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ほぼ対自分向けメモ録。ブックマーク・リンクは掲示板貼付以外ご自由にどうぞ。著作権は一応ケイトにありますので文章の無断転載等はご遠慮願います。※最近の記事は私生活が詰まりすぎて創作の余裕が欠片もなく、心の闇の吐き出しどころとなっているのでご注意くださいm(__)m
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やっとこさ遅ればせながらの四万打記念。百合、アンハピ・・・orz


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

四万(しま)の一族は独特の風習を持っている。
それは、四万一族が女だけで構成された民族だということ。
恋愛も結婚も、男と交わることは一切が禁止されている。
ならば何故一族が続いてゆけるのか……? 
答えは簡単だ。連れてくるのだ。棄て子に孤児、お金があれば買うのも良い。
時には攫ってくることさえある。見目の良い、女の赤ん坊ばかりを。
 
「ただいま、美四(みよ)」
 
扉を開けて入って来たのは私の配偶者。
癖っ毛に大きな瞳が愛らしい万莉(まり)だ。
 
「おかえりなさい。ごはんは? 外で食べてきたの?」
 
「うーん……実はまだなんだけど……先にシャワーを浴びてくるわ」
 
食卓に上がった冷えた夕食をチラリと見て、万莉は私を通り過ぎて行った。
鼻先をかすめたのは仄かな煙草の残り香。万莉も私も、煙草なんて吸わない。
私たちの一族が住まうこの里に、煙草を置いている店は無いのだ。
私はそっと、万莉の消えていったバスルームへと続く廊下の暗がりを見つめる。
一族には男と交わることの他に禁じられている掟がもう一つ。
それは、配偶者以外の者と交わること。
私の配偶者である万莉は、きっと二重に罪を犯している。
罪人は長老の元で裁かれねばならない。罪人を庇った者は、等しく重い罰を受ける。
私はどうしたら良いのだろうか。
 
万莉は昔から、外の世界に憧れていた。
 
『お姫様を助け出す王子様は、いつも男の人なんだって!』
 
交易により持ち込まれた希少な異国の絵本を眺めながら、
彼女はよく私に言ってきかせたものだった。
私と万莉は幼い頃よりの許嫁だった。私の母と万莉の母が親しかったためである。
 
『いいなぁ、私も王子様に会ってみたいなぁ。
ねぇ美四、美四は外に行って、男の人を見てみたいと思ったことは無いの?』
 
『私? 私は無いわ……外の世界って怖いもの』
 
『美四は意気地なしねぇ。私はいつかここを出たいわ。
そうして本物の王子様を見つけるの!』
 
許嫁の私に向かい、そんなことを宣言していた万莉だ。
商売上知り合った男と、いつ駆け落ちしてもおかしくない。
私が万莉の裏切りを明かせば、万莉は処刑されてしまうだろう。
私が万莉と男の関係に目を瞑り続ければ、いつか彼女は行ってしまう。
私は幼い頃から万莉が好きだ。失いたくない……けれど、傍にいたい。
単純な我儘だ。こんなことのために、私の思考は堂々巡りを続けている。
 
「……美四、話があるの」
 
ぐるぐると考えを巡らせているうちに、万莉がシャワーを終えてバスルームから出てきた。
首に引っかけたタオルの上に雫が滴る、濡れた髪が艶めかしい。
 
「なに、万莉?」
 
告げられたセリフは、私に大きな衝撃を与えるものだった。
 
「できちゃったの、子どもが。どうしよう……!」
 
泣き崩れる万莉に、私は言葉を失った。
驚きに悲しみ、怒りに嫉妬、ありとあらゆる感情が、私の中を駆け抜けた。
 
『どうしよう美四、助けて。何とかしてよ……!』
 
幼き日の万莉の声が耳の奥で木霊する。
考えてみればこんな風に彼女に縋られるのはもう何度めだろう。
私たちは生まれてから二十を過ぎる今日まで、いつも一緒だった。
万莉はいつも私の先を行き、私が彼女を追いかける。
かと思えば万莉は進んだ先の道でつまずき、或いは惑い私を振り返って泣き縋る。
どちらが追っているのか……どちらが、愛しているのか。
そんなもの、とっくに答えは明白だった。彼女を縛り付けてきたのは、他ならぬ私自身。
一族の慣習、村の掟を言い訳にして――
 
