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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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現代・幼なじみ・高校生SSS。オチは無いが和む話が書きたかった。

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「ヒロく~ん! ヒロくん、起きて、朝だよっ!」
 
シャッ、とカーテンレールが動く音と共に差し込んできた眩しい光に続いて響いた明るい大声。
 
「ん~、ん、もうちょっとだけ寝かせて……って、ミキ!?」
 
もぞもぞと布団の奥に潜り込みながら、いつもの母親とは違う声の持ち主を思い出す。
 
「うん、ミキです」
 
慌てて身を起こした俺の目の前には、くりくりとしたつぶらな瞳の少女がニコニコしながらのしかかっていた。
 
「おまえ、何でここにいんだよ!?」
 
「だ~って、こないだの初デートの時ヒロくん遅刻したから。今日は絶対寝坊させないようにわざわざ来てあげたんじゃない」
 
ふにっ、と頬を押す指の感触に、顔が赤く染まっていくのが分かる。
ミキ―― 一つ年下の幼なじみである彼女に寄せられていた好意には、ずっと前から気づいていた。物心つく前から当たり前のように一緒にいて、ミキが俺の後を追いかけてくるのも、少し離れたところで彼女を待ち続けるのも、馴染んだ情景で呼吸だった。ほんの一年後にはまた一緒に通えるようになるというのに、小学校や中学校を卒業する度に大泣きして俺の名札やボタンを欲しがった彼女。
俺の高校に入るために、寝る間も惜しんで机に向かい続けるミキの傍で、何だかんだ質問には答え、時には隣町のケーキ屋に何時間も並んで買った差し入れを持っていき、かいがいしくココアなんぞも淹れてやっていた自分の気持ちがどこにあるかも、とっくの昔に分かっていた。だから、合格報告に来たミキにほころびかけの蕾の下で告白された時――嬉しさより先に『やっとか』、と安堵の気持ちが訪れたのだ。
付き合い始めてからも、特に緊張したりミキが俺に対して遠慮しているような様子も無かったけれど、やっぱりそこは年頃の男子、大好きな彼女といれば触れたいとか、年上の男なんだからリードしなきゃとか、諸々の欲望や理想がないまぜになって、悶々としつつある今日この頃。
初デートの前日も、プランやコースをつい色々考え過ぎて眠れなかったと、どうして告げることができるだろう。……結局、慌ててマスコットキャラクターの気ぐるみからもらってきた風船で、おかんむりのミキもすぐ笑顔になったのだが。ジェットコースターでやたらとくっついてくる彼女は可愛かったなぁ、とか、観覧車のてっぺんでした初めてのキスの味とか、プランは全く意味をなさなかったけれど、大切な思い出が沢山できた、二人の関係が一歩進んだあの日。二回目は同じ過ちを繰り返すまい、と思ってはいたんだけどなぁ……。
 
「ヒロくん、ほらボーッとしてないで! 今日は水族館に行くんでしょ!? イルカショー、見れなくなっちゃうよ」
 
ペチペチとほっぺたを叩かれて現実に目覚める。
 
「おまえホント変わんねーなぁ……学校のプールに連れてけ、って騒いでた小1の頃から何にも成長してないんじゃねーの?」
 
自分の部屋、彼女と二人、ベッドの上、という限りなくオイシイ状況にも関わらず余りにも色気の無い展開にぼやいてみせると、ミキはぷうっと頬を膨らませて
 
「失礼ね、ちゃんと育ってます! ……ほら、ね」
 
チュッ、と頬に優しく触れた唇に、サッと身を起こすと彼女はそそくさと離れて扉へと向かった。
 
「目玉焼き、焼いてあげるから早く着替えて降りてきてね!」
 
しばらくポカン、と口を開けて頬を押さえた俺に向かって告げられた言葉。
 
「あれ、おまえスクランブルエッグしか作れないんじゃなかったっけ?」

からかうように問いかけると、ミキはまたムッとした様子で振り返る。
 
「だーかーら、どうしてそうやって私のこと子供扱いするの!? ベーコンエッグだって、ハムエッグだって、作れるようになったもん! 将来、毎朝作ってあげたい人がいるから」
 
