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side:イタル
ようやく見つけた、大切なもの。
ようやく見つけた、大切なもの。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あいつが嫌いだと誰もが知っているもの、情けないオトコ。
俺が嫌いだと誰もが思っているもの、しつこいオンナ。
突風のように心を攫う、激しい熱情。
休み時間の学校の廊下。
「あ!」
「げ、タカハシじゃん」
中学からの腐れ縁の女友達に声を掛けられて、俺は戸惑った。
彼女は、マホの友人でもあるからだ。
マホ……ここ一週間ほど話していない、俺の元“遊び相手”
「あんたとマホ、この前から何か変じゃない?」
予想通りの質問に、平静を装って答える。
「そう? 別に、いつも通りだよ?」
「……あんた、今まで遊んでた相手全部切ってる、ってホント?」
「ああ、ホントだよ。ちょっと心境の変化っていうか。
受験生だし、そろそろ真面目にならなきゃなー、と思って」
受験生だし、そろそろ真面目にならなきゃなー、と思って」
少しおどけてみせるが、彼女の眼差しは相変わらず冷めている。
「根っからの遊び人優等生が、何言ってんだか」
ため息と共に吐き出した言葉の後に、彼女がボソリと呟いた。
「あたし、思うんだけどさ……もしかしたらあの子、あんたに本気だったんじゃないかな」
胸に刺さる言葉に、俺は声を失う。
「あんたとは、お互い納得ずくの遊び相手、って感じだったけど……。
あの子、見た目ほど遊んでないよ。
ねぇ、スガ、あんたが一番よく分かってるんじゃないの……?」
あの子、見た目ほど遊んでないよ。
ねぇ、スガ、あんたが一番よく分かってるんじゃないの……?」
何も言わずに黙り込んだ俺に、救いのようにチャイムが鳴った。
~~~
『本気の恋愛の相手、私じゃだめなの?』
そうマホに言われたとき、どう答えたらいいかわからなかった。
マホのことは、好きだった。でも俺は、“本気の恋愛”をしたことがない。
初めてそれに近い想いを感じたのが、ミチだった。
マホのことは、好きだった。でも俺は、“本気の恋愛”をしたことがない。
初めてそれに近い想いを感じたのが、ミチだった。
ミチ……もう手の届かないところに行ってしまった。自業自得だけれど。
自嘲しながら窓の外に目を向けると、マホの姿が目に入った。
校舎裏の、人目につきにくい空間。顔を赤らめたオトコとマホの様子に、
告白現場だと分かる。マホは丁寧に断っているようだ。
告白現場だと分かる。マホは丁寧に断っているようだ。
胃の辺りが妙にムカついてくるのを、俺は抑えることができなかった。
どこからが“本気”で、どこまでが“遊び”なんだろう?
俺には“レンアイ”がよくわからない。
だけど……あいつが、他の誰かに触れられるのはイヤだ。
風になびく髪を押さえながら、相手を真摯な眼差しで見つめる彼女を、
今まで見たどの女の子より綺麗だ、と思った。
今まで見たどの女の子より綺麗だ、と思った。
~~~
「あ~ぁ、髪ぐちゃぐちゃじゃん」
オトコがいなくなったのを見計らって校舎裏に現れた俺に、
マホはビックリしたように目を見開いた。
マホはビックリしたように目を見開いた。
「イタル!?」
「こんな風強い日に外呼び出すヤツなんか、無視しちゃえばよかったのに」
軽口を叩くと、マホは真面目な顔で
「好きって思ってくれた気持ちを……無視とかしたくないもの。
答えられなくても、精いっぱい大事にしたいの」
答えられなくても、精いっぱい大事にしたいの」
と言った。
「耳が痛いことで」
俺の台詞に、マホの表情が少し沈む。そんな様子を、可愛いと思う。
「俺さ、風の強い日って好きなんだよね」
強い風に煽られながら、思わず呟くと、マホがパッと顔を上げて
「私も!だって風が強いと、人の体温がすっごく暖かく感じるじゃない?」
と嬉しそうに言った。ミチは、嫌いだ、って言ってたなぁ……。
「こうやってギューッとくっつくのも、不自然じゃないしね?」
細いマホの身体を、後ろからぎゅっと抱き締めると、彼女は戸惑ったように俺を見上げた。
「イタル……?」
「俺さ、やっぱり“本気の恋愛”が何なのか、よくわかってねーんだわ」
「うん……」
「だからさ、ヤガミマホさん、手を繋ぐところからもう一度、始めさせていただけませんか?」
彼女の前に手を差し出すと、彼女はプッ、と吹き出して
「やだ、もう抱き合ってるじゃない!」
と叫んだ。その目に浮かぶ、キラキラした涙。
アア、コレガ“イトシイ”ッテコトカ――
俺にとって、彼女はまさに、心を攫う突風だった。
→後書き