「万莉、万莉はその子を産みたいの? 産んで、その子の父親と一緒に暮らしたい?」
 
私が真っ直ぐに万莉を見ると、万莉は泣きじゃくりながら顔を拭った。
 
「そんなの、分かんないよ……産んだら殺されるし、あたし死にたくないし……
でも彼とは、離れてるのもうやだ……!」
 
「大丈夫、私が何とかしてあげる。十月十日、とにかく万莉は外に出ないで。
無事に赤ちゃんを生むことだけ考えて……。皆には私が、話を付けておくから」
 
 
~~~
 
 
万莉の妊娠が判ってから七カ月目、彼女が産んだのは玉のような男の子だった。
赤子の泣き声が響き渡れば、当然周囲の家々にも出産が知れる。
村の者には絶対にあってはならぬ、異性との交わりの証が。
 
「万莉と美四の家から赤子の声が聞こえた」
 
「裏切り者はどちらか!」
 
「赤子諸共、殺さねば!」
 
家を取り巻く村人たちの中に、家中から姿を現したのは美四だった。
 
「一族の掟に背き、男と交わったのは私です。子どもは男子でありましたので、
たった今、私の配偶者である万莉が山へ捨てに行っているところでございます。
どうぞこの隙に、私の処罰をお決め下さいませ」
 
皆に向かって頭を下げる美四の視線は真剣そのもの、何者も異論を唱え難い気迫に満ちていた。
本当は皆知っていた。配偶者の不実に耐える美四の姿を。
十月十日、誰ひとりとして見かけることの無かった万莉のことを。
その間美四が、懸命に妊婦の好みそうな貴重な果実を集め、
「体調が悪い」万莉を必死に労わっていたことを。
それでも、それが彼女の望みと言うなら――
 
「良かろう、そなたを裁く。男との交わり、配偶者への裏切り、そして出産……
三重の、極めて重い罪ぞ? 良いな? 美四」
 
群衆の背後から現れた長老の厳かな声に、美四は涙を流して頷いた。
 
「はい、はい長老様。私はこれで幸せです。……ですから、どうか」
 
「皆まで言うな。仮にお前の赤子を捨てに行った万莉が道に迷い返ってこなかったとしても、
それは仕方のないこと。お前の裁判で忙しい村の衆は構っている場合ではない。
それは当然、了承していただけような?」
 
「はい……はい、ありがとうございます、長老様」
 
美四は手の平を合わせて長老を拝んだ。
ああ、これで万莉はこの村から解放される! 彼女の願いを叶えられる!
私の誰よりも愛する人が、幸せを手に入れるのだ!
裁判で取り決められた火刑の台にくくりつけられるその瞬間も、美四は幸せに酔いしれていた。
配偶者に裏切られ、濡れ衣を着せられながらも微笑む女の死の間際を、
村の女たちは気味悪げに見守っていた。
 
 
~~~
 
 
「どうして……美四?」
 
美四の手筈通り村を抜け出し、赤子を連れて恋人と落ち合った万莉は、
故郷に最後の別れを告げるため恋人の反対を押し切って村のすぐ傍の木陰に潜んでいた。
何という巡りあわせか、折しもその日は美四の処刑当日であった。
かつて己が愛でた美四の白い肌が汚れ、
粗末なボロ布を巻いた細い身体が火刑台に縛り付けられている。
何故だ――? 本来あそこにいるべきは自分だった。
美四は言ったではないか、『上手くやる』と。
その時になって初めて、万莉の中にどうしようもない美四への想いが溢れた。
嫌いだったわけではない。恋人とも腹を痛めて産んだ我が子とも違う。
ただこの世で一番に、己を解ってくれる存在だと思っていた。信じていた。甘えていた。
では美四は……どうだったのだろう?
初めて“外”の世界に忍んだ時、安請け合いで受けた喧嘩、そして妊娠――
全て全て、『どうしよう』と瞳を潤ませてみせれば美四は必死に尻拭いをしてくれた。
揚句の果てに命を張って――
美四が一体自分にどんな気持ちを向けてくれていたか何て、気づかない方が馬鹿だった。
美しく聡明な許婚。本当は自慢だった。王子様に憧れると同時に、
いつか王子様が美四を見つけ出して己の前から攫って行ってしまうことが不安だった。
だから、自分が先に王子様を見つけてしまえば寂しくないと思った。
美四の王子様と、万莉の王子様と、四人で仲良く――
そんなこと、出来るわけがないと解っていた。
 
だって私は、美四を独占したかった!