今度こそ扉をパタンと閉めて、慌てて階段を駆け下りていく彼女の足音に、俺の頬を支配していた熱は耳にまで伝播し、口の端はだらしなく緩んだ。
 
「やっべ……かわいい」
 
遂には声にまで溢れ出た想い。幸せはすぐ傍に、些細な日常の中にこそある。単純で大切なことを教えてくれた君と、これからもずっと――ずっと笑って、過ごしていけたら。




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「ヒロく~ん! ヒロくん、起きて、朝だよっ!」
 
シャッ、とカーテンレールが動く音と共に差し込んできた眩しい光に続いて響いた明るい大声。
 
「ん~、ん、もうちょっとだけ寝かせて……って、ミキ!?」
 
もぞもぞと布団の奥に潜り込みながら、いつもの母親とは違う声の持ち主を思い出す。
 
「うん、ミキです」
 
慌てて身を起こした俺の目の前には、くりくりとしたつぶらな瞳の少女がニコニコしながらのしかかっていた。
 
「おまえ、何でここにいんだよ!?」
 
「だ~って、こないだの初デートの時ヒロくん遅刻したから。今日は絶対寝坊させないようにわざわざ来てあげたんじゃない」
 
ふにっ、と頬を押す指の感触に、顔が赤く染まっていくのが分かる。
ミキ―― 一つ年下の幼なじみである彼女に寄せられていた好意には、ずっと前から気づいていた。物心つく前から当たり前のように一緒にいて、ミキが俺の後を追いかけてくるのも、少し離れたところで彼女を待ち続けるのも、馴染んだ情景で呼吸だった。ほんの一年後にはまた一緒に通えるようになるというのに、小学校や中学校を卒業する度に大泣きして俺の名札やボタンを欲しがった彼女。
俺の高校に入るために、寝る間も惜しんで机に向かい続けるミキの傍で、何だかんだ質問には答え、時には隣町のケーキ屋に何時間も並んで買った差し入れを持っていき、かいがいしくココアなんぞも淹れてやっていた自分の気持ちがどこにあるかも、とっくの昔に分かっていた。だから、合格報告に来たミキにほころびかけの蕾の下で告白された時――嬉しさより先に『やっとか』、と安堵の気持ちが訪れたのだ。
付き合い始めてからも、特に緊張したりミキが俺に対して遠慮しているような様子も無かったけれど、やっぱりそこは年頃の男子、大好きな彼女といれば触れたいとか、年上の男なんだからリードしなきゃとか、諸々の欲望や理想がないまぜになって、悶々としつつある今日この頃。
初デートの前日も、プランやコースをつい色々考え過ぎて眠れなかったと、どうして告げることができるだろう。……結局、慌ててマスコットキャラクターの気ぐるみからもらってきた風船で、おかんむりのミキもすぐ笑顔になったのだが。ジェットコースターでやたらとくっついてくる彼女は可愛かったなぁ、とか、観覧車のてっぺんでした初めてのキスの味とか、プランは全く意味をなさなかったけれど、大切な思い出が沢山できた、二人の関係が一歩進んだあの日。二回目は同じ過ちを繰り返すまい、と思ってはいたんだけどなぁ……。
 
「ヒロくん、ほらボーッとしてないで! 今日は水族館に行くんでしょ!? イルカショー、見れなくなっちゃうよ」
 
ペチペチとほっぺたを叩かれて現実に目覚める。
 
「おまえホント変わんねーなぁ……学校のプールに連れてけ、って騒いでた小1の頃から何にも成長してないんじゃねーの?」
 
自分の部屋、彼女と二人、ベッドの上、という限りなくオイシイ状況にも関わらず余りにも色気の無い展開にぼやいてみせると、ミキはぷうっと頬を膨らませて
 
「失礼ね、ちゃんと育ってます! ……ほら、ね」
 
チュッ、と頬に優しく触れた唇に、サッと身を起こすと彼女はそそくさと離れて扉へと向かった。
 
「目玉焼き、焼いてあげるから早く着替えて降りてきてね!」
 
しばらくポカン、と口を開けて頬を押さえた俺に向かって告げられた言葉。
 
「あれ、おまえスクランブルエッグしか作れないんじゃなかったっけ?」

からかうように問いかけると、ミキはまたムッとした様子で振り返る。
 
「だーかーら、どうしてそうやって私のこと子供扱いするの!? ベーコンエッグだって、ハムエッグだって、作れるようになったもん! 将来、毎朝作ってあげたい人がいるから」
 
今度こそ扉をパタンと閉めて、慌てて階段を駆け下りていく彼女の足音に、俺の頬を支配していた熱は耳にまで伝播し、口の端はだらしなく緩んだ。
 
「やっべ……かわいい」
 
遂には声にまで溢れ出た想い。幸せはすぐ傍に、些細な日常の中にこそある。単純で大切なことを教えてくれた君と、これからもずっと――ずっと笑って、過ごしていけたら。




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