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あいつが嫌いだと誰もが知っているもの、情けないオトコ。
俺が嫌いだと誰もが思っているもの、しつこいオンナ。
突風のように心を攫う、激しい熱情。
休み時間の学校の廊下。
「あ!」
「げ、タカハシじゃん」
中学からの腐れ縁の女友達に声を掛けられて、俺は戸惑った。
彼女は、マホの友人でもあるからだ。
マホ……ここ一週間ほど話していない、俺の元“遊び相手”
「あんたとマホ、この前から何か変じゃない?」
予想通りの質問に、平静を装って答える。
「そう? 別に、いつも通りだよ?」
「……あんた、今まで遊んでた相手全部切ってる、ってホント?」
「ああ、ホントだよ。ちょっと心境の変化っていうか。
受験生だし、そろそろ真面目にならなきゃなー、と思って」
受験生だし、そろそろ真面目にならなきゃなー、と思って」
少しおどけてみせるが、彼女の眼差しは相変わらず冷めている。
「根っからの遊び人優等生が、何言ってんだか」
ため息と共に吐き出した言葉の後に、彼女がボソリと呟いた。
「あたし、思うんだけどさ……もしかしたらあの子、あんたに本気だったんじゃないかな」
胸に刺さる言葉に、俺は声を失う。
「あんたとは、お互い納得ずくの遊び相手、って感じだったけど……。
あの子、見た目ほど遊んでないよ。
ねぇ、スガ、あんたが一番よく分かってるんじゃないの……?」
あの子、見た目ほど遊んでないよ。
ねぇ、スガ、あんたが一番よく分かってるんじゃないの……?」
何も言わずに黙り込んだ俺に、救いのようにチャイムが鳴った。
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『本気の恋愛の相手、私じゃだめなの?』
そうマホに言われたとき、どう答えたらいいかわからなかった。
マホのことは、好きだった。でも俺は、“本気の恋愛”をしたことがない。
初めてそれに近い想いを感じたのが、ミチだった。
マホのことは、好きだった。でも俺は、“本気の恋愛”をしたことがない。
初めてそれに近い想いを感じたのが、ミチだった。
ミチ……もう手の届かないところに行ってしまった。自業自得だけれど。
自嘲しながら窓の外に目を向けると、マホの姿が目に入った。
校舎裏の、人目につきにくい空間。顔を赤らめたオトコとマホの様子に、
告白現場だと分かる。マホは丁寧に断っているようだ。
告白現場だと分かる。マホは丁寧に断っているようだ。
胃の辺りが妙にムカついてくるのを、俺は抑えることができなかった。
どこからが“本気”で、どこまでが“遊び”なんだろう?
俺には“レンアイ”がよくわからない。
だけど……あいつが、他の誰かに触れられるのはイヤだ。
風になびく髪を押さえながら、相手を真摯な眼差しで見つめる彼女を、
今まで見たどの女の子より綺麗だ、と思った。
今まで見たどの女の子より綺麗だ、と思った。
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「あ~ぁ、髪ぐちゃぐちゃじゃん」
オトコがいなくなったのを見計らって校舎裏に現れた俺に、
マホはビックリしたように目を見開いた。
マホはビックリしたように目を見開いた。
「イタル!?」
「こんな風強い日に外呼び出すヤツなんか、無視しちゃえばよかったのに」
軽口を叩くと、マホは真面目な顔で
「好きって思ってくれた気持ちを……無視とかしたくないもの。
答えられなくても、精いっぱい大事にしたいの」
答えられなくても、精いっぱい大事にしたいの」
と言った。
「耳が痛いことで」
俺の台詞に、マホの表情が少し沈む。そんな様子を、可愛いと思う。
「俺さ、風の強い日って好きなんだよね」
強い風に煽られながら、思わず呟くと、マホがパッと顔を上げて
「私も!だって風が強いと、人の体温がすっごく暖かく感じるじゃない?」
と嬉しそうに言った。ミチは、嫌いだ、って言ってたなぁ……。
「こうやってギューッとくっつくのも、不自然じゃないしね?」
細いマホの身体を、後ろからぎゅっと抱き締めると、彼女は戸惑ったように俺を見上げた。
「イタル……?」
「俺さ、やっぱり“本気の恋愛”が何なのか、よくわかってねーんだわ」
「うん……」
「だからさ、ヤガミマホさん、手を繋ぐところからもう一度、始めさせていただけませんか?」
彼女の前に手を差し出すと、彼女はプッ、と吹き出して
「やだ、もう抱き合ってるじゃない!」
と叫んだ。その目に浮かぶ、キラキラした涙。
アア、コレガ“イトシイ”ッテコトカ――
俺にとって、彼女はまさに、心を攫う突風だった。
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