万莉の内から叫びがこぼれる。
 
許婚になったのだって、私の方から美四のお母様に頼みに行ったのだ。
正式な婚儀が済んだ後は、毎日家にいてくれる美四の存在が嬉しくて堪らなかった。
どうして忘れていたんだろう。どうして伝えなかったんだろう。
ああ待って、その台に火を付けないで!
美四が死んでしまう、耐えられない、私の心が壊れてしまう!
酷い、酷いわ美四、ずっと私の傍にいてくれるって、四万回の指切りをしたじゃない!
どうして私を裏切るの!? どうして私から離れていくの!?
火に巻かれた美四は微笑っている。心なしか、こちらを見つめて。
 
「裏切り者は、あなたの方でしょう? 万莉」
 
どこか遠くで、そんな声が聞こえた。





後書き

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四万(しま)の一族は独特の風習を持っている。
それは、四万一族が女だけで構成された民族だということ。
恋愛も結婚も、男と交わることは一切が禁止されている。
ならば何故一族が続いてゆけるのか……? 
答えは簡単だ。連れてくるのだ。棄て子に孤児、お金があれば買うのも良い。
時には攫ってくることさえある。見目の良い、女の赤ん坊ばかりを。
 
「ただいま、美四(みよ)」
 
扉を開けて入って来たのは私の配偶者。
癖っ毛に大きな瞳が愛らしい万莉(まり)だ。
 
「おかえりなさい。ごはんは? 外で食べてきたの?」
 
「うーん……実はまだなんだけど……先にシャワーを浴びてくるわ」
 
食卓に上がった冷えた夕食をチラリと見て、万莉は私を通り過ぎて行った。
鼻先をかすめたのは仄かな煙草の残り香。万莉も私も、煙草なんて吸わない。
私たちの一族が住まうこの里に、煙草を置いている店は無いのだ。
私はそっと、万莉の消えていったバスルームへと続く廊下の暗がりを見つめる。
一族には男と交わることの他に禁じられている掟がもう一つ。
それは、配偶者以外の者と交わること。
私の配偶者である万莉は、きっと二重に罪を犯している。
罪人は長老の元で裁かれねばならない。罪人を庇った者は、等しく重い罰を受ける。
私はどうしたら良いのだろうか。
 
万莉は昔から、外の世界に憧れていた。
 
『お姫様を助け出す王子様は、いつも男の人なんだって!』
 
交易により持ち込まれた希少な異国の絵本を眺めながら、
彼女はよく私に言ってきかせたものだった。
私と万莉は幼い頃よりの許嫁だった。私の母と万莉の母が親しかったためである。
 
『いいなぁ、私も王子様に会ってみたいなぁ。
ねぇ美四、美四は外に行って、男の人を見てみたいと思ったことは無いの?』
 
『私? 私は無いわ……外の世界って怖いもの』
 
『美四は意気地なしねぇ。私はいつかここを出たいわ。
そうして本物の王子様を見つけるの!』
 
許嫁の私に向かい、そんなことを宣言していた万莉だ。
商売上知り合った男と、いつ駆け落ちしてもおかしくない。
私が万莉の裏切りを明かせば、万莉は処刑されてしまうだろう。
私が万莉と男の関係に目を瞑り続ければ、いつか彼女は行ってしまう。
私は幼い頃から万莉が好きだ。失いたくない……けれど、傍にいたい。
単純な我儘だ。こんなことのために、私の思考は堂々巡りを続けている。
 
「……美四、話があるの」
 
ぐるぐると考えを巡らせているうちに、万莉がシャワーを終えてバスルームから出てきた。
首に引っかけたタオルの上に雫が滴る、濡れた髪が艶めかしい。
 
「なに、万莉?」
 
告げられたセリフは、私に大きな衝撃を与えるものだった。
 
「できちゃったの、子どもが。どうしよう……!」
 
泣き崩れる万莉に、私は言葉を失った。
驚きに悲しみ、怒りに嫉妬、ありとあらゆる感情が、私の中を駆け抜けた。
 
『どうしよう美四、助けて。何とかしてよ……!』
 
幼き日の万莉の声が耳の奥で木霊する。
考えてみればこんな風に彼女に縋られるのはもう何度めだろう。
私たちは生まれてから二十を過ぎる今日まで、いつも一緒だった。
万莉はいつも私の先を行き、私が彼女を追いかける。
かと思えば万莉は進んだ先の道でつまずき、或いは惑い私を振り返って泣き縋る。
どちらが追っているのか……どちらが、愛しているのか。
そんなもの、とっくに答えは明白だった。彼女を縛り付けてきたのは、他ならぬ私自身。
一族の慣習、村の掟を言い訳にして――
 
「万莉、万莉はその子を産みたいの? 産んで、その子の父親と一緒に暮らしたい?」
 
私が真っ直ぐに万莉を見ると、万莉は泣きじゃくりながら顔を拭った。
 
「そんなの、分かんないよ……産んだら殺されるし、あたし死にたくないし……
でも彼とは、離れてるのもうやだ……!」
 
「大丈夫、私が何とかしてあげる。十月十日、とにかく万莉は外に出ないで。
無事に赤ちゃんを生むことだけ考えて……。皆には私が、話を付けておくから」
 
 
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万莉の妊娠が判ってから七カ月目、彼女が産んだのは玉のような男の子だった。
赤子の泣き声が響き渡れば、当然周囲の家々にも出産が知れる。
村の者には絶対にあってはならぬ、異性との交わりの証が。
 
