、たぶん一番驚いたのは俺だったんじゃないかと思う。
目の前の美緒がキョトンとした顔でこちらを振り向いた。
「いや、あの今のは……っ!」
ポカンとした表情のまま固まる彼女に、慌てて何か続く言葉を探す。
俺と美緒は男も女もないころからの幼馴染で、
互いにちっともそういう感情はなくて、
元カノも元カレも知り合い同士で……って、何だか頭が混乱してきた。
互いにちっともそういう感情はなくて、
元カノも元カレも知り合い同士で……って、何だか頭が混乱してきた。
どうしよう、どうしよう、とパニックに陥る俺に、美緒が静かに口を開いた。
「いいよ、って言ったら、一緒に連れてってくれるの?」
震えながら紡ぎだされた小さな声も、
少し潤んだ瞳で俺を見上げる美緒の顔もなぜだかすっごく可愛く思えて。
少し潤んだ瞳で俺を見上げる美緒の顔もなぜだかすっごく可愛く思えて。
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入社三年目、初めての海外転勤が決まった。
「お前、まだ独身だろ?海外で独りは寂しいぞ~?
いくら出社すれば日本語の話せる同僚がいるっつっても、
家に帰ってテレビをつけても外国語、売ってるメシも非日本食。
付き合ってるやつがいるなら、絶対ここで決めといた方がいいって」
いくら出社すれば日本語の話せる同僚がいるっつっても、
家に帰ってテレビをつけても外国語、売ってるメシも非日本食。
付き合ってるやつがいるなら、絶対ここで決めといた方がいいって」
二年間の海外赴任を終えて帰ってきた先輩に告げられた言葉。
残念ながら一年付き合っていた年下の彼女とは三か月前に別れたばかり。
海外勤務は学生時代からの夢だったし、
向こうには一か月のホームステイ経験もある。
向こうには一か月のホームステイ経験もある。
その間寂しいなんて一度も感じたことはなかったし……。
「まぁ、何とかなるだろ」
そう、思っていた。俺はまだ24才。
“身を固める”なんて、自分にはまだまだ早すぎる出来事だと思っていたのだ。
“身を固める”なんて、自分にはまだまだ早すぎる出来事だと思っていたのだ。
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「な~んだ、引っ越しするって言うから何かもらえるもんあるかと思って
わざわざ来たのに、まだちっとも片付いてないじゃん」
わざわざ来たのに、まだちっとも片付いてないじゃん」
辞令が出てから一週間。
畳まれたままの段ボール箱が壁際に数枚重なる散らかりっぱなしの
部屋に現われたのは、隣に住む幼馴染の美緒だった。
部屋に現われたのは、隣に住む幼馴染の美緒だった。
「いーんだよ、持ってくのは最小限の荷物だけにするから。
だっておまえ、海渡るんだぞ?
輸送費だけでどんだけかかると思ってんだよ?」
だっておまえ、海渡るんだぞ?
輸送費だけでどんだけかかると思ってんだよ?」
ベッドに横たわって雑誌を眺めながら返した言葉に、
彼女は少しムッとしたように反論した。
彼女は少しムッとしたように反論した。
「この際だから、っていらないものとか整理しないの?
使えるもんあったら持ってこうと思ってたのに~!」
使えるもんあったら持ってこうと思ってたのに~!」
「なに、お前はどこぞのハゲタカ業者か?せこいな、相変わらず」
「だってそんなこと言って、真はぜーったいこの部屋散らかしたまま
出てくんだから。もうホントしょーがないよね。この段ボール勝手に
使っていいんでしょ?いいよ好きに整理させてもらうから。」
出てくんだから。もうホントしょーがないよね。この段ボール勝手に
使っていいんでしょ?いいよ好きに整理させてもらうから。」
寝そべる俺の横でテキパキと段ボール箱を組み立て、
その辺に散らばった衣類や雑貨を詰めていく美緒の横顔は、
鼻が低いせいか余りきれいではない。
その辺に散らばった衣類や雑貨を詰めていく美緒の横顔は、
鼻が低いせいか余りきれいではない。
小さなころから一緒にいて、家族ぐるみの付き合いで、
お互いの部屋に出入りするのも馴染んだものだった。
お互いの部屋に出入りするのも馴染んだものだった。
昔から美緒は整理整頓が得意で、
だらしのない俺の部屋を片付けるのはいつも美緒の役目だった。
だらしのない俺の部屋を片付けるのはいつも美緒の役目だった。
何で、おふくろじゃなくて美緒だったんだろう……?
そんな疑問を浮かべながらもう一度美緒を見直す。
俺が好きな映画のDVD、一時期ハマっていたゲームの機械、
実は密かに気に入っているUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみ……
乱雑に箱に突っ込んでいるようで、美緒は一つ一つを愛しむように、
優しい目で見つめながら、順番に箱に詰めていく。
実は密かに気に入っているUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみ……
乱雑に箱に突っ込んでいるようで、美緒は一つ一つを愛しむように、
優しい目で見つめながら、順番に箱に詰めていく。
いつも、いつも美緒はそうだった。
林間学校の前。修学旅行の前。
大学に進学するとき。就職して戻ってきたとき。
大学に進学するとき。就職して戻ってきたとき。
大切なものを忘れないように、俺のほしいものがすぐ傍に届くように、
必ず俺の部屋に来て、荷物を詰め、あるいは棚に並べていく。
必ず俺の部屋に来て、荷物を詰め、あるいは棚に並べていく。
普通なら、家族でもないのに恥ずかしいとか、
気持ち悪いとか思うのかもしれない。
気持ち悪いとか思うのかもしれない。
でも、何だか俺にとっては美緒がそうしてくれるのが当たり前すぎて、
いいや、安心しすぎて全てを委ねてしまう。
いいや、安心しすぎて全てを委ねてしまう。
向こうに行ったら、誰が俺の部屋を片付けてくれるんだろう?
誰が、俺に大事な荷物を渡してくれる?
忘れさせないでいてくれる?
そう思ったら、自然と唇が動いていた。
「あのさ、結婚しない?」
突然口から飛び出た言葉に、たぶん一番驚いたのは俺だったんじゃないかと思う。
目の前の美緒がキョトンとした顔でこちらを振り向いた。
「いや、あの今のは……っ!」
ポカンとした表情のまま固まる彼女に、慌てて何か続く言葉を探す。
俺と美緒は男も女もないころからの幼馴染で、
互いにちっともそういう感情はなくて、
元カノも元カレも知り合い同士で……って、何だか頭が混乱してきた。
互いにちっともそういう感情はなくて、
元カノも元カレも知り合い同士で……って、何だか頭が混乱してきた。
どうしよう、どうしよう、とパニックに陥る俺に、美緒が静かに口を開いた。
「いいよ、って言ったら、一緒に連れてってくれるの?」
震えながら紡ぎだされた小さな声も、
少し潤んだ瞳で俺を見上げる美緒の顔もなぜだかすっごく可愛く思えて。
少し潤んだ瞳で俺を見上げる美緒の顔もなぜだかすっごく可愛く思えて。
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