「万莉と美四の家から赤子の声が聞こえた」
 
「裏切り者はどちらか!」
 
「赤子諸共、殺さねば!」
 
家を取り巻く村人たちの中に、家中から姿を現したのは美四だった。
 
「一族の掟に背き、男と交わったのは私です。子どもは男子でありましたので、
たった今、私の配偶者である万莉が山へ捨てに行っているところでございます。
どうぞこの隙に、私の処罰をお決め下さいませ」
 
皆に向かって頭を下げる美四の視線は真剣そのもの、何者も異論を唱え難い気迫に満ちていた。
本当は皆知っていた。配偶者の不実に耐える美四の姿を。
十月十日、誰ひとりとして見かけることの無かった万莉のことを。
その間美四が、懸命に妊婦の好みそうな貴重な果実を集め、
「体調が悪い」万莉を必死に労わっていたことを。
それでも、それが彼女の望みと言うなら――
 
「良かろう、そなたを裁く。男との交わり、配偶者への裏切り、そして出産……
三重の、極めて重い罪ぞ? 良いな? 美四」
 
群衆の背後から現れた長老の厳かな声に、美四は涙を流して頷いた。
 
「はい、はい長老様。私はこれで幸せです。……ですから、どうか」
 
「皆まで言うな。仮にお前の赤子を捨てに行った万莉が道に迷い返ってこなかったとしても、
それは仕方のないこと。お前の裁判で忙しい村の衆は構っている場合ではない。
それは当然、了承していただけような?」
 
「はい……はい、ありがとうございます、長老様」
 
美四は手の平を合わせて長老を拝んだ。
ああ、これで万莉はこの村から解放される! 彼女の願いを叶えられる!
私の誰よりも愛する人が、幸せを手に入れるのだ!
裁判で取り決められた火刑の台にくくりつけられるその瞬間も、美四は幸せに酔いしれていた。
配偶者に裏切られ、濡れ衣を着せられながらも微笑む女の死の間際を、
村の女たちは気味悪げに見守っていた。
 
 
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「どうして……美四?」
 
美四の手筈通り村を抜け出し、赤子を連れて恋人と落ち合った万莉は、
故郷に最後の別れを告げるため恋人の反対を押し切って村のすぐ傍の木陰に潜んでいた。
何という巡りあわせか、折しもその日は美四の処刑当日であった。
かつて己が愛でた美四の白い肌が汚れ、
粗末なボロ布を巻いた細い身体が火刑台に縛り付けられている。
何故だ――? 本来あそこにいるべきは自分だった。
美四は言ったではないか、『上手くやる』と。
その時になって初めて、万莉の中にどうしようもない美四への想いが溢れた。
嫌いだったわけではない。恋人とも腹を痛めて産んだ我が子とも違う。
ただこの世で一番に、己を解ってくれる存在だと思っていた。信じていた。甘えていた。
では美四は……どうだったのだろう?
初めて“外”の世界に忍んだ時、安請け合いで受けた喧嘩、そして妊娠――
全て全て、『どうしよう』と瞳を潤ませてみせれば美四は必死に尻拭いをしてくれた。
揚句の果てに命を張って――
美四が一体自分にどんな気持ちを向けてくれていたか何て、気づかない方が馬鹿だった。
美しく聡明な許婚。本当は自慢だった。王子様に憧れると同時に、
いつか王子様が美四を見つけ出して己の前から攫って行ってしまうことが不安だった。
だから、自分が先に王子様を見つけてしまえば寂しくないと思った。
美四の王子様と、万莉の王子様と、四人で仲良く――
そんなこと、出来るわけがないと解っていた。
 
だって私は、美四を独占したかった!

万莉の内から叫びがこぼれる。
 
許婚になったのだって、私の方から美四のお母様に頼みに行ったのだ。
正式な婚儀が済んだ後は、毎日家にいてくれる美四の存在が嬉しくて堪らなかった。
どうして忘れていたんだろう。どうして伝えなかったんだろう。
ああ待って、その台に火を付けないで!
美四が死んでしまう、耐えられない、私の心が壊れてしまう!
酷い、酷いわ美四、ずっと私の傍にいてくれるって、四万回の指切りをしたじゃない!
どうして私を裏切るの!? どうして私から離れていくの!?
火に巻かれた美四は微笑っている。心なしか、こちらを見つめて。
 
「裏切り者は、あなたの方でしょう? 万莉」
 
どこか遠くで、そんな声が聞こえた